EPISODE · Feb 5, 2025 · 9 MIN
ボイスドラマ「食卓より愛をこめて」前編
from ボイスドラマ〜Interior Dream · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、インテリアドリーム
皆さん、こんにちは。本作『豚汁の香り〜食卓より愛をこめて』に目を留めていただき、ありがとうございます。 この物語は、家族の絆を「食卓」を通じて描いた、少し懐かしくて温かいストーリーです。登場するのは、一人娘と父、そして母。日々の生活の中で変わるものと変わらないもの――その象徴として「豚汁」が登場します。 豚汁は、日本の家庭で愛される料理のひとつですが、それぞれの家に「味」があるように、それを囲む家族にもそれぞれの「想い」があります。誰かと一緒に食卓を囲むこと、作る人の気持ちを感じながら味わうこと。それは何気ない日常のひとコマかもしれませんが、実は人生の大切な瞬間でもあります。 本作では、そんな「食卓の魔法」が生み出す家族の物語を、心を込めて綴りました。豚汁の湯気の向こうに浮かぶ、それぞれの想いを感じながら、ぜひ最後までお楽しみください。 登場人物 ・娘(25歳/5歳)・・・看護師/名古屋市内の総合病院のERで働く(CV:桑木栄美里) ・父(56歳/36歳)・・・一級建築士/東三河地区で不動産会社を経営(CV:日比野正裕) 【Story〜「豚汁の香り〜食卓より愛をこめて/前編」】 <娘25歳/父56歳> (SE〜料理音/包丁で野菜を切る音など) 娘: キッチンカウンターからリズミカルな包丁の音が聞こえてくる。 まるでショパンの子犬のワルツのように楽しげな長調で・・・ (BGM〜子犬のワルツ/ショパン) キッチンに立っているのは、昔から変わらない、笑顔のパパだ。 私が実家に立ち寄るのは・・・そうか、2年ぶりかぁ。 パンデミックの真っ最中に新人看護師となった私は 世の中が落ち着くまで、盆も正月もなく働いた。 父: 「おまえの顔を見るのなんて、5年ぶりくらいじゃないか?」 娘: 「失礼ね。2年ぶりよ・・・(最後は小さい声で)」 父: 「パパ、たまたま今日は豚汁の準備していたから・・・ ラッキーだな」 娘: ウソばっかり・・・ ママから聞いてるんだよ。 パパ、豚汁の準備だけは毎日してるんだって。←※ここ、モノローグです <娘5歳/父36歳> 自他共に認めるパパの得意料理は、”豚汁”。 その一番の支持者は昔から私と決まっている。 朝も昼も夜も、豚汁を作ってほしいとおねだりする私に、 パパは飽きもせず作り続けてくれた。 娘: 「だって、パパの豚汁毎日食べたいんだもん」 (SE〜料理音/包丁で野菜を切る音など) 父: 「そうかそうか、じゃあお前の大好きなさつまいもを、 たっぷりと入れてやるからな〜」 娘: 「やったぁ!」 父: 「さつまいもは、豚汁の味をまろやかにして、甘〜くしてくれるんだよ」 娘: 「ふうん」 父: 「お肉はもちろん、黒豚だぞ」 娘: 「わぁ〜」 父: 「お前が苦手な脂身は、 ダシが染み渡ったらとり除いてやるからな」 娘: 細切りにした黒豚。 皮をむいて薄切りにしたさつまいも。 これに、薄切りのにんじんとしいたけ、 縦にせん切りしたごぼう、 一口大のこんにゃくと油揚げ、 小口切りの長ねぎが色を添える。 これがパパお手製の豚汁のレシピだ。 父: 「さあ、できたぞ〜。 お前のためだけに作った、特別な豚汁だ」 娘: 「わ〜い!」 父: 「ほかほかのごはんもいっぱい食べるんだぞ」 娘: 「はぁい!」 父: 「さあ、いっしょに食べよう」 (SE〜椅子をひいて座る音) 娘: パパは食卓で必ず私の右前に座る。 さほど大きくはない長方形のダイニングテーブル。 長辺の真ん中に座る私と、対面の少しキッチン寄りに座るパパ。 どうしていつもそこなの、ときいたら、 父: 「この位置からお前を見ていたいんだよ」 娘: と、即答してくれた。 それは20年前もいまも変わらない。 <娘25歳/父56歳> (SE〜料理音/豚汁が煮だっている音など) 父: 「さつまいもも黒豚もちゃあんと入ってるからな」 娘: パパの背中を見ながら、私は食卓の一番前で豚汁を待ちのぞむ。 父: 「さ〜あ、できたぞ。いっしょに食べよう」 (SE〜椅子をひいて座る音) 父: 「今日はなにをしていたんだい?」 娘: 「ぷっ・・・」←※笑い 父: 「なんだ、どうしたんだ?」 娘: 「変わらないなあ、と思って」 父: 「なにが?」 娘: 「パパ、昔から豚汁を食べるときは、 必ず最初に、今日はなにをしてたの、って私にきいてたもん」 父: 「そうだったかな」 娘: 「それに、その場所」 父: 「場所?」 娘: 「必ず私の右斜前に座る」 父: 「そりゃそうだろ。お前に一番近い場所だ」 娘: 「そうかなあ」 父: 「そうさ、それにお互いに顔を見ながら食べた方が美味しいじゃないか」 娘: 「うふふ、そうねぇ」 父: 「さあ、食べよう食べよう」 娘: 「ねえ、パパ」 父: 「なんだ、あらたまって」 娘: 「あのね・・・話があるんだけど・・・」 父: 「う、うん」 娘: 「実は・・・パパに会わせたい人がいるんだ・・・」 父: 「え」 娘: 「あ、いきなり・・・だった?」 父: 「あ、いや、そ、そうか・・・お前ももうそういう年頃だもんなあ」 娘: 「いやだ、パパ。そんなんじゃないから・・・」 父: 「よ、よかったじゃないか」 娘: 「もう〜、そんな、あらたまった話じゃないのよ。 ただ、パパに会ってほしい人がいるだけ」 父: 「どんな人だい?」 娘: 「ふふ。やさしい人。 私のことをなにより大切にしてくれる人」 父: 「そ、そうか〜。よかったじゃないか。じゃあ一度うちにも連れてきなさい」 娘: 「うん。そうする」 父: 「なんで・・・今日は連れてこなかったんだい?」 娘: 「だって、今日はパパの豚汁を、パパと食べたかったの」 父: 「そうか・・・」 娘: 「それに、パパのリズミカルな包丁の音が長調から短調に変わるのは いやだったんだもん」 父: 「なぁに言ってるんだ」 娘: 「うふふ」 父: 「パパもその人に早く会ってみたいな」 娘: 「ほんとう?無理しなくていいのよ」 父: 「無理なんてしてない」→※このあと2人で笑い合うアドリブあり 娘: いつだって、この食卓を中心に、豚汁の香りと笑い声が響きあう。 私の心を優しい思いが満たしていった。
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皆さん、こんにちは。本作『豚汁の香り〜食卓より愛をこめて』に目を留めていただき、ありがとうございます。 この物語は、家族の絆を「食卓」を通じて描いた、少し懐かしくて温かいストーリーです。登場するのは、一人娘と父、そして母。日々の生活の中で変わるものと変わらないもの――その象徴として「豚汁」が登場します。 豚汁は、日本の家庭で愛される料理のひとつですが、それぞれの家に「味」があるように、それを囲む家族にもそれぞれの「想い」があります。誰かと一緒に食卓を囲むこと、作る人の気持ちを感じながら味わうこと。それは何気ない日常のひとコマかもしれませんが、実は人生の大切な瞬間でもあります。 本作では、そんな「食卓の魔法」が生み出す家族の物語を、心を込めて綴りました。豚汁の湯気の向こうに浮かぶ、それぞれの想いを感じながら、ぜひ最後までお楽しみください。 登場人物 ・娘(25歳/5歳)・・・看護師/名古屋市内の総合病院のERで働く(CV:桑木栄美里) ・父(56歳/36歳)・・・一級建築士/東三河地区で不動産会社を経営(CV:日比野正裕) 【Story〜「豚汁の香り〜食卓より愛をこめて/前編」】 <娘25歳/父56歳> (SE〜料理音/包丁で野菜を切る音など) 娘: キッチンカウンターからリズミカルな包丁の音が聞こえてくる。 まるでショパンの子犬のワルツのように楽しげな長調で・・・ (BGM〜子犬のワルツ/ショパン) キッチンに立っているのは、昔から変わらない、笑顔のパパだ。 私が実家に立ち寄るのは・・・そうか、2年ぶりかぁ。 パンデミックの真っ最中に新人看護師となった私は 世の中が落ち着くまで、盆も正月もなく働いた。 父: 「おまえの顔を見るのなんて、5年ぶりくらいじゃないか?」 娘: 「失礼ね。2年ぶりよ・・・(最後は小さい声で)」 父: 「パパ、たまたま今日は豚汁の準備していたから・・・ ラッキーだな」 娘: ウソばっかり・・・ ママから聞いてるんだよ。 パパ、豚汁の準備だけは毎日してるんだって。←※ここ、モノローグです <娘5歳/父36歳> 自他共に認めるパパの得意料理は、”豚汁”。 その一番の支持者は昔から私と決まっている。 朝も昼も夜も、豚汁を作ってほしいとおねだりする私に、 パパは飽きもせず作り続けてくれた。 娘: 「だって、パパの豚汁毎日食べたいんだもん」 (SE〜料理音/包丁で野菜を切る音など) 父: 「そうかそうか、じゃあお前の大好きなさつまいもを、 たっぷりと入れてやるからな〜」 娘: 「やったぁ!」 父: 「さつまいもは、豚汁の味をまろやかにして、甘〜くしてくれるんだよ」 娘: 「ふうん」 父: 「お肉はもちろん、黒豚だぞ」 娘: 「わぁ〜」 父: 「お前が苦手な脂身は、 ダシが染み渡ったらとり除いてやるからな」 娘: 細切りにした黒豚。 皮をむいて薄切りにしたさつまいも。 これに、薄切りのにんじんとしいたけ、 縦にせん切りしたごぼう、 一口大のこんにゃくと油揚げ、 小口切りの長ねぎが色を添える。 これがパパお手製の豚汁のレシピだ。 父: 「さあ、できたぞ〜。 お前のためだけに作った、特別な豚汁だ」 娘: 「わ〜い!」 父: 「ほかほかのごはんもいっぱい食べるんだぞ」 娘: 「はぁい!」 父: 「さあ、いっしょに食べよう」 (SE〜椅子をひいて座る音) 娘: パパは食卓で必ず私の右前に座る。 さほど大きくはない長方形のダイニングテーブル。 長辺の真ん中に座る私と、対面の少しキッチン寄りに座るパパ。 どうしていつもそこなの、ときいたら、 父: 「この位置からお前を見ていたいんだよ」 娘: と、即答してくれた。 それは20年前もいまも変わらない。 <娘25歳/父56歳> (SE〜料理音/豚汁が煮だっている音など) 父: 「さつまいもも黒豚もちゃあんと入ってるからな」 娘: パパの背中を見ながら、私は食卓の一番前で豚汁を待ちのぞむ。 父: 「さ〜あ、できたぞ。いっしょに食べよう」 (SE〜椅子をひいて座る音) 父: 「今日はなにをしていたんだい?」 娘: 「ぷっ・・・」←※笑い 父: 「なんだ、どうしたんだ?」 娘: 「変わらないなあ、と思って」 父: 「なにが?」 娘: 「パパ、昔から豚汁を食べるときは、 必ず最初に、今日はなにをしてたの、って私にきいてたもん」 父: 「そうだったかな」 娘: 「それに、その場所」 父: 「場所?」 娘: 「必ず私の右斜前に座る」 父: 「そりゃそうだろ。お前に一番近い場所だ」 娘: 「そうかなあ」 父: 「そうさ、それにお互いに顔を見ながら食べた方が美味しいじゃないか」 娘: 「うふふ、そうねぇ」 父: 「さあ、食べよう食べよう」 娘: 「ねえ、パパ」 父: 「なんだ、あらたまって」 娘: 「あのね・・・話があるんだけど・・・」 父: 「う、うん」 娘: 「実は・・・パパに会わせたい人がいるんだ・・・」 父: 「え」 娘: 「あ、いきなり・・・だった?」 父: 「あ、いや、そ、そうか・・・お前ももうそういう年頃だもんなあ」 娘: 「いやだ、パパ。そんなんじゃないから・・・」 父: 「よ、よかったじゃないか」 娘: 「もう〜、そんな、あらたまった話じゃないのよ。 ただ、パパに会ってほしい人がいるだけ」 父: 「どんな人だい?」 娘: 「ふふ。やさしい人。 私のことをなにより大切にしてくれる人」 父: 「そ、そうか〜。よかったじゃないか。じゃあ一度うちにも連れてきなさい」 娘: 「うん。そうする」 父: 「なんで・・・今日は連れてこなかったんだい?」 娘: 「だって、今日はパパの豚汁を、パパと食べたかったの」 父: 「そうか・・・」 娘: 「それに、パパのリズミカルな包丁の音が長調から短調に変わるのは いやだったんだもん」 父: 「なぁに言ってるんだ」 娘: 「うふふ」 父: 「パパもその人に早く会ってみたいな」 娘: 「ほんとう?無理しなくていいのよ」 父: 「無理なんてしてない」→※このあと2人で笑い合うアドリブあり 娘: いつだって、この食卓を中心に、豚汁の香りと笑い声が響きあう。 私の心を優しい思いが満たしていった。
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