EPISODE · Jan 30, 2025 · 7 MIN
ボイスドラマ「あの日の入学式」前編
from ボイスドラマ〜Interior Dream · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、インテリアドリーム
登場人物 ・娘(4歳/18歳)・・・小学校入学前/東京の大学へ入学が決まり名古屋を離れることに(CV:桑木栄美里) ・父(49歳/62歳)・・・建築関係の会社を経営/いつでも末娘が愛しくてたまらない(CV:日比野正裕)【ストーリー】 娘: 「いままで、本当にありがとう・・・」 娘: インクの染みとシールを剥がした痕が残る学習デスク。 私は木製の白い表面を撫でながら、13年前のあの日を思い出していた。 (SE〜インテリアショップの雑踏) 娘: 「わあ!学習デスクがいっぱい・・・」 父: 「あんまり目移りしてると、決められなくなるよ」 娘: 「まるでデスクの海みたい」 娘: 初めて父と母に連れてきてもらったインテリアショップ。 波間をただよう舟のように、学習デスクの海の中を 父と母と、手をつないで見てまわる。 私の足が止まったのは、2台並んでディスプレイされたシンプルな木製のデスク。 真っ白に磨かれた天板がキラキラと輝いて見えた。 左側のデスクはエッジに茜色のラインが入り、 右側のデスクには藍色のラインが煌めいている。 どちらかを決めるのは、4歳の私にとって簡単ではなかった。 父: 「決められないのかい?」 娘: 「うーん・・・」 父: 「わかった」 娘: 小さな頭で悩む私の横で、父は店員さんを呼ぶ。 父: 「この2台、ください」 娘: 「え?」 娘: 父は訳あり顔で笑うと、私の肩越しに兄を指差した。 学習デスクコーナーのすみっこでゲームをしているのは、私の1つ上の兄。 そうだった、今日はこの春小学校に入学する兄の学習デスクを見に来たんだ。 兄に聞こえないように、少し声を落として父が、 父: 「君(お前)が好きな方を選ぶんだよ」 娘: と言って、優しく微笑む。 娘: 「ありがとう!」 父: 「大切に使おうね」 娘: こうして、小学校へ入学するよりも前に、 学習デスクは私の元へやってきた。 入学するまでの1年以上、 私は、宿題もないのに、毎日学習デスクに座って本を開いた。 私だけの特別な場所。 そこは私にとってかけがえのない空間だった。 (SE〜扉を開ける音〜デスクにかばんを置く音) 娘: 「ただいま」 娘: 小学校から中学、そして高校へ。 いつだって、家に帰ると自分の部屋に直行して、まず学習デスクに声をかける。 疲れていても、学習デスクが優しくつつんでくれる気がした。 私の学生生活は、放課後、夕方から放送部、 そのあとバレエスタジオで夜までバレエのレッスン・・ 家に帰ると、学校の宿題、テスト勉強、受験勉強・・・。 時には机の上で寝落ちてしまい、知らず知らずインクの染みで 汚してしまうことも。 (SE〜扉を開ける音〜デスクに小皿を置く音) 娘: 「あ・・・」 父: 「(これ )母さんから」 娘: 学習デスクの上で食べる夜食がホントに美味しくて・・・ 美味しくて涙が出るなんてあるんだ、って知った。 (SE〜扉を開ける音) 父: 「風邪ひくぞ・・・」 娘: 寝落ちした私の肩に毛布をかけてくれた父。 優しい声は頭の中の片隅で聞いていた・・・ 嬉しい時、悲しい時、楽しい時、辛い時。 学習デスクは私の表情を全部知っていて、どんな時も私のそばで見守ってくれた。 私の学習デスクは、私の家族の一員だった。 そして・・・ (SE〜大学キャンパスの雑踏) 父: 「おめでとう」 娘: 第一志望の大学に合格し、上京することが決まったとき、 一人暮らしの小さな部屋に、学習デスクは連れていけなかった。 家を出る日、私はもう一度学習デスクに座った。 最後にその暖かい感触を確かめるように。 インテリアショップで初めて出会ったときのピカピカのイメージは消え、 使い込んだデスクの表面には、インクの染みとシールを剥がした痕。 それもいまは、ぼんやりかすんでよく見えない。 あの日、学習デスクの海の中でひたすら輝いていた、私のデスク。 あの日と同じように、もう一度、そっと触れる。 初めて出会ったあの瞬間のときめきを、一筋の寂しさに変えて。 娘: 「いままで、本当にありがとう・・・私の、大切な家族」
What this episode covers
登場人物 ・娘(4歳/18歳)・・・小学校入学前/東京の大学へ入学が決まり名古屋を離れることに(CV:桑木栄美里) ・父(49歳/62歳)・・・建築関係の会社を経営/いつでも末娘が愛しくてたまらない(CV:日比野正裕)【ストーリー】 娘: 「いままで、本当にありがとう・・・」 娘: インクの染みとシールを剥がした痕が残る学習デスク。 私は木製の白い表面を撫でながら、13年前のあの日を思い出していた。 (SE〜インテリアショップの雑踏) 娘: 「わあ!学習デスクがいっぱい・・・」 父: 「あんまり目移りしてると、決められなくなるよ」 娘: 「まるでデスクの海みたい」 娘: 初めて父と母に連れてきてもらったインテリアショップ。 波間をただよう舟のように、学習デスクの海の中を 父と母と、手をつないで見てまわる。 私の足が止まったのは、2台並んでディスプレイされたシンプルな木製のデスク。 真っ白に磨かれた天板がキラキラと輝いて見えた。 左側のデスクはエッジに茜色のラインが入り、 右側のデスクには藍色のラインが煌めいている。 どちらかを決めるのは、4歳の私にとって簡単ではなかった。 父: 「決められないのかい?」 娘: 「うーん・・・」 父: 「わかった」 娘: 小さな頭で悩む私の横で、父は店員さんを呼ぶ。 父: 「この2台、ください」 娘: 「え?」 娘: 父は訳あり顔で笑うと、私の肩越しに兄を指差した。 学習デスクコーナーのすみっこでゲームをしているのは、私の1つ上の兄。 そうだった、今日はこの春小学校に入学する兄の学習デスクを見に来たんだ。 兄に聞こえないように、少し声を落として父が、 父: 「君(お前)が好きな方を選ぶんだよ」 娘: と言って、優しく微笑む。 娘: 「ありがとう!」 父: 「大切に使おうね」 娘: こうして、小学校へ入学するよりも前に、 学習デスクは私の元へやってきた。 入学するまでの1年以上、 私は、宿題もないのに、毎日学習デスクに座って本を開いた。 私だけの特別な場所。 そこは私にとってかけがえのない空間だった。 (SE〜扉を開ける音〜デスクにかばんを置く音) 娘: 「ただいま」 娘: 小学校から中学、そして高校へ。 いつだって、家に帰ると自分の部屋に直行して、まず学習デスクに声をかける。 疲れていても、学習デスクが優しくつつんでくれる気がした。 私の学生生活は、放課後、夕方から放送部、 そのあとバレエスタジオで夜までバレエのレッスン・・ 家に帰ると、学校の宿題、テスト勉強、受験勉強・・・。 時には机の上で寝落ちてしまい、知らず知らずインクの染みで 汚してしまうことも。 (SE〜扉を開ける音〜デスクに小皿を置く音) 娘: 「あ・・・」 父: 「(これ )母さんから」 娘: 学習デスクの上で食べる夜食がホントに美味しくて・・・ 美味しくて涙が出るなんてあるんだ、って知った。 (SE〜扉を開ける音) 父: 「風邪ひくぞ・・・」 娘: 寝落ちした私の肩に毛布をかけてくれた父。 優しい声は頭の中の片隅で聞いていた・・・ 嬉しい時、悲しい時、楽しい時、辛い時。 学習デスクは私の表情を全部知っていて、どんな時も私のそばで見守ってくれた。 私の学習デスクは、私の家族の一員だった。 そして・・・ (SE〜大学キャンパスの雑踏) 父: 「おめでとう」 娘: 第一志望の大学に合格し、上京することが決まったとき、 一人暮らしの小さな部屋に、学習デスクは連れていけなかった。 家を出る日、私はもう一度学習デスクに座った。 最後にその暖かい感触を確かめるように。 インテリアショップで初めて出会ったときのピカピカのイメージは消え、 使い込んだデスクの表面には、インクの染みとシールを剥がした痕。 それもいまは、ぼんやりかすんでよく見えない。 あの日、学習デスクの海の中でひたすら輝いていた、私のデスク。 あの日と同じように、もう一度、そっと触れる。 初めて出会ったあの瞬間のときめきを、一筋の寂しさに変えて。 娘: 「いままで、本当にありがとう・・・私の、大切な家族」
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ボイスドラマ「あの日の入学式」前編
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