EPISODE · Mar 6, 2025 · 9 MIN
ボイスドラマ「オーロラの彼方に」後編
from ボイスドラマ〜Interior Dream · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、インテリアドリーム
前編では、オーロラに魅せられたヒロインと、彼女を想う先輩研究者の静かな交流が描かれました。後編では、物語が大きく動きます。研究に打ち込みすぎて、自分の体を顧みない彼女。そんな彼女がある日、倒れてしまう…。「オーロラ姫」を救ったのは、科学でもデータでもなく、たった一つの“想い”でした。この物語は、科学と愛、そして眠りが交差する不思議な縁の物語。果たして、彼女は「本当に安らげる場所」を見つけることができるのでしょうか?【登場人物のペルソナ】・女性(26歳)=大学院生で天文学を専攻。太陽風と地球の磁場の相互作用によって生じるオーロラについての研究に没頭している。最近、研究のプレッシャーと不規則な観測スケジュールにより、睡眠障害に悩まされている。オーロラの研究にのめり込みすぎているため、周りからは尊敬と揶揄をこめて「オーロラ姫」と呼ばれている(CV:桑木栄美里)・男性(28歳)=女性と同じ大学院で天文学を研究している先輩。博士号終了後も国立天文台からのオファーを期待してポスドク(博士研究員)としてキャリアを積んでいる。「オーロラ姫」のことを慕っているが、なかなか言い出せないでいる(CV:日比野正裕)<シーン1/先端科学研究所>(SE〜ラボの環境音)女性: 「スーパーカミオカンデからのオファー!?私が?」男性: 彼女が通常より1オクターブ高い音階で驚く。 まあ、無理もない。 大学が運営する先端科学研究所で天文学を研究して、 去年の年末に、オーロラの出現を予測したんだから。 オーロラ姫の面目躍如だ。 それにしても、スーパーカミオカンデとはね。 東京大学宇宙線研究所が運用する世界最大の宇宙素粒子観測装置。 ニュートリノという素粒子を観測する施設からのオファーか。 期待の高さがわかるってもんだな。女性: 「去年のオーロラ出現以来、 毎日毎日観測室とデータ解析室の往復を繰り返してるのよ。 睡眠障害だった1年前より、睡眠不足だわ」男性: そうだった。 オーロラ姫はずうっと睡眠障害で悩んでいたんだ。 彼女の言葉を聞いた僕は、いてもたってもいられなくて いろんな文献を調べたんだっけ。 あ、いや。 彼女のことが好きだとか、そういう直接的な意味じゃなくて。 なんとなく・・・ あれ?やっぱり、好きなのかな・・・ まいいや。 それで結局、治療もさることながら ベッドや寝具も重要、と厚労省のガイドブックにあったから。 足を向けたのが、インテリアショップ。 そこで真っ先に目についたのが、電動リクライニングベッドだった。 高機能なツーモーターでありながらリーズナブル。 これなら研究員の僕でも手が出るかな・・ なんて思ってたらそのネーミングを見て驚いた。 電動リクライニングベッド”オーロラ”。 まるで、僕の心を突き動かすように 目が離せなくなった。 そのとき、同じベッドを見つめていたのが、なんとオーロラ姫。 偶然はドラマを生む。 なんてことはありえないんだな。 そのあと、少しだけ彼女と話し、お茶を飲んで別れた。 彼女と2人っきりの空間で話をしたのは、 あとにも先にもこの日だけ。 僕の思いは、オーロラの光のように、儚く消えていった。<シーン2/先端科学研究所(実験室)>(SE〜ラボの環境音)女性: 「あら?今日は先輩と2人だけ?」男性: え? あ、そうか。 今日は休日だったっけ。 最近はみんな、休日は休んでるからなあ。 当たり前か。 待てよ。 オーロラ姫は・・・彼女は・・ 全然休んでないんじゃないか。 嫌な予感。 不安が心をよぎる。女性: 「お腹すかない? なんだか血糖値が下がってきちゃったみたい」男性: 「ああ、もうこんな時間じゃないか。 夢中になって観測してると、時間も忘れちゃうんだな」女性: 「そうよぉ。 相対性理論でいうタイムマシンの原理ね」男性: なんか違うような気もするけど。 ああ、体の疲れがピークだ。 力を抜くと瞼が閉じていく。 そのとき・・・(SE〜人が倒れる音とガラスの割れる音)男性: 「オーロラ姫!?」 大きな音に目を見開くと・・ 高性能天体望遠鏡が床に倒れ、 その上にオーロラ姫が横たわっていた。 顔色は失せ、急激な発汗と震え。 これは・・・低血糖症だ。 やがて、痙攣が彼女を襲う。 そのまま意識を失った。 少しためらいながら、僕は彼女を抱き起こす。 そのまま仮眠室のベッドへ。 だが、ほどなく、脈が早くなり、呼吸が荒くなる。 そして・・呼吸音は聞こえなくなった。 まずい。 こんなときは・・・ わかっている。大学時代、ライフセーバーをやっていた。 戸惑っているときではない。 オーロラ姫の首を軽く後ろに傾けて、下あごを持ち上げる。 気道を確保してから、唇を合わせて、息を吹き込んだ。 その間に、胸が落ちるのを確認する。 人工呼吸を2回するごとに、呼吸と脈拍をチェック。 僕はオーロラ姫の呼吸が回復するまで人工呼吸を続けた。<シーン3/病院のベッド>(SE〜心電図の音)女性: 「起きて・・・ねえ、起きて」男性: え? ここは・・・病院?女性: 「あなたまで倒れないでよ」男性: 思い出した。 僕は、オーロラ姫に人工呼吸で救命措置をしたあと、 救急車を呼んで病院に運んでもらったんだ。 そうか、付き添っているうちに、僕も眠っちゃったんだな。女性: 「ERドクターに言われたわ。 呼吸が戻ったのは、適切な救命措置のおかげだって」男性: 救命措置・・・女性: 「先輩が迅速に人工呼吸と心配蘇生をしてくれたから 後遺症もなくこうして生きていられるのね」男性: 「それは・・・たまたま僕が以前ライフセーバーだったから」女性: 「ううん。 オーロラ姫を死の眠りから目覚めさせてくれたのは 王子様のキスでしょ」男性: 「え・・・」■BGM〜「インテリアドリーム」女性: 「ありがとう」男性: 「そんな・・お礼なんて」女性: 「今度は、起きているときにしてね」男性: 「ええっ?」男性: そう言ったあと、彼女はいたずらっぽく笑う。女性: 「私、もう少し自分の体を大切にするわ」男性: 「うん。それがいい」女性: 「ああ、病院の硬いベッドじゃなくて、 おうちのリクライニングベッドで眠りたい」男性: 「ああ、あれ」女性: 「そう・・」2人で: 「オーロラ!」女性: 「先輩も、ベッド変えたら?」男性: 「うん、考えてたんだ」女性: 「先輩の給料なら、もっと上位機種にも手が届くでしょ」男性: 「いやいや。僕も自分の身の丈に合わせてオーロラさ」女性: 「へえ〜、そうなんだ」男性: 「僕は所詮ポスドクだし、研究員の給料なんて君もよく知ってるだろ」女性: 「じゃあ、2人合算すれば、アップグレードできるかしら」男性: 「えっ?」 言ったあと、オーロラ姫は下を向いてはにかんでいる。 ひょっとして、僕は王子様になれるのかな。 顔色が戻ってきた彼女の頬は薄紅色に輝いていた。
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前編では、オーロラに魅せられたヒロインと、彼女を想う先輩研究者の静かな交流が描かれました。後編では、物語が大きく動きます。研究に打ち込みすぎて、自分の体を顧みない彼女。そんな彼女がある日、倒れてしまう…。「オーロラ姫」を救ったのは、科学でもデータでもなく、たった一つの“想い”でした。この物語は、科学と愛、そして眠りが交差する不思議な縁の物語。果たして、彼女は「本当に安らげる場所」を見つけることができるのでしょうか?【登場人物のペルソナ】・女性(26歳)=大学院生で天文学を専攻。太陽風と地球の磁場の相互作用によって生じるオーロラについての研究に没頭している。最近、研究のプレッシャーと不規則な観測スケジュールにより、睡眠障害に悩まされている。オーロラの研究にのめり込みすぎているため、周りからは尊敬と揶揄をこめて「オーロラ姫」と呼ばれている(CV:桑木栄美里)・男性(28歳)=女性と同じ大学院で天文学を研究している先輩。博士号終了後も国立天文台からのオファーを期待してポスドク(博士研究員)としてキャリアを積んでいる。「オーロラ姫」のことを慕っているが、なかなか言い出せないでいる(CV:日比野正裕)<シーン1/先端科学研究所>(SE〜ラボの環境音)女性: 「スーパーカミオカンデからのオファー!?私が?」男性: 彼女が通常より1オクターブ高い音階で驚く。 まあ、無理もない。 大学が運営する先端科学研究所で天文学を研究して、 去年の年末に、オーロラの出現を予測したんだから。 オーロラ姫の面目躍如だ。 それにしても、スーパーカミオカンデとはね。 東京大学宇宙線研究所が運用する世界最大の宇宙素粒子観測装置。 ニュートリノという素粒子を観測する施設からのオファーか。 期待の高さがわかるってもんだな。女性: 「去年のオーロラ出現以来、 毎日毎日観測室とデータ解析室の往復を繰り返してるのよ。 睡眠障害だった1年前より、睡眠不足だわ」男性: そうだった。 オーロラ姫はずうっと睡眠障害で悩んでいたんだ。 彼女の言葉を聞いた僕は、いてもたってもいられなくて いろんな文献を調べたんだっけ。 あ、いや。 彼女のことが好きだとか、そういう直接的な意味じゃなくて。 なんとなく・・・ あれ?やっぱり、好きなのかな・・・ まいいや。 それで結局、治療もさることながら ベッドや寝具も重要、と厚労省のガイドブックにあったから。 足を向けたのが、インテリアショップ。 そこで真っ先に目についたのが、電動リクライニングベッドだった。 高機能なツーモーターでありながらリーズナブル。 これなら研究員の僕でも手が出るかな・・ なんて思ってたらそのネーミングを見て驚いた。 電動リクライニングベッド”オーロラ”。 まるで、僕の心を突き動かすように 目が離せなくなった。 そのとき、同じベッドを見つめていたのが、なんとオーロラ姫。 偶然はドラマを生む。 なんてことはありえないんだな。 そのあと、少しだけ彼女と話し、お茶を飲んで別れた。 彼女と2人っきりの空間で話をしたのは、 あとにも先にもこの日だけ。 僕の思いは、オーロラの光のように、儚く消えていった。<シーン2/先端科学研究所(実験室)>(SE〜ラボの環境音)女性: 「あら?今日は先輩と2人だけ?」男性: え? あ、そうか。 今日は休日だったっけ。 最近はみんな、休日は休んでるからなあ。 当たり前か。 待てよ。 オーロラ姫は・・・彼女は・・ 全然休んでないんじゃないか。 嫌な予感。 不安が心をよぎる。女性: 「お腹すかない? なんだか血糖値が下がってきちゃったみたい」男性: 「ああ、もうこんな時間じゃないか。 夢中になって観測してると、時間も忘れちゃうんだな」女性: 「そうよぉ。 相対性理論でいうタイムマシンの原理ね」男性: なんか違うような気もするけど。 ああ、体の疲れがピークだ。 力を抜くと瞼が閉じていく。 そのとき・・・(SE〜人が倒れる音とガラスの割れる音)男性: 「オーロラ姫!?」 大きな音に目を見開くと・・ 高性能天体望遠鏡が床に倒れ、 その上にオーロラ姫が横たわっていた。 顔色は失せ、急激な発汗と震え。 これは・・・低血糖症だ。 やがて、痙攣が彼女を襲う。 そのまま意識を失った。 少しためらいながら、僕は彼女を抱き起こす。 そのまま仮眠室のベッドへ。 だが、ほどなく、脈が早くなり、呼吸が荒くなる。 そして・・呼吸音は聞こえなくなった。 まずい。 こんなときは・・・ わかっている。大学時代、ライフセーバーをやっていた。 戸惑っているときではない。 オーロラ姫の首を軽く後ろに傾けて、下あごを持ち上げる。 気道を確保してから、唇を合わせて、息を吹き込んだ。 その間に、胸が落ちるのを確認する。 人工呼吸を2回するごとに、呼吸と脈拍をチェック。 僕はオーロラ姫の呼吸が回復するまで人工呼吸を続けた。<シーン3/病院のベッド>(SE〜心電図の音)女性: 「起きて・・・ねえ、起きて」男性: え? ここは・・・病院?女性: 「あなたまで倒れないでよ」男性: 思い出した。 僕は、オーロラ姫に人工呼吸で救命措置をしたあと、 救急車を呼んで病院に運んでもらったんだ。 そうか、付き添っているうちに、僕も眠っちゃったんだな。女性: 「ERドクターに言われたわ。 呼吸が戻ったのは、適切な救命措置のおかげだって」男性: 救命措置・・・女性: 「先輩が迅速に人工呼吸と心配蘇生をしてくれたから 後遺症もなくこうして生きていられるのね」男性: 「それは・・・たまたま僕が以前ライフセーバーだったから」女性: 「ううん。 オーロラ姫を死の眠りから目覚めさせてくれたのは 王子様のキスでしょ」男性: 「え・・・」■BGM〜「インテリアドリーム」女性: 「ありがとう」男性: 「そんな・・お礼なんて」女性: 「今度は、起きているときにしてね」男性: 「ええっ?」男性: そう言ったあと、彼女はいたずらっぽく笑う。女性: 「私、もう少し自分の体を大切にするわ」男性: 「うん。それがいい」女性: 「ああ、病院の硬いベッドじゃなくて、 おうちのリクライニングベッドで眠りたい」男性: 「ああ、あれ」女性: 「そう・・」2人で: 「オーロラ!」女性: 「先輩も、ベッド変えたら?」男性: 「うん、考えてたんだ」女性: 「先輩の給料なら、もっと上位機種にも手が届くでしょ」男性: 「いやいや。僕も自分の身の丈に合わせてオーロラさ」女性: 「へえ〜、そうなんだ」男性: 「僕は所詮ポスドクだし、研究員の給料なんて君もよく知ってるだろ」女性: 「じゃあ、2人合算すれば、アップグレードできるかしら」男性: 「えっ?」 言ったあと、オーロラ姫は下を向いてはにかんでいる。 ひょっとして、僕は王子様になれるのかな。 顔色が戻ってきた彼女の頬は薄紅色に輝いていた。
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