重力波の話

EPISODE · Dec 15, 2023 · 10 MIN

重力波の話

from ソラジオトーク from OKAYAMA · host FM岡山

ソラジオトークfrom OKAYAMAへようこそ 美星天文台 伊藤です!   さて、本題の「重力波」の話に入る前に、リスナーの方からのご質問へ回答をしていきます。 「毎年同じ時期に流星群が見られるのはなぜですか?宇宙をただよう小さな岩石などが地球の重力に引き寄せられ、大気で燃え尽きるのが流れ星として見えることは分かります。ですが毎年同じ時期にたくさん見られるというのが疑問です。地球は同じ軌道を周回しているから、燃え尽きてちりが消えたらもう次は見られなくなるのではないかと思うのです。」 とのご質問をいただきました。ありがとうございます。   14日にはふたご座流星群があり、天気がよかったところでは1時間に50個くらいの流れ星が見えたかもしれません。毎年12月14日頃にピークを迎えるふたご座流星群ですが、質問は、なぜ、毎年同じ頃に流星群が見えるのか?ということですね。おっしゃられている通り、流星群とは宇宙を漂う塵の列の中に地球が入っていき、地球大気に衝突したものが流れ星として見ることができます。地球は太陽の周りをぐるぐると回っていますから、毎年同じタイミングで、宇宙を漂う塵の中に入っていくわけですが、疑問としては、なぜ、その塵が毎年補充されているか、ということでしょう。おそらく質問者の方の考えとしては、この宇宙を漂う塵が動いておらず、地球だけが動いているので、前年に地球に衝突してしまえば、翌年以降は見られなくなるはず、ということだと思います。答えとしては、この塵のほうも、太陽を周回しているから毎年新しい塵が地球にぶつかる、ということになります。そもそも、宇宙において、完全に静止する、というのはとても難しいことです。なぜなら、地球や太陽などの重力が常に働いていますので、その場に留まるには、それこそロケット噴射のように重力に逆らう力の存在が必要になります。もちろんただの塵にそのような力はありませんので、常に太陽の重力によって動いている状態となります。ですので、流星群を作り出す宇宙に存在する塵は、流れる川のように太陽をまわる軌道をなし、地球がその塵の川・軌道に入っていく、というような状況を想像していただくとわかりやすいかもしれません。このため、毎年新しい塵が地球に衝突します。   では、今回のテーマである、「重力波」についてお話したいと思います。 放送分で解説したとおり、重力波とは、時空の歪みの伝搬のことです。普通、高校などの物理で習う重力、とは、ニュートンが提唱した万有引力と呼ばれるもので、物が2つあったときに、お互いを引っ張り合う力のことを指します。地球の重力、と言った場合は、例えば地球と人間の間に発生する引力のことを、重力、と呼ぶわけです。しかし、これが一般相対性理論では全く異なる説明となります。 一般相対性理論では、時空の中に質量がある物体が存在すると、その周りの時空が歪みます。この歪みこそが重力として感じられている、と説明されます。なにが違うかよくわからない説明かもしれませんが、ニュートンの万有引力が空間を伝わる力であるのに対して、アインシュタインの一般相対性理論では、時空、の歪みである、とした点が大きく異なります。普段の我々の生活の範囲では、万有引力も一般相対性理論も違いを感じることはないのですが、こと宇宙、非常に重たい天体の周りの様子を観察してみると、万有引力では説明できず、一般相対性理論を使わないと説明できないことが現れます。 一番身近な例としては、皆さんのスマートフォンにも内蔵されているGPSでは、一般相対性理論を使った時刻補正が行われています。GPSは地球を周回する複数個の人工衛星に搭載された原子時計の正確な時刻を使って、地上の位置計測を行いますが、この原子時計は地球による時空の歪みの影響を受け、時計の進み方まで変わってしまいます。このため、一般相対性理論を用いた時刻補正を適切に用いないと、正確な時刻が分からず、最終的な位置を決める際に大きな誤差となってしまいます。もし、一般相対性理論の補正を入れないと、GPSで計測する位置は1km以上ずれたものになってしまうことが知られています。このように、現実の宇宙はニュートンの万有引力でなく、アインシュタインの一般相対性理論が導く時空の歪みが支配していることが知られています。   そして、重力波とはこの時空の歪みの伝搬のことを指しています。重力波を生み出す物質が、重たければ重たいほど、当然この時空の歪みも大きくなっていくのですが、その歪みを捉えるのは容易ではありません。 例えば、太陽よりもずっと重たいブラックホールの合体で生じる時空の歪みの量は、地球と太陽の距離を原子一個分だけずらす程度です。そんなわずかな量の変化を捉えてしまうのが、現代の重力波望遠鏡なのです。   さて、この重力波を観測できるとなにがうれしいのでしょうか?現在の重力波望遠鏡で捉えられる重力波は、非常に重たいブラックホールや中性子星などが、2個ぶつかって合体するような非常に極端な状態のものになりますが、例えば中性子星の合体の場合には、多数の重たい元素が生成されることが予想されています。宇宙が誕生してすぐには、水素やヘリウムと言った非常に軽い元素が存在するだけで、例えば我々の体を作っている炭素や酸素、鉄などは存在しませんでした。これらの元素は星の内部で生成されて、星の一生の最後である超新星爆発を経て、宇宙に様々な元素がばらまかれたと考えられています。しかし近年、超新星の観測などが進むにつれて、重たい元素、特に鉄より重たい金やプラチナなどの元素が、超新星爆発で作られる量だけでは全く足りていない、ということが明らかになってきました。そこでにわかに注目を集めたのが、中性子星の合体です。この現象でも、実は金やプラチナといった重たい元素ができることが予想されたのですが、これらを探す際に極めて重要となるのが、重力波の観測になります。   重力波望遠鏡は、我々が普段想像する望遠鏡とは、全く異なる仕組みの望遠鏡になります。レーザー干渉計と呼ばれる技術を使って、先ほども述べた通り太陽-地球間の距離にして水素元素1個分程度の極めて小さい時空の歪みを検出しますが、この時の歪みの大きさや時間変化をつぶさに調べると、重力波を出した天体の重さやまで調べることができます。また、我々が普段使っている望遠鏡では、空のうち非常に狭い範囲しか観測できませんが、重力波望遠鏡では宇宙のほぼすべての方向を同時に観測でき、また、重力波が宇宙のどの方向からやってきているかも、大雑把ですが知ることができます。   さて、宇宙で中性子星やブラックホールの合体が起こると、地球では、まず最初にこの重力波が検出されます。重力波の観測からは、先ほど述べたとおり、ぶつかった天体の質量と大雑把な方角が分かります。しかし、これだけでは本当に金やプラチナと言った元素ができているかを調べることはできません。そのため、重力波以外での追跡観測がとても重要になります。重力波望遠鏡で重力波が検出されると、その情報は即座に世界中の望遠鏡と共有されます。世界中の望遠鏡は、この重力波からの情報を頼りに、中性子星やブラックホールが合体してできた天体がないかをすぐに調べに行きます。中性子星の合体の場合、場所や星の環境によっても変わりますが、合体から数日程度は可視光などでも光ることが予測されており、その成分を波長ごとに詳しく調べることによって、本当に重たい元素ができているかを調べることができます。実際に2017年に起こった中性子星の合体の事象の時は、直後に可視光で明るく輝く新星が発見され、またその波長ごとの特性から、本当に重たい元素が生成されている様子が観測されました。しかし、まだたったの1例しか観測には成功していません。まだまだたくさんの観測が必要とされています。   実は、美星天文台もこの追跡観測プログラムに参加しています。追跡観測のときに重要となるのが、新しく出現した星を速やかに探し出すシステムとなりますが、日本国内外の研究機関の十数台の大望遠鏡が撮影した画像は、実は私が美星天文台で開発している画像探査システムを使って新しく出現した星探しを行っています。世界中の天文台で撮った画像は1台のサーバーに集約され、過去に撮影された同じ場所の写真と比較して、新しい星が出現していないかを自動的に探し出します。もちろん美星天文台101cm望遠鏡も、一般の方向けの公開が終わった後に、この観測チームの一員としてこのような最先端の研究観測を実施しています。残念ながらまだ中性子星の合体の現場を観測できてはいませんが、いつかきっとくるその瞬間まで、日夜奮闘していきたいと思います。一般向けの観望会だけでなく、このような研究観測が行われているのが美星天文台の特徴の一つです。これからも美星天文台をどうぞよろしくお願いいたします。 美星天文台 伊藤でした。ご聴講ありがとうございました。

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