EPISODE · Jan 30, 2025 · 8 MIN
ボイスドラマ「あの日の入学式」後編
from ボイスドラマ〜Interior Dream · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、インテリアドリーム
登場人物 ・娘(5歳/18歳)・・・小学校入学前/東京の大学へ入学が決まる(CV:桑木栄美里) ・兄(6歳/19歳)・・・小学校入学直前/東京の大学で先に一人暮らしをしている(CV:日比野正裕) 【ストーリー】娘: 「おにいちゃ〜ん!」 兄: 新入生を迎える在校生の最前列に並ぶ僕を見つけて、妹は大きく手を振った。 左右に並んだ家族席では、父と母がいまかいまかと待っている。 いつものように大きな声で応援する父と、 あ、おかあさん、また泣いてる・・・ 母の涙に気づいた父は、笑いながらハンカチを手渡す。 そう、母は1か月前の卒園式でも、3年前の入園式でも大粒の涙を流していた。 僕も妹も、そんな母が大好きだった。 無口で口数は決して多くないけれど、誰よりも僕たちを愛してくれる母。 そんな母の代わりにいつも僕たちを励まし、守ってくれたのは、男気のある父だ。 僕たち兄妹は、両親の大きな愛に包まれて育っていった。 2年前、僕たち家族4人でインテリアショップへ出かけたとき、 (SE〜インテリアショップの雑踏) 兄: 「お前が好きな学習デスク、あるといいな」 娘: 「うん!あ、でも今日は、お兄ちゃんのデスク選ぶんでしょ」 兄: 「いや、オレはゲームしてるから」 娘: 「え、いいの?」 兄: 「気に入るの見つかるといいな」 娘: 「やったぁ!」 兄: 僕たちの会話を聞きながら、父は優しく微笑む。 父の横に立つ母はもう目が潤んでいる。 娘: 「ママ、泣いてるの?悲しいの?」 兄: 「ううん、そうじゃないんだよ。 ママはね、嬉しいと涙がとまらなくなるんだって」 娘: 「ふうん」 兄: 「さあ、このいっぱいの学習デスクの中から、 お前のデスクを早く見つけ出してこい」 娘: 「わかった!」 兄: 父と母に手をひかれた妹は、じっくりと、本当にじっくり、 ひとつずつ手で触れながら学習デスクの森を歩いていく。 そのなかのひとつ、白い色の学習デスクに触れた瞬間、妹は目を輝かせて叫んだ。 妹: 「私、これがいい!」 兄: それは、大好きな生クリームのように真っ白な木製のデスク。 触ると、柔らかくてあったかい、木の優しさが伝わってきた。 父は笑顔でうなづき、母は目を潤ませて、妹の頭を撫でている。 妹: 「あ、でも、こっちも・・・」 兄: 最初に見つけたのは左側に置いてある、エッジに茜色のラインが入ったデスク。 その右側には藍色のラインが煌めくデスクも置いてあった。 妹: 「どうしよう、決められない」 兄: 「じゃあオレが、もう片方のにするよ」 妹: 「え〜」 兄: 結局、父は学習デスクを2台購入した。 妹が選んだのは茜色のラインが入ったデスク。 そして、僕が藍色のラインの方になった。 (SE〜階段を上ってくる小さな足音) 兄: 「お〜い、もう夕ご飯の時間だぞ」 妹: 「もうちょっと・・・」 兄: 「しょうがないなあ、また学習デスクに座ってるのか」 妹: 「だって、楽しいんだもん」 兄: 「あーあー、お菓子こぼしちゃって・・・ あー、アニメのシールまで」 妹: 「だって・・・」 兄: 「来年小学校へ入るときは汚れちゃってるんじゃないか」 妹: 「そんときはキレイにするからいい」 兄: 学習デスクは、妹にとって、自分だけの特別な場所になっていった。 (SE〜朝の雑踏) 妹: 「行ってきます!」 兄: 笑顔いっぱいの妹が、入学式に出かけていく。 出かける前、部屋の扉越しに声をかけたのは・・・ いつも座っていた自分の学習デスク。 そう、入学前の1年間、家にいるときは毎日学習デスクに座り、 デスクに話しかけながら過ごしてきたのだから。 なんだか、学習デスクも、 行ってらっしゃい、 と返事をしたように見えた。 (SE〜小学校入学式の雑踏/「おめでとう!」という声があちこちでから飛ぶ) 兄: ぶかぶかの制服に身を包んだ妹が、会場のステージに向かって歩きながら 父と母に大きく手を振る。 その姿を見て、また母が涙ぐむ。 その横で、父が母を見て笑う。 その2人を見て、妹が手を振りながら笑う。 僕は、妹と父母を交互に見ながら、より幸せな気分になっていった。 (SE〜家庭内の雑踏) 妹: 「じゃあ、もう行くね・・・」 兄: あれから12年。 妹は念願の東京の大学に受かり、家を離れることになった。 一人暮らしの小さな部屋に学習デスクは連れていけない。 最後に家を出るとき、妹は学習デスクにそっと触れた。 そう、まさにあの時、インテリアショップで 初めてこのデスクに出逢った時と同じように。 妹: 「いつも寄り添ってくれてありがとう・・・」 兄: 使い込んだデスクの表面には、インクの染みとシールを剥がした痕。 それは、デスクが長年連れ添ってきた無二の親友である証だった。 もう一度、デスクの表面を愛おしそうに(やさしく)撫でながら、妹が呟く。 娘: 「いままで、本当にありがとう・・・私の大切な家族」
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登場人物 ・娘(5歳/18歳)・・・小学校入学前/東京の大学へ入学が決まる(CV:桑木栄美里) ・兄(6歳/19歳)・・・小学校入学直前/東京の大学で先に一人暮らしをしている(CV:日比野正裕) 【ストーリー】娘: 「おにいちゃ〜ん!」 兄: 新入生を迎える在校生の最前列に並ぶ僕を見つけて、妹は大きく手を振った。 左右に並んだ家族席では、父と母がいまかいまかと待っている。 いつものように大きな声で応援する父と、 あ、おかあさん、また泣いてる・・・ 母の涙に気づいた父は、笑いながらハンカチを手渡す。 そう、母は1か月前の卒園式でも、3年前の入園式でも大粒の涙を流していた。 僕も妹も、そんな母が大好きだった。 無口で口数は決して多くないけれど、誰よりも僕たちを愛してくれる母。 そんな母の代わりにいつも僕たちを励まし、守ってくれたのは、男気のある父だ。 僕たち兄妹は、両親の大きな愛に包まれて育っていった。 2年前、僕たち家族4人でインテリアショップへ出かけたとき、 (SE〜インテリアショップの雑踏) 兄: 「お前が好きな学習デスク、あるといいな」 娘: 「うん!あ、でも今日は、お兄ちゃんのデスク選ぶんでしょ」 兄: 「いや、オレはゲームしてるから」 娘: 「え、いいの?」 兄: 「気に入るの見つかるといいな」 娘: 「やったぁ!」 兄: 僕たちの会話を聞きながら、父は優しく微笑む。 父の横に立つ母はもう目が潤んでいる。 娘: 「ママ、泣いてるの?悲しいの?」 兄: 「ううん、そうじゃないんだよ。 ママはね、嬉しいと涙がとまらなくなるんだって」 娘: 「ふうん」 兄: 「さあ、このいっぱいの学習デスクの中から、 お前のデスクを早く見つけ出してこい」 娘: 「わかった!」 兄: 父と母に手をひかれた妹は、じっくりと、本当にじっくり、 ひとつずつ手で触れながら学習デスクの森を歩いていく。 そのなかのひとつ、白い色の学習デスクに触れた瞬間、妹は目を輝かせて叫んだ。 妹: 「私、これがいい!」 兄: それは、大好きな生クリームのように真っ白な木製のデスク。 触ると、柔らかくてあったかい、木の優しさが伝わってきた。 父は笑顔でうなづき、母は目を潤ませて、妹の頭を撫でている。 妹: 「あ、でも、こっちも・・・」 兄: 最初に見つけたのは左側に置いてある、エッジに茜色のラインが入ったデスク。 その右側には藍色のラインが煌めくデスクも置いてあった。 妹: 「どうしよう、決められない」 兄: 「じゃあオレが、もう片方のにするよ」 妹: 「え〜」 兄: 結局、父は学習デスクを2台購入した。 妹が選んだのは茜色のラインが入ったデスク。 そして、僕が藍色のラインの方になった。 (SE〜階段を上ってくる小さな足音) 兄: 「お〜い、もう夕ご飯の時間だぞ」 妹: 「もうちょっと・・・」 兄: 「しょうがないなあ、また学習デスクに座ってるのか」 妹: 「だって、楽しいんだもん」 兄: 「あーあー、お菓子こぼしちゃって・・・ あー、アニメのシールまで」 妹: 「だって・・・」 兄: 「来年小学校へ入るときは汚れちゃってるんじゃないか」 妹: 「そんときはキレイにするからいい」 兄: 学習デスクは、妹にとって、自分だけの特別な場所になっていった。 (SE〜朝の雑踏) 妹: 「行ってきます!」 兄: 笑顔いっぱいの妹が、入学式に出かけていく。 出かける前、部屋の扉越しに声をかけたのは・・・ いつも座っていた自分の学習デスク。 そう、入学前の1年間、家にいるときは毎日学習デスクに座り、 デスクに話しかけながら過ごしてきたのだから。 なんだか、学習デスクも、 行ってらっしゃい、 と返事をしたように見えた。 (SE〜小学校入学式の雑踏/「おめでとう!」という声があちこちでから飛ぶ) 兄: ぶかぶかの制服に身を包んだ妹が、会場のステージに向かって歩きながら 父と母に大きく手を振る。 その姿を見て、また母が涙ぐむ。 その横で、父が母を見て笑う。 その2人を見て、妹が手を振りながら笑う。 僕は、妹と父母を交互に見ながら、より幸せな気分になっていった。 (SE〜家庭内の雑踏) 妹: 「じゃあ、もう行くね・・・」 兄: あれから12年。 妹は念願の東京の大学に受かり、家を離れることになった。 一人暮らしの小さな部屋に学習デスクは連れていけない。 最後に家を出るとき、妹は学習デスクにそっと触れた。 そう、まさにあの時、インテリアショップで 初めてこのデスクに出逢った時と同じように。 妹: 「いつも寄り添ってくれてありがとう・・・」 兄: 使い込んだデスクの表面には、インクの染みとシールを剥がした痕。 それは、デスクが長年連れ添ってきた無二の親友である証だった。 もう一度、デスクの表面を愛おしそうに(やさしく)撫でながら、妹が呟く。 娘: 「いままで、本当にありがとう・・・私の大切な家族」
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