EPISODE · Mar 4, 2025 · 13 MIN
ボイスドラマ「デイゴの花」後編
from ボイスドラマ〜Interior Dream · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、インテリアドリーム
前編では、娘が祖父と再会し、沖縄の空気の中で少しずつ「家族の絆」を感じていく様子が描かれました。後編では、祖父が語る沖縄戦の記憶、そして彼が守り続けてきたものについて描かれていきます。「ぬちどぉたから」—— 命こそ宝。戦争を生き延びた祖父が、この言葉をどんな想いで語るのか。また、旅の終わりが近づくにつれ、娘と祖父の時間はより特別なものになっていきます。別れの時、祖父は娘に何を託すのか——。登場人物のペルソナ(※設定は毎回変わります)・少年時代の祖父(5歳)・・・父とはぐれたガマで学生と知り合い助けられる(CV:桑木栄美里)・学生(14歳)・・・家具職人を目指して修行していた沖縄の学生(CV:日比野正裕)<シーン1/1945年/那覇にて>(SE〜激しい戦火の音)少年: 「このガマに、入れてください」 「逃げているときに父とはぐれてしまいました」 「いまは僕1人です」 「もしお邪魔ならすぐに出ていきます」 「わかりました」 「おじゃましました」 学生: 「ちょっと待って」少年: あきらめて引き返そうとしたとき、 声をかけられた。 ガマの奥から現れた学生服のお兄さん。学生: 「きみ、どっから来たの?」少年: 「宜野湾です」学生: 「宜野湾から歩いてきたの?」少年: 「はい」学生: 「さあ、こっちへ来て。 僕のとなり、ちょっとつめれば入れるから」少年: ガマの中の大人はすごく嫌な顔をした。 仕方ない。 だって今はみんな生きるのに必死だもん。 ボクだって、弾に当たらないようにしながら ここまで一生懸命走ってきた。 オトゥーは途中の村でボクを先に行かせていなくなった。 絶対に後ろを振り返るな、と言われたから、 言うことをきいて、前だけを見てここまできた。 だけど、この辺鉄砲の音がいっぱいしてるから 怖くなって、ガマへ逃げたんだ。 声をかけてくれたのは、お兄さんだけ。 右手に包帯巻いてる。怪我してるのかなあ。学生: 「もう大丈夫だよ」少年: 「ありがとうございます」学生: 「はい、これ食べて。周りの人にはナイショだよ」少年: お兄さんは、小さくちぎった魚の干物をボクに手渡した。 これは、ハマダイかなあ。 小さすぎて、なんの魚だかもうわかんない。 僕が干物を口に入れたとき、 お兄さんのお腹がぐぅと鳴った。 え? お兄さん、これ、お兄さんの晩御飯じゃないの? お兄さんは人差し指を口にあてて しいっというジェスチャーをした。 笑いながら、僕の耳に口を近づけて囁く。学生: 「兵隊がいなくてよかったね」少年: 「え?どうして?」学生: 「あいつらがいたら、子供なんて絶対追い出される」少年: 「兵隊さんはウチナンチュを守ってくれるんじゃないの?」 僕も小さな声で、お兄さんの耳にささやく。学生: 「守ってくれたら、沖縄がこんな風になってると思うかい」少年: 「え」 その先、言葉が続かない僕に、お兄さんは自分のことを話してくれた。 お兄さんは家具職人になりたいのだという。学生: 「沖縄の家具ってのはね、美しくて、優しくて、 涼しくて、あったかいんだよ」少年: 涼しくて、あったかい?へんなの。学生: 「素材は琉球松とかイヌマキ。耐久性があって湿気にも強い。 イヌマキは首里城にも使われてるんだぞ。 最高の素材を使って最高の座卓や箪笥を作りたいなあ。 紅型(びんがた)で染めた風呂敷を座卓にかけるのもいいな。 シーサーをおく棚は格子にして風通しをよくしよう」少年: 周りの大人たちは、おでこにシワを寄せて怖い顔をしてるのに お兄さんはなんだか楽しそうだ。学生: 「あーあ。なりたかったなあ。家具職人」少年: え?なるんじゃないの。 さっき、戦争が終わったら家具職人になる、って言ってたよ。学生: 「家具職人になりたかったけど・・・ このガマに入る前はね、戦争の道具を作ってたんだ。 ほら、家具職人ってみんな手先が起用だろ。 だから、仕事をやめて弾薬箱とか作らされるんだよ。 家具は、人を幸せにするもの。 家族の絆をつむぐもの。 なのに、僕たちは人を殺す道具を作っていたんだ」少年: さっきまで優しい顔をしていたお兄さんが だんだん険しい形相になってくる。 お兄さん、やめて。そんな話。 小さい声でも周りの大人に聞こえちゃうよ。学生: 「ああ、そうだった。ごめんごめん。 もっと楽しい話をしよう」少年: 「うん」学生: 「君はここを出たら、家具職人にならないか」少年: 「ボクが?」学生: 「人を殺す道具じゃなくて、人を幸せにする家具を作るんだ」少年: 「お兄さんはもう家具を作りたくないの?」学生: 「そりゃ作りたいさ。ここを生きて出られたら」少年: お兄さんの話はそこで終わった。 それからボクたちは何日ガマにいただろう? 食べるものもだんだんなくなって、入口近くにあった 草の根っこも全部食べ尽くしちゃった。 お腹が減ったなあ。おにぎり腹一杯食べたいなあ。 そんなとき、お兄さんは落ちてる枝でいろんなものを作ってくれた。 それは木でできたおもちゃ。 カエルとか魚とか犬とかニワトリとか。 すごいな、お兄さん。 今日はちょっと長い木の枝を持ってきて 周りの小枝を削って一本の棒にした。 なんだろう? 不思議な顔して眺めていると、 お兄さんは自分の下着を破いた。 ちょっと黒ずんだ白いシャツ。 え?そんなことしたら着れなくなっちゃうよ。 白い部分を木の棒に巻きつけて旗みたいにした。学生: 「このあと、これを大きく振って外へ出るんだよ」少年: 「どうして?弾に当たっちゃうよ」学生: 「大丈夫。もう外で銃弾の音はしていない」少年: 「そうなの?」学生: 「この前、ガマにビラが投げ込まれただろ」少年: 「ビラってなに?」学生: 「文字を書いた紙だよ」少年: 「ふうん」学生: 「そこにはね、こう書かれていたんだ。 隠れているみなさん、戦争はもう終わりました。 出てきてください。 もう少ししたらガマに爆弾を投げ入れますから 早く出てきてください。 って」少年: 「うそだ」学生: 「うそじゃないよ。 今までずっとうそをついていたのは、僕たちが信じていた方さ」少年: お兄さんはそう言って僕をガマの外に追い出した。学生: 「いいかい。どんなに大きい音がしても、絶対に振り返っちゃいけないよ」少年: オトゥーと同じことを言う。 ボクはボロボロの白い旗を振って外へでた。 外で待ち構えていたアメリカ兵は すぐにボクを抱き抱えて走り出す。 背中からものすごく大きな音と強い風がやってきた。■BGM〜「海唄」祖父: こうして私は家具職人になった。 美しくて、優しくて、 涼しくて、あったかい家具を作り続ける。 人を幸せにする家具。 家族の絆をつなぐ家具。 棚や箪笥の上には、必ずシーサーを置く。 大切な人をいつまでもいつまでも守ってほしい。 愛する孫娘のことも。 ”いちゃりばちょーでー” みんなに守られて、幸せになるんだよ。 これから、どんな時代がやってきても忘れてはいけない。 ”ぬちどぉたから”
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前編では、娘が祖父と再会し、沖縄の空気の中で少しずつ「家族の絆」を感じていく様子が描かれました。後編では、祖父が語る沖縄戦の記憶、そして彼が守り続けてきたものについて描かれていきます。「ぬちどぉたから」—— 命こそ宝。戦争を生き延びた祖父が、この言葉をどんな想いで語るのか。また、旅の終わりが近づくにつれ、娘と祖父の時間はより特別なものになっていきます。別れの時、祖父は娘に何を託すのか——。登場人物のペルソナ(※設定は毎回変わります)・少年時代の祖父(5歳)・・・父とはぐれたガマで学生と知り合い助けられる(CV:桑木栄美里)・学生(14歳)・・・家具職人を目指して修行していた沖縄の学生(CV:日比野正裕)<シーン1/1945年/那覇にて>(SE〜激しい戦火の音)少年: 「このガマに、入れてください」 「逃げているときに父とはぐれてしまいました」 「いまは僕1人です」 「もしお邪魔ならすぐに出ていきます」 「わかりました」 「おじゃましました」 学生: 「ちょっと待って」少年: あきらめて引き返そうとしたとき、 声をかけられた。 ガマの奥から現れた学生服のお兄さん。学生: 「きみ、どっから来たの?」少年: 「宜野湾です」学生: 「宜野湾から歩いてきたの?」少年: 「はい」学生: 「さあ、こっちへ来て。 僕のとなり、ちょっとつめれば入れるから」少年: ガマの中の大人はすごく嫌な顔をした。 仕方ない。 だって今はみんな生きるのに必死だもん。 ボクだって、弾に当たらないようにしながら ここまで一生懸命走ってきた。 オトゥーは途中の村でボクを先に行かせていなくなった。 絶対に後ろを振り返るな、と言われたから、 言うことをきいて、前だけを見てここまできた。 だけど、この辺鉄砲の音がいっぱいしてるから 怖くなって、ガマへ逃げたんだ。 声をかけてくれたのは、お兄さんだけ。 右手に包帯巻いてる。怪我してるのかなあ。学生: 「もう大丈夫だよ」少年: 「ありがとうございます」学生: 「はい、これ食べて。周りの人にはナイショだよ」少年: お兄さんは、小さくちぎった魚の干物をボクに手渡した。 これは、ハマダイかなあ。 小さすぎて、なんの魚だかもうわかんない。 僕が干物を口に入れたとき、 お兄さんのお腹がぐぅと鳴った。 え? お兄さん、これ、お兄さんの晩御飯じゃないの? お兄さんは人差し指を口にあてて しいっというジェスチャーをした。 笑いながら、僕の耳に口を近づけて囁く。学生: 「兵隊がいなくてよかったね」少年: 「え?どうして?」学生: 「あいつらがいたら、子供なんて絶対追い出される」少年: 「兵隊さんはウチナンチュを守ってくれるんじゃないの?」 僕も小さな声で、お兄さんの耳にささやく。学生: 「守ってくれたら、沖縄がこんな風になってると思うかい」少年: 「え」 その先、言葉が続かない僕に、お兄さんは自分のことを話してくれた。 お兄さんは家具職人になりたいのだという。学生: 「沖縄の家具ってのはね、美しくて、優しくて、 涼しくて、あったかいんだよ」少年: 涼しくて、あったかい?へんなの。学生: 「素材は琉球松とかイヌマキ。耐久性があって湿気にも強い。 イヌマキは首里城にも使われてるんだぞ。 最高の素材を使って最高の座卓や箪笥を作りたいなあ。 紅型(びんがた)で染めた風呂敷を座卓にかけるのもいいな。 シーサーをおく棚は格子にして風通しをよくしよう」少年: 周りの大人たちは、おでこにシワを寄せて怖い顔をしてるのに お兄さんはなんだか楽しそうだ。学生: 「あーあ。なりたかったなあ。家具職人」少年: え?なるんじゃないの。 さっき、戦争が終わったら家具職人になる、って言ってたよ。学生: 「家具職人になりたかったけど・・・ このガマに入る前はね、戦争の道具を作ってたんだ。 ほら、家具職人ってみんな手先が起用だろ。 だから、仕事をやめて弾薬箱とか作らされるんだよ。 家具は、人を幸せにするもの。 家族の絆をつむぐもの。 なのに、僕たちは人を殺す道具を作っていたんだ」少年: さっきまで優しい顔をしていたお兄さんが だんだん険しい形相になってくる。 お兄さん、やめて。そんな話。 小さい声でも周りの大人に聞こえちゃうよ。学生: 「ああ、そうだった。ごめんごめん。 もっと楽しい話をしよう」少年: 「うん」学生: 「君はここを出たら、家具職人にならないか」少年: 「ボクが?」学生: 「人を殺す道具じゃなくて、人を幸せにする家具を作るんだ」少年: 「お兄さんはもう家具を作りたくないの?」学生: 「そりゃ作りたいさ。ここを生きて出られたら」少年: お兄さんの話はそこで終わった。 それからボクたちは何日ガマにいただろう? 食べるものもだんだんなくなって、入口近くにあった 草の根っこも全部食べ尽くしちゃった。 お腹が減ったなあ。おにぎり腹一杯食べたいなあ。 そんなとき、お兄さんは落ちてる枝でいろんなものを作ってくれた。 それは木でできたおもちゃ。 カエルとか魚とか犬とかニワトリとか。 すごいな、お兄さん。 今日はちょっと長い木の枝を持ってきて 周りの小枝を削って一本の棒にした。 なんだろう? 不思議な顔して眺めていると、 お兄さんは自分の下着を破いた。 ちょっと黒ずんだ白いシャツ。 え?そんなことしたら着れなくなっちゃうよ。 白い部分を木の棒に巻きつけて旗みたいにした。学生: 「このあと、これを大きく振って外へ出るんだよ」少年: 「どうして?弾に当たっちゃうよ」学生: 「大丈夫。もう外で銃弾の音はしていない」少年: 「そうなの?」学生: 「この前、ガマにビラが投げ込まれただろ」少年: 「ビラってなに?」学生: 「文字を書いた紙だよ」少年: 「ふうん」学生: 「そこにはね、こう書かれていたんだ。 隠れているみなさん、戦争はもう終わりました。 出てきてください。 もう少ししたらガマに爆弾を投げ入れますから 早く出てきてください。 って」少年: 「うそだ」学生: 「うそじゃないよ。 今までずっとうそをついていたのは、僕たちが信じていた方さ」少年: お兄さんはそう言って僕をガマの外に追い出した。学生: 「いいかい。どんなに大きい音がしても、絶対に振り返っちゃいけないよ」少年: オトゥーと同じことを言う。 ボクはボロボロの白い旗を振って外へでた。 外で待ち構えていたアメリカ兵は すぐにボクを抱き抱えて走り出す。 背中からものすごく大きな音と強い風がやってきた。■BGM〜「海唄」祖父: こうして私は家具職人になった。 美しくて、優しくて、 涼しくて、あったかい家具を作り続ける。 人を幸せにする家具。 家族の絆をつなぐ家具。 棚や箪笥の上には、必ずシーサーを置く。 大切な人をいつまでもいつまでも守ってほしい。 愛する孫娘のことも。 ”いちゃりばちょーでー” みんなに守られて、幸せになるんだよ。 これから、どんな時代がやってきても忘れてはいけない。 ”ぬちどぉたから”
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