PODCAST · business
市場の風を読む
by Morgan Stanley
モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。
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AIと雇用:データと歴史が示すこと
弊社グローバル・チーフ・エコノミスト兼マクロ・リサーチ責任者のセス・カーペンターが、AIを労働市場へのショックではなく生産性ブームへと転換できるほど、速いスピードで経済が適応できるのかについてお話します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社グローバル・チーフ・エコノミスト兼マクロ・リサーチ責任者のセス・カーペンターが、AIをめぐる誇張や不安に流されず、労働市場にどのような影響が及ぶのかを問い直します。このエピソードは5月1日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。さて、おそらく皆さんも、AIを使ってメールの下書きを作ったり、文書を要約したり、新しいテーマについて学んだり、旅行の計画を手伝ってもらったりしたことがあるでしょう。この新しい技術によって、特定の作業コストが明らかに下がっています。そして研究を見る限り、AIが大半の人間より上手にこなせる作業は数多く、しかも増えています。ただ、問題はそこではありません。私がいつも耳にするのは、「同じ生産量をより少ない労働力で実現できるなら、何百万人もの人が職を失うに違いない」という声です。ただ、その同じ理屈は、手元にある労働力をフルに使って、経済からもっと多くの生産を引き出せる、という見方にもつながります。この2つの見方の違いこそが、まさに議論の核心にあります。ここまでのところ、データからは慎重ながらも楽観できる余地があると言えます。AIの能力は急速に進歩し、普及も広がっていることが示されている一方で、労働市場の幅広い指標を見ると、驚くほど混乱は小さいままです。経済成長は底堅く推移しています。失業率も急上昇していません。むしろ、最近は小幅に低下しています。求人が急増しているわけでもなく、離職の動きも、AIの影響を受けやすい業種で体系的な弱さが広がっていることを示してはいません。また、生産性に関するデータからは、AIによるプラスの効果が出始めている可能性もうかがえますが、多くの人が恐れるような大規模な雇用の置き換えは見られません。弊社の調査によれば、AIへのエクスポージャーが高い産業ほど、労働生産性の伸びが大きくなっています。その主因は、労働時間の減少ではなく、生産の伸びが速いことです。この違いは私にとって極めて重要です。現時点の証拠を見る限り、企業が人員を減らす以上に、労働者がより多くを生み出しているように見えます。さらに、物理的な制約もあります。AIの導入は、いま建設が進められているインフラに依存しており、今後もしばらくはそうした状況が続くでしょう。2025年から2028年にかけて見込まれるデータセンターおよび関連インフラの設備投資は3兆ドル以上に達しますが、これまでに投入されたのはそのうちおよそ 約4分の1にとどまります。先行きは依然として不透明です。その点は疑いようがありません。私の見立てでは、生産性の最大の押し上げ効果が得られるのは、まだこれから先である可能性が高く、一定の雇用喪失も避けられないでしょう。これまでのイノベーションの波は数十年単位で進みましたが、AIはそれよりもはるかに速く進んでおり、調整期間が圧縮されています。だからこそ、労働市場にとって中心的なリスクが生まれます。つまり、新しい雇用が生まれるよりも早いペースで、雇用が失われてしまうことです。そこで弊社の調査では、目先の影響だけでなく、その先まで視野を広げて見ようとしています。確かに、一部の仕事や作業は混乱の影響を受ける可能性が高いでしょう。しかし、生産性の向上は所得の増加も意味し得ます。資産の増加にもつながります。所得や資産が増えれば支出も増え、それが回り回って経済をより速く回すことになります。企業の内部でも、新しい作業や新しい役割が生まれ、職を失った労働者が別の仕事に移れる受け皿ができる可能性があります。仮に雇用の伸びがしばらく鈍り、その結果としてインフレには下押し圧力が、失業率には恐らく押し上げ圧力がかかるとしても、政策当局がただ傍観するだけだとは、私はあまり考えていません。中央銀行は、景気を刺激して完全雇用に近づけようとすることで対応できます。これは経済学で「一般均衡」と呼ばれる考え方です。方程式の片側だけを見ることはできません。システム全体として考える必要があります。そして、仮に金融政策の余地が尽きたとしても、財政政策の担い手が同様に出番を迎えることもあり得ます。失業給付のような自動安定化装置に加え、狙いを定めた政府の施策によって、経済を完全雇用へ押し戻す別の手段もあります。ですから、より大きなポイントはこうです。AIには、労働市場に一定の混乱をもたらす可能性が確かにあります。しかし同時に、経済には完全雇用へ引き戻すための仕組みや手段が、さまざまに備わっています。こうした緩衝材があることで、AIによって失業率が上昇するとしても、その上昇幅はおそらくより小さく、期間も短く、管理もしやすいものになるはずです。少なくとも今後数年間は、私が目にしてきた一部の初期分析が示唆するほど深刻にはならないと考えています。AIが労働市場にもたらす影響は、あらかじめ決まっているわけではありません。議論の焦点は、ほぼ間違いなく「スピード」に行き着きます。経済の適応能力と比べて、AIの導入はどれだけ速いのか。歴史が示すのは、最終的には生産性が勝つ、ということです。経済規模は拡大し、人々は雇用を維持します。一方で歴史は、恩恵が誰にでも等しく及ぶわけではないことも教えてくれます。そしてより重要なのは、すべての移行が滑らかに進むわけではない、という点です。では、それは何を意味するのでしょうか。手放しで楽観してよいのでしょうか。決してそうではありません。さしあたり、初期の証拠は安心材料ではありますが、物語はまだ書き進められている最中です。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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決算シーズンを支配する指標
設備投資は通常、企業が将来に向けてどのような布石を打っているかを示すシグナルです。弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、この指標が投資家から一段と注目されている理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、AI関連の設備投資がいま、資産クラスを問わず決算シーズンにおける最重要指標の一つへと急速に浮上している理由を語ります。このエピソードは4月30日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。今回のエピソードは、皆さまが耳にする頃にはすでに内容がすでに機を逸している可能性があるという意味でリスクがあると言えるかもしれません。ただし、最先端技術への過去最高水準の設備投資を検討するにはいい機会と言えるでしょう。現在、決算発表はピークにあり、世界最大級の4社、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、メタは4月29日に決算を発表しました。これら4社の時価総額を合計すると、12兆ドル近くになります。やはり従来通り、決算シーズンに焦点となるのは利益ですが、別の勘定科目の重要性が急速に高まっています。AIモデルを構築し稼働させるために必要となる、半導体チップ、電力・冷却、そして接続といった、AIインフラへの設備投資が急増しているのです。先日決算を発表した企業は、このトレンドの最前線にいます。こうした支出でまず目を引くのは、単純にその規模です。米国の主要ハイパースケーラー全体で今年だけでも、6,000億ドルを上回ると弊社は推定しています。分かりやすく例えると、一握りの米国ハイテク企業の今年の設備投資額が、S&P500を構成する非テクノロジー企業全てが2025年に投じた設備投資額にほぼ匹敵する見通しである、ということです。さらに、支出規模が大きいだけではなく、加速しています。弊社が2026年向けに予測している、6,000億ドル超という支出額についても、1年前の時点では、その半分程度だと考えていました。しかも当時ですら、弊社の予想はコンセンサス予想を大きく上回っていました。米国企業はAIの機会を捉えようとする中で、支出見通しを繰り返し上方修正してきました。弊社は、この流れが続くとみています。こうした米国ハイパースケーラーの設備投資は、2028年までに、年率換算で1兆ドルに到達する可能性があると弊社の担当アナリストは予想しています。つまり、これらの数字がどれほど大きく見えたとしても、設備投資のストーリーの多くは、まだこれから先にあるということです。こうした投資は、最近のものも、将来のものも、大きな影響を及ぼすと予想されます。第一に、ある企業の支出は別の企業の売上高であり、株式市場でここ最近勝ち組となっている銘柄の多くは、この歴史的な設備増強と直結しています。本収録時点で、米国の半導体関連株は今月だけで30%超上昇しています。第二に、こうした米国の大手テック企業は潤沢な資金力を有しているとはいえ、これほどの規模の支出となると、依然として多額の借り入れが必要になります。弊社のクレジット戦略チームは、今年の社債発行額が過去最高となり、そのかなりの部分を米国のハイテク企業の借入れが占めると予想しています。そして今のところ、その通りの展開になっています。第1四半期は、米国投資適格債の発行額が過去最大となりました。こうした状況を踏まえ、足元の企業決算と、株式に比べてクレジットにとってネガティブな方向に偏っているように見えるジレンマに話を戻します。これらの企業が設備投資計画に引き続き自信を示すか、または予想をさらに引き上げるようであれば、AI関連の供給企業や株式市場全体を下支えする可能性があります。しかし一方で、より多くの借り入れ需要を社債市場が吸収しなければならないことを意味するため、クレジットにとってはマイナス材料です。先日の決算結果は、確かにこのトレンドが続くことを示唆しています。一方で、設備投資が下方修正されれば、最近の市場の強さとリスク選好を支えてきた重要な柱が揺らぎかねず、それに関連してクレジット・スプレッドが拡大する可能性があります。短期的に、リスク・リワードについては、住宅ローン担保証券など、債券の他の分野の方が良好に見えます。4月29日の決算発表の影響が、FRBに及ぶ可能性もあります。先週もお話しした通り、次期FRB議長の候補者であるケビン・ウォーシュ氏は、大規模な投資が生産性を押し上げ、インフレ率を押し下げ、その結果として低い金利を正当化し得ると考えています。ですから、これらの大規模な支出を行なう企業が何をするのか、そして将来にどれほどの自信を持っているのか、その支出が最終的に何をもたらし得るのか―そうしたことの意味合いは、金融政策のストーリーにまで広がる可能性があります。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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AIの次なる大きな飛躍
AI開発の次の段階は、これまで私たちが見てきたものとはまったく違う姿になるかもしれません。テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードが、AIの飛躍的進歩の加速と、それを牽引する要因を読み解きます。市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードは、テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードを迎え、AI開発が飛躍的に加速して次の段階へ進むことで、これまで私たちが見てきたものとは大きく異なる姿になりうるという点についてお話しします。スティーブンの見解は、弊社米州スペシャルティ・セールス責任者であり、テクノロジー・メディア・通信業界スペシャリストでもあるトム・ウィグとの対談を編集したものです。この対談は4月28日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。まず、フロンティア・モデルに関する強気ケースと、その意味合いを説明します。AIの改善が非線形のスピードで進むことに弊社は強い関心を持っています。私もそれを隠すつもりはありません。これは、あらゆる産業、あらゆるビジネスモデルに影響し得るという意味で、私が思いつく限りでも実に多くの銘柄に対して、最も重要な影響を与えます。ですから、弊社が以前からお伝えしているように、過去数年を振り返ると、これらのLLMの学習に使われる計算資源の量と能力との関係には、極めて明確なスケーリング則があります。その法則を大まかに言うと、学習に使う計算資源を10倍にすると、モデルの能力は2倍になる、というものです。立ち止まって、この点をよく考えてみてください。良い意味で、これからこれまでとは異なる局面に入っていくと思います。多くの産業で、これまで過小評価されてきたさまざまな能力が見えてくるでしょう。したがって、この「ディスラプション(破壊的変化)」の議論は広がっていくと思いますが、投資家には、その概念をどう扱うか、より丁寧に考えることが求められます。つまり、あらゆるものが成功するというわけではありません。AIが破壊的に変えてしまうビジネスもあるからです。実際、これはある意味で健全だと思います。投資家が、個々のビジネスモデルをしっかり見て、どれがAIによって破壊的影響を受けるのか、どれが支えられ、後押しされるのか、どれが影響を受けにくいのかを評価せざるを得なくなるからです。実際、影響を受けないビジネスモデルも存在します。ただし、基本的には、今後、春から夏にかけて、複数のモデルが登場し、それらは、経済のより大きな割合の業務を、より高い精度で、しかも極めて低いコストでこなせるようになると弊社は予想しています。その影響は甚大です。極めて多くの産業に影響すると予想されます。これは、AIインフラ関連銘柄にとって、良い流れだと思います。より多くの知能を世界に普及させることの重要性が示されるからです。これは2026年に実現すると私は考えています。ただし、この点について詳しく説明させてください。モデルの能力があまりにも急速に進化しているため、平均的な企業ユーザーはまだ追いついていません。ギャップがあります。ただし、ギャップは急速に縮小すると予想され、研究開発を行うラボ側の売上高の伸びが加速する兆しも見えます。ですから、これは良い兆候です。一方で、導入の早い層を見ていると、AIの能力を本当に理解している導入企業は、その経済的なメリットを急速に実感し始めています。例えば、私には、何年も前にソフトウェア会社を創業した親友がいます。彼の会社のプログラマーは、先月一杯でコードを書くのをやめました。もう書く必要がなくなったのです。この効率化は彼の事業に計り知れないメリットをもたらしました。それでも本人は、これはまだ序の口とだと感じています。彼は私が知る限りトップクラスの技術力の持ち主で、その分野の博士号を2つ持っています。この上なく優秀な人です。つまり、現在の私たちは、ほぼ2つの世界に生きているような状態です。導入の早い層が「何が可能か」を示すでしょう。一方で、企業全体の平均的な活用が広がるには、まだ時間がかかるでしょう。ただし、目に見える経済的な効果があまりにも大きいので、市場は早期の導入者の成果に反応して行くと思います。それから現場のインフラ面で見られることをお話しすると、電力業界にいる知人たちによれば、数カ月前に、AI関係者の「必要なインフラの確保」に対する切迫感が一段と強まったと感じたそうです。したがって、彼らは計算資源に対する需要の爆発的な拡大を予想していたわけです。OpenRadarによると、トークンの週間利用量は直近2カ月で、200%前後の急増を遂げています。したがって、こうした動きは確かに進行中であると思います。事態は急速に進展しています。今後は、どの業界にも、先行して導入した企業がそのメリットを示した「道しるべ」が現れてくるでしょう。それだけでも、強気になり始めるには十分と考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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株式市場は勢いを持続できるか
米国の主な株価指数がここ数週間で急反発しています。強気相場の継続を下支えする可能性のあるファンダメンタルズについて、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、株価がこれほど上昇した後でも強気な見方を維持している理由についてお話しします。このエピソードは4月27日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。テクニカルな観点から見るなら、米国株式市場は史上最大級の劇的な反発を経験したばかりだと言えるでしょう。何しろ、売られすぎの領域から買われすぎの領域へ、わずか12日間で駆け上がっているのです。いろいろな方々とお話しましたが、この動きの速さから当面の値動きが心配だとおっしゃる方もおられました。ですが、これはいつものことです。相場というものは、ひとたび動くと決めたら誰のことも待たずに動きます。弊社が見る限り、この動きは去年 昨年と似ているように思われます。1年前には多くの投資家が、関税率引き上げの影響について考えを巡らせていましたが、今はそのときと同じように、コモディティ価格の上昇がインフレに及ぼすインパクトについて頭を悩ませています。たしかに、多くの企業が今後、川下に及ぶインパクトを一足遅れて感じることになるでしょう。ですが弊社では、株価指数や多くの業種はそうした懸念によるダメージをすでに十分受けたとみています。言い換えれば、株式市場は単にリスクを見越しただけでなく、株価に織り込んだのです。まず、企業業績の見通しがかなり改善しています。向こう12ヵ月の増益率見通しは、1年前にはわずか9%でしたが、足元では25%に近づいています。また、成長するのは一握りの銘柄だけだと多くの評論家がコメントしているのをいまだに耳にします。大型株の比重が大きいS&P500種株価指数については、数学的にはそれももっともな指摘でしょう。ですがそれでは、予想増益率のメジアン(中央値)や小型株の予想増益率も2桁の領域にしっかり入っていることが認識されないことになります。この調子は、景気がローリング・リセッションを経験していた3~4年間のそれとはかなり異なっています。また、弊社が1年前に提唱したローリング・リカバリー拡大説を裏付けてもいます。足元の第1四半期決算発表シーズンにおいて、1株利益が市場予想を上回った比率を指す「上振れ率」は、全体でみれば今のところ10%に達しています。これは長期平均の2倍にあたる値です。それ以上に重要なのは、第2四半期と向こう12ヵ月間の会社側ガイダンスがさらに2~3%引き上げられていることです。利益の上振れ率とガイダンスのほかにも、弊社では設備投資のガイダンス、そして価格決定力を示唆する現象を注視しています。弊社は2026年に入るにあたり、今年は3つの追い風を受けて設備投資サイクルが勢いづくだろうと考えていました。1つ目は好調な利益とキャッシュフローです。これらは設備投資と相関関係にあることが多いためです。2つ目はBBB(大きくて美しい法案)による税制優遇。3つ目はAIの拡大と製造業のリショアリングを受けた力強い需要です。この面においては、弊社の見解を支持する兆候がすでに見られます。設備投資額伸び率のメジアンはほぼ10%に達していますし、弊社のファクター分析も、高水準の投資を行う銘柄に市場が報いていることを示し続けています。5月、6月と時間が経過してもこうしたトレンドが継続していくことが重要です。ハイパースケーラーの決算発表が予定されている今週などは、特にそうです。ポイントはもうひとつあります。イラン紛争の悪影響で川下部門のコストが増大しうることから、弊社では企業の価格決定力と売上高の耐久性が維持されているかを確かめたいと考えています。これらについても、指標は今のところ、弊社の見方を裏付けています。たとえばS&P500指数の売上高サプライズは平均を大きく上回り、2%近くに達しています。最後になりますが、以前のポッドキャストでも指摘しましたように、市場が最後に乗り越えるべきハードルのひとつに、米連邦準備制度理事会(FRB)のスタンスが先日タカ派に転じたことが挙げられます。これは石油価格の上昇と、リーダーがジェイ・パウエル氏からケビン・ウォーシュ氏に代わることを受けたものです。ケビン・ウォーシュ氏は先週、議会上院の指名公聴会に臨みました。そこでは、インフレのリスクが解消されていないことを指摘し、早期の利下げにいくらか慎重な姿勢を見せていました。また、FRBは昔から自らのバランスシートを用いて市場や景気に介入することを厭わないが、その介入が積極的すぎるという、定評ある批判も繰り返しました。FRB議長が交代するときには、市場の側に一定の学習期間が必要になるのが通例です。新議長の決意を試したり、コミュニケーション・スタイルの解釈の仕方を理解したりする期間のことです。今回もその点に変わりはないはずですし、短期的には、債券市場のボラティリティが短期間ながら急上昇したり資金市場にストレスが加わったりすることで、株式相場がいくらか調整する場合があるかもしれません。私自身は、財務省もFRBも最終的にはこうしたリスクを管理できるだろうし、強気相場は維持されるだろうとみています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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ウォーシュ氏のFRB改革計画
トランプ大統領が次期FRB議長に指名したケビン・ウォーシュ氏が、4月21日に上院で証言しました。弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、2時間半にわたる証言の重要なポイントを解説します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードは、弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツがお届けします。次期FRB議長候補について、まずは全体像を見ていきます。このエピソードは4月24日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。金融市場が一度に複数のストーリーを追うことに苦労する場面は少なくありません。今回は、まさにその限界にさしかかっています。一方では、イランをめぐる情勢によって、世界のエネルギー市場で歴史的な混乱が続いています。もう一方では、企業の積極姿勢や活動の兆しから、この混乱が収束すれば、さらに大きな景気拡大につながる可能性が示唆されています。M&A、設備投資、融資の伸び、そして利益成長はいずれも力強く、加速しています。そうした状況に、第三のストーリーとしてFRBが加わります。実際、イラン情勢も投資ブームも、中央銀行がこうした要因にどう反応すべきかという現実的な問いを投げかけています。例えば、原油価格がさらに急騰した場合、中央銀行は、その後に起こり得るインフレに対抗するために利上げすべきでしょうか。それとも、原油高が景気を押し下げる可能性があるため、利下げすべきでしょうか。では、企業の積極姿勢についてはどうでしょう。企業の攻めの姿勢が強まる中で、FRBは市場の熱気を冷ますために利上げをして、景気が一段と過熱するのを避けるべきでしょうか。あるいは、投資が供給の拡大につながり、実際には物価を押し下げ、利下げを正当化するかもしれません。こうした問いはFRB、とりわけ、トランプ大統領から次期FRB議長に指名されたケビン・ウォーシュ氏に重くのしかかることになります。今週、議長就任に向けた承認手続きの一環としてウォーシュ氏は上院で証言し、同氏の現在の考えについて、これまでで最も詳しい洞察が提供されました。特に印象的だった点は、二つあります。第一に、ウォーシュ氏は、AIとテクノロジーへの歴史的な投資ブームが、生産性を押し上げる可能性が高いと考えています。他の条件が同じなら、生産性が上がれば、同じ人数の労働者で、より多くの財やサービスを供給できることになり、供給が増える分、相対的に物価は低くなり、インフレも抑えられます。投資による生産性向上への信頼こそが、足元のインフレ率が高くとも、利下げが可能と考える根拠になっています。第二に、ウォーシュ氏は、バランスシートの過度の拡大から、コロナ禍後のインフレ抑制策の遅れまで、FRBが「道を見失った」と述べて批判しました。また、インフレ予測の手法、資産の運用管理、そして政策コミュニケーションのあり方などを含む、大幅な改革案を示しました。ただし、次期FRB議長が直面する課題としては、経済面と同じくらい、人的側面も重要になるでしょう。FRBの意思決定は多数決で行われます。ウォーシュ氏は、テクノロジー分野で進む歴史的な投資サイクルがインフレを押し下げるという点に強い確信を持っているかもしれませんが、足元のインフレ指標がやや高めの局面で、他のメンバーもその見解に納得するでしょうか。さらに、ここ数年のFRBの対応を批判したことは、当時の政策運営に関わっていた同僚の支持を得るうえで、障害になるのでしょうか。それとも、新風を吹き込み、FRBが新たに出直すチャンスにつながるとして歓迎されるのでしょうか。交代のタイミングが不透明であること、そして政策が依然として委員会次第であることを踏まえると、目先は市場が引き続き他の要因に注目するなか、FRBの政策も今のところは比較的小幅な変更にとどまる可能性が高いと弊社は見ています。ただし、引き続き注視する価値は十分にあります。1979年以降、米国の中央銀行を率いるこの重要な役職を務めたのは、わずか5人です。まもなく6人目が誕生するかもしれません。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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投資テーマの交差が生む、市場をアウトパフォームする機会
弊社テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードが、2026年の主要な投資テーマがこれまで以上に相互につながり合い、投資リターンを創出している状況についてお話しします。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今日のエピソードでは、弊社テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードが登場します。弊社が示した10の大きなテーマ予測がどのように実現し、世界の市場を動かしているのかを解説します。このエピソードは4月20日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。1月に弊社は、AIとテクノロジーの普及、エネルギーの未来、多極化する世界、そして社会の変化という4つの重要なテーマを提示しました。さらに、2026年を形作る力について、具体的に10のテーマ予測も示しました。驚くべきことに、この短い期間のうちに環境が実に急速に変わり、これらのトレンドは極めて大きな存在感を持つようになりました。さらに際立つのは、こうした巨大な長期トレンドが1つに収束しようとしていることです。AIは、コンピューティング能力と電力に対するかつてない需要を生み出しています。エネルギーは各国にとって戦略上の優先課題になりつつあります。そして地政学は、その両方へのアクセスを左右しています。では、最も重要な進展から始めましょう。AIの加速です。大規模言語モデルの開発が大きく前進することは想定していましたが、実際に起きているのは能力が劇的に飛躍する「ステップチェンジ」です。これが、コンピューティング能力に対する需要の異例の急拡大を牽引しています。世界のAI利用は週次ベースで急増しています。弊社は1週間に使われるトークン数で利用状況を測定しています。トークンは、テキストの最小単位を表すもので、コンピューティング需要を測る一般的な指標です。そのトークン利用量は、1月上旬以降、およそ約250%増え、1週間当たり6兆4,000億トークンから22兆7,000億トークンへと拡大しました。その結果、コンピューティング需要が供給を上回るようになりました。これは2026年を代表する投資ストーリーの1つで、弊社はこの投資機会の周辺に、アルファ創出の余地が多くあると見ています。同時に、AIは労働市場も作り変えています。弊社の推計によれば、AIによる自動化または能力拡張が全職種の90%に影響を及ぼすと見られます。つまり、ほぼすべての仕事が何らかの影響を受けるということです。ただし、その影響は「0か1か」といった単純なものではありません。そこで弊社は最近、AI導入の影響が最も大きいと考えられる5つのセクターについて、雇用への影響を評価しました。全体としては雇用が4%減ると予想され、その内訳は、職務そのものの廃止が11%、補充されないポジションが12%と見られる一方で、新規採用が18%あり、一部が相殺されます。つまり本質的には「変革」です。AIは、仕事の進め方を変え、単に雇用を代替するのではなく、役割そのものを再構築しています。しかし、AIは何もないところでは作動しません。エネルギーを必要とします。これが1月以降の2つ目の大きな変化です。弊社は現在、世界のデータセンターの電力需要が2028年までにおよそ約130ギガワット増える可能性があると見ています。さらに米国では、その成長を支えるのに必要な電力供給能力が10~20%不足する恐れがあります。これが、「エネルギーの未来」が極めて中心的なテーマである理由です。AIの成長は、利用可能なエネルギーの量、コスト、インフラに直結しており、加えて各国の政策との結びつきが強まっています。そこで、三つ目の重要な展開が、地政学です。弊社もイランの紛争は想定していませんでしたが、供給の途絶が世界のエネルギーシステム全体に波及するなど、エネルギー市場に大きな影響を与えています。さらに視野を広げると、各国が自給自足を志向する動きが世界的に強まっています。これは、エネルギー、重要鉱物、テクノロジーといった分野で、今後何年にもわたり大きな推進力になるでしょう。これは、各国が主要な経済的投入要素の支配を優先する「多極化する世界」という弊社が提示したテーマとも明確に一致します。このシフトは、今年だけでなく、その先も長く市場を動かす主要な要因になる見込みです。こうした大きな構造的な力は、すでにパフォーマンスにも表れています。弊社が主要テーマに沿って構築したカテゴリーは、2025年に平均で38%上昇し、S&P500を27%ポイント アウトパフォームしました。2026年も年初来で、12%ポイント アウトパフォームしています。最も堅調な領域は、まさにこうした力学を反映しています。すなわち、AIインフラ、エネルギー安全保障、防衛、ヘルスケア、そしてヒューマノイド・ロボティクスのような新興分野です。では、弊社の予測を改めて見直して得られる教訓は何でしょうか。2026年に起きている最大の変化は、それぞれが単独で進むのではなく、主要テーマが交差する場所で生まれているという点です。AI、エネルギー、地政学は、もはや別々のストーリーではありません。いまや相互に深く結びついた力として、世界経済を形作っています。そして、その交差点を理解することが、今後何年にもわたって市場を理解し、アルファを生み出す鍵になるでしょう。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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GLP-1薬成長の真の原動力
体重管理療法がこのところ急速に取り入れられていることは、医療はもとより消費者行動、さらにはグローバル市場にも影響を及ぼす可能性があります。弊社米国医薬品・バイオテクノロジー責任者のテレンス・フリンがご説明します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は米国医薬品・バイオテクノロジー責任者のテレンス・フリンが、肥満症治療薬の次の成長局面、「GLP-1アンロック」すなわちGLP-1の解放についてお話しします。このエピソードは、4月17日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。医療の分野にはイノベーション、政策、そして患者の需要のすべてがひとつに収束する時期があります。そして収束するときのインパクトは医薬品にとどまらず、遠く離れたほかの分野にも及ぶことがあります。弊社では、肥満症治療薬「GLP-1薬」を用いる治療法がそのような時期に入っているとみています。弊社の推計によれば、肥満・糖尿病患者向けの肥満症治療薬の市場はピーク時で1900億ドル前後に達する可能性があります。以前の予想よりもかなり大きな数字ですが、これは市場が導入初期からより幅広くスケーラブルな拡大が見込める局面にシフトしたことの反映です。GLP-1薬はここ2、3年で注目度が著しく高まっているものの、実際の普及率はまだ比較的低いのが実情です。治療に適した肥満症患者のうち、実際にGLP-1薬で今日治療を受けている患者の割合は、米国ではおよそ6%にすぎず、米国外ではわずか2%にとどまっています。したがって、これまでの成長は大幅ではあるものの、実はまだ初期段階なのです。だからこそ、今は非常に重要な時期だと言えます。では、導入の次の局面を後押しする5つの原動力を見ていきましょう。1番目は経口薬への移行です。体重管理療法は昔から注射薬で行われており、それが普及の制約になっています。しかし、飲み薬という新たな選択肢により、状況は変わりつつあります。特に、経口GLP-1薬利用者の80%弱は経口薬に初めて切り替えた患者であり、市場が今後実際に拡大してゆくことが示唆されます。2番目の原動力は、メディケアを通じた利用機会の拡大です。米国の新たな枠組みでは、肥満症治療薬を利用できる機会が数千万人に上る高齢の患者に開かれます。自己負担額は月当たり50ドル前後にとどまる可能性があるようです。これは重大な変化です。肥満症治療薬の利用が大幅に拡大するかもしれません。3番目は、薬価の引き下げと保険適用の拡大です。これらはすでに進行中で、患者の自己負担額の平均は 去年昨年の170ドルから120ドル前後に低下しています。また同時に、肥満症治療費の雇用主負担の割合も、去年 昨年の50%弱から およそ約65%に2027年までに引き上げられる見通しです。4番目はグローバルな利用拡大です。米国外では、利用量は価格に比較的敏感なのですが、市場としての機会は巨大です。コストが下がり、かつ保険で利用しやすくなるにつれ、とりわけ中国やブラジルなどで導入が加速すると思われます、5つ目の理由は、減量を超越するイノベーションです。今日では、体重管理療法を心血管疾患や腎臓病、さらには炎症や神経障害といったほかの病気や体調不良の改善に利用する研究がますます行われるようになっています。肥満症治療薬で対応可能な市場が、今後さらに拡大する可能性があるのです。では、GLP-1薬市場はどこまで拡大する可能性があるのでしょうか。世界全体でいえば、GLP-1薬での治療に適した患者の数はおよそ13億人だと弊社では推計しています。そして弊社のシナリオの基本ケースでは、このうちのおよそ12%が2035年までに治療を受けるとともに、米国での普及率はおよそ約30%になると想定しています。するとこのレベルにおいてさえ、市場規模は1900億ドルになると試算されます。強気ケースでは、 およそ 約2400億ドルに達する可能性もあります。しかし、この話は医療だけでは終わりません。弊社推計によれば、GLP-1薬の導入は米国のカロリー消費を2035年までに[6] およそ約1.6%減らす可能性があります。わずかな比率に聞こえるかもしれませんが、数量で考えれば大変な影響があります。消費者行動はもとより、食品、小売り、医療サービスといった産業にまで波及することになるでしょう。そうです。これが「GLP-1アンロック」です。私たちは今、経口薬、利用機会の拡大、継続中のイノベーションという3つの原動力により、ひとつの大きな転換点に接近しつつあります。治療に適した患者のうち、実際に治療を受けている人の割合はまだ小さく、成長の余地はかなりあります。本質的には、これは慢性疾患の治療法とそれによる市場の再編という、長期的な構造変化なのです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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市場が注目するハンガリーの政治的変化
弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、ハンガリーの選挙におけるペーテル・マジャール氏の勝利が、EUとの関係改善および、同国資産のリスク・プレミアム低下をもたらす可能性について解説します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードは、債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが登場します。最近ハンガリーで行われた選挙が市場に与え得る影響についての考察をお話します。このエピソードは、4月16日にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ハンガリーの人口は、ニュージャージー州とほぼ同じくらいです。にもかかわらず、先週末行われた同国の選挙は全世界の注目を集めました。選挙では、2010年から首相を務めてきたビクトル・オルバン氏の政党と、かつての与党関係者からライバルへと転じたペーテル・マジャール氏が争いました。この投票は世界的に重要視され、そしてハンガリーの将来と欧州における立ち位置を問う国民投票とも見なされました。このため、事態を極めて重く見た米国の副大統領がオルバン氏の応援に駆けつけたほどでした。争点の一つは、ハンガリーと、欧州の政治・経済のより広い枠組みとの関係でした。ハンガリーは2004年から欧州連合に加盟していますが、オルバン政権下ではしばしばEUと対立してきました。これは欧州全体に影響します。というのも、制裁の発動、防衛政策、加盟国拡大といった重要な手続きの多くは加盟国の全ての承認が必要だからです。ハンガリーに限らず、いずれの一国でも反対票があれば、極めて大きな混乱を招く可能性があります。今月、欧州委員会の委員長は、投票制度の変更を進め、人口規模との連動を強める案を提起しました。ただし、ここには一つ問題があります。この変更自体も、全加盟国の賛成が必要なのです。では選挙の話に戻りましょう。結果は野党の圧勝で、ペーテル・マジャール氏の政党は国民議会199議席のうち138議席を獲得しました。2010年以来初となる今回の政権交代と、議席数の大差は、欧州にとって地政学的に重要な影響を及ぼすと予想されます。ただし、このポッドキャストは市場に焦点を絞ったポッドキャストですので、市場に注目して見ていきます。まず、ハンガリーで新たな政権が誕生すれば、EUとの関係が改善する可能性があります。そうなれば資金の流入につながる可能性があります。新政権の政策目標の一つである、凍結されているEU復興・強靭化基金の拠出再開が実現すれば、ハンガリーの潜在GDP成長率は1.0~1.5%程度高まる可能性があると弊社エコノミストは試算しています。さらに新政権は、単一通貨ユーロを導入する計画も提案しています。これら2つの展開は、ハンガリー資産に織り込まれているリスク・プレミアムの低下に寄与する可能性があります。投票後、ハンガリーの金利は低下し、通貨は上昇しましたが、弊社ストラテジストは、どちらもさらに動く余地があるとみており、金利はさらに0.5~1.0%の低下、通貨はさらに2~4%の上昇の余地があると考えています。また、ハンガリー株式市場は世界全体から見るとかなり小規模ですが、弊社ストラテジストはこの市場を選好しており、オーバーウェイトとしています。ハンガリーの今回の選挙は、世界の注目を集めました。まだ未知数の部分が多く残っていますが、欧州の他の国々との関係がより円滑になる見通しは、ハンガリーの資産にとっても、EU全体にとってもプラス材料です。ただし、エネルギーを巡る不確実性、相対的な企業利益、相対的な金融政策といった別の理由から、弊社は引き続き、欧州株や欧州国債よりも、米国株と米国債を選好しています。それでも、欧州の中長期的に注視すべき重要なストーリーという点は、間違いないと考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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市場反発の証拠が積み上がっている
弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、先行き不透明感が続くなかでも、投資家は株式市場の回復に備えた体勢で臨むべきだと考える理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今日のエピソードは、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがお送りします。株式投資家は、ときには、ニュースの見出しからいったん目を離す必要がある理由についてお話しします。このエピソードは4月13日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。今日は、いま多くの投資家が悩んでいると私が考えること、つまり「タイミング」についてお話ししたいと思います。私が話をした多くの人は、今も市場が脆弱だと感じています。地政学的要因、中央銀行、原油…何もかもが不透明です。しかし、市場の実際のふるまい方、すなわち、市場から受ける感触ではなく、市場が物語るものを見ると、まったく違う結論に至ります。今回の調整局面は、多くの人が考えている以上に、進行しています。実際、この2週間ほどで、S&P500は大きく反発してきました。弊社が注目してきた重要な6,300~6,500のレンジを維持したあと、安値から およそ 約7%上昇しています。私には、これが偶然とは思えません。市場が危険な状態が去ったことを知らせる前に、底を固めているのです。視野を広げて見ると、私の大局的な見方は変わっていません。2022年から2025年にかけて続いたローリング・リセッションが終わったあと、去年昨年4月に始まった新たな強気相場が続いているとの私の考えに変わりはありません。今回の調整は、そのサイクルの一部であって、終わりではありません。そして重要なことに、厳しい調整の多くはすでに終わっています。バリュエーションは大幅に圧縮されています。予想ベースのPERは、ピークから底に達するまでにおよそ約18%低下しました。さらに水面下では、半数を超える銘柄が20%以上下落しています。つまり、戦争であれ、プライベートクレジットへの懸念であれ、AIによるディスラプションであれ、多くのリスクは、すでに市場に織り込み済みとなっています。その一方で、企業利益は逆方向に動いています。実績ベースの利益成長率は15%前後、予想利益の成長率は20%を超える水準です。このようにマルチプルが低下する一方で利益が伸びるという組み合わせは、典型的な強気相場における調整局面の振る舞いです。弱気相場ではありません。多くの投資家が現在の環境を読み違えていると私が考える理由がここにあります。これが特に明確であると私が考える分野の一つが、エネルギーです。値動きを見ると、エネルギー株は相対ベースではすでにピークを付けたように見えます。これはしばしば、基礎となるコモディティ、つまりこの場合は原油も、ピークを付けつつあるか、少なくとも安定しつつあることを示すサインです。そして、現在のボラティリティを本当に左右していると私が考える要因、すなわち金利の話になります。現在、株式と利回りが負の相関関係にある環境が復活しています。つまり、金利上昇は再び株価の逆風になっており、インフレを重視する中央銀行の最近のタカ派的なトーンが、金融環境を引き締めています。私が見たところ、これが最後のハードルです。戦争でも、原油でもなく、金融政策です。そして興味深いことに、金融環境の引き締まりは、最終的には中央銀行に政策転換を迫るものでもあります。したがって、今日の不安を生んでいる要因そのものが、明日の安堵感につながる要因となる可能性があります。では、今回の調整が終盤にあるのだとすれば、次の問いは「どうポジションを取るか」です。引き続き「バーベル戦略」であると私は考えます。一方には、金融、資本財、一般消費財といった景気敏感株があります。依然、利益は堅調で、バリュエーションもリセットされています。もう一方には、ハイパースケーラーを筆頭とするクオリティ・グロースがあります。センチメントはすでに大きく冷え込みましたが、ファンダメンタルズは損なわれていません。この組み合わせは、安値からの局面でこれまでうまく機能してきましたし、今後も引き続き理にかなっていると考えます。さらに視野を広げると、もう一つ大きなテーマも進行しています。それは経済のリバランスです。弊社が去年昨年11月に公表した2026年の見通しでも中核的 なテーマとして検討しました。成長が、公的部門から民間部門へシフトしているという、明確な証拠が見え始めています。民間部門の雇用は強まり、設備投資は上向いており、企業は足元の不確実性が構造的なものではなく、一時的なものであるかのように行動しています。つまり、このローリング・リカバリーは、順調に進んでいるのです。同時に、少なくとも短期的には、AIはディスラプションというよりも利益率の追い風として働いています。これは多くの産業で営業レバレッジを後押しします。こうした点はすべて、回復が本物であり、さらに伸びる余地があるという私の見方を補強しています。これら全てを勘案した結論は次のようになります。市場はすでに多くの悪材料を織り込んでいます。バリュエーションを調整し、ポジショニングをリセットし、市場リスクを吸収してきました。残るリスクは政策であり、金利と流動性の制限的な状態がどれだけ長く続くかです。しかし、市場は完全にリスクが払拭されるのを待ちません。先回りして動きます。そこで、私からのアドバイスです。心配材料がさらに出てくる局面があれば、それを活用して、明白になる前に資金を投じるのです。市場は誰も待ってくれないからです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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市場が発する矛盾したシグナルを理解する
エネルギーの世界市場が歴史的な混乱に見舞われているにもかかわらず、株式市場は底堅い展開が続いています。これについて弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツは、米国市場は当面堅調な歩みを示すかもしれないとみています。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、市場が発する矛盾したシグナルの解読を試みます。このエピソードは4月10日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ある面で、事態は依然かなり深刻です。世界はまだ、誇張でもなんでもなく、歴史上最悪のグローバル・エネルギー市場の混乱のさなかにあります。世界の石油生産量の6分の1がホルムズ海峡の奥に閉じ込められていますし、近いうちに手元に届く石油の現物の価格、いわゆる「デイテッド・ブレント」はバレル当たり130ドルを超えています。今年の年初から2倍以上に跳ね上がった計算です。しかし、市場はどうでしょうか。そう、米国の株式と債券の市場は年初とあまり変わらない水準にあります。変動幅は大きいものの、結局は元に戻るという展開なのです。相場をたまにしかチェックしない投資家なら、この週末にポートフォリオをざっと見て「2026年は本当に退屈な相場だな」と考え、テレビでマスターズ・トーナメントの続きを楽しんでも許されるかもしれません。これはどう辻褄をあわせればよいのでしょうか。株式市場にとっては、2つの動きが重要です。第1に、石油価格の高騰にもかかわらず企業の、特に米国企業の業績見通しは引き上げられ続けています。あくまで見通しですので、外れるかもしれません。ですが、特にテクノロジー関連の投資が継続していることを背景に、アナリストは少しずつ楽観的になっています。また、株式投資では基本的に将来が問題になります。足元の株価は今日から未来までの、そうですね、これから未来永劫獲得される利益のすべてを現在価値に引き直した値を反映しているはずです。そのため数学的には、長期的な見通しが上向きであれば、向こう3ヵ月間の見通しが、たとえばエネルギー市場の混乱のせいで下向きであっても、それほど問題にはなりません――あくまで数学的にはですが。足元の債券市場はこれとは対照的で、相反する2つの非常に強い力に挟まれてしまっています。関税と石油を原因とするインフレ率の上昇は、債券市場の典型的な悪材料です。ところが経済成長が損なわれるリスクが高まれば、債券相場は好調になることが多いのです。したがって、ここでカギになるのは、エネルギー・ショックが長引き、ついには中央銀行が足元で高まっているインフレ率よりもその後の経済成長失速のリスクのほうを重視せざるを得なくなる展開になるかどうかです。2026年は、市場の総合的な指標の変化が小さいにもかかわらず、これまでのところ少しも楽な年ではありません。弊社モルガン・スタンレーのデータからも、3月は株式ヘッジファンドにとって過去10年で2番目に悪い月だったことがうかがえます。そこで、ここではいくぶん謙虚に3つの点に着目してみます。第1に、米国の株式と債券には、今のところは諸外国の株式や債券よりも有利な点があると弊社では考えています。米国企業の増益率は高めです。米国経済はエネルギー市場が変動しても比較的打撃を受けません。そして米国の中央銀行FRBは、経済成長にもっと弱さが出てくれば早めに利下げに踏み切る公算が大きい、と弊社ではみています。第2に、債券市場は最終的には今よりも低い利回りの水準で落ち着くと弊社ではみています。中東の紛争の解決が早まればインフレのリスクは低下するでしょうし、エネルギー市場の混乱が長引けば経済成長の大きな重しになるからです。ある意味で中途半端な現在の金利水準は長続きしないように思われます。第3に、ボラティリティが大きいときでも相対バリュエーションはやはり問題になりますし、興味深いこともまだ見受けられます。たとえばアジア地域のクレジット・スプレッドは、石油価格の高騰から受ける影響の大きさの割には、極めてタイトであるように思われます。そして対照的に、私の同僚マイク・ウィルソンが先日のこのプログラムで述べていたように、大型テクノロジー株は大幅に安くなっており、今では一般消費財・サービスセクターと同様なバリュエーションで売買されています。エネルギーへのエクスポージャーが低く、増益率もざっと3倍であるにもかかわらずです。不確実な週末が再びめぐってきます。しかし、弊社ではこれを切り抜ける試みの一環として、米国市場を選好し、利回りの低下を予想し、かつ相対価値に的を絞り続けようとしています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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原油価格急騰の真のリスク
供給要因によるオイルショックは、まずインフレとして表れます。しかし、モルガン・スタンレーのシニア・グローバルエコノミストのラジーブ・シバルは、投資家が理解すべきは成長、政策、そして市場への二次的な影響であるとして、その理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、弊社シニア・グローバルエコノミスト、ラジーブ・シバルが登場します。オイルショックによる経済的なリスクは、原油価格そのものではなく、その次に何が起きるかである点についてお話しします。このエピソードは4月7日 にドバイにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。原油ショックの影響は、ガソリンスタンドで終わりません。インフレ、成長、中央銀行の政策、そして最終的には市場へと波及していきます。ここ数週間、弊社がお伝えしてきたとおり、今回はこれまでとは状況が違うかもしれません。単なる一時的な価格急騰ではない可能性があるからです。ホルムズ海峡の封鎖は、歴史的にも前例がありません。すでに1か月以上が経過しており、数四半期にわたって続く可能性がある供給ショックの影響に弊社は注目しています。事態は、さらに複雑なものへと発展する可能性があります。足元は、インフレが上昇し、成長が鈍化するという、厄介な組み合わせになっており、しかもその順序は極めて重要です。モルガン・スタンレーでは、世界各地のエコノミストとストラテジストが連携し、原油価格がどのように推移するかについて、幅広いシナリオを検討しました。仮にホルムズ海峡が迅速に再開されれば、原油価格はおそらく比較的すみやかに下落するでしょう。だからといって、原油ショックによる問題がすぐに解消するわけではありません。確かに原油価格そのものは、より早いペースで下落する可能性があります。逆に、完全な封鎖が続き、紛争がさらに激化する場合、原油価格はおそらく、はるかに大幅に上昇するでしょう。原油価格が1バレル125ドルを超える局面になると、通常は需要の破壊が始まります。つまり、価格が高すぎて、人々が原油の消費を減らさざるを得なくなる水準です。その場合、世界経済への影響は、はるかに劇的なものになるでしょう。現在は、その中間のシナリオにあります。原油価格はここ数週間、1バレル100ドルから125ドルの間で推移しており、多くの中央銀行に、疑問や混乱、そしてモデル化の難しさをもたらしています。ここからは、世界の主要地域をいくつか取り上げ、足元で起きていることに各地域がどう反応しているのかを見ていきたいと思います。アジアは少し特殊です。アジアは、中東情勢から最も大きな影響を受ける地域だからです。物理的な量で見ると、中東から出ていく石油・ガスの大半はアジアに向かいます。ただし、アジア諸国の多くには大きな緩衝材となる手段や備蓄があります。さらに財政政策も用いて、原油価格を補助したり、価格変動を抑えることで、消費者が極端なショックを受けないようにしています。その結果として、アジアでは国によって対応が分かれています。どこまで支援を継続すべきかで苦慮している国もあれば、ホルムズ海峡封鎖によって物理的な供給量の確保が必要な国もあります。こうした事情から、中央銀行の政策に「まちまちの影響」を与え、インフレと成長への影響も一様ではありません。物価が速いペースで動き、経済成長も急速に影響を受けている国もあれば、影響が遅れて表われる国もあります。今後数四半期は、こうした強弱まちまちの状況が続くと弊社はみています。ユーロ圏は、インフレの波及が非常に速いという点でアジアとは対照的です。過去の例では、インフレの反応は総合インフレ率だけでなく、コア部分も反応してきました。こうした点を踏まえ、ECBは、インフレ期待がアンカーを失うことを避けるため、近い将来に利上げを行う可能性が高いと示唆しています。現時点ではECBは、成長リスクよりもインフレのペースを重視しています。これは、FRBとは対照的です。米国では実際のところ、原油の供給ショックがコアインフレを押し上げる度合いは、世界の多くの地域ほど大きくありません。総合インフレ率と個人消費には影響が及ぶものの、コア部分のインフレには必ずしも影響が表われるとは限りません。ここで忘れてはならないのは、米国がサービス中心の経済である点です。そのためFRBは、コアインフレへの波及効果が他の諸国よりはるかに小さいことから、供給ショックの影響をある程度「一時的とみなしてその先を見る」とともに、成長を重視する可能性が高くなります。つまりFRBは、米国におけるインフレへの波及という物価のリスクよりも、ガソリン価格の上昇が成長に与えるリスクの方を、より強く意識しています。これは世界の多くの地域とは全く対照的です。ただ、重要なのは、どの国、どの地域でも反応は異なるという点だと思います。原油の供給ショックでは、インフレが先行し、そのあとに成長が続きます。しかし、それが各国の国内経済に波及する経路は大きく異なります。このため、中央銀行も異なる対応が必要となります。さらに、この状況があと2四半期ほど続くようであれば、財政政策の対応も国ごとに異なると予想されます。市場参加者、エコノミスト、そしてストラテジストにとっての課題は、今回のオイルショックがもたらす混乱の規模を正確に見極めることです。現時点で分かっているのは、その期間が「数か月」ではなく「数四半期」に及ぶということです。そして、それ自体が、インフレの上振れリスクよりも、成長の下振れリスクのほうが大きいと弊社が予想する理由でもあります。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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相場調整の終盤に乗る
足元の株式市場反落の終盤におけるリスク、投資家が取るべきポジション、そして次に起こりうること――これらについて弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが考察します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、今回の株価調整の終盤に入るにあたって投資家が行うべきことについてお話しします。このエピソードは4月6日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ここ数ヵ月間、私の見方はずっと変わっていません。端的に言えば、米国は2022年から2025年まで私が呼ぶところの「ローリング・リセッション」にありましたが、現在は去年昨年4月に始まった強気相場に入っていると引き続き考えています。最近はAIによるディスラプション、プライベート・クレジット、そしてロシアとウクライナに加えてイランでも新たに戦争が始まるなど、いろいろな脅威が生じていますが、それにもかかわらず株価の回復傾向に変わりはありません。市場は何も心配していなかったわけではなく、去年昨年秋以降は株価が調整しています。実際、調整はかなり進んでおり、S&P500種株価指数の予想P/E倍率は18%低下しています。これほどの低下は、リセッション(景気後退)やFRBによる金融引き締めサイクルの時期以外ではまれですし、リセッションも引き締めも実現の可能性は低いと私はみています。一方、増益のペースは衰えていません。それどころか、数年ぶりの高いレベルに向かって加速しています。このことは、オイルショックがリセッションに至った過去の事例と異なる主なポイントのひとつです。そして、そのような状況になっていない以上、相場は悪材料をかなり織り込んだのだと私はみています。水面下ではもっと大きなダメージが生じています。株価が直近の高値から20%以上下落している銘柄が過半数を占めているのです。30~40%下がった銘柄も少なくありません。これほどの規模のリセットは、株価調整の初めのほうではなく、終わりのほうで生じるのが普通です。S&P500は先週反発し、私が以前から指摘していた6300~6500の抵抗帯を上方に突き抜けました。この水準を再度試す展開はあり得るでしょうか。もちろん、あり得ます。特に金利が押し上げられたり、地政学リスクが一段と高まったりすれば、その可能性は高いでしょう。しかし、それが重要な意味を持つ下落だとは私は思いません。まだ欠けている要素として、そして私が実際に目にしたいと考えているのは、すなわち、半導体関連やメモリー関連銘柄にとりわけ見られる過密トレードでのリスク回避の動きです。相場の底固めには、この種のポジションのリセットが必要になることがよくあります。そのため、私たちが株価調整の終盤にいるのであれば、次に問われるべきは「どのポジションに身を置くべきか」になります。私の考えでは、重要なのはバランスです。したがって、循環株と高クオリティな成長株を組み合わせたバーベル型のポートフォリオが正しいアプローチになると考えます。循環株の側では、私は金融、一般消費財・サービス、資本財・サービスを選好します。これらのセクターは増益の勢いが引き続き強く、バリュエーションも大幅に低下しています。また、イラン紛争開始前には市場全体をリードしていましたし、米国経済はローリング・リセッションから回復する初期段階にまだとどまっているという弊社の中核的な見方も反映しています。先週発表された雇用統計で民間部門の雇用者数が18万6000人増となり、過去3年で最大級の伸びになったことも、この見方を支持しています。成長株の側では、現時点ではリスク・リワードが非常に優れている銘柄としてハイパースケーラーに私は注目しています。生活必需品株のようなディフェンシブ・セクターとおおむね同じ株価倍率で売買されていながら、利益の伸び率が3倍以上高いのです。同時に、市場の心理とポジションの状態は2022年の弱気相場以降と、すなわち利益の伸び率がマイナスだった時期と同じくらい悪くなっています。では、これから悪化しうるものには何があるでしょうか。株式にとってのメインリスクは、やはり金利と、中央銀行の政策の2点です。戦争ではありません。これはもう、ご承知のとおりです。なぜなら、株価と債券利回りは逆相関関係にあり、金利の上昇は株価のバリュエーションに圧力を加えるというパターンの裏返しにすぎないからです。金利については、米国債10年物利回りで4.5%という水準が引き続き分水嶺のひとつになるでしょう。これを超えて上昇すると、株価のバリュエーションは持続的に反発する前に悪化する可能性がありそうです。さらに、債券市場のボラティリティとFRBによる見通しは金融を引き締めの方向に動かしています。最近では、これが市場のストレスの真の源泉になっています。ただ皮肉なことに、金融の引き締めは、究極的にはFRBやほかの中央銀行がよりハト派的な金融政策転換を行うためのおぜん立てをしていると言えるのです。金融が過度に引き締められた状態になると、FRBは柔軟に対応します。過去数年間を振り返ると、FRBにそのような意識があることを示す証拠がたくさん見つかります。結論を申し上げますと、市場は厳しい局面をすでにかなり乗り越えています。地政学リスク、プライベート・クレジットにまつわる懸念、そして究極的には生産性を向上させるテクノロジー、AIの悪い副作用も織り込んだということです。今は最後のハードルを飛ぼうと、すなわち政策、金利水準、ボラティリティといった困難を乗り越えようとしているところです。ここを切り抜ければ、その後の見通しがぐっと開けてくるだろうと私はみています。ただ、忘れてはなりません。相場は、確実性の台頭を待ってはくれません。常にその先を走っています。投資家にもそのような姿勢が求められます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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強気相場の再開は、見た目より早いかもしれない
株式市場は、地政学的要因や原油、AIを含むさまざまな混乱を、すでに織り込みんでいます。弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、金融政策が過度に引き締められた状態で過度に長期間維持されるのかどうか、という1点に現在、投資家の注目が集まっている理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが登場します。上振れと下振れのバランスが、実は年初と比べて、改善している理由をお話しします。このエピソードは3月10日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。最近、筆者がお話しした方々は、皆さん同じ点に注目しています。イラン情勢、原油価格、そしてもちろん、設備投資、労働市場への影響、そして効率性のいずれについてであれAIです。ただ、市場の値動きを見ていると、私はコンセンサスとは異なる結論に至ります。まず、米国株式市場は、人々が考えているほど経済成長リスクに対して楽観的ではありません。例えばこう考えてみてください。ラッセル3000構成銘柄のうち半分以上が、高値から20%以上下落しています。一方で、S&P500のPERは17%低下しています。これは楽観ではありません。完全な景気後退とは言わないまでも、成長に対する不安があった過去の局面と矛盾しない調整がかなり進行しています。次に、誰にとっても最大の関心事である原油についてお話しします。過去の例を見ると、原油価格の急騰が景気サイクルに終止符を打つ事例は少なくありません。ただし、景気後退が実際に起きたのは、利益成長が減速していたか、あるいは明確にマイナスになっていた局面に限られます。現在は、利益成長が加速しており、およそ14%近くで推移しています。また、予想利益の成長率は20%を上回っています。一方、原油価格の上昇幅を前年比で見ると、景気後退につながった事例で見られた上昇幅のおよそ半分にとどまっています。言い換えると、市場は景気後退を織り込んでいません。その理由は、景気後退の可能性が低いように見えるためです。むしろ弊社では、市場は原油やその他の重要資源をめぐる不透明感が、最終的に解消し、タンカーによる継続的な輸送が再開し、価格が安定するか、または下落するまで続くことを織り込んでいると考えています。私が見たところでは、原油より金利の方が、米国株にとってより大きな重石になっているようです。具体的には、株価と利回りの相関関係が大幅なマイナスに転じています。株式は利回り上昇の動きに対して、過去数年見られなかった極めて敏感な状態になっています。その主な理由は、FRBや各国中央銀行が、最近になって、よりタカ派的な姿勢に転換したことです。その結果、10年物米国債利回りが4.5%という水準に近づいています。この水準では通常、株式のバリュエーションがさらに圧縮されると弊社は見ています。さらに、債券のボラティリティも上昇しています。株式のバリュエーションは、債券のボラティリティに対して常に敏感です。良いニュースとしては、FRBは株式のボラティリティよりも債券のボラティリティにより敏感です。したがって、ここからさらに上昇するなら、FRBがハト派寄りの姿勢へと再び転換する可能性が高いと考えられます。簡単に言うと、目先のより大きなリスクは地政学的な状況ではなく、金利と債券ボラティリティによって金融環境が引き締まることです。皮肉なことに、これは安心材料にもなり得ます。結局のところ、私は依然、この調整局面が終わりに近づいていると考えています。そして、今後6〜12か月について見ると、リスクとリターンのバランスは、年初よりも今の方が良いように見えます。ポジショニングの面でも、興味深い変化がいくつか見えています。ディフェンシブ株と金は、1月初旬から2月末に中東の緊張が高まり始めるまで、力強く上昇していました。しかし、その後は大幅にアンダーパフォームしています。その一方で、最近好調なセクターの一角を占めているのが、より景気敏感な業種です。これは、市場がこうした懸念の先を見越して織り込み、大半の投資家が考えるよりも早く、その先を見る準備ができている可能性があることを示していると思われます。AIについては、依然としてディスラプションに注目が集まっていますが、目先のストーリーは、むしろ効率化と利益率の拡大だと私は考えています。伝統的な雇用循環を引き起こすような需要ショックは見当たりません。そうではなく、企業がAIを使ってコスト構造を適正化し、生産性を高めているのが現状です。結論として、市場は、戦争、原油価格高騰、AI、クレジットリスクを織り込むことで、この調整局面における重労働の多くをすでにこなしています。いま市場が格闘しているのは、各国中央銀行が引き締め過ぎの姿勢を長く続け過ぎるという、誤った金融政策のリスクです。もしそのタカ派的な傾きが和らぎ始めるなら…恐らくそれは債券ボラティリティがさらに上昇した時に、起こると見られます。こうした強気相場の再開は、大半の向きが予想しているよりも早く訪れる可能性が高いと考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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苦境に直面するアジアのエネルギー依存
中東で起きている紛争の影響はアジアのエネルギー、電力、そして食料の各システムにどのように波及しているのか。弊社アジア・エネルギー・アナリストのマヤンク・マヘーシュワーリーが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、インドおよび東南アジアのエネルギー市場を担当する弊社のリサーチ・アナリスト、マヤンク・マヘーシュワーリーが、イランとホルムズ海峡に関係する混乱がどのような過程を経てエネルギー関連の混乱をアジア全域で引き起こしているのかをお話しします。このエピソードは3月23日 にシンガポールにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。インパクトの大きさがわかるように、簡単なファクトから話を始めましょう。石油、液化天然ガス(LNG)、プロパンガスなどのアジアのエネルギーは、およそ 約4分の1が中東から供給されており、その大半がホルムズ海峡という交通の要衝を通ります。この要衝で混乱が生じると、その影響が及ぶ範囲は石油の価格にはとどまりません。アジア全域の発電、工業生産、さらには食料のサプライチェーンまでもが打撃を被ることになります。エネルギーにアクセスできない正真正銘のショックを、アジアは50年以上経験してきませんでした。そのため、今回の事態は極めて重要です。また石油価格がバレル当たり100ドル前後にまで上昇しており、システムのストレスが高まっています。ディーゼル燃料の精製マージンは紛争前の水準の2倍に広がり、ジェット燃料の精製マージンも2倍近くに拡大しました。そして、昔から北海ブレント原油よりも安価であるのが普通のドバイ原油が、今ではバレル当たり20ドル超のプレミアムが乗った状態で取引されています。この種の値動きは、サプライチェーンがひっ迫していることを示しています。アジアは中東に深く依存しています。アジアの石油精製業者は原油の最大80%を中東から調達しており、輸入されるLNGも30~40%が中東産です。インドや中国といった経済大国では、石油需要のおよそ約40~50%がホルムズ海峡経由で満たされています。この海峡は決定的に重要なエネルギー・ハイウェイです。したがって、その流れが滞れば、システム全体の動きが滞ってしまいます。在庫があるためショックは緩和されるように見えるかもしれません。ただ、システムは在庫がなくなるまで待ったりせず、早めに対策を打ち始めます。政府はすでにエネルギーの配給に動き出しており、産業界はLNGと液化石油ガス(LPG)の使用を減らしています。輸出規制により、石油業界の川下部門での燃料生産も制限されています。引き締めはすでに始まっているのです。本当の弱点は石油ではなく天然ガス、特にLNGなのかもしれません。アジアのLNGの大口供給者であるカタールで、インフラが打撃を被っているからです。アジアのLNG消費量は世界全体のおよそ半分にあたり、その最大40%を中東から調達しています。また石油とは異なり、LNGのショックを和らげる仕組みは非常に限られています。その在庫は月単位ではなく、日単位で数えられているほどです。ここでこの話はエネルギーの枠を大きく超えて広がります。年間およそ2500万トンに達する石油化学製品の生産能力と、ざっと1000万トンの肥料の生産能力にも影響が及んでいるのです。ポリマー(高分子)のような主要素材の価格はわずか数週間で15~25%上昇しており、プレミアムはまだ拡大しています。こうした動きは乗用車、電子製品、包装資材、農業資材など日々使用されるさまざまな製品に波及します。基本的なサービスでさえ影響を受けており、アジアの一部では調理用ガスの不足が飲食店を直撃しています。こうした事態には政策当局も対応していますが、取りうる選択肢には限りがあります。これまでに国家備蓄からおよそ1億バレルの原油が放出されました。輸送途中の割高なLNGの確保に動いている国もあります。環境には有害ながらも確実性のある石炭に回帰する国も少なくありません。究極的には、足元の混乱が長引けば長引くほど、エネルギー、電力、化学、食料生産の各システムに加わる圧力が強くなります。そして、アジアのように外部との結びつきが強く輸入依存度の高い地域では、こうした影響は迅速に、かつ幅広く波及していくのです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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市場にも「マーチ・マッドネス」
イランをめぐる紛争が市場の筋書きを大きく揺さぶる中で、弊社の債券リサーチ・グローバル責任者であるアンドリュー・シーツが、3月に起きている歴史的な混乱をどう捉えるべきか、そして今後数週間に何が起こり得るのかについてお伝えします。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 今回は、弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツがお話しします。重要なストーリーがどれほど急速に変化したのか、そしてその変化がどの程度継続する可能性があるのかの概観をお話します。このエピソードは3月20日 にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。「マーチ・マッドネス」としても知られるNCAA(全米大学体育協会)のバスケットボール・トーナメントは、私が一年の中で特に好きな時期のひとつです。64チームによる敗者復活戦のない勝ち抜き戦は、驚くほどカオスで、特に序盤の試合では意外な展開が次々と起こります。それにバスケットボールは、勢い、つまりモメンタムをリアルに感じることができるスポーツのひとつでもあります。前半はシュートの打ち方を忘れてしまったかのように見えたチームが、後半になると急に誰にも止められないほど強く見えることもあります。先ほども申し上げたとおり、3月はスポーツ観戦を楽しめる大好きな時期です。ただし、市場を予測するという点では、必ずしも好きな時期ではありません。2005年、2008年、2020年、2022年、2023年、そして2025年には、3月に市場のボラティリティが大きく高まりました。そして今年も同じ状況です。もちろん、ただの偶然だと思いますが。今回は、先日、同僚のマルタイン・ラッツと私が取り上げたような、エネルギー市場における歴史的な混乱だけが論点ではありません。市場のストーリーそのものが大きく反転していることも重要です。これがバスケットボールの試合だとしたら、流れがいま、ひっくり返ったところです。2026年の1月から2月にかけては、米国経済も世界経済も良好で、むしろ加速しているとさえ言える状況であることを示す強いシグナルが、いくつも重なって見えていました。背景には、エネルギー価格の低さ、景気刺激的な政策、そして堅調なAI投資がありました。原油価格が下落する一方で、金属、輸送、景気敏感株、金融株はいずれも上昇していました。世界の成長により敏感な欧州、アジア、新興国の株式がアウトパフォームしていました。インフレは落ち着きつつありました。中央銀行は利下げを計画していました。イールドカーブはスティープ化し、米ドルは下落していました。1月の米国雇用統計も、かなり良好でした。ところが、すべてが変わってしまいました。一瞬のうちに、イランをめぐる紛争、そしてそれに続く原油価格ショックのリスクが、こうしたストーリーのほぼすべてを根底からひっくり返したのです。いまでは、原油価格が上昇し、金属、輸送、景気敏感株、金融株の価格はそろって下落しています。原油の輸入依存度が高い欧州とアジアの株式は、相対的に低調となっています。投資家が安全資産を求めたことで、米ドルは上昇しました。原油高を受けてインフレも跳ね上がりました。インフレ率が高くなったことでイールドカーブはフラット化し、弊社を含む多くの専門家が、中央銀行が何をするかについての見通しを修正しました。そして、あいにく、直近の米国雇用統計はかなり悪かったのです。もしイランをめぐる紛争が終結し、ホルムズ海峡を通る原油の航行が再開されれば、ストーリーが元に戻る可能性は十分にあります。しかし、そうなるまでは、このモメンタムが反転したスピードの速さを考えると、おそらく当然のことながら、多くの投資家が不意を突かれ、ポジションが十分に整っていない状態にあると考えられます。さらに、今の新しい環境では、株式、債券、さらには金でさえ、価格が同じ方向に動いてしまっているため、分散投資が難しいという課題も重なります。そうなると投資家にとって最も抵抗が少ない道筋は、エクスポージャーを減らし続けて嵐が過ぎるのを待つことかもしれません。その結果、短期的には一段の弱気市場となる可能性があります。残念ながら、ここから数週間は、居心地の悪い展開になりそうです。ただ少なくとも、バスケットボールでは好ゲームが見られそうですが。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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日本の強気相場はどのように形成されるのか
モルガン・スタンレーMUFG証券日本株ストラテジストの中澤翔が、日本株の現在の反発を牽引しているセクターと、上昇が単なる循環的回復にとどまらない可能性について解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 皆さま、こんにちは。「市場の風を読む」へようこそ。モルガン・スタンレーMUFG証券日本株ストラテジストの中澤翔です。本日は、高市政権が今後数年にわたり日本株市場をどのように方向付ける可能性があるのかについてお話しします。本日は、東京時間で3月17日火曜日の午後3時です。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2025年10月21日、高市早苗氏は日本初の女性首相に就任しました。防衛力の強化と経済の強靭化を重視する保守政権の誕生です。そして2026年2月に本格始動した高市政権は、日本経済の構造的転換の始まりを明確に示すものとなりました。市場はこれに迅速に反応しています。過去数か月間で、政権が掲げる17の重点戦略分野へのエクスポージャーが高い銘柄群は、TOPIXを約15%ポイント上回って推移しました。これほどのパフォーマンス格差は、単なる循環的回復を超えた動きを示唆しています。資本は、構造変化を織り込み始めていると考えられます。まず、日本政府は経済安全保障およびサプライチェーンの強靭化を一段と重視しています。これは単なる政策変更ではなく、根本的な前提の転換です。これまでのグローバル経済では、「効率性」が最優先されてきました。ジャスト・イン・タイム型の供給網や、グローバル最適化モデルがその象徴です。しかし、パンデミックや世界の多極化の進展を受けて、考え方は大きく変わりました。現在は、「冗長性」と「自律性」が重視されています。この転換は、防衛・宇宙、先端素材・重要鉱物、造船、サイバーセキュリティといった分野に直接的な影響を及ぼしています。構造的変化の第2の柱は、AIおよびコンピューティング革命です。一部の投資家はAIへの過剰投資を懸念しています。しかし、AIの技術的ブレークスルーが進めば、リターンは非線形的に拡大する可能性があります。重要なのは、AIは単なるソフトウェアではないという点です。データセンターの冷却設備、通信ネットワーク、拡張された電力網、重要鉱物など、広範な産業基盤を必要とします。これは「産業スタック全体の高度化」と言える動きです。さらに長期的には、世界のヒューマノイドロボット市場は2050年までに年間7.5兆ドル規模へ拡大する可能性があると弊社のグローバルロボティクスチームはみています(Robotics: Humanoid Horizons: What to Watch for 2026)。これは、2024年時点での世界上位20社の自動車メーカーの合計売上高(約2.5兆ドル)の約3倍に相当します。産業構造そのものを塗り替えるポテンシャルを秘めています。日本市場を再形成する第3の力はインフラです。2026年度予算では、国土強靭化関連支出が5兆円を超えています。老朽化インフラの更新や自然災害の激甚化を踏まえると、強靭化投資は経済安全保障と直結します。港湾、物流、通信システムは、戦略的資産としての性格を強めています。また、1980年代後半のバブル期に建設された建物が建て替え時期を迎えつつあり、長期的な建設サイクルは拡張局面に入りつつあります。これは一時的な需要増ではなく、持続的な需要基盤を示唆しているとみています。重要なのは、株式市場におけるリーダーシップの広がり方です。一般に、物色は川上から川下へと波及します。素材や電力インフラから始まり、AI、防衛・通信へと広がり、最終的には創薬、量子技術、サイバーセキュリティ、コンテンツなどの応用分野へと波及する傾向があります。直近3カ月で最も高いリターンを示しているのは、先端素材・重要鉱物、および次世代電力・送電インフラです。一方、サイバーセキュリティやコンテンツ関連は出遅れていますが、産業ネットワーク上の結び付きは強く、物色が広がる局面では重要な役割を果たす可能性があります。真の制約要因は政治的反対ではありません。市場そのものです。投資家がこれを一時的な景気刺激策と捉えるのか、持続的な利益成長と評価するのかによって、バリュエーションは大きく変わり得ます。私たちは、日本株市場は単に上昇しているのではなく、経済安全保障、AIインフラ、国土強靭化を軸に再編成、リオーガナイズされつつあると考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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市場の調整局面は終わりに近づいているのか
ボラティリティと原油価格が上昇する一方で、FRBの政策は緩和方向にあります。弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、足元の株式市場の下落がなぜ2025年3月を思い起こさせるのか、そして、なぜ強気シナリオが依然有効と考えているのかを解説します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが 株式市場が、ここ数か月にわたって直近のヘッドラインをどのように消化してきたのかについてお話しします。 このエピソードは3月16日 にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 先週のポッドキャストでは、初めて流動性が引き締まり始めた昨年去年秋に、現在の株式市場の調整局面が開始したことを、弊社は明確に認識していると申し上げました。資金調達市場がその引き締めによるストレスを示し始めるとすぐに、FRBはバランスシート縮小プログラムを当初の想定より早く終了すると発表しました。それに続いて、12月には資産購入を再開しました。この政策転換を受けて、1月の株式市場のパフォーマンスは改善しました。 同時に、米ドルは大きく下落し、新興国市場や、金・銀、産業用金属、原油、メモリ株といったコモディティ関連セクターにリターンが集中しました。しかし最近では、ドルが反発し、これらの分野は明らかに勢いを失っています。重要なのは、2週間前のイラン攻撃以前から、株式市場の調整は、その期間と株価の両面で、既にかなり進行していた点です。実際、ラッセル3000構成銘柄のうち50%は、過去52週間の高値から20%下落しています。現在は多くの点で、昨年去年とよく似た状況にあると弊社は考えています。昨年去年は、2月から3月初めにかけて主要株価指数の下落に弾みがつきました。当時の懸念材料は関税でした。しかし、現在と同様、株式市場は既に数か月前から低調に推移しており、その原因は関税とは関係のない懸念でした。より具体的に見ると、市場が懸念していたのは、DeepSeek、移民規制、そしてDOGEに関連するリスクでした。そこに最後の一撃として関税が加わったのです。今回は、イラン情勢がエスカレートする以前から市場では、AIによる労働市場の混乱、プライベートクレジットのデフォルト、そして流動性の引き締まりといった点が懸念されていました。興味深いことに、ただし驚くには当たりませんが、原油価格とボラティリティは1月から上昇し始めており、市場がこうしたリスクを先取りしていたことを示しています。通常、調整局面は、最も良好なパフォーマンスを示してきた銘柄や、最も質の高い株価指数が打撃を受けるまで終わりません。そうなるには多くの場合、全面的な投げ売りが必要になります。昨年、その役割を果たしたのがリベレーション・デーでした。今回は、イラン情勢の緊張と、1バレル100ドルを超える原油価格の持続的上昇への懸念が、それに相当します。今年は、S&P500が昨年4月以来最悪の2週間を記録したことで、この最終的な調整局面が既に始まっていると弊社は見ています。誤解のないように申し上げますと、私は、いくつかの理由から、今回の投げ売りや下落は、昨年去年ほど深刻なものにはならないと考えています。第1に、昨年去年の一連の出来事は、当時弊社が「ローリング・リセッション」と呼んでいた局面の終盤で起こり、実際、その景気後退の終わりを示すものとなりました。したがって、2025年4月の安値時点で、株式市場は景気後退を織り込んでおり、これが、S&P500が高値から20%下落した理由でした。第2に、企業収益と経済成長を取り巻く現在の環境は、1年前よりもはるかに良好です。第3に、財政政策の支援も現在の方が大きくなっています。具体的には、税還付が前年同期を17%上回っており、個人所得税減税の効果が表れています。「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」に盛り込まれた税制優遇措置によって、設備投資が増えるはずです。さらに、FRBは2025年にはバランスシート縮小を進めていましたが、現在は資産購入を通じて、はるかに緩和的な姿勢を取っています。結論として、株式市場は、いまニュースの見出しになっている多くの懸念材料を、ここ数か月にわたって消化してきました。これは、今回の調整局面が始まったばかりというより、むしろ終わりに近づいていることを意味すると弊社は考えています。投資家は、次の悪材料が出た際に最後の投げ売り局面があれば、買いに動けるよう備えておくべきでしょう。その最後の下押しを引き起こし得るシナリオの一つは、過去のデータに基づくインフレ指標を根拠に今週FRBがよりタカ派的な姿勢を示すことと、3つのデリバティブの満期が同時に到来する「トリプル・ウィッチング」が重なるケースです。あるいは、米国と中国の貿易協議が延期、または中止になるケースも考えられます。何がきっかけになるにせよ、市場の安値は高値よりも速く形成されます。したがって、強気相場の再開を見据えて、リスクを積み増せるよう備えておいてください。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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強気相場が再開される理由
地政学的な懸念があるにもかかわらず、歴史、テクニカル要因、そしてファンダメンタルズは向こう6ヵ月間の米国株式の動向が意外に明確であることを示唆しています。弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがその理由をご説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、イランでの紛争と、それが株式にとってどんな意味を持つかについてお話しします。このエピソードは3月9日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。足元の株式市場の調整は2月に始まったとお考えの方がほとんどでしょうが、私に言わせれば、この調整が始まったのは明らかに[1] 去年昨年の秋、流動性がタイトになり始めたときです。実際、私は去年 9月に、FRBは自らのバランスシートを十分に活用していない、これでは金融が今後引き締まって株式市場に一定のストレスを及ぼすだろうと警鐘を鳴らしていました。翌10月に入るとそのストレスが、株式市場の最も投機的な部分と暗号通貨の急激な調整という形で顕在化しました。するとFRBはバランスシートの圧縮を予想より早く打ち切り、資産購入を再開するという対応を取りました。このことが1月の力強い株価上昇につながりました。この調整は時間的にも株価水準的にもかなり進んだ状態にあります。現時点で30%、あるいはそれ以上下落している銘柄も少なくありません。その一方で株価の上昇率・下落率のばらつきはまれにみるほど大きく、勝ち組と負け組の間には20数年ぶりの大差がついています。市場はいつものように、今では誰の目にも明らかな懸念の多くを予見することで、歪みを正したのです。では、株式投資家がいま抱いている疑問は何か。それは6ヵ月後の世界はどうなっているのか、そしてよりよい未来を想定し始めてもよいレベルまで株価は割安になっているのか、という2点でしょう。簡潔に答えるなら、株価はまだそこまで割安ではありません。しかし、購入したい銘柄のリストは用意しておきましょう。私たちは今いろいろな意味で、去年昨年と非常によく似た状況に置かれています。覚えていますか。去年昨年2月の終わりから3月の初めにかけて、主要な株価指数は下げ足を速め始めていました。あの時期の最大の懸念材料は関税でしたが、今日(こんにち)と同様に株式市場はすでにその前から、関税とは無関係な懸念のために数ヵ月にわたって伸び悩んでいたのです。今日の市場ではAIによる労働市場の混乱、プライベート・クレジットのデフォルト、そして流動性不足の3点が、イラン紛争がエスカレートするかなり前から懸念されています。一般に調整局面というものは、最も優良な銘柄や株価指数が打撃を受けるまで終わりません。そして、そこに至るには、「解放の日」や戦争のようなより大きなショックが必要になるのが通例です。そのプロセスはすでに始まっています。たとえば、S&P500は先週、10月以降で最低のパフォーマンスに終わっています。そしてもう一つ検討すべきなのは、相場のレベルは1年前の水準と結びついている場合が多いということです。この前年同期との比較は、下値支持について考えるとき非常に重要になります。今年の急落を踏まえると、株式市場はあと1ヵ月ほどもがくことになりそうだと私には思われます。このシンプルな考察といくつかのテクニカル指標に基づいて言えば、S&P500指数は4月の初めごろまでに6300に向かう展開になりうると思われます。ファンダメンタルズの好ましい見通しが再び定着しうるのはその後になるでしょう。では、イラン情勢によって原油価格が1バレル=100ドルを持続的に超えることを心配する必要などないのでしょうか。いや、そうではありません。軍事紛争の結果や原油価格の予想は誰にもできないと思われますので、私もあえて試みるつもりはありません。むしろ私は、ロシアによるウクライナ侵攻のときがそうだったように、あと6ヵ月たてば今のような事態も落ち着いている公算が高いのではないかと考えます。重要なのは、原油急騰の原因が供給不足によるものではなく、ホルムズ海峡で物流が阻害されている結果であることです。確かにこの物流の停滞はリアルな制約ではありますが、必要は発明の母と言いますし、解消される公算が大きいでしょう。6ヵ月先のことについて楽観的になれる理由はほかにもあります。まず、企業収益拡大の動きが広がっています。この傾向はまだ続いており、弊社の2026年の見通しにおける重要な根拠の一つでもあります。第2に、米国はエネルギーの面で自立できており、石油ショックに耐える力がアジアや欧州よりもはるかに備わっています。この点にひかれて米国に戻ってくる投資家も出てくるでしょう。そしてもう一つ、企業の設備投資に対する税制優遇措置と、「一つの大きくて美しい法案(OBBB)」法による個人の減税が、短期的には原油高を相殺する好影響をもたらす公算が大きいことが挙げられます。不安材料を一つ挙げるとすれば、それは「質と安全への逃避」が起きて米ドル高が進行し、グローバルな流動性を低下させてしまうことです。まとめますと、原油高と米ドル高は紛争が収束するまで続く可能性が高いでしょう。株式市場の最も脆弱な部分には、すでに大半のダメージが出尽くしている公算が大きいものの、株価指数は依然として不安定で、5~7%下落する余地がまだ残っていると私自身はみています。また機関投資家などに広く買われてきた人気銘柄の株価はこれから2桁の下げを経験する可能性が高く、来月に入って大底を打つ展開もありうるでしょう。相場の底は天井よりも早めに現れる傾向があります。強気相場の年内の再開を見据えつつ、今はリスクへの備えを進める時期だと考えます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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旅行が中国の新たな成長エンジンに
弊社香港・中国運輸およびインフラ・アナリストのチエンレイ・ファンが、パンデミック後の反動的な回復局面から、複数年にわたる拡大局面へと移行しつつある中国の旅行産業について解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社香港・中国運輸およびインフラ・アナリストのチエンレイ・ファンが、中国経済のリバランスにおいて、なぜ旅行が急速に主要なけん引役の一つになりつつあるのか、その見解をお話しします。このエピソードは3月3日 に香港にて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。私は旧正月の休暇で中国本土を旅行し、つい戻ってきたところです。史上最長となった春節休暇の期間中、人々は外に出て歩き回り、探索し、笑い合っていました。国全体が、限られた時間を思い切り楽しもうという熱気に包まれているように感じられました。文化観光部の統計によると、この連休期間中の国内観光消費額は前年同期比で19%という力強い伸びを記録しました。実際、中国の観光産業は、単にパンデミック後の反動的な回復にとどまっているわけではありません。政策面での追い風、人口動態の変化、そして「モノ」から「体験」へと消費が明確にシフトしていることに支えられ、構造的により強い成長局面へと入りつつあります。2030年までに、観光収入は12兆元、米ドル換算でおよそ1兆7,000億ドルに達する可能性があります。これは2020年代半ばから年率11%の成長を意味します。今後5年間で、国内とインバウンドを合わせた累計収入は50兆元、米ドルで7兆2,000億ドル規模に近づくと見込まれます。この規模を考えると、旅行はもはや景気循環に伴う一時的な回復ではなく、中国における消費主導型成長の中核をなす柱になりつつあります。弊社では、観光産業のGDP比率が、2024年の4.8%から2030年にはおよそ6.7%まで上昇すると予想しています。国内旅行が引き続き基盤です。人々は単に再び旅行を始めたのではなく、以前にも増して頻繁に旅行するようになっています。政策も需要を後押ししています。祝日の延長、新たな学校休暇、イベントを軸とした観光が活動を押し上げています。2025年だけでも、およそ3,000件の大規模公演が開催され、延べ4,300万人以上を動員しました。支出面にもその変化は表れています。2025年の国内観光消費額は6兆3,000億元に達し、コロナ前の水準をおよそ11%上回りました。1回あたりの旅行支出はやや減少しているものの、旅行頻度の増加が全体の収入を押し上げています。海外旅行は、第2の成長エンジンとして台頭しています。2030年までに、インバウンド旅行は観光収入全体の16%を占める可能性があります。2025年後半には、主要都市における訪中外国人の増加率が前年比でおよそ30〜50%に達しました。これは、現在では外国人入国者の大半を占めるまでに拡大したビザ免除措置の後押しによるものです。こうした旅行者は滞在期間が長く、消費額も多い傾向があります。アウトバウンド旅行も力強さを増しています。2025年の国際線航空需要は22%増と、国内線の伸びを大きく上回り、現在では航空会社収益において無視できない割合を占めています。人口動態とテクノロジーも、この流れを後押ししています。若年層の消費者は旅行を重視しており、また、多くの貯蓄を持つ高齢世帯も、サービスの質が向上するにつれて支出を増やし始めています。同時に、スマートホテル、バーチャルリアリティを活用した観光施設、データ主導の運営といった取り組みが、顧客体験と支払意欲を高めています。これは単なる繰り越された需要ではありません。政策、人口動態、テクノロジー、そして供給が同時にかみ合い、中国の消費ストーリーの中心に旅行が位置づけられているのです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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AIに対する不安の中で、なぜ株価は上昇し続けるのか
弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、投資家の間でAIを巡る懸念が高まる中でも、依然として株式市場が成長サイクルにあると考える理由を解説します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが登場します。今回は、AIによるディスラプションを巡る最近の懸念についてお話しします。このエピソードは2月24日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週の市場の底流には不安感が漂っていました。短期的な混乱を招くニュースが相次ぎ、ボラティリティは上昇し、そしてAIによるディスラプションが、再び投資家の会話の中心になりました。しかし、その表面的な不安の裏側で、重要な出来事がありました。S&P500イコール・ウェイト指数が相対的な高値を更新し、「市場の裾野が広がる」という弊社の見方は堅持されました。投資家は一方では、AI主導のディスラプション、設備投資集約度の高さ、そして労働力削減の可能性について懸念しています。他方では、これまで出遅れていた分野に資金が流入し続けており、中央値銘柄の利益成長率は過去4年間で最も力強い水準に達しています。詳しく見てみましょう。まず、AIが雇用喪失につながるのではないか、という懸念があります。しかし、たとえそうだとしても、通常は段階的な移行期間があります。企業が一夜にして労働力を削減することはありません。重要なことに、こうした生産性向上が本格的に実現するには、企業全般が幅広くAIを導入する必要があります。そのためには、エージェント型アプリケーションのレイヤーを構築し、AIを業務フローに統合し、システムやプロセスのトレーニングをやり直す必要があります。これには時間がかかりますし、その意味では、現在はまだ初期段階にあると言えます。次に、現在見られる動きは、大規模な投資サイクルに典型的なものです。市場が奔放な支出ペースに疑問を抱く局面では、ボラティリティが高まります。勝者と敗者をめぐる議論が活発になることで、銘柄間のばらつきも大きくなります。時には市場をリードする銘柄が、急激に入れ替わることもあります。また、今回は1990年代後半のインターネットバブル期とは異なる点があります。現在は、景気回復の初期段階に伴う企業利益の伸びが期待できる環境にあります。2022年から2025年にかけて、実質的には「ローリング・リセッション」とも言える局面を抜けたばかりだからです。そのため、構造的な敗者と見なされる分野から資金が移動する際、長期的なAIの恩恵を受ける銘柄を追いかけるだけでなく、伝統的な景気敏感株にも資金が向かっています。逆風を受けているのは、長期的なサービス志向のセクター、とりわけソフトウエア分野です。こうした分野は、中長期的なキャッシュフローの不確実性に対して敏感です。また、過去10年から15年にわたって投じられてきた多額のプライベートキャピタルが重石になっています。さらに、他にもいくつかの要因があります。小型グロース株、これは市場の中でも恐らく最も長期的な性格を持つセグメントと言えますが、1月下旬、ケビン・ウォーシュ氏が次期FRB議長に指名された頃から下落基調に入りました。主要株価指数がほとんど反応しなかった一方で、より投機的な分野は、FRBのバランスシート縮小に積極的と見られるウォーシュ氏の姿勢を背景に、流動性が引き締まるとの見方に反応している可能性があります。加えて、一般に新しいFRB議長が就任する局面で株式市場のボラティリティは高まりやすい傾向があります。結論として、「ローリング・リカバリーの初期段階」という、弊社のより大局的な見方に変わりはありません。指数全体の動きが不安定に感じられる局面でも、市場の内部要因は下支えとなっています。ただし、季節的に小売需要が弱い時期に入ることや、流動性は十分にあるが、決して豊富とは言えない状況を踏まえると、目先はボラティリティが持続する可能性があります。こうした環境では、質の高い景気敏感株とヘルスケア株を組み合わせた「バーベル型」のポートフォリオが有効と考えます。小型株では、ラッセル2000よりも、質の高いS&P600の方が魅力的に見えます。また、短期的なボラティリティがあれば、一般消費財、資本財・工業、金融といった、選好する景気敏感分野に対するエクスポージャーを増やす好機となる可能性があります。もちろん、リスクは残っています。AIの導入が予想より大幅に加速すれば、労働市場により急激な圧力がかかる可能性があります。効率向上の裾野が広がり、価格決定力が低下するかも知れませんし、政策担当者が設備投資サイクルを減速させるような対応を取る可能性もあります。その一方で、モメンタム投資は資金が集中し、依然として脆弱です。それでも、市場内部からのシグナルは明確です。この局面は、市場が天井を打って下落に転じるというより、景気拡大の初期段階を確認する動きに近いように見えます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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職場のAI:変革は既に始まっている
弊社欧州サステナビリティ・リサーチ責任者のレイチェル・フレッチャーが、主要な産業や地域において、AIがもたらす雇用や生産性の急速な変化についてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、弊社欧州サステナビリティ・リサーチ責任者、レイチェル・フレッチャーが、世界の雇用市場にAIがもたらしている変化について解説します。このエピソードは2月20日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。AIをめぐる盛り上がりが、いつになったらデモンストレーションやニュースの段階を超えて、自分の仕事や投資、さらには日常生活に影響を及ぼすのだろうかと思ったことは、どなたでもあるでしょう。弊社の最新のグローバル・アルファワイズAI調査によれば、採用や生産性、職場で求められる技能にAIが影響を与え始めている労働市場を中心に、その転換点が訪れている可能性があります。この調査は、米国、英国、ドイツ、日本、オーストラリアを対象に、AI導入による効果が大きいと弊社が見ている5つの業種で実施しました。具体的には、生活必需品、小売流通、不動産、運輸、ヘルスケア、機械・装置およびサービス、自動車です。調査の結果、過去12ヵ月間で、AIの導入により11%の雇用が削減され、さらに12%のポジションが補充されていないことが分かりました。一方で、18%の新規採用も行われており、これらを差し引くと、世界全体では4%の純減となります。重要な点として、この調査は、少なくとも1年以上AIを導入してきた企業を対象にしています。実際には、調査対象企業の多くが2年以上にわたってAIを導入してきました。そのため、これはAIが雇用に与える影響としては、最も大きな下振れケースを示している可能性がありますが、それでもなお、雇用の混乱が起こり得ることを示す初期のシグナルと言えます。欧州に目を向けると、状況は一様ではありません。英国は、雇用の純減率が8%と、最も大幅になりました。その主因は、他の調査対象国より新規採用が少なかったうえ、補充されなかったポジションが多かったことです。一方、ドイツでは、全体の平均と同水準の4%の純減になりました。英国では、何か他の要因がAIの影響を増幅している可能性があります。たとえば、より高い人件費や、若年層の失業率の高さを背景とした労働市場全般の弱さです。結局のところ、AIの影響とマクロ経済要因をはっきりと区別するのは依然として困難です。欧州における業種別の影響を見ると、自動車業界の雇用の純減率が最も大きく、13%でした。これは、自動車業界の世界平均である10%を上回っています。これらの数字は、長引く販売低迷や、AIを活用したコスト削減を反映している可能性があります。運輸は最も影響が小さく、純減率は3%でした。一方、他の 業種セクターは、概ね6%から7%の範囲に収まっています。欧州企業の中でも、人員削減を進めている企業の上位20%は、より積極的に採用を行っている企業をアウトパフォームしています。これは、投資家が効率性を評価していることを示唆しています。その一方で、人材派遣会社は、AIによる代替が進むことで、成長リスクに直面する可能性があります。生産性については、欧州企業はAIによって10%から11%の改善を報告しており、世界平均の11.5%や、米国の10.8%とほぼ同水準です。なお、欧州はAIのイネーブラーや導入企業に対するエクスポージャーでは米国に後れを取っているものの、導入企業および導入を支える企業は、MSCIヨーロッパ・インデックスの3分の2以上を占めています。ただし、欧州のAI導入企業の株価は、同等の米国の導入企業と比べて、大幅なディスカウントで取引されています。したがって、欧州企業にとっては、AI導入を実際の投資収益につなげ、価格決定力を維持することが極めて重要になっています。次に、米国を見ると、世界全体の雇用は4%の純減だったのに対し、米国ではAI関連の採用により、2%の純増となりました。弊社の米国株式ストラテジストは、S&P500の利益率拡大について、2026年は40ベーシスポイント、2027年は60ベーシスポイントの上方修正を行っています。弊社の調査において、AIを導入する目的として米国で最も多く挙げられたのは、生産性の向上、顧客対応のパーソナライズ、そしてデータ分析の迅速化です。そのほかでは、検索、コンテンツ生成、ダッシュボード、バーチャルエージェントといった利用事例が一般的でした。明らかになりつつあるのは、AIはもはや理論上の存在ではないということです。今回の調査データは、AIが採用、生産性、そして利益率を変えつつあることを示しています。投資家が問うべきは、AIが重要かどうかではなく、その価値を誰が取り込むのかなのです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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グローバル成長が近づいていることを示すサイン
弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、2026年初めは市場の変動が大きかったにもかかわらず、主要な市場指標がグローバルな景気循環に対して前向きな見方を示している理由を解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、多数の重要な指標が、これまでにない形で同時に一致している点についてお話しします。このエピソードは2月12日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。投資においてフラストレーションがたまる点の一つは、どんな指標であっても、いつでも期待を裏切る可能性があるということです。それは当然のことでもあります。これだけ多くのものがかかっている中で、市場の秘密が、私たち何千人もの人間がボタン一つでアクセスできる何百ものデータ系列の中の、たった一つにあるとは考えにくいからです。しかし、多くの指標が同じ方向を示しているとしたらどうでしょうか。それははるかに注目すべきことです。そして、2026年のスタートは日本国債からソフトウェア株に至るまで大きな変動を伴いましたが、水面下では、まさにそのような状況が起きていると弊社では考えています。具体的には、グローバルな景気循環の見通しに対する楽観と結びついたさまざまな指標が、そろってより力強く、右肩上がりに動いているのです。景気に敏感なコモディティとして注目される銅価格は大きく上昇しています。世界貿易への感応度が高く、循環色の強い韓国株式は、過去1年間で主要な世界株式市場の中でも最も高いパフォーマンスを示しています。信用創造の中核に位置する金融株は、米国、欧州、アジアのいずれでもアウトパフォームしています。さらに直近では、年初来で景気敏感株や運輸株がアウトパフォームしています。小型株が先行し、市場の裾野は広がり、イールドカーブはベア・スティープ化しています。これらはすべて、他の条件が同じであれば、将来のグローバル成長が現在よりも強くなるときに見られる典型的な結果です。もちろん、個々のデータポイントはそれぞれ別の説明も可能です。例えば、銅はAI関連の設備投資ストーリーの一部にすぎないかもしれません。韓国市場は、極端に低いバリュエーション水準からの反発にすぎない可能性もあります。金融株の上昇は、イールドカーブのスティープ化と規制緩和への期待によるものでしかないかもしれません。イールドカーブのスティープ化も、単に政策の不確実性が理由という見方もあります。また、小型株は長期的に出遅れてきたため、「いつかは順番が回ってくる」ということかもしれません。しかし、これらをまとめて見ると、投資家がグローバル成長の基調が強まっていることを確認するために探しているサインそのものです。弊社では、これらが非常に力強く、相互に重なり合う形でシグナルを形成しており、十分に尊重に値すると考えています。しかし、状況が良くなっているとすれば、どこからが「行き過ぎ」なのでしょうか。財政、金融、規制の各政策が緩和的になる中で、市場は「良すぎる状態」になっていないかを判断するため、別の指標にも目を向けるようになるでしょう。例えば、近い将来に顕著なインフレの兆しはあるのか、債券市場のボラティリティは高まっているのか、米ドルは理論的な公正価値から大きく乖離していないか、クレジット市場に弱さは見られないか、そして株式やクレジットが、良い経済データに対して悪く反応するようになっていないか、といった点です。現時点では、まだそのような兆候は見られません。先週この番組でもお話ししたとおり、米国とユーロ圏の長期的なインフレ期待は、依然として中央銀行の目標と極めて整合的な水準にあります。米国金利の予想ボラティリティは年初来でむしろ低下しています。米ドルのバリュエーションは、購買力平価が示唆する水準にかなり近いところにあります。クレジット市場は非常に安定しています。そして水曜日に発表された、予想を上回る労働市場データも、市場からは好意的に受け止められました。どんな単一の指標も、いずれは投資家を失望させるものです。しかし、景気に敏感な幅広いシグナルが同じ方向を指し示しているとき、弊社はそれに耳を傾けます。これらを総合すると、主要なストレス指標が落ち着いている一方、ファンダメンタルズ面で追い風が吹いているというストーリーを、依然として示していると弊社では考えています。その証拠が変わらない限り、これらのシグナルは尊重されるべきだと考えます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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北米貿易の将来
米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の見直しを前に、弊社公共政策リサーチ責任者のアリアナ・サルバトーレが、2025年に示した「より深い貿易統合」という見通しが今も有効かどうかについて解説します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが、間もなく予定されているUSMCAの見直しについて、そして去年昨年から環境がどのように変化したのかについて、弊社の見通しを解説します。このエピソードは2月11日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。去年昨年秋にお伝えしたとおり、米国・メキシコ・カナダ協定、いわゆるUSMCAは、2026年に初めての義務的な見直しを迎えます。当時、弊社はリスクがやや上振れ方向に傾いていると指摘しました。協定に組み込まれている構造的なセーフガードが、下振れリスクを抑え、大半のシナリオを北米における貿易統合を維持し、時間をかけて深化させる方向へと導くと考えているためです。この枠組みは、現在も概ね維持されていると考えています。ただし、ここ数か月のいくつかの動きを踏まえると、より深い統合が実現するタイミングや構造は、当初の想定とはやや異なる可能性が出てきました。交渉担当者が個別の問題を解消し、限定的なアップデートを行うというシナリオは依然として想定していますが、AIに関する新たな章や、重要鉱物、中国の対メキシコ投資に対するより明確な歯止めといった、より野心的な幾つかの政策目標については、2026年半ばの期限までに正式な形で盛り込むことは、以前より難しくなっていると見ています。では、去年昨年示した弊社の基本ケースは、今どのような姿を保っているのでしょうか。弊社は引き続き、協定自体は維持され、いくつかの未解決の争点、具体的には、自動車の原産地規則、労働分野の履行手続き、そして一部のデジタル貿易規定、が解決されるという結果を予想しています。中国に関する論点についても、去年昨年の見方は変わっていません。メキシコは、迂回輸出のリスクを低減し、米国の貿易優先事項との整合性を高めるために、段階的な対応を進めると見ています。ただし、2026年半ばまでに、完全に制度化された執行メカニズムが導入される可能性は低いでしょう。なお、USMCAには10年ごとのエスケープ条項があり、少なくとも2036年までは協定が有効であるため、破壊的な貿易ショックが起きる確率は、構造的にかなり低いと考えられます。変わりつつあるのは、進む方向そのものではなく、スピードと形式です。より包括的な合意が最終的に実現する可能性はありますが、その時期は先送りされるか、あるいはUSMCA本文の改定ではなく、補足的な協定という形を取るかもしれません。当然ながら、その場合は、議会の裏付けがないことによる執行リスクが伴います。弊社では、正式な見直しは2026年半ば頃にまとまると引き続き予想していますが、より深い制度的な統合が、さらに先の時期にずれ込む、あるいは並行的な枠組みを通じて進む可能性は、以前より高まっています。また、期限が近づく中で、3か国すべてが交渉期間の延長を決定し、不透明感がさらに長引くシナリオも考えられます。では、こうした動きはマクロ経済や市場にとって、どのような意味を持つのでしょうか。メキシコにとっては、引き続き、米国への無関税アクセスを維持することが極めて重要です。基本ケースでは、自動車や電子機器を中心とした製造業の統合が続くと見ています。ただし、政策当局が議論してきたような、より戦略的な新章が盛り込まれない場合、メキシコは「安定してはいるものの、本格的なニアショアリング加速には至らない」という、これまでと同様の立ち位置にとどまることになります。これは去年昨年の弊社見通しと整合的ですが、短期的には、急速なより深い制度的統合というシナリオに対するリスクが、一段と明確になってきたと考えています。為替市場については、不確実性が低下することによる恩恵は見込まれるものの、その効果は緩やかなものになるでしょう。原協定に目に見える形で新たな要素が加わらない場合、短期的な市場インパクトは限定的になると見ています。カナダについても、影響は一長一短です。見直しを巡る短期的な変動リスクは、市場で十分に織り込まれていない可能性がありますが、限定的な合意は中期的に米ドル/カナダドルの下落圧力につながると考えています。経済全体については、弊社は去年昨年、中国からのサプライチェーン分散が完全に進まなくても、この見直しは「北米を一体的な製造拠点として強化するものになる」と指摘しました。この点については、現在も基本的に変わっていないと考えています。ただし、より野心的な統合ルートの一部は、より先の時期に持ち越されるか、もしくはUSMCAの正式な章立てではなく、別の枠組みを通じて実現される可能性がある、という新たなニュアンスが加わります。結論として、弊社の基本ケースは引き続き、「不確実性を抑えつつ、北米貿易の中核的な恩恵を維持し、主要な資産クラスの成長を支える、現実的で慎重な結果」です。一方で、一部の戦略的な機会は当面棚上げされ、より深い連携は先送りされ、やや長い時間軸で進む、あるいはより柔軟な枠組みを通じて進むことになる可能性が高まっていると見ています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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中南米の3つの変化がグローバル・ポートフォリオを再編しうる理由
めったに見られない「春」が中南米に近づいている可能性がある――弊社中南米チーフ・株式ストラテジストのニコライ・リップマンはそう指摘しています。地政学、ピークに達した金利、そして選挙という3つの要素がそろい、投資主導の成長サイクルが始まる環境を整え、株価に大幅な上昇余地をもたらすというのがその理由です。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社の中南米チーフ・株式ストラテジストのニコライ・リップマンが、投資家が中南米に注目すべきである理由についてお話しします。このエピソードは2月9日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。弊社リサーチのコアとなる投資テーマは実にシンプルです。中南米地域は現在「トリフェクタ」つまり、3つの重要な変化に直面しており、投資家がこれまで慣れ親しんだ同地域の投資ストーリーとは大きく異なる局面を示唆しているとみています。グローバルな人工知能(AI)設備投資サイクルを背景に、中南米においても投資サイクルもしくは設備投資サイクルに移行し、従来の消費サイクルから完全に逸脱するサイクルに、同地域が向かう可能性があると弊社はみています。 現在の中南米地域のGDPは、およそ6兆ドルあります。しかし、世界株式の主要ベンチマークであるMSCIオールカントリー・ワールド株式指数における中南米株式の割合はおよそ訳0.80%にすぎません。率直に言って、これではこの広大な地域を投資家が見逃してしまうのも無理はありません。しかし、3つの主な要因のおかげでこの状況が変わりつつあります。第1の要因は、多極化がますます進むこの世界での地政学の変化です。これについては、貿易のルール、安全保障における優先事項、そして描き換えられつつあるサプライチェーンに見られるとおりです。資本や投資も、こうしたルール変更に伴って動いていくことがよくあります。ご承知のように、中南米における米国の優先事項は明らかに変化してきましたし、それに伴って中南米諸国の優先事項やインセンティブも変化しています。第2に、中南米の金利はピークに達している可能性が高く、2026年に低下に転じる公算があります。借り入れコストが低下すれば、工場、インフラ、AI、その他あらゆる種類の新規投資のための資金調達が容易になり、実現可能性が高まります。さらに言えば、中南米地域ではほとんどすべての国において国内資本市場の規模と成長に大きな変化が見受けられます。これは改革の成果であり、以前と異なる新しいサイクルだとみて間違いありません。そして最後に、選挙が中南米地域全体で政策の重要な変化につながる可能性があります。コロンビアとブラジルの選挙が近づくなかで、財政責任重視に向かう兆候が多くの国で見られるのです。すでにアルゼンチン、チリ、メキシコでは、新しい政策立案者が従来のポピュリズムをやめた様子が見受けられます。したがって地政学、金利、各国の選挙の3要素を合わせると、「中南米の春」が来るかもしれないという弊社のテーマの核心にたどり着きます。現状と決別して財政再建、金融緩和、そして構造改革へと舵を切るかもしれない、ということです。そして弊社では、この動きは投資家の信認回復と民間資本の誘致につながる可能性があると考えています。弊社の「春」シナリオでは、経済成長率がブラジルとメキシコで6%、アルゼンチンで7%にそれぞれ上昇し、チリは4%にとどまる、そして金利は上昇ではなく低下するとみています。中南米地域の再評価を後押しするシナリオです。そして、多くの投資家が見逃していると思われる強力な要因がもうひとつあります。それは、すでに指摘した過去のサイクルとの大きな違いは、中南米諸国の国内貯蓄です。中南米の現地のポートフォリオは今日(こんにち)はるかに大きくなっており、資本市場の懐も深くなっているうえ、そのポートフォリオの中身は債券に大きく偏っています。内訳をみますと、75%が債券で25%が株式です。ブラジルでは債券の割合がさらに大きく、90~95%にも達しています。もしこの半分でも株式にシフトすれば、現地の資本市場の厚みをさらに増しつつ、下値を底堅くすることにもなり得るでしょう。バリュエーションが下支えされるのです。地域全体で言うなら、このような大変化の影響を最も大きく受けるセクターは金融サービス、エネルギー、公益、ヘルスケアとなるでしょう。中南米はこれまで、多くのことが悪化しうる地域とみられてきたように思われます。そこで弊社はその逆の問いを立てました。好転しうることは何か、と考えてみたのです。もし前述の3つの要素、すなわち地政学、金利のピーク、選挙の3点によってこれまでよりも投資を奨励する政策や設備投資サイクルが可能になれば、中南米地域がコモディティと労働力の供給元というこれまでのイメージから、投資主導の色彩がこれまでよりもはるかに強い成長エンジンというイメージに転じることもあり得るでしょう。こうしたことから弊社では、投資家は今すぐ中南米地域に目を向けるべきだ、「春爛漫」になるまで待っていてはいけないと考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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新しいFRB議長、新しい市場シグナル
弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、ケビン・ウォーシュ氏の次期FRB議長指名が市場にどのような影響を与えるかについてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社の 最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、ケビン・ウォーシュ氏の次期FRB議長への指名がもたらす影響についてお話しします。このエピソードは2月2日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。1月30日にトランプ大統領は、ケビン・ウォーシュ氏を次期FRB議長に正式に指名しました。ウォーシュ氏について市場で語られている評価は比較的分かりやすく、FRBのバランスシート規模に対してタカ派寄りであり、金利については現在の指導部より柔軟で、無制限の流動性供給にはあまり積極的ではない、とみられています。こうした人物像は概ね正しいのですが、なぜ今ウォーシュ氏なのか、今回の指名でどのような問題を解決しようとしているのか、というより重要な問いには答えていません。私の見方では、その答えは政治ではなく、市場の動きから始まります。ここ数か月、貴金属価格は放物線を描くように上昇し、同時にドル安が続いてきました。現政権は、特に経済全体のリバランス戦略の一環として、ドル安は本質的に悪いことではないと明確に述べていますが、「管理された下落」と「無秩序な下落」には大きな違いがあります。これがなぜこれほど重要なのかを理解するには、視野を広げて状況を俯瞰する必要があります。現政権は、20年以上にわたり積み上がってきた巨額の債務負担を、最終的には経済成長によって乗り越えるという同じ目標のもと、3つの側面から米国経済のリバランスを同時に進めようとしています。現時点で歳出削減だけで対応するのは、経済的にも政治的にも現実的ではありません。名目成長こそが、唯一現実的な道筋なのです。現在の戦略は、より供給サイドに重きを置いています。すなわち、関税やドル安によって貿易構造を見直し、過度の消費から投資主導の経済へと転換し、移民政策の実施や規制緩和を通じて格差に対応するというものです。狙いは、政府ではなく企業が資本配分の判断を行える環境を整えるとともに、給付ではなく賃金を通じて所得を押し上げていくことにあります。もしこれが機能すれば、名目成長が加速し、生産性向上に支えられたより健全な実質成長とのバランスが実現していくはずです。市場は、ある程度すでにこのストーリーを織り込み始めています。昨春以降、景気敏感株がアウトパフォームし、市場の広がりが改善し、市場の牽引役は前のサイクルを支配していたメガキャップ銘柄から交代し始めています。中小型株も再び存在感を見せています。これはまさに、私の中心シナリオである「よりホットだが短い」景気拡大の中盤で見られる典型的な動きです。同時に、金価格の急騰は、別の動きが起きていることを示しています。貴金属がこれほど動くときは、投資家が「最終局面」に疑問を抱き始めているサインです。そこで登場するのが、ケビン・ウォーシュ氏です。今回の指名には、FRBのバランスシートに対する信認を回復し、こうした懐疑の勢いを和らげる狙いがあると考えられます。金曜日の値動きからすると、その狙いは奏功しました。金と銀は急落し、ドルは小幅に上昇し、株式と金利は比較的安定していました。この組み合わせは時間稼ぎを可能にします。そしてこの戦略が機能するには、まさにその「時間」が不可欠なのです。市場がこのストーリーを信じているかを測る最良の方法の一つは、S&P500と金価格の比率を見ることです。これは、生産的な成長への信認を測るシンプルで強力な指標です。直近の比率の急落は、主に金価格の上昇によるものでしたが、金曜日の急反転は、記録的な下落幅となった金価格の低下が主因でした。とはいえ、懐疑的な見方が消えたわけではありません。むしろ、政権側が市場のシグナルに注意を払い、信認回復の必要性を理解していることを示しています。もし比率の回復が続くとすれば、まずは金価格の下落と流動性引き締め期待の高まりが先行し、その後、生産性向上に牽引された企業利益の成長加速が続く可能性が高いでしょう。この過程では、株式を含む他のリスク資産が短期的に調整リスクにさらされることも考えられます。結論として、現在の「経済を過熱させる」政策は、従来の政策ミックスよりも持続的な成長を実現できる可能性が高いと考えています。ただし、その道のりはスムーズではなく、市場の信認は行きつ戻りつしながら進んでいくでしょう。市場の反応の仕方、特に金価格、ドル、設備投資動向といったシグナルに注目すれば、この戦略が最終的に成功するかどうかが分かるはずです。私はこれこそが、短期的には不安定さがあっても、2026年に向けて強気のスタンスを維持できる最善のアプローチと考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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市場の好調が続く公算が大きいのはなぜか
一部の投資家の懸念にもかかわらず、バリュエーションはしばらく予想以上に高止まりしそうだ――市場の主要な指標がそう示唆していることについて、弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが解説します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、変化が連日押し寄せてくるように感じられるこの世界での、安定への重要な道しるべについてお話しします。このエピソードは1月30日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。モルガン・スタンレー・リサーチでは、2026年には財政、金融、規制の3政策の緩和がさらなるリスクテイク、企業活動、アニマル・スピリッツを下支えするとの見方を中核的なテーマのひとつに位置付けています。たしかにバリュエーションはすでに高いのですが、世界の非常に多くの地域で多くの力が、景気の刺激という全く同じ方向にはたらいていることから、バリュエーションは想定よりも高い水準に、かつ想定よりも長い間とどまる可能性があります。米連邦準備制度理事会(FRB)、イングランド銀行、欧州中央銀行(ECB)そして日本銀行は、政策金利を市場の想定よりも大幅に下げるか、市場の想定よりも小幅な引き上げにとどめるだろうと弊社では考えています。また米国、ドイツ、中国そして日本の政府が歳出を増やすため、財政政策も景気を刺激するスタンスが続くとみています。そして、私がこのポッドキャストで先日お話ししましたように、頻繁に変わるわけではありませんが規制がこの方程式には欠かせない項目でが 、規制がさらにリスクを取ることを後押しする方向に向かっています。もちろん、景気を刺激する要素が多く揃い過ぎていたら、帆を何枚も広げたボートのように、制御不能になるかもしれないという懸念はあります。地政学の逆風が渦を巻き、金の価格がこの1年で2倍になっただけに、政府も、そして財政・金融・規制の3政策も変化が大きすぎるのではないかと思っている投資家は少なくありません。こうした懸念を具体的に表現すればどうなるでしょうか。たとえば、私が投資家にお話しするときには、次のように言い換えられると思っています――私たちがいま目にしているのは、将来のインフレ率の予想の急上昇なのか? 国債のボラティリティは今後大きくなるのか? 米ドルのバリュエーションはフェアバリューから劇的に乖離してしまったのか? クレジット市場にはストレスの初期の兆候が現れているのではないか?以上の疑問に市場でのプライシングに基づいてお答えするなら、今のところ、答えはいずれも「ノー」です。まず、向こう10年間の消費者物価指数(CPI)上昇率の市場予想は2.4%前後です。実際、これは2024年や2023年のそれとさほど変わりありません。次に、向こう1年間の米国金利の予想ボラティリティは、今年1月1日時点でのそれよりも低下しています。米ドルについては、いろいろな報道が飛び交っていますが、ブルームバーグのデータに基づく購買力平価に基づいて言うなら、おおむねフェアバリューに当たる水準で取引されています。そして、リスクの重要な先行指標だと長らくみなされているクレジット市場は、多くの地域で非常に好調であり、歴史的と言えるほどタイトなスプレッドがまだ続いているのです。米国の外交政策の不確実性、日本の金利の大きな動き、そしてそれ以上に大きな金価格の動き。これらはすべて、マクロ経済環境が不安定になるかもしれないという投資家の懸念を強めてきました。無理もないと思います。ですが今のところ、市場に基づく安定性の主要指標の多くはまだ持ちこたえていると弊社ではみています。以上のお話しは事実ですが、ファンダメンタルズについての見方、具体的には企業の利益成長についての弊社の前向きな見方は、相場を下支えし続ける可能性があると弊社では考えています。ただし、これらの道しるべに大きな変化が生じれば、話が 変わってくる恐れがあります。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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米政府閉鎖の再発リスクとその影響について
弊社グローバルリサーチ副責任者のマイケル・ゼザスが、米国で新たな政府閉鎖が起きるリスクについて、投資家が注意すべき点と、過度に反応すべきでない理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードは、弊社グローバルリサーチ副責任者のマイケル・ゼザスが、今週後半に米国政府が閉鎖される可能性について、投資家として何を心配すべきか、そして何を心配する必要はないのかをお話しします。このエピソードは1月28日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ここ数週間、投資家の皆さまは、さまざまな政策リスクが市場に与える影響を考える必要がありました。たとえば、ベネズエラでの軍事行動による原油供給や新興国市場への影響、イランでの軍事行動の可能性、さらにはグリーンランドをめぐる米欧関係の分断リスクなどです。 それと比べると、今回の米政府閉鎖の可能性は、やや小さな問題のように思えるかもしれません。しかし、優れた投資家はすべてのリスクをしっかり管理します。そこで、この問題を整理していきましょう。現在、上院では予算をめぐる交渉が続いており、民主党は最近の出来事を受けて、移民取締りの運用方法について、ルールの厳格化と監督強化を求めています。共和党側も一定の歩み寄りを示してはいるものの、最大の制約はスケジュールです。下院は来週初めまで休会しているため、たとえ上院が今週中に採決を行っても下院が対応できず、一時的に政府資金が途切れる可能性があります。そのため、「今週末に短期間の政府閉鎖が起き、下院が再開した後に短いつなぎ予算が成立する」という展開は十分にあり得ます。これは、どちらの政党も閉鎖を望んでいないというよりは、戦略について完全に合意できていないうえ、時間が不足していることが理由です。もちろん、ひとたび閉鎖が起きると、長引くリスクもあります。しかし、弊社の基本シナリオでは、経済への影響は限定的になるとみています。歴史的に、政府閉鎖は、影響を受ける職員や政府請負業者にとって大きな負担となりますが、マクロ全体への影響は比較的軽く、また元に戻りやすい傾向があります。政府支出の多くは後から執行されますし、成長率への一時的な悪影響も、予算が復活すれば比較的早く解消されるためです。経験則では、「全面閉鎖の場合、1週間続くごとに、四半期ベースのGDP成長率を年率換算で 0.1ポイント押し下げる」程度とされています。そして、今回はすでに複数の歳出法案が可決済みであるため、想定されるのは「部分的な閉鎖」です。その場合、影響はさらに小さくなります。市場についても、反応は比較的穏やかになる可能性があります。政府閉鎖が企業収益やインフレ、またはFRBの見通しといった、資産のパフォーマンスを左右する重要な市場ドライバーを大きく変えることはほとんどありません。そのため市場は、こうしたノイズを受け流して、より本質的な材料に目を向ける姿勢が続くと考えられます。最後に、政治状況についても触れておきます。ただし、多くの投資家が考える意味とは少し違う観点で重要です。今回の政府閉鎖リスクは、大統領および共和党の支持率低下につながる一連の動きの延長線上にあります。そのため、多くの投資家は「この状況が中間選挙にどう影響するのか、そして政策はどう変わるのか」と弊社に質問されます。一見すると、こうした政治力学は、共和党が厳しい中間選挙を迎える可能性を示唆しているように見えるかもしれません。しかし、弊社としては、まだ確かな結論を出すには早すぎると考えています。そして仮に結論が出たとしても、それが市場にとって本当に重要かどうかは別の話です。第一に、市場にとって最も重要な政策、たとえば貿易、規制、産業戦略、リショアリング、そして近年ではAI関連政策などは、議会ではなく大統領権限で進められているものが多い点です。つまり、短期的な政治の揺れでは、その方向性が変わりにくいのです。第二に、去年 成立した法人の設備投資を促す税制優遇措置について、仮に議会で撤回の動きがあったとしても、大統領はほぼ確実に拒否権を行使するとみられます。 これらの政策は、2026年の経済見通しにとって重要な要素です。 総合すると、議会のスケジュールを原因とする今回の政府閉鎖の可能性は、注意して観察すべきリスクではありますが、過度に反応すべきものではありません。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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香港不動産市場の反転上昇
弊社のアジア・ゲーミング・ロッジングおよび香港・インド・不動産リサーチ責任者プラヴィーン・チョウダリーが、ここおよそ約10年で初めて、香港の主要不動産セクターが同時に成長局面に入っている背景についてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、アジア・ゲーミング・ロッジングおよび香港・インド・不動産リサーチ責任者プラヴィーン・チョウダリーが登場します。世界の投資家が常に注目しながらも、十分に理解されていないことの多い 香港不動産市場 を取り上げます。このエピソードは1月27日 に香港にて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ニューヨーク、ロンドン、シンガポールの投資家が、なぜ香港の不動産動向を気にする必要があるのでしょうか。答えはシンプルです。香港は世界でもっともグローバルな影響を受けやすい不動産市場の一つであり、香港でサイクルが転換すると、アジア全体の流動性、資金フロー、そしてマクロ・センチメントの変化を映し出すだけでなく、時に先取りして示すことがあるためです。そして現在、2018年以来初めて、香港不動産の主要3部門、すなわち住宅価格、香港中環(セントラル)のオフィス賃料、小売店舗市場が同時に上昇に向かっています。このそろっての上昇はほぼ10年ぶりのことです。 この変化を生み出している要因とはまず牽引役となっているのが住宅用不動産です。住宅価格は2018年から30%下落した後、ようやく底を打ち、2026年は力強い回復の年になりそうです。弊社では、2025年に5%上昇したあと、2026年には10%超の価格上昇を見込んでおり、2027年もさらに上昇すると考えています。この市場コンセンサスに反した見方を支えるのは、主に3つの要因です。1つ目は政策です。2024年2月、香港政府は中国本土や海外の買い手にとって負担となっていた追加印紙税をすべて撤廃しました。印紙税とは不動産の購入時や売却時にかかる税金で、政府が需要を調整したり、税収を確保したりする主要な手段となっていました。この追加負担がなくなったことで、とくに中国本土の買い手にとっては、香港での不動産売買が格段にスムーズで、ペナルティのないものになりました。実際、撤廃後は中国本土の買い手による購入比率が全体の50%に達し、以前の10-20%から大きく跳ね上がっています。では、なぜこの見通しがコンセンサスと異なるのでしょうか。一般的には、中国本土の住宅市場が弱いと香港の住宅価格は上がらないと考えられているためです。2025年中頃の市場コンセンサスでは、この回復はHIBOR(香港銀行間金利)の急低下に対する一時的な反応に過ぎないとの見方が大半でした。しかし弊社は、需給のミスマッチ、賃料上昇と金利低下によるポジティブキャリー、そして中国と世界をつなぐ金融ハブとしての香港の役割がいまだ健在であることが主要な要因だと考えています。2つ目に、需要の基礎的な部分が着実に強まってきています。香港の人口はコロナ期に減少しましたが、2025年前半には再び増加に転じ、750万人に達しました。さらに、各種の「人材誘致スキーム」により2025年のビザ承認数は14万人と、コロナ前のおよそ約2倍に増えています。新規世帯の形成も長期平均を上回り、中国本土の買い手も非常に大きな購買力となっています。3つ目の要因は、アフォーダビリティ(購入しやすさ)です。住宅価格は数年にわたって下落が続いた結果、家計にとっての「購入しやすさ」が長期平均まで戻りました。実際、価格と所得の比率は2011年頃の水準まで改善しています。ここに米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げの影響を受けた住宅ローン金利の低下が加わることで、抑制されていた需要が再び戻りつつあります。さらに「資産効果」も見逃せません。2025年にはハンセン指数がおよそ約30%上昇し、株式市場の反発は歴史的に不動産購入に波及しやすい傾向があります。住宅市場の回復が加速する中、香港のオフィス市場や小売店舗市場にも新たな楽観ムードと活発な動きが広がっています。つまり全体として、香港の不動産市場は単に「安定している」のではなく、「転換」しています。住宅価格の10%超の上昇、中環オフィス市場の持ち直し、小売店舗市場の環境改善、これらが同じ年にそろって起きており、これは2018年以来もっとも明確な好転シグナルです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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2026年の相場を方向付ける4つの主要テーマ
今年のカギとなる投資テーマは何なのか、それらは市場と経済にどう影響するのか。モルガン・スタンレーの考えを弊社テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードが、2026年の市場と経済の特徴を決める4つの主要なテーマについてお話しします。このエピソードは1月26日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。さて、最近の市場のノイズやひっきりなしに生じる相場の変動にうんざりなさっていませんか。もしそうなら、 それはあなただけではありません。今日では、短期的な相場の変動をいかに無視するか、そして世界を本当の意味で変えているもっと大きなトレンドにいかに焦点を合わせるかを理解することが、投資家にとって最も高いハードルの一つになっています。モルガン・スタンレー・リサーチでは以前から、市場について考察する際、特にボラティリティが極端な時期に考察する際に、テーマ分析を重視しています。テーマというレンズを1枚挟むとノイズを避けやすくなり、経済、産業、社会を作り変える構造的な力に注意を集中しやすくなるからです。実際、この見方はすでに成果を上げています。2025年には弊社のテーマ別株式カテゴリーがMSCI世界株価指数を平均で16%、S&P500種株価指数を同27%アウトパフォームしました。長期的な投資テーマはアルファを強力に押し上げうるという弊社の見方を、まさに裏付ける成績でした。2026年の弊社の枠組みは4つのテーマを軸にしています。人工知能(AI)とテクノロジーの普及、エネルギーの未来、多極化世界、社会の変化という4つです。このうち3つは 去年昨年からの持越しですが、いずれも大きな変化を見せています。残る1つは、弊社の以前の考察を大きく拡張させたものです。1つ目の「AIとテクノロジーの普及」はこれまで通り重要ですが、明らかに成熟・進展しています。 2025年にはAIにできることが急激に増えていることに注目が集まりましたが、2026年にはその性能が非線形的な改善を遂げていることと、AIにできることと現実世界での導入レベルとのギャップが拡大していることが強調されるようになっています。ここで重要なのは、ソフトウェアとハードウェアの効率が高まっているにもかかわらず、コンピューティング需要はその供給を大きく上回ってしまうと思われることです。AIを利用するケースが増え、その内容も複雑化するにつれて、インフラが――とりわけコンピューティング・パワーと呼ばれる処理能力が――決定的な足かせになってしまうのです。2つ目はエネルギーの未来です。ここにきて新たに緊急性を帯びてきているテーマです。先進国のエネルギー需要は横ばいで推移すると長らく想定されてきましたが、足元では増加傾向に転じつつあります。AIインフラとデータセンターがその主な要因です。2025年に比べますと、このテーマは供給面の話から政策に注目する話へと広がりを見せています。エネルギー・コストの上昇は消費者の目にもますます明らかになっており、いわゆる「エネルギーの政治」という概念が浮上しています。政策立案者は、一つの施策を優先するならほかの施策を後回しにしなければならない「トレード・オフ」があるときでさえ、安くて頼りになるエネルギーの確保を優先するよう迫られています。また、電力網を不安定にしたり家計の負担を増やしたりせずに電力を確保する新しい戦略も登場しつつあります。3つ目は多極化世界です。これも去年昨年のテーマをもとにしていますが、輪郭がより鮮明となっています。各国が安全保障、耐久力、自給自足などを重視するにつれ、グローバル化の崩壊が続いています。2025年以降は重要な投入財、たとえばエネルギー、原料、防衛力、先端技術などにアクセスできるかどうかが、競争上の優劣を決める傾向が鮮明になっています。特に、2025年のパフォーマンスが最も高かったテーマ別カテゴリーはこの多極化世界の影響を強く受けていました。地政学や産業の変化が市場での運用成果に直接つながることが浮き彫りにされた格好です。そして、いま最も大きな変化が見られるのは4つ目の主要テーマです。弊社では「社会の変化」と呼んでいますが、これは「長寿」に関する以前の考察を拡張させたものです。この新しい枠組みでは、社会に影響を及ぼしているグローバルな力を幅広くとらえています。具体的には、AIに起因する労働の混乱とその後の展開、人口の高齢化、消費者のし好の変化、K字型経済、健康な老後を目指す取り組み、多くの地域でみられる厳しい人口動態などがあげられます。これらの変化は政府の政策、企業の戦略、そして経済成長にますます影響をもたらしており、そのインパクトは投資家の一般的な予想よりもはるかに多い産業に及んでいます。重要なのは、お話ししたこれらのテーマが単独で機能するわけではないことです。AIはエネルギー需要を加速させます。エネルギー・コストは政治を動かし、政治はサプライ・チェーンや国家の優先順位に影響を与えます。そしてこれらのすべてが、雇用から消費パターンに至る社会の変化に直接つながっていくのです。テーマ別投資の威力はこれらの交点を、すなわち複数の力が意外な過程を経て互いに強めあうところを理解することにあるのです。要約しますと、2026年の投資において最も重要なのは何かと問われたら、それは経済成長率の話だけで済むことではありません。重要なのは構造です。テクノロジー、エネルギー、地政学、そして社会はどのように変化するのか。それを理解することが、機会とリスクが本当はどこに向かっているのかを知る最も明快な方法かもしれません。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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市場の規制緩和という追い風
米国政府による規制緩和の取り組みはどのような影響をもたらすのか。銀行のバランスシートから資産のバリュエーションに至るまで、弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが展望します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、緩和政策の中心テーマのひとつについて、そして米国モーゲージ債券市場の最新動向についてお話しします。このエピソードは1月15日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。向こう1年間についての弊社の考察で重要なのは、金融政策と財政政策、そして規制政策の3つが同時に緩和されるという異例な展開になっていることです。このようなことは、通常なら起こりません。この種の支援策は、経済が今よりもはるかに厳しい状況に陥っているときにのみ講じられるのが普通です。しかも、弊社の予測によれば2028年末までに人工知能(AI)とデータセンター関連で3兆ドルを超える投資が行われるという、非常に大きな相場下支え要因があります。それと並行して3つの緩和政策が実行されていくのです。このすそ野の広い緩和策はグローバルなテーマでもあります。日本では、財政がさらに拡張されるとの期待から株価が上昇しています。欧州では、ドイツが歳出を拡大し続けるとみられる一方、欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行は市場予想を上回る幅で政策金利を引き下げると思われます。しかし、昨今よく見られるように、話の中心にいるのはやはり米国です。弊社では、米国のコアインフレ率が目標水準を上回っていても、FRBは今年も利下げを続けると考えています。また、米国政府による歳出は歳入をおよそ 約1兆9000億ドル上回る見通しです。関税収入による調整があるものの 「大きく美しい一つの法案(OBBBA)」による減税が発効するためです。しかし、私が今日注目したいのは、景気刺激策という3本脚の腰かけを支える3本目の脚です。おそらく、人々の関心を最も集めるのは金融政策と財政政策の緩和でしょうが、実は規制緩和という重要な政策レバーもこれら2つと同じ方向に入れられるのです。規制政策はわかりにくく、若干退屈な話題になりうることも否めません。しかし、金融市場がどのように機能するかを考えるときには、極めて重要になります。規制は、多くの種類の資産の買い手に刺激をもたらします。銀行・保険セクターという非常に重要なセクターの買い手にとっては、特にそうです。まず、ある資産が魅力的に映るためにはどれほどの価格で売買される必要があるか、特定の市場参加者が保有できる(あるいは、できない)資産の量はどの程度か、といったことは、規制によってほぼ当然に決まることがあります。規制政策は世界金融危機の発生を受けて劇的に厳しくなりましたが、ここにきて緩和され始めています。弊社の米国銀行株アナリストによれば、金融規制にとって重要な一歩となる自己資本ルールの最終化が今年のうちに実施され、金融システム上重要な巨大金融機関(GSIB)のバランスシートに計5兆8000億ドル前後もの貸し出し余力が生じる見通しです。また12月半ばには、通貨監督庁(OCC)と連邦預金保険公社(FDIC)が、2013年に導入した貸付のガイドラインを撤回しました。このガイドラインのために、銀行はこれまで、比較的多額の債務を抱える企業への貸し付けをあきらめてきました。そしてつい先週には米国の現政権が米国のエージェンシー MBS、すなわちファニーメイとフレディマックが2000億ドルのモーゲージ債を購入してバランスシートで保有すると発表しました。この重要な市場で急激にスプレッドを縮小する大きな動きだと言えます。このように、投資家にとっては読み取るべきポイントがいくつかあると弊社では考えます。金融、財政、そして規制という3つの分野で同時に緩和政策が講じられれば、過熱していてバリュエーションが割高になっているかもしれない市場が下支えされることになります。また、これら政府系MBSの具体的な見方については、私の同僚ジェイ・バコウと弊社モーゲージ戦略チームが、この変化は急速に相場に織り込まれていると考えています。そして、政府系MBSスプレッドに魅力があるという以前の見方から中立に転じています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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インド市場復活の可能性
弊社インド・リサーチ責任者兼チーフ株式ストラテジストのリダム・デサイが、「2025年に他の新興国市場をアンダーパフォームしたインド株は、回復に向かうのか」という大きな論点についてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社インド・リサーチ責任者兼チーフ株式ストラテジストのリダム・デサイが、今年のアジアにおける大きな論点のひとつ、歴史的な低迷のあと、インド株式は強さを取り戻せるのか、についてお話しします。このエピソードは1月14日 にムンバイにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。インド株は2025年、他の新興国市場に対して、1994年以来およそ30年ぶり にの大差でアンダーパフォームして1年を終えました。その理由としては、サイクル半ばでの成長減速、割高なバリュエーション、インドにはAI関連の明確な投資テーマが存在しないことが挙げられます。さらに、米国との通商協議の遅れや、世界的な強気相場におけるインドの「低ベータ」も、アンダーパフォーマンスの要因となりました。しかし、潮目は変わりつつあります。バリュエーションは大幅な調整が入り、おそらく10月に底を打ったと考えられます。さらに重要なのは、インドの成長サイクルが予想以上の上振れに向かっているとみられることです。政策当局は景気の勢いを取り戻すために、リフレに全力で取り組み、積極的な政策を次々と実施しています。インド準備銀行は利下げを行い、預金準備率を引き下げ、市場に流動性を供給し、さらには銀行規制の緩和を進めるなど、景気を後押しする施策を展開しています。政府も公共投資を前倒し、1兆5,000億ルピー規模の大幅なGST減税を発表し、国民がモノやサービスへの支出を増やせるよう後押ししています。こうした一連の動きに加え、インドと中国の関係改善、中国政府の新たな「反内巻き」政策、包括的なインド・米国通商協定の可能性などが、回復に向けた着実な基盤となっています。要するに、パンデミック後には厳しかったインドの経済スタンスが緩和に向かっているのです。こうした変化は、今後の市場に対する投資家の見方に大きな変化をもたらす可能性があります。インドのマクロ環境も進化しています。GDPに占める原油比率の低下、特にサービス分野における輸出比率の上昇、財政健全化の進展などは全て、貯蓄の不均衡が縮小していることを示しています。これは、構造的に今後、金利が低下することを意味します。柔軟なインフレ・ターゲティングのもと、インフレ率と金利の変動幅もさらに縮小するでしょう。高成長、低ボラティリティ、金利低下が揃えば、株式のP/E倍率は上昇するでしょう。加えて、家計の資産構成が株式にシフトしている点も重要です。国内ミューチュアルファンドへの継続的な資金流入が、こうした傾向を裏付けています。投資家の懸念は理解できますが、文脈の中で捉える必要があります。企業の資金調達が増えているのは、バリュエーションの高さだけではなく、将来の成長を示している場合も多いのです。株式への資金シフトが続く中、国内投資は引き続き堅調です。インド株式のプレミアムは、堅固な長期成長期待と、実質金利の低下見通しを反映したものです。政策面でも成長押し上げに向けた取り組みは力強く、実質成長率は上振れる可能性があります。インドは現時点でAI分野をリードしているわけではありませんが、2月に予定されているAIサミットは、技術イノベーションにおけるインドの役割についての懸念を和らげるかもしれません。投資家が注目すべき重要なカタリストは何でしょうか。企業収益の上方修正、インド中銀のさらなるハト派姿勢、民営化などの政府の改革、長らく待たれている米国との通商協定などが挙げられます。一方で、世界の成長減速や地政学的環境の変化といったリスクにも注意が必要です。では、15か月にわたる相対的な苦境を経て、インドは構造的な再評価の入り口に立っているのでしょうか。成長率が予想を上回れば、2026年のストーリーは「インドの復活」になるかもしれません。弊社は成長率の上振れを予想しています。続報をぜひお楽しみに。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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成長サイクルをこぞって示唆するシグナルの数々
複数の指標がすべて同じ方向を指し、市場と経済が今後力強い成長を遂げることを示唆しています。弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツがご紹介します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日はコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、グローバルな景気サイクルへの楽観的な見方を示す複数の指標がこぞって同じ方向を指し示すという珍しい現象と、なぜそれが重要な注目点になるのかという2点についてお話しします。このエピソードは1月9日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2026年が始まりました。予測というものは難しく、惨めな思いをさせられる行為でもあります。2025年はまさにそうで、市場が好調な年であっても大きな変動が起こりうることを思い知らされました。しかし総じて言えば、モルガン・スタンレー・リサーチでは、今年は株高と債券利回りの小幅な低下が共存する良い年になるとの見方を変えておりません。たしかに、新年早々いろいろな事件が起きていますが、メッセージの中核部分は依然有効だと弊社では考えています。しかし、今回は向こう1年間の弊社予想を再度ご紹介するのではなく、グローバルな景気サイクルの先行指標に長らく位置付けられている数々の資産を幅広く検討してみたいと思います。私はこれらの資産を重要だと考えています。特筆したいのは、今はこれらがすべて同じ方向に動いていること。景気の循環的な拡大を示唆していることです。たしかに、今日の市場では一部で投機的な動きや過大なバリュエーションも見受けられますが、これらの資産が同じ方向を向いていることは、もっと本質的な何かが起きている可能性を示唆しているのです。まず、銅の価格です。ボラティリティが高いものの景気の変化に敏感に反応することが多い指標ですが、この1年間でおよそ40%上昇しています。また。ガラスから錫(すず)に至る非取引型工業原料を網羅する重要な指数は、投資家の活動の影響を受けにくいため有用なのですが、それもこの1年で10%上昇しています。また韓国株は、景気変動に非常に敏感に反応することが多く、投資家からはグローバル経済の楽観度の代理指標と以前からみなされていますが、こちらは 去年 昨年80%も上昇し、主要市場の中では最高のパフォーマンスを記録しました。小型株も景気変動に敏感に反応する傾向がありますが、これもこのところ大型株をアウトパフォームしています。そして、最後になりましたが、欧米の金融株です。これも景気に敏感なことが多いセクターであり、市場全体をかなり大幅にアウトパフォームしています。これらの異なる地域の異なる資産はすべて同じことを告げているようにうかがえます。すなわち、グローバルな景気サイクルの見通しは改善してきており、このところは経済活動自体も実際に良くなっていることを、これらの資産は示しているように見えるのです。個々の指標が誤っていることはあり得ます。しかし複数の指標すべてが同じ方向を向いているとなれば、これは十分注目に値します。しかも私が思うに、この現象は同僚のマイク・ウィルソンが1月5日付の配信でお届けした重要なメッセージ、すなわち、米国株に対する強気な見方は経済の基礎的な活動の改善としっかりリンクしているのだというメッセージに見事につながっています。具体的に言えば、企業の利益の伸びは認識されている以上に大幅かもしれないという弊社の見方には裏付けがあるのです。もちろん、データは今後変動します。値が低下すれば、それは経済や景気サイクルの悪化を示唆している可能性があります。しかし今のところ、景気サイクルの様々な指標は良好な値を示しています。この状況が続けば、中央銀行の政策をめぐる疑問や、グローバル経済の成長拡大を示すこれらのしるしと釣り合う追加利下げ幅はどの程度かといった疑問が、さらに浮上してくるかもしれません。今回の市場のサイクルにはまだ上昇余地がある。そしてこの弊社の見方の中核を支える証拠はまだ健在である。弊社は今のところそうみています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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投資家が見過ごしていた強気シグナル
2026年の米国株を押し上げる公算が大きいものの、投資家が見落としているかもしれない主な材料について、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがお話しします。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 本日は弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、市場に作用する諸々の力がひとつにまとまり、2026年に対する弊社の強気な見通しを補強していることについてお話しします。このエピソードは1月5日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。新年を迎えるときには、将来のことに目を向けるのが普通です。ですが今日はあえて一歩戻り、市場が見落としていることについてお話ししたいと思います。いくつもの強気な材料が勢ぞろいしているのに、それらが一つにまとまってもたらす総合的な影響を、市場はまだ過小評価しているからです。堅調な増益基調、FRBによる追加利下げなど、個々の好材料は大いに注目されています。しかし弊社がみる限り、本当に重要なのはこうした力がお互いを強めあっていることです。規制の緩和、プラスの営業レバレッジ、緩和的な金融政策、そして景気を下支えする性質をますます強めている財政政策。これらはすべて、同じ方向に作用しています。今年の後半には中間選挙も予定されており、こうした政策手段は今後も景気を支える方向に維持されそうです。重要なのは、私が思い描く展開がまだ相場に織り込まれていないことです。循環株の売買ポジションは比較的軽いままで、景気敏感株に対する投資家の心理は熱狂には程遠い――。この組み合わせ、すなわちファンダメンタルズの改善と慎重なポジションという組み合わせは、回復の初期段階の特徴そのものであることが多いのです。私は引き続き、こうした追い風が最も過小評価されているのは循環株だとみています。業種でいえば一般消費財、金融、資本財・サービス、そして中小型株です。弊社が追跡している指標の多くは、まさに上向き始めたばかりです。私にはもう、これはサイクルの終盤には見えません。むしろ、私が「ローリング・リカバリー」とみなしているものの初期に見えるのです。投資家が躊躇(ちゅうちょ)してしまう理由の一つは、従来型の景気循環指標、とりわけ米供給管理協会(ISM)による製造業購買担当者景気指数(PMI)がさえないことに求められます。これらの指標が明らかに再加速するまでは、循環株の売買の推進がためらわれるのです。そしてこの躊躇の根底には、米国経済が「グロース・スケア(成長失速への警戒)」に逆戻りしないだろうかという根強い不安感があります。私は違う見方をしています。私は、3年間に及んだローリング・リセッションは 去年 昨年4月の「解放の日」をもって終わったと考えています。もしその通りであれば、伸び悩む雇用関連統計におけるいくぶん弱い動きは、株式にとっては前向きな材料となります。FRBのハト派的なスタンスがその分長期化し、かつ強化されるためです。まさに株価にとっては好材料です。私は、主要なマクロ経済指標は2025年下半期に底を打ち、2026年がその再加速の年になるとみています。より長いサイクルの分析もこの見方を支持しています。具体的には、ISM製造業PMIの45ヵ月サイクルが反転を示しています。この指標の回復は遅れていますが、取り消されたわけではありません。もうひとつ、十分に注意が払われているとはとても言えない追い風として、エネルギー価格をあげることができます。特にガソリン価格はほぼ5年ぶりの安値水準にあり、低中所得の消費者には経済面の大きな救いとなっています。こうしたクッションは重要です。経済のほかの部分が堅調な時は特にそうです。この週末にベネズエラで起きたことも、長期的には原油価格を押し下げそうです。次はセクターごとに見ていきましょう。規制緩和の恩恵を享受するセクターの筆頭は金融です。こうした変化を見越して、金融株は過去1年間、高パフォーマンスをあげてきました。2026年に入ってもこの上昇は続くだろうと私は見ています。 住宅も回復局面の重要な要素になり得ます。賃金の伸び悩みと賃料相場の下落は住宅価格を押し下げるかもしれませんが、一部の住宅建築業者は利益率よりも量を重視しています。そのため、これらの業者の利益は頭打ちになるかもしれませんが、住宅取引の回転を高め、よりハト派的なインフレ環境を形成することにつながる可能性があります。当然ながらリスクも存在します。弊社では9月以降、流動性を最も懸念していますし、それは投機的な資産の弱さという形で相場にも反映されています。ただ、FRBがこれに対応して量的引き締めを先に終了させ、準備金管理プログラム(RMP)を通じて資産購入を再開したことは好材料です。このプログラムは、ストレスが加わっている気配をここ数ヵ月間見せていた金融システムの流動性を効果的に増やしています。AI関連の設備投資が減速するのではとの懸念の再燃というリスクもあります。借り入れた資金による投資の見返りがどうなるのかもっと明確に知りたいと市場が要求する場合は、特にそうです。また地政学的には、米国によるベネズエラへの介入が新たな問題を引き起こしています。戦略的には、この一件によって西半球に対する米国の影響力は強まりますし、弊社の「景気を過熱させる」という仮説も支持されますが、中国が対応策を取るか否かという大きなワイルドカードが残ります。まとめますと、現在はサイクルの回復局面の初期段階にあると考え2026年の米国株を強気にみている弊社の見方は、リスクとリワードのバランスから見てもやはり支持されると弊社では考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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弊社の2026年Outlookに対する投資家の賛否について
弊社チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターが、モルガン・スタンレーの2026年グローバル見通しに対するお客様からのフィードバックにお答えします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターが、2026年の弊社見通しに関して、特に議論を呼んだテーマを選んで、お寄せいただいた御意見について考察します。このエピソードは12月16日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。数週間前に、弊社はグローバル経済および市場に関する2026年の見通しを掲載したOutlook(アウトルック)を発行しました。その後、アウトルックで示した重要なテーマについて、世界中のお客様と幅広い会話や意見交換、議論を重ねてまいりました。いただいたご意見は、強い賛同から鋭い反論まで多岐にわたり、その間には多くの微妙に異なるご意見がありました。こうした対話、特に反論は、弊社の前提を再検証し、思考を磨く上で非常に重要であると考えています。AIおよびデータセンター関連の設備投資に対する前向きなスタンスと、クレジット市場の役割が極めて重要であるとの弊社見解は、特に注目を集めました。弊社の2026年の設備投資予想は、今後数年間、コンピューティング需要が供給を大きく上回るという強い確信に基づいています。弊社は引き続き、公募、私募両方の無担保、仕組み債、証券化商品を含むクレジット市場が、次なるAI主導の投資の波を支える資金調達の中心になると確信しています。ここで重要なのは、この支出がマクロ経済の状況、つまり金利や経済成長率の水準に対して比較的鈍感であると考えられる点です。AI投資の規模については、弊社の経済予想に対して「もっと高い成長になるのではないか?」というご指摘がありました。これは複数年にわたるプロセスであることから、成長への影響も長期にわたると弊社は考えています。米国クレジット・ストラテジストは、投資適格債、いわゆるIG債の供給について、発行総額が前年比25%増の2兆2,500億ドル、純発行額が前年比60%増の1兆ドルと予想しており、大きな注目を集めました。この発行額の弊社予想に対して反論がありました。設備投資が売上高の成長を上回るペースで拡大し、フリーキャッシュフローを圧迫するため、その間はクレジットが資金調達の重要な手段となるためです。なお、弊社が予想している発行増の主因はAIだけではありません。M&A活動の活発化と、それに伴う買収資金調達を目的としたIG債の供給増加も重要な要因になると考えています。また、信用スプレッドが小幅に拡大するとの弊社予想にも反論がありました。IG債のスプレッドは15bp前後拡大すると弊社は予想しており、供給の急増にもかかわらず、過去のレンジの下限付近にとどまると考えています。より大幅な拡大を予想する声もありましたが、AI関連の新規発行の大半は、現在、株式市場におけるウェイトに比べてクレジット市場における構成比が小さい、ダブルA格からトリプルA格の高格付けの発行体によるものになると弊社は見ています。さらに、今後2回の利下げによる金融緩和政策の継続、景気の緩やかな再加速、利回りを重視する投資家からの需要の持続が、スプレッドを下支えると考えています。弊社のマクロストラテジストは、2026年を、各国中央銀行が均衡点に近づく中、協調的な引き締めから非協調的な正常化に向かう、世界の金利にとっての移行の年ととらえています。この見方は、概ね好意的に受け止められました。また、国債利回りが概ね総じてレンジ内で推移するとの見通しも同様です。ただし、FRBの政策がハト派寄りに傾くことを市場が織り込むという見方は、かなりの議論を呼びました。イールドカーブのスティープ化については広く合意がありましたが、スティープ化がブル・スティープニングなのかベア・スティープニングなのかについては依然、意見が分かれています。米国以外については、ECBが2026年に追加で2回利下げを行うとの予想に対して最も大きな反論がありました。弊社エコノミストは、「ディスインフレのプロセスは終わった」とするラガルド総裁の見解に同意していません。ドイツの財政拡張によってユーロ圏の緩やかな成長が続いても、他の諸国が財政再建を進める中、依然として需給ギャップが存在し、インフレ率はいずれECBが目標とする2%を下回ると弊社は見ています。中国についても活発な議論がありました。最大の論点は、ミクロとマクロのどちらの視点で見るかという点です。言い換えると、「市場は経済そのものではなく、経済も市場そのものではない」ということになります。今年、中国への投資に対する市場のセンチメントは好転し、弊社ストラテジストもこの見方に賛同しています。ただし、経済面ではデフレが続き、政府の財政政策の規模では目先、リフレーションを促すには至らないと見ています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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市場の安定がFRBにとって重要な理由
FRBが毎月400億ドルの米国債購入を再開することを決定しましたが、その意味について、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストの マイク・ウィルソンがご説明します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、先週のFRBの決定と、それが株式にとって何を意味するかについて、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストの マイク・ウィルソンがご説明します。このエピソードは12月15日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週のFRBの会合は、弊社の前向きな2026年株式見通しをさらに後押しするものとなりました。FRBは予想通りタカ派的な利下げを実施しましたが、労働市場がさらに軟化すれば、追加の措置を取るとも示唆しました。利下げ以上に重要だったのは、FRBが資産購入の再開を決定したことです。具体的には、FRBは金融市場の円滑な運営を確保するため、毎月400億ドルのTビルの購入をすぐに開始する予定です。発表前に投資家と話をした限り、この購入額とタイミングは、コンセンサスや私自身の予想を上回るものでした。また、これは私が数ヶ月間議論し、来年の見通しでも強調してきた重要な洞察を裏付けるものです。まず、FRBは市場から独立しているわけではなく、市場の安定性が、完全雇用と物価安定という定められた二つの使命を超えて、FRBの政策において主要な役割を果たすことがよくあります。次に、債務と赤字の規模を考えると、FRBには財務省が政府資金調達を行うのを支援する追加責任があり、この関連で今後も財務省とより緊密に連携していく可能性が高いでしょう。最後に、予想よりも早く、より積極的に資金調達市場に介入するという決定は、FRBの定義する「量的緩和」ではないかもしれません。しかし、これは債務の貨幣化の一形態であり、特に財務省が長期国債よりも短期国債を多く発行する中で、依然として増加している米国債発行によるクラウディングアウトを直接的に緩和するものです。FRBの10月の会合では、流動性の引き締まりについて若干の懸念が示されましたが、私はこのポッドキャストで、これが株式の強気相場にとって最大のリスクであると述べてきました。流動性の引き締まりの証拠は、暗号資産や利益の出ていない成長株など、流動性に最も敏感な資産価格の動きに見られます。FRBはこれらの資産クラスのパフォーマンスにはあまり関心がないかもしれませんが、債券、信用、資金調達市場の金融安定性には関心があります。これが、FRBが大方の予想よりも早く、より大規模な形で資産購入を再開した理由でしょう。先ほど述べたように、短期国債の発行を今後増やすという財務省の目的を踏まえ、弊社はこれを債務の貨幣化の一形態と見ています。さらに重要なのは、これらの購入が市場に追加の流動性を提供し、利下げと組み合わせることで、FRBがインフレ目標の未達をそれほど心配していないことを示唆している点です。これは「経済を過熱させる」という2021年初頭から続く弊社のシナリオに極めて合致しています。念のため申し上げると、インフレ加速は、FRBが2022年のように「パンチボウル」を取り上げざるを得なくならない限り、資産価格にとってポジティブな要因です。皮肉なことに、短期的なリスクは、このように予想よりも大規模な資産購入プログラムであっても、市場が円滑に運営されるために必要な準備金の水準をFRBが大幅に過小評価していた場合、不十分になる可能性があるということです。これは2019年に起こったことであり、FRBがそもそもスタンディング・レポ・ファシリティ(常設レポファシリティ)を作った理由です。しかし、これはどちらかというと必要に応じて使われるツールです。FRBが円滑に機能する金融市場に必要な準備金の水準を過小評価していた場合、市場が求めたり、必要としたりするかもしれないものは、より大きなバッファーです。はっきり言っておきますが、それがどれほどの水準かは私には分かりません。しかし、市場が今回のFRBの措置で十分かどうかを教えてくれると信じています。この点に関しては、流動性に敏感な資産クラスや株式市場の分野に注目することが重要でしょう。特に、先週の金曜日と今朝の取引でこれらの相場がどれほど低迷していたかを考えるとなおさらです。結論として、FRBは過去数か月間にわたり市場の揺れに対応してきました。もし市場が再び不安定になれば、FRBは状況が落ち着くまで再び反応するだろうと弊社は強く確信しています。先週のFOMC会合を受け、そうした確信はさらに強まり、弊社は今後6~12か月間について強気の姿勢を維持しています。S&P500の目標価格は7800です。短期的な調整は買いの機会として歓迎します。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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クレジット・サイクルは過熱しているのか?
2026年にはクレジット・サイクルが燃え尽きる前にさらに熱く燃え上がるかもしれない――そう考えられる理由を、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者の アンドリュー・シーツがご説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、コーポレート・クレジット・リサーチ責任者の アンドリュー・シーツが、2026年のグローバル・クレジット市場の見通しについてお話しします。、クレジット・サイクルが燃え尽きる前にさらに熱く燃え上がるかもしれないと弊社が考える理由をご説明します。このエピソードは12月12日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。まさかこんな状況が続くはずはない――2026年のプランを練っているグローバル・クレジット投資家の多くは、おそらくそうつぶやいているでしょう。米国とアジアでは、クレジット・スプレッドが25年以上前に見られた水準にまで縮小しています。社債の発行はますます活発になっており、企業の設備投資も急増しています。格付けが最も低い社債の市場では、プレッシャーの兆候がはっきりうかがえます。そして、クレジット投資家は心配するように教育されています。こうしたことはすべて、いやこれ以外の現象も、クレジット・サイクルが自らの重みに耐えられなくなりひび割れし始めている兆候なのではないか、というわけです。まだそこまでは達していない、というのが弊社モルガン・スタンレーの見方です。弊社はむしろ、2026年にはクレジット市場が燃え尽きる前にさらに熱く燃え上がるだろうと考えています。その理由の一部は、異例なほど景気刺激的な環境に求められます。まず、中央銀行が金利を引き下げています。政府は支出を増やしており、規制も緩和されつつあります。おまけに、人工知能(AI)関連の投資サイクルは一世代に一度あるかないかの巨大な投資サイクルかもしれません。こうしたことが相まって、リスクを取ることができる企業セクターはさらにリスクを取りにいく公算が大きいと思われるのです。そのため、来年のクレジット投資の方針は2005年や1997-1998年のそれによく似たものになるだろうと弊社ではみています。どちらの時期も設備投資、企業買収活動、金利、そして失業率という4種類の指標の水準が、弊社の来年の予想値にかなり近いのです。そして2026年を展望するにあたっては、これら2つの時期が相反する2つの見方を提示してくれます。2005 年は、低所得の消費者が本当に苦労し始めているものの、すなわち、当時は中国でしたが、今日ではAI投資がそれにあたるかもしれませんが、別の力が作用して市場全体は好調を維持しているという時期に近いのかもしれません。一方、1997年や1998年は、新しいテクノロジーは本当に世界を変えていくと投資家が確信を強めている時期に近いと言えるでしょう。当時の新しいテクノロジーはインターネットでしたが、今日のそれはAIです。この状況が変わっていくうえで重要になるのは社債の発行状況だろう、と弊社では考えています。これは各地域にとって大きなテーマであり、米国、欧州、そしてアジアのクレジット市場全体に対する弊社見解の重要なポイントのひとつでもあります。来年の米国市場における投資適格社債の純発行額は2025年に比べて60%以上多くなり、計1兆ドル前後に達すると弊社では予想しています。この発行額増加の原動力は、設備投資と企業買収が幅広いセクターで増えることに加えて、テクノロジー企業によるAIへの投資が増え続けることにあります。これらの社債がすべて市場で売りに出されれば、それに応じて米国のスプレッドは拡大せざるをえなくなるでしょう。高利回りのおかげで社債購入需要が非常に旺盛な場合でも、そして景気が最終的に持ちこたえる場合でも、スプレッドは拡大するのです。欧州やアジアの投資適格社債、そしてグローバル・ハイイールド債など、発行額が比較的少ない地域や分野では、米国よりも若干良い状況になると思われます。弊社では、これらはいずれも米国投資適格社債をアウトパフォームすると予想しています。トータル・リターンについては、これらの市場すべてが4~6%前後のリターンを産むと考えています。実際にそうなれば、例えば米国株式などに対してはアンダーパフォームとなるでしょうが、現金に対してはアウトパフォームすることでしょう。2025年や2005年とある程度同じように、2026年には個別銘柄とセクター分散が主要なテーマであり続けると弊社ではみています。そして、保有する債券の残存期間も重要になる公算が大きいでしょう。クレジットのイールドカーブはスティープ化していますし、弊社の米国金利ストラテジストは、米国債のイールドカーブがさらに大幅にスティープ化すると予想しています。つまり、いわゆるキャリーとロールダウン、そしてイールドカーブのどこにポジションを置いているかが最終的な運用成績に非常に大きく影響することになるでしょう。弊社では、米国と欧州の両方で期間5年から10年までの社債のリスク・リワードが最善だろうと考えています。グローバル・クレジットにとって最も重要なリスクは、引き続きリセッション(景気後退)です。リセッションになれば、景気悪化という側面でも需要の弱まりの側面でも、スプレッドは拡大するでしょうし、利回りの低下につれてクレジットへの投資需要も減るでしょう。その場合、弊社によるスプレッドの予想は楽観的過ぎることになり、ハイイールド債が投資適格債をアウトパフォームするという弊社予想も誤りになるでしょう。また、この弱気シナリオのマイルド・バージョンもあります。それは、企業の動きと社債の供給が弊社予想以上に活発になり、1998年後半や1999年に近い状況になるというシナリオです。あの当時、米国の投資適格債のスプレッドは現在よりもざっと30ベーシスポイント大きい状態にありました。景気が良く、株式相場も上昇を続けていたのに、スプレッドは拡大していたのです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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AIが電力経済に革新を起こす
弊社の南アジア・エネルギー担当アナリストのマヤンク・マヘーシュワーリーが、AIによる前例のない電力需要が今後数年間で電力業界をどのように変革するかについて解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社の南アジア・エネルギー担当アナリストのマヤンク・マヘーシュワーリーが、AIと電化が世界の電力のルールをどのように書き換えているかについてお話しします。このエピソードは12月2日 にシンガポールにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。もし最近、電気料金が上昇していると感じたり、AIに関する話題がニュースで頻繁に取り上げられていると感じている方がいらっしゃれば、それはあなただけではありません。私たちの電力の使い方、そして必要性は急速に変化しており、一般家庭から大手テック企業まで、すべての人に影響を及ぼしています。世界の電力消費は、過去10年余りで最も速いペースで急増しています。年間需要は2030年まで毎年1兆キロワット時以上増加する見込みであり、その成長の5分の1近くはAI主導のデータセンターによるものです。弊社では、2028年までにデータセンターへの投資額が およそ約3兆ドル、2028年までの3年間で電力消費の伸びがおよそ約126ギガワットに達すると推計しています。これはカナダの年間電力消費量にほぼ匹敵します。このような状況下で、電力価格はさらに上昇する見通しです。2024年の最新データによると、世界の電力セクターへの投資は過去最高の1兆5,000億ドルに達し、消費者の電力価格はおよそ約15%上昇しました。2030年までには、米国の電力市場が世界のデータセンター電力消費の半分を占めるようになるでしょう。また、アジアでも米国のハイパースケーラー需要のおよそ約15%が波及し、アジアの一部の電力市場がさらに逼迫する要因となります。電力消費が増加する中、電力の販売価格と発電コストの差、いわゆる「パワースプレッド」は15%近く拡大すると予想されます。この利益率の拡大は、発電会社の業績予想を押し上げ、電力サプライチェーン全体で3,500億ドルの価値創出につながる可能性があります。一方で、長年にわたる電力網への投資不足がボトルネックを生み、新たな投資の波を引き起こしています。業界は、天然ガスやエネルギー貯蔵、その他の新技術への依存を強めるとともに、再生可能エネルギーの選択肢も支援しています。2024年にはガスへの投資が過去最高を記録し、2026年以降はガスが新たな世界的な発電源となる見込みです。今後、天然ガスは中国を除く世界の新たな電力需要のおよそ約5分の1を担うと予想されます。また、原子力も投資拡大の好機を迎えており、(エネルギー貯蔵である)バッテリーもデータセンターや中国などの市場で新たな投資が進んでいます。今後、電力業界は予想外の変化と機会に満ちた数十年にわたる変革期を迎えます。化石燃料と非化石燃料の協業増加、段階的な価格設定の導入拡大、スポット市場やビハインド・ザ・メーター(BTM)市場における販売急増などにより、長期的かつ高水準のパワースプレッドが続くでしょう。ガス、原子力、エネルギー貯蔵、燃料電池のサプライチェーンは、特にアジアと米国で価格決定力が強まり、新たな成長機会を得る見通しである一方、電力網運営者は投資増加と収益改善の恩恵を受けます。逆に、純粋な太陽光・風力発電事業者は、アジアでコスト上昇が続く可能性がありますが、これは米国や欧州でも既に見られる傾向です。世界の電力網がバッテリーや安定した化石燃料供給への依存を強め、AIや製造業の国内利用など、電力サプライチェーン全体の需要増加に対応していくためです。結局のところ、AIと電化が電力需要を加速させる中で、本当の課題は再生可能エネルギーを増やすことだけではありません。強靭で柔軟な電力網を構築し、新しいエネルギー経済を乗り越えていくことが重要です。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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2026年の米国成長を牽引するもの
弊社米国チーフエコノミストのマイケル・ゲイペンが、2026年に成長・インフレ・AI革命がどのように展開するかを解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社米国チーフエコノミストのマイケル・ゲイペンが、2026年の米国経済見通しについて、成長・インフレ・雇用・米連邦準備制度理事会にどのような影響があるのかを解説します。このエピソードは11月25日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2025年が急速かつ大胆な政策変更の年だったとすれば、2026年はその余波が落ち着く年です。去年 昨年、主に厳しい貿易・移民政策の影響で、成長が低迷し、インフレ率がなかなか下がらないと弊社は予測しましたが、これは的中しました。しかし今年は状況が変わりつつあります。米国経済はようやく高い不確実性の段階を脱しつつあり、2026年には1.8%、2027年には2%の緩やかな成長に戻ると見込んでいます。インフレ率は落ち着くものの、FRBの目標である2%には届かない見通しです。2026年末までには、ヘッドラインPCEインフレ率が2.5%、コアインフレ率が2.6%となり、いずれも2027年を通して2%を上回る水準が続くと予想しています。つまり、インフレとの戦いは終わっていませんが、最悪期は過ぎたと言えるでしょう。 従って、2025年が「成長低迷と粘着するインフレ」だったとすれば、2026年と2027年は「緩やかな成長とディスインフレ」と表現できます。貿易・移民政策の影響は薄れ、経済環境は改善する見通しです。現在、いくつかのリスクも残っています。関税が消費者価格を一時的に押し上げる可能性があり、企業が関税分を価格に転嫁できなければ追加のレイオフが懸念されます。しかし、2026年後半以降は、これらのリスクが好転し、成長にプラスのサプライズが期待できる状況になると考えています。結局のところ、AI関連の設備投資は引き続き堅調で、富裕層の消費も好調です。楽観的な見方ができる理由がある一方で、最も可能性が高いシナリオは「緩やかな成長への回帰」です。米国の消費者は立ち直り始めますが、そのペースはゆっくりです。関税の影響で2026年前半は物価が高止まりし、低・中所得層の購買力が圧迫されます。これらの層は主に労働市場からの収入で消費を行うため、インフレが落ち着き始めるまでは購買力が制約されるでしょう。実質消費は2026年に1.6%、2027年に1.8%増加する見込みですが、急成長とは言えません。主な要因は、移民制限や関税の影響で雇用が抑えられ、雇用市場が依然として「低採用・低解雇」モードにあることです。失業率は2026年第2四半期に4.7%でピークを打ち、年末までには4.5%へと低下すると予想しています。雇用は存在しますが、労働市場は活況とは言えません。関税の影響が吸収されるまでは、雇用が上向くのは難しいでしょう。雇用が冷え込むと、FRBが動きます。FRBは利下げを進めていますが、これはコストを伴います。9月と10月にそれぞれ0.25%の利下げを行った後、2026年半ばまでにさらに0.75%の利下げを実施し、目標レンジは3.0~3.25%になるとみています。これは労働市場の弱さに備えるための措置ですが、その分インフレ率が目標を上回る期間が長くなります。つまり、FRBは綱渡りのような状況で、雇用重視に傾きすぎればインフレが長引き、インフレを重視しすぎれば成長が鈍化します。今のところ、FRBは雇用重視の姿勢を選択しています。AIによるマクロ経済への影響はどうでしょうか。AIは確実に主要な成長ドライバーです。AI関連のハードウェア、ソフトウェア、データセンターへの支出は、2026年・2027年ともに成長率を0.4ポイントほど押し上げます。これは全体の成長のおよそ20%に相当します。ところが、輸入によってその効果は希薄化します。輸入技術を考慮すると、AIの正味の寄与は大きく減少します。それでも、2027年までの予測期間でAIが生産性を25~35ベーシスポイント押し上げると見込んでおり、新たなイノベーションサイクルの始まりとなります。つまり、AIは今、将来の大きな成長の種をまいている段階です。もちろん、弊社の見通しにはリスクもあります。重要なものを3つ挙げます。1つ目は需要の上振れリスクです。財政刺激策や企業の楽観が成長を押し上げる場合、インフレが高止まりし、FRBは利下げを停止します。経済が本格的に回復すれば、FRBは現在進めているリスク管理型の利下げを撤回する必要が生じる可能性があります。そうなれば市場にショックを与えるでしょう。2つ目は生産性の上振れリスクです。AIがより大きな生産性向上をもたらし、ディスインフレが再開し、金利が徐々に低下するシナリオです。3つ目は緩やかな景気後退のリスクです。関税や金融引き締めの影響が強まり、2026年初めにGDPがマイナスとなり、FRBが金利を1%近くまで大幅に引き下げる可能性があります。要するに2026年は、ドラマ性は減るものの、より微妙な変化が見られる移行期となりそうです。成長が戻り、インフレが落ち着き、AIが経済の新たなプレイブックを書き換え続ける年になるでしょう。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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強気相場はFRBを注視している
モルガン・スタンレーの最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、ポートフォリオの見直しを提案する理由について、マーケットの動きと金融政策のギャップに留意しながら解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、短期的にも、中期的にもFRBが今後の株式市場のパフォーマンスの鍵を握る可能性がある理由について解説します。このエピソードは11月24日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。9月末に弊社は、政策金利と流動性の両面で、FRBと市場の間の緊張が高まっており、これが短期的な調整につながる可能性があると説明しました。実際にそのシナリオが進行しています。9月には高モメンタムの低クオリティ株が、流動性の引き締まりにより大きく反応した一方で、S&P500やナスダック100といった高クオリティ株は、10月29日のFOMC会合で示された利下げに対するタカ派的見方の強まりにより大きく反応する形で、このシナリオが実現しています。S&P500の下落幅は5%にとどまっていますが、水面下ではより大きな痛手を受けており、上位1000銘柄のうち3分の2が10%以上、4分の1が20%以上下落しています。同様に、ビットコインは30%近く下落し、モメンタム株よりも早くピークを迎えました。金もやはりS&P500よりも早く流動性の引き締まりから影響を受けています。私たちは金融政策に関連したこの動向を引き続き注視しており、短期的には株価指数がさらに下落する可能性も否定できません。特に市場の広がりが弱い状態が続く場合は注意が必要です。ただし、水面下の弱さは、市場の一角で低迷が始まったのではなく、今回の調整が終わりに近づいているサインと考えています。過去の例を見ても、調整の終盤には主力銘柄が最も大きく下落する傾向があります。9月のポッドキャストでも述べたように、このような調整や期待値のリセットは、コンセンサス予想と依然、異なる弊社の「ローリング・リカバリー」シナリオに基づく投資を強化する好機と考えています。民間部門の労働市場データには、FRBのより積極的な利下げを示唆する、低迷の兆しが見られます。これは、今年4月に株価の底打ちとともに労働市場データの変化率が底を付けたと見る私の中核的見解とかなり一致しています。FRBが待っている政府の公式な労働データの発表は遅れており、弊社や市場がすでに知っていることを後から確認するだけです。10月の公式の雇用統計は政府閉鎖のため発表されず、11月分も12月16日まで発表されません。そのため、株式市場はFRBの重い足取りと利下げの遅延を相手に引き続き格闘する可能性があります。良いニュースとしては、政府再開に伴い、今後数週間で財務省一般口座(TGA)残高が大幅に減少する見込みです。これは、FRBによる量的引き締めの終了と同じタイミングで、待望の流動性拡大を助ける見込みです。問題は、これらの変化が流動性環境を持続的に改善するのに十分かどうかです。私の見解では、最も明確なサインとなるのは、今後2週間で、こうした動向に最も敏感な株式や資産クラスに改善が見られるかどうかです。つまり、株式市場では低クオリティで利益の出ていない成長株が最も大きく上昇するはずです。結論として、私は今後12カ月のS&P500および株式全体に対する弊社の強気見通しに引き続き確信を持っています。最近発表した2026年の見通しに対する投資家からの初期反応を見ると、弊社の中核的見解のいくつかは依然としてコンセンサスとは異なります。具体的には、弊社は「初期サイクル」局面にあると考えており、コンセンサスが「後期サイクル」と見ているのとは異なります。利益成長率も弊社は17%と見ており、コンセンサス予想の14%を上回っています。さらに、弊社は小型・中型株や一般消費財株をオーバーウェイトに引き上げています。FRBの対応が市場の期待より遅れていることによる目先の押し目を利用し、過去数年、出遅れていたセクターや銘柄にポートフォリオを再配分することをおすすめします。これらは、今後予想されるFRBのより積極的な行動から最も大きな恩恵を受けると見られます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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AI設備投資ブームで試されるクレジット市場
市場でAIバブルの可能性が取りざたされています。今回は弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、債務証券需要の増加がもたらすインパクトについて、ひとつの見方をご紹介します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、クレジット市場が直面するかなり異例な困難についてお話しします。このエピソードは11月21日 にシンガポールにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。クレジット市場を芯まで揺さぶった世界金融危機から15年を優に超える歳月が流れました。あれがどれほど極端な時期であったか、言い表すのは容易ではありません。普通に見られた関係やバリュエーション・アプローチが数多く崩れました。クレジット損失は80年ぶりの規模に膨らみました。私は、この記録は次の80年間も破られずに残ると思いますし、そうであることを希望しています。ただこのショックは、クレジット市場の光明を伴ったものでした。銀行のバランスシートが膨張しすぎ、かつ複雑になりすぎたことで生じた危機が過ぎると、バランスシートは縮小し、簡素化されました。資本市場が突然閉鎖される事態を目の当たりにした企業は、手元の現金を積み増しました。保守的な資金運用に自ら乗り出すケースも少なくありませんでした。米国における債務の残高を長期にわたって増やし続ける原動力だった住宅市場は、貸出基準が著しく厳格になったことで、借入額が全体に減少することとなりました。これらのトレンドには共通するテーマがひとつありました。それは債券の供給減少です。クレジット市場はその後、ボラティリティの急上昇に何度も見舞われました。しかし、それらは総じて言えば、ユーロ圏危機とか新型コロナウィルスのパンデミックなど、マクロ経済に関する懸念により引き起こされたものでした。また、2010年代半ばにおける石油関連セクターの不振や、2023年のシリコン・バレー銀行の破綻など個別企業の問題によって起こされる場合もありました。需要の水準に比べて借入額が多すぎる、だからクレジット市場が下落するという考え方自体が、問題になることはありませんでした。たしかに、今まではそうでした。このプログラムでも以前お話し申し上げたように、足元ではテクノロジー企業による設備投資額のとてつもない増加が進行中です。クラウドや人工知能(AI)の分野における各社の目標を支えるインフラを整備しようとしているのです。モルガン・スタンレー・株式リサーチの推計によれば、最大級の投資を行う企業は合計およそ4700億ドルの支出を年内に決定し、来年にはその額が6200億ドルに増えるそうです。合計1兆ドルを超える投資がたった2年のうちに行われる計算です。おまけに、その額はまだ伸びています。この支出には非常に強い勢いがあります。投資主体の企業は莫大な金融資源を有しており、この投資を会社の将来にとって非常に重要なものとみなしているからです。しかし、こうした投資の原資は、どこかから調達しなければなりません。投資主体は多額の利益を計上している企業であることが多いため、弊社では、投資額のおよそ半分は各社のキャッシュフローから捻出されるとみています。残りの半分については、債務市場が大きな役割を担うでしょう。これらの企業は高い格付けを得ていることが多く、その分借り入れ余力も大きいとなれば、特にそうです。そしてここ数週間で、債務市場の蛇口は開かれました。ハイパースケーラーと称される巨大テクノロジー企業数社が一度に数百億ドルの資金を、それも続けざまに借り入れています。ここでよい知らせがあります。この新規借り入れはディスカウントで発行されており、発行体は既存の債務の場合よりも少し多い金額を投資家に返済するつもりなのです。そのため、この債務に対する投資家の引き合いも非常に旺盛です。そのうえ、今回の借り入れは、格付け見直しの引き金になりうる水準までかなり余裕がある場合がほとんどなのです。しかし今回の起債は、しばらく見ることがなかった、かなり異なる種類の問題ももたらしています。総じて言えば、これまでは投資家が供給過剰を懸念することはまれでした。ところが今回は、非常に大きな規模の起債がかなり大幅なディスカウントで行われており、市場を動かしています。もしダブルA格の企業がシングルA格の企業と同じ金利を支払うつもりで市場に乗り込んできたら、シングルA格の既発債は魅力に乏しいと思われてしまうのです。これらの問題に関する限り、市場にとってそれほど恐ろしい話ではないと弊社ではみています。ただ、これは新しい種類の困難です。私たちはこのような事態に久しく直面していないのです。先にご紹介した投資計画の規模を踏まえて考えると、この状況はまだしばらく続くかもしれません。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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2026年グローバル債券市場見通し:ミクロなテーマに集まる注目
来年にはマクロのショックよりもミクロのトレンドに注目が集まりそうなのはなぜなのか、弊社のアジア太平洋サミットの会場からチーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、グローバル債券市場の2026年の見通しと主要テーマについて、弊社チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターが、シンガポールで開かれているモルガン・スタンレー・アジア太平洋サミットの会場からお話しします。このエピソードは11月20日 にシンガポールにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。昨年は政策の予測が難しく、私たちの仕事も本当に複雑になりました。今年は今年でまた困難が巡ってくるわけですが、弊社では、今年はミクロのトレンドが市場を動かす、それもリスクに対する全般に前向きなスタンスに適応する形でそうなるとみております。弊社エコノミストによる予測のベースケースでは、ディスインフレが続き、経済成長率は2027年までに潜在成長率に収斂していく、そしてその潜在成長率自体も改善する可能性があるとされています。特筆されるのは、需要の増大と生産性の向上を検討した上振れシナリオをあわせて示す一方で、下振れシナリオが比較的穏やかなものにとどまっていることです。米国は2026年も世界の中心であり続け、米国主導のショック、良いショックと悪いショック両方がグローバルな経済・市場の成り行きを左右することになりそうです。 2025年の米国経済は、健全なバランスシートと富の増加に支えられた堅調な消費と人工知能(AI)への活発な設備投資という2つの要因が経済成長を下支えし、通商政策の向かい風にもかかわらずリセッション(景気後退)の危機を回避することに寄与しました。2026年については、平坦な道のりにはなりそうにないものの、上記と同じ構図がべースケースの見通しを支え続ける公算が大きいと思われます。FRBは、労働市場の軟化と堅調な消費支出が併存するおなじみの難問に直面しています。弊社の基本シナリオでは、失業率の上昇につれて景気を中立にするような利下げが行われ、下半期に回復がみられると想定しています。米国外では、ほとんどの国で経済成長率が潜在成長率に、政策金利が景気に影響を及ぼさない中立金利に、それぞれ2026年末までに向かうと思われますが、そのタイミングと軌道は異なるでしょう。また近年みられるように、グローバル経済の様子は米国主導の行動の効果と副次的影響に左右されることになりそうです。弊社のマクロ・ストラテジストは、国債利回りは一定のレンジ内で推移するが2つの局面に分かれるだろうと予想しています。具体的には、FRBによる計50ベーシスポイントの利下げを受けて債券価格が上昇し、10年物米国債利回りが年央までに押し下げられる局面と、その後第4四半期にかけてじりじり上昇する局面を見込んでいます。イールドカーブがスティープ化するとの見通しには引き続き強い確信があり、特に、2年10年カーブにその傾向が現れるとみています。米ドル相場も同様な展開になり、年央に下落してから年末にかけて反発するとみています。AI投資の資金調達が重視されるようになり、クレジット市場に関心が集まっています。私がシンガポールでこれまでに参加したいずれの会議でも話題になっていたほどです。したがって、次のAI関連投資の波を可能にするにあたって、クレジットは中心的な役目を担うことになりそうです。無担保のクレジットから証券化されたストラクチャード・クレジットに至るまで、そして公開市場と非公開市場(プライベート市場)の両方でそうなるでしょう。弊社のクレジット・ストラテジストと証券化クレジット・ストラテジストは、2026年に行われるデータセンター建設資金の調達はIG債の発行が中心になると見込んでいます。社債と証券化クレジットのファンダメンタルズは依然堅調ですが、今後の発行規模が大きくなるため、IG債とデータセンター関連のABSではスプレッドが拡大します。キャリーは引き続きクレジットのリターンを決める主因になりますが、ばらつきは大きくなるでしょう。AI関連のクレジットの供給から比較的守られているセグメント、具体的には米国ハイイールド債、エージェンシーMBS、非エージェンシーCMBS、非エージェンシーRMBSなどがアウトパフォームしそうです。弊社では米国投資適格債よりもエージェンシーMBSと証券化商品のシニア・トランシェを選好しています。バーゼルⅢ(スリー)最終化後の国内銀行のエージェンシーMBS需要復活がその大きな要因です。2025年は先が見通しにくい年でした。弊社は2026年について前向きな見方をしていますが、公園の散歩のように穏やかな年にはならないでしょう。これまでとは異なる困難が待ち構えているように見受けられます。マクロのショックというよりは、ミクロの変化や市場のニュアンスにかかわるものです。詳しくは数日前に発行されたばかりの弊社の見通し、「アウトルック」をご覧ください。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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2026年 米国アウトルック:強気相場の過小評価されたシナリオ
弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、短期的なリスクがあるにもかかわらず、2026年の成長についてコンセンサスから外れる前向きな見方を持ち続ける理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、今週初めに発表した2026年の見通しについて解説します。このエピソードは11月19日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2026年も、弊社がこの1年間語ってきたストーリーが続きます。1年前を振り返ると、弊社の米国株式見通しは、上期は厳しく、下期は力強い展開になるというものでした。当時、この見方はコンセンサスから外れていました。多くの方は、トランプ大統領が2期目に就任したことで上期は好調となり、その後インフレ再燃で下期は厳しくなると予想していました。コンセンサスとは違う弊社の見解は、新しいトランプ政権下における政策の順序は、まず成長へのマイナス要因となる政策から意図的に着手するという考えに基づいていました。これは、新任のCEOが「キッチンシンク」戦略をとり、最初に悪材料を出し切ってから新たな成長戦略に移行するのに似ています。その転換点は年央頃になると考えていました。2期目のトランプ大統領就任時、米国経済のスラックは1期目の時よりもはるかに小さい状態でした。これが、政策の順序が異なる可能性が高いと考えた主な理由です。2024年末時点では、業績予想修正の幅や他の景気循環指標も減速局面にありました。対照的に、2017年初頭(当時弊社は強気の見方でコンセンサスから外れていました)は、2015~2016年の製造業・コモディティ不況から回復し、業績予想修正の幅や多くの循環指標が再加速し始めていました。今年を振り返ると、この政策の順序は概ね実現しましたが、予想よりも速く、劇的に進行しました。政策面での弊社の見解は、今もコンセンサスから外れているようです。今年実施された政策が今後、最終的に成長加速、特に平均的な銘柄の押し上げにつながるのか、多くの業界関係者が疑問視していますが、弊社はこの政策選択が2026年に向けて成長へのプラス要因になると考えており、「経済を過熱させる」というテーマとも概ね一致しています。さらに、弊社がより前向きな見方をするもう一つの要因があります。4月には、3年前から続いていたローリング・リセッションが終わりました。最終段階は、政府効率化省(DOGEドージ)がもたらした政府部門のリセッション、AI設備投資の伸びや貿易政策に対する期待の変化率の底打ち、そして現在も続いている消費者サービス分野のリセッションでした。要するに、4月に新たな強気相場とローリング回復が始まったと弊社は考えており、これはまだ初期段階で、特に経済の中でも遅れている多くの分野や市場では明確に認識されていません。ここにチャンスがあるのです。新たな景気循環で株価パフォーマンスが広がる際に通常必要となる「利下げ」が、今回は欠けています。通常であれば、このように労働市場が弱まる中でFRBはもっと早く利下げを実施していたはずですが、コロナ禍による不均衡や歪みのため、FRBの政策緩和は通常より遅れています。そしてこれが、初期サイクルの勝者への本格的な資金シフトを妨げてきました。皮肉なことに、政府機関の閉鎖は経済をさらに弱めましたが、雇用統計の発表が見送られたことでFRBの行動も遅れています。もしこのデータ遅延が続いたり、遅れて発表される雇用統計が非政府部門の雇用データに見られる最近の弱さを裏付けない場合、弊社の強気な12か月予想には短期的なリスクとなります。このような労働市場の弱さと「経済を過熱させる」という政府の方針が組み合わさることで、最終的には、FRBは現在の市場予想よりもハト派的な政策をとる可能性が高いと考えています。問題はタイミングだけです。ただし、これは短期的には株式市場のリスク要因であり、多くの銘柄が最近下落しているのもこのためです。要するに、4月にローリング・リセッションと弱気相場が終わり、新たな強気相場が始まったと弊社は考えています。S&P500は4月時点で20%下落し、平均的なS&P銘柄は30%以上下落していました。このシナリオはまだ十分に評価されていません。回復が広がり、経済の多くの分野で取引量や価格が改善する中で営業レバレッジが戻れば、今後1年で利益の大幅なアップサイドが期待できると弊社は見ています。弊社の予想はこのアップサイドを反映しており、これが、市場の一部領域がやや過熱気味であることを認めつつも、多くの銘柄は見かけほど割高ではないと考えるもう一つの理由です。S&P500については、12か月後の目標値を7,800としており、来年の利益成長率は17%、バリュエーションは現在の水準からわずかに縮小すると想定しています。弊社が注目するセクターは金融、工業、ヘルスケアなどです。一般消費材セクターをオーバーウェイトに引き上げ、2021年以来初めてサービスよりもモノを選好しています。もう一つの相対取引として、半導体よりもソフトウェアを選好しています。現時点で両者のパフォーマンス格差とポジショニングが極端になっているからです。最後に、2021年3月以来初めて、小型株を大型株よりも選好しています。初期サイクルで利益が広がり、FRBがより緩和的な姿勢をとることで、弊社が長らく待ち望んでいた環境が整いつつあります。今週初めに発表した詳細なレポートが、多くのレベルで変化しつつある市場環境を乗り越えるうえでお役に立てば幸いです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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米国株式市場に待ち受ける安堵とボラティリティー
弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、FRBの政策金利、政府機関の一部閉鎖、関税といった不確実要因がある中でも、株式が底堅さを保つと考えられる理由について、詳しく解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、最近の株式市場に関する懸念と、その変化の兆しについてお話しします。このエピソードは11月10日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 現在、決算シーズンの真っ際中です。表面的には銘柄ごとのばらつきが大きいように見えるかもしれませんが、実際には成長の裾野が広がるポジティブな動きが見られます。具体的には、中央値の銘柄が過去4年間で最も高い利益成長率を記録しており、S&P500構成企業の売上高の予想超過率も過去平均の2倍に達しています。これらは、業績回復が広がり、価格決定力が関税の影響を相殺するほど強まっている明確な兆候です。市場の弱含みを示す他の予兆にも注目しています。この1週間で、業績予想修正の季節的な軟調局面は終わりを迎えたようです。参考までに言うと、この指標は10月21日に6%まで落ち込みましたが、現在は11%に回復しています。特に、ソフトウェア、運輸、エネルギー、自動車、ヘルスケア分野が回復を牽引しています。こうした業績予想修正の回復が見られる一方で、先週の市場全般は他の2つのリスクによって重い展開となりました。1つ目のリスクは、10月のFOMCで示されたFRBのハト派姿勢の後退です。FRBは12月の追加利下げは既定路線ではないと示唆しました。そのため、米国株式市場がこの会合当日にピークを打ったのは偶然ではありません。同時に、投資家は第3四半期の成長データにも注目しています。もし予想以上に強い結果となれば、市場が期待するほどのハト派的な対応がFRBから得られず、株価の高止まりに必要な後押しにならない可能性があります。私はFRBのハト派姿勢の後退が株式市場のリスクであることを強調してきましたが、労働市場にも次第に不調の兆候が広がっているという点は重要です。これは、政府機関の一部閉鎖に直接関係する部分もありますが、民間の雇用データを見ると、政府部門以外でも雇用市場が減速しつつあることは明らかです。このため、市場には「FRBの利下げが遅れる」という緊張感が生まれ、4月以降の回復が失速するリスクが高まっています。労働市場の弱さと、「景気を過熱させる」という政権の方針が重なることで、最終的には市場が現在予想している以上にハト派的な政策をFRBが打ち出す可能性が高いと考えています。しかし、政府の雇用統計でこの傾向が確認されない限り、FRBは株式市場が望むほど速いペースでは動かないでしょう。市場が注目してきたもう1つのリスクは、政府機関の一部閉鎖そのものです。これらの要因が株価に影響を与えている主な経路は2つあると思われます。1つ目は、銀行準備金の最近の減少に見られる流動性の引き締まりです。政府機関の閉鎖により、政府職員や各種プログラムへの支払いが減少しています。閉鎖が間もなく終われば、これらの支払いが再開され、流動性拡大につながります 。政府機関の閉鎖による2つ目の影響は、多くの労働者が一時帰休となり、SNAP(補助的栄養支援プログラム)などの給付が停止されたことで、消費支出が減少したことです。その結果、一般消費材企業の業績予想修正が相次ぎました。幸い、政府機関の閉鎖がまもなく終わり、こうした市場の懸念が和らぐ可能性があります。最後に、関税について、最高裁判所の判断が近いうちに発表されます。先週、関係する銘柄がこの展開にどう反応するかが話題となりました。全体的には、最も影響を受けるとみられる銘柄の株価の反応はごくわずかでした。これはいくつかの要因によるものと考えています。まず、トランプ政権は既存の関税に代わる措置を講じるために他の多くの権限を利用する可能性があるということです。次に、仮に最高裁が関税を覆した場合でも、払い戻しにかなりの時間がかかり、2026年までずれ込む可能性があるということも要因でしょう。では、これらすべてのことは何を意味するのでしょうか。季節的な業績不振と政府機関の閉鎖は終わりを迎えつつあり、最近軟調だった株式市場に一定の安堵感をもたらすはずです。しかし、景気過熱を目指す政府の方針にFRBが完全にコミットするまで、ボラティリティーは続くとみています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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最高裁がトランプ政権の関税政策を審査
今週初め、米国最高裁判所は現政権の関税政策に異議を唱える訴訟の審理を行いました。弊社のグローバル債券・公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザスが、この裁判の結果から予想される市場への影響について解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードは、グローバル債券および公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザスが、米国最高裁判所で審理された関税政策への異議申し立てと、その市場への影響について解説します。このエピソードは11月6日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。今週、米国最高裁判所は、トランプ政権が実施した関税の大半についてその合法性を審理しました。最高裁が政権に不利な判断を下した場合、今年4~5倍に引き上げられた米国の関税のかなりの部分が撤回される可能性があることから、投資家はその結果に大いに注目しています。このため、今回の口頭弁論と早ければ今月中にも出る可能性がある判決は、明らかに市場のカタリストになると見られます。しかし、経済や市場に影響を与える政策課題の多くと同様に、現実はより複雑です。ここで押さえておくべきポイントを解説します。まず、裁判所がどのような判断を下すかについては、専門家の間でもかなり議論が分かれています。裁判官の構成を考えると意外に思われるかもしれません。9人の裁判官のうち3人はトランプ大統領によって任命され、6人は共和党の大統領によって任命されています。しかし、大統領の権限行使が、行政府にこの権限を付与している法律、すなわち、国際緊急経済権限法(IEEPA)に矛盾しないと裁判官が認めるかどうかは不透明です。大まかに言えば、この法律は、経済危機や敵対する外国勢力への対応を目的としており、伝統的な同盟国に対する関税には当てはまらないと裁判所が判断する可能性があります。しかし、次に重要な点は、仮にトランプ政権側が敗訴したとしても、米国の関税水準が大きく変わらない可能性があるということです。なぜでしょうか?それは、政権には他にも必要とあらば関税を執行できる権限があり、こちらの方が長く継続できる可能性もあります。例えば、通商法301条は、大統領が貿易相手国の不公正な貿易慣行を認定する広範な裁量権を与えており、この権限をIEEPAの代わりに使うことが可能です。301条の適用には調査報告の提出が必要なため、時間を要すると見られますが、他の一時的な権限で空白を埋めることができます。つまり、米国は現行の関税水準を維持しようと思えば、継続できる公算が大きく、弊社予想における関税は引き続き「変数」よりは「定数」に近い要素となっています。もちろん、弊社予想が外れる可能性も考慮しなければなりません。例えば、政権が敗訴を機に、通商法232条を使って特定製品ごとの関税に注力する方針に転換する可能性もあります。その場合、米国の実効関税率はやや低下し、弊社エコノミストが予想する消費者や輸入企業への圧力が緩和され、リスク資産への支援材料となるでしょう。ただし、政権が一時的に高い関税率を提示する必要があると考えた場合は、より受け入れやすい水準に落ち着くまで、今年の4月のようなボラティリティが生じる可能性もあります。結論として、今年は、関税政策に関するさらなるノイズの中を進む必要があります。このため、ある程度の市場の乱高下や、場合によっては若干の上昇につながる可能性はありますが、概ね現在と同じ水準に戻る可能性が最も大きいと考えます。2026年に向けては、関税水準そのものよりも、企業が関税や設備投資のインセンティブにどう対応するかという議論の方が、市場見通しに重要な影響を与えるでしょう。弊社ではこれらのテーマ全てについても掘り下げて最新情報をお届けしてまいります。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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強気相場の確信強まる
弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンは、米国の通商政策と米連邦準備制度理事会が折り合うことから、年末に向けて買いの好機が訪れるとみています。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 本日は、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、最近のマクロ経済のイベントと第3四半期決算についてお話しします。このエピソードは11月3日 にニューヨークロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週にはマクロ経済に関係する重要なイベントが2つありました。ひとつはトランプ大統領と習国家主席による米中首脳会談。もうひとつは米連邦準備制度理事会(FRB)の10月の会合です。貿易面では、米国が中国に課す関税を10%引き下げることと、新たに提案されたテクノロジー関連の輸出規制を1年延期することに同意しました。そして中国側は、提案されていたレアアース(希土類)の輸出規制を停止し、大豆の購入を再開するとともにフェンタニルの取り締まりを行うことに同意しました。数週間前に急にエスカレートした対立を受けて起こり得た展開に比べれば、これは大きな好材料ですし、市場もそのように反応しています。FRBの会合については、パウエル議長が12月の利下げは既定路線ではないと示唆したことから、債券市場が見込む12月利下げの可能性が会合前の92%から現在では68%に低下しています。株価も小幅に調整し、相場の広がりは非常に弱いままです。経済成長が持ちこたえてもFRBが小幅な利下げしか行わないのであれば、上昇相場のけん引役は比較的少数の、そしてクオリティの高い銘柄に限られたままになりそうだ、と市場は告げているように私には思われます。向こう半年から1年の見通しについては、遅行指標である労働関連のデータが小幅に悪化する一方で、企業業績は予想以上に好調になり、最終的には株式相場のけん引役が増える舞台が整うだろうと弊社ではみています。ただ、弊社では、市場が近い将来発するシグナルも重視しています。つまり、FRBが状況に先んじて行動する意思を明確にするまでは、小型株/低クオリティ株/景気動向に強く影響されやすい循環株へのローテーションを進めるのは時期尚早です。ひょっとしたら市場にとっては、そのようなFRBの意思と同じくらい、量的引き締め(QT)を12月で終了するという決断が重要だったのかもしれません。ジェイ・パウエル議長は先日、短期金融市場でストレスが高まる恐れがあることを認め、QTの終了を遅らせるのではなく逆に早めることもありうると示唆しました。ここ1ヵ月間、QTが終わるタイミングの予想は「直ちに」から「来年2月」までまちまちでした。パウエル議長は先週の会合でその中間を取ったように見えるため、一部の市場参加者がそれに失望したのかもしれません。この展開を観察し続けるために、私は今後、短期金融市場の動きに目を向けることになるでしょう。具体的には、翌日物のレポ取引が増加していることから、もしその増加が担保付翌日物調達金利(SOFR)とフェデラル・ファンド(FF)金利とのスプレッド拡大とともに続くことになれば、株式市場はさえない展開になりそうだと私はみています。一部の投機色の強い銘柄群では特にそうなりそうです。端的に言えば、この動きが落ち着くまでは、クオリティの比較的高い銘柄群がアウトパフォームし続けそうだと弊社では考えています。一方、今は決算発表シーズンの真っただ中ですが、こちらは売上高の予想以上の上振れが際立つ展開になっています。増加率は今のところ、これまでに見られたペースの2倍を超えています。弊社では、米国の景気はローリング・リカバリーに入っており、企業業績は大方の予想をかなり上回ることになるとみていますが、売上高の上振れはこの見方をさらに補強する可能性があると思われます。結論を申し上げますと、米国では4月にローリング・リセッションが終了して新しいサイクルが始まっており、それとともに株式市場も新たな強気相場に入ったという中心的な見方への確信を、弊社では強めつつあります。これはつまり、2026年には企業業績がより大きな伸びを見せ、かつその動きがほかの銘柄にも広がっていくということです。株式相場のけん引役の交代もあるかもしれません。クオリティが比較的低い小型株にも株価上昇の勢いが広がることは、今のところ、インフレとの戦いを続けているFRBによって妨げられています。ひょっとしたら、足元のローリング・リカバリーが満開になるためには民間経済と平均的な消費者のためにどこまで金利を下げればよいのか、FRBは理解できていないのかもしれません。その点から見るなら、先週のFRBの会合は株式市場にとって短期的に失望を誘うものだったかもしれません。したがって、FRBがよりハト派的な政策を講じるタイミングがもっとはっきりするまでは、クオリティの高い銘柄に重きを置くのがよいでしょう。また年末にかけては、短期金融市場にストレスが加われば株式購入のチャンスが訪れるかもしれませんので、注目したいところです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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ステーブルコインが変える日本の金融の未来
日本の金融担当アナリストが、新たなステーブルコイン規制とデジタル決済の革新が、銀行業務、資産運用、そしてグローバルな資金の流れをどのように変革していくのかを解説します。トランスクリプト 「Thoughts on the Market」へようこそ。モルガン・スタンレーMUFG証券で日本の金融セクターの調査を統括している長坂美亜です。本日のテーマは「日本のステーブルコイン革命と、それがグローバル投資家にとってなぜ重要であるか?」についてお話させて頂きます。東京時間で10月31日 午後4時、日本の暗号資産市場の発展はまだ黎明期ですが、初の円建てステーブルコインの登場が目前に迫っており、国内外でのデジタルマネーの流通方法を静かに変革させる可能性を秘めています。ビットコインのようなデジタルマネーをご存じの方も多いでしょう。株式や債券などの伝統的な金融資産と比べて、価格変動が非常に大きいのが特徴です。一方で、ステーブルコインは異なります。円や米ドルなどの資産に連動することで、価値を安定させるよう設計されたデジタル通貨です。2023年6月、日本は資金決済法が改正され、ステーブルコインの法的枠組みが整備されました。日本国内外の市場関係者は、円建てのステーブルコインが、テザーのようなグローバルなデジタル通貨として定着できるかどうかに注目しています。ステーブルコインは、決済をより迅速に、低コストで、24時間365日可能にすることを可能とします。日本のキャッシュレス決済比率は2020年の約30%から2024年には43%に上昇しましたが、他国と比べてまだ成長の余地があります。政府によるフィンテックやデジタル決済の推進も加速しており、ステーブルコインは真のデジタル経済への架け橋となる可能性があります。ビットコインなどの暗号資産とは異なり、ステーブルコインは価格変動を抑えるよう設計されています。民間企業によって管理され、現金、国債、金などの資産によって裏付けられています。業界関係者は、ステーブルコインが現金の信頼性と、インターネットのスピードと柔軟性を兼ね備えたデジタル決済手段になると期待しています。日本の規制は厳格です。ステーブルコインは高品質かつ流動性の高い資産によって100%裏付けされる必要があり、アルゴリズム型ステーブルコインは禁止されています。発行者には透明性と準備金に関する要件が課され、月次監査が標準となっています。これは米国、EU、香港の新しい規制と類似している点です。では、実務レベルではどうなるのでしょうか。金融機関は、即時決済、資産運用、融資などにステーブルコインの活用を模索しています。例えば、通常数日かかる株式や債券の取引決済が、ステーブルコインを使えば数秒で完了する可能性があります。また、Banking-as-a-ServiceやWeb3との統合など、新たなビジネスモデルも可能になりますが、一方で規制コストや低金利が収益性の課題となっています。国際送金の基盤であるSWIFT取引を考えてみましょう。ステーブルコインがSWIFTを置き換えることはありませんが、補完することは可能だと考えられます。従来数日かかっていた送金が、数秒で完了し、手数料も最大80%削減される可能性があります。ただし、発行者への信頼やマネーロンダリング対策の遵守が重要です。投資家の関心が高いもう一つのテーマが、CBDC、つまり中央銀行デジタル通貨です。ステーブルコインとCBDCはいずれもデジタル通貨ですが、CBDCは中央銀行が発行する法定通貨であり、ステーブルコインは民間のイノベーションです。日本は世界第4位の経済規模を持ち、技術革新の分野ではリーダーと見なされていますが、金融変革には慎重な姿勢を取っています。CBDCの準備は進めているものの、発行を決定したわけではありません。仮に発行される場合、CBDCは公共インフラとして、ステーブルコインはイノベーションの担い手として共存することが可能であると考えられます。結論として、日本のステーブルコインの旅は始まったばかりですが、その影響は決済、資産運用、さらにはグローバル金融にまで波及する可能性があります。 ご視聴ありがとうございました。こちらの番組を気に入っていただけましたら、ぜひレビューを残していただき、「Thoughts on the Market」をご友人や同僚にシェアしてください。
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投資家はAI関連投資について心配するべきなのか
人工知能関連投資のブームはクレジット市場にとって警戒警報なのかという議論について、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者 のアンドリュー・シーツが鋭く斬り込みます。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、巨額にのぼる設備投資と人工知能(AI)の技術は、過大投資とクレジット市場の懸念への注意を促す典型的な警戒警報を発しているのではないかという議論について、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者 のアンドリュー・シーツがお話しします。このエピソードは10月23日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。確かなことが二つあります。ひとつは、AI関連投資はおそらくこの世代で最大の投資サイクルの一つになるということ。もうひとつは、クレジット市場には大型の投資サイクルがひどい頭痛をもたらしてきた長い歴史があることです。鉄道から電化、インターネット、シェールオイルに至るまで、巨額の投資がクレジット市場の下落を招いた例は枚挙にいとまがありません。きっかけとなった技術自体が大変な成功を収めていても、です。そこで、本日はこの点を掘り下げるとともに、今回のAI関連設備投資のサイクルは実際にはまだまだ続くと弊社が考える理由をご説明したいと思います。第1に、弊社モルガン・スタンレーは、AI関連設備投資を誰が行うのか、何がパイプラインにまだ残っているのかについて、複数の部署による詳細な共同調査を数多く行ってきました。そして、この点が重要なのですが、弊社が予想している投資のほとんどは、まだしばらく先の話です。投資ブームはまさに始まったばかりなのです。次に、地球上で最大級の規模と利益を誇る企業の一部は、AIを向こう10年間で最も重要な技術だとみなしていると思われます。そのため、一連の支出の見返りが最終的にどうなるかについてはかなりの不確実性があるとしても、投資を開始・継続しようという企業側の意欲はその分強まっていると弊社ではみています。第3に、近年のほかの大型設備投資サイクルの一部であった、1990年代後半のインターネットや、2010年代半ばのシェールオイルなどが思い出されますが、いずれもクレジット市場に困難をもたらしました――それらとは異なり、今日見られるAI投資の大半は、極めて強固なバランスシートとかなり大きな借り入れ余力を有する企業の後ろ盾を得ています。過去の投資サイクルには、そうでなかったものもありました。このバランスシートと借り入れ余力は、今回のAI関連投資が長続きすることに寄与すると思われます。そして最後の理由は、過去の一部の設備投資サイクルでは何がうまくいかなかったのかと考えると、過剰生産能力が最大の問題だったケースが多いということです。鉄道であれ電力であれインターネットであれ、新しい技術はそれまでの生活をがらりと変えてしまいます。そして、がらりと変えてしまうからこそ、投資をして作るものも多くなります。すると、作りすぎてしまう場合も出てきます。その技術に対する需要が姿を現す前に、前倒しで投資を行うからです。すると、投資のリターンが低下したり損失を招いたりする恐れが生じます。高水準のAI関連設備投資や、過去の大型投資サイクルの歴史が不安を引き起こす理由は、弊社にも理解できます。しかし、そうした動きを結び付けるときには、大型投資サイクルの歴史がまだら模様である理由を思い出すことが重要です。それは普通、技術自体がうまくいかなかったからではありません。有望な技術だけに需要に先んじて投資が行われ、その結果として生産能力が過剰になって投資のリターンが低下し、そのギャップを埋める資金力に乏しい事業者が出てきてしまう、ということなのです。今のところ、そのような状況にはなっておりません。データセンターの需要はいまだに旺盛で、投資案件の多くは極めて潤沢な資源を有する企業を後ろ盾に得ています。そのいずれかに変化がないかどうかを観察する必要はあります。ですが今のところ、AI設備投資サイクルはまだまだ続くと弊社ではみています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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強気相場に調整は必要?
S&P500が上昇を続ける中、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、近い将来に株式市場が調整し得る3つの理由について論じます。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが登場し、短期的にはおそらく調整するとしても、依然として新しい強気相場の中にある理由について説明します。このエピソードは10月20日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。私は、4月の「解放の日」後の株価急落が、事実上3年間続いた米国経済のローリング・リセッションの底だったと引き続き考えています。この見解については詳しく論じてきましたが、依然としてコンセンサスからは大きく外れています。2022年以降、民間経済のほとんどのセクターはそれぞれ異なるタイミングで個々の景気後退を経験しました。しかし、経済活動の変化率における最終的な底は4月であり、これはほとんどの人にとって予想外だった関税発表のタイミングと一致しました。少なくとも、その規模と範囲においては驚きでした。要するに、「解放の日」は景気サイクルにおける最後の悪材料に対する「降伏の日」であり、その後に底打ちが起こったのです。株式市場もこの見方に同意しているようであり、そのため4月以降、株価は一直線に上昇しています。これは、あらゆる景気サイクルの底打ち後に見られる典型的な動きです。この主張を裏付けるもう一つの証拠は、業績予想のリビジョン・インデックスのV字回復であり、これは弊社が数ヵ月にわたりリサーチやポッドキャストで議論してきたテーマです。弊社が投資家と行ってきた数多くの対話に基づくと、この見解は依然として非常に不人気です。むしろ、多くの投資家は、来年の経済および利益成長が予想よりも低くなるリスクがあると考えており、予想よりも高くなると考える弊社見解とは逆です。私の見解の核心は、コロナ禍以降、ヘリコプターマネーによる危機対応を経て、私たちは確実にインフレ期に入ったということです。政府は過去20年間に生じた巨額の債務と財政赤字問題を解決するため、経済を「高温状態」で運営する必要があります。その結果、投資家は1980年から2020年にかけてインフレが低下していた時期に経験したような10年単位の長期サイクルではなく、より短く熱いサイクルを想定する必要があります。つまり、米国株式市場では2年間の上昇期と1年間の下降期が繰り返されるということです。そして、これは2020年以降、実際に起こっていることです。私たちは現在、4月に始まった新しい上昇サイクルの真っただ中にいます。この新しい体制で理解すべき重要な点は、インフレが加速してもFRBが傍観しているか、あるいは2020-21年、2023年、そして現在のように緩和的であるならば、インフレは株式にとって必ずしも悪い要因ではないということです。インフレ率が高いということは利益成長率が高いということであり、そのため現在の株価収益率は高水準にあります。来年はインフレが加速する可能性が高いため、株式は利益成長率の上昇を織り込みつつあります。つまり、株式はインフレヘッジになります。実際、金と比較して、高クオリティ株は、年初来および2021年以降の貴金属に対する劇的なアンダーパフォーマンスを踏まえると、現時点でより安価なインフレヘッジとなる可能性があります。最終的には、2022年のようにFRBが政策を引き締める必要があるとき、インフレは再び株式にとって問題になりますが、それはまた別の話です。以上を踏まえると、株式市場は現在やや過熱気味であるため、S&P500の10~15%の調整はあり得るし、新しい強気相場のこの段階では通常のことです。近い将来にそのような調整が起こり得る理由は主に3つあります。第一に、米中貿易関係が再び悪化しており、11月1日の期限に向けて、対中関税が解放の日の水準に戻る方向にゆっくりと進んでいます。4月のように最悪のタイミングで売りに巻き込まれたくないと考える投資家は多いですが、このリスクは現実であり、今後数週間で緊張緩和の兆しが見られなければ、株価の重しとなるでしょう。第二に、資金調達市場で最近ストレスの増加が見られます。これはFRBの量的引き締めプログラムにより銀行準備預金が減少していることが原因と考えられます。このストレスが増加すれば、株式市場に波及する可能性があります。第三に、業績予想のリビジョン・インデックスは4月以降の歴史的な上昇を経て、現在反転し始めています。これは業績発表シーズンにかけて続く可能性がありますが、非常に高い水準からの多少の調整は普通のことです。また、関税の影響が棚卸資産を経由して損益計算書に反映され始めるほか、貿易問題が短期的に企業ガイダンスの重しとなる可能性もあります。結論として、4月に始まった新しい強気相場は、異なるセクターの経済と企業業績が異なるタイミングで回復するローリング・リカバリーのごく初期の段階にあると考えています。しかし、新しい強気相場であっても途中で調整が入るのは自然なことであり、現在の状況は4月以降で初めて取引可能な調整リスクがあることを示唆しています。短期的には、調整が訪れた場合に備えてキャッシュを温存し、絶好の買い場に備えることをお勧めします。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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米中問題:次は何が起こり得るか?
弊社の米国公共政策ストラテジスト、アリアナ・サルバトーレが、中国によるレアアース輸出規制の発表と、米国の大規模な関税措置の示唆が、世界のサプライチェーン、市場、経済成長にどのような影響を及ぼす可能性があるかを解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は、米国公共政策ストラテジストのアリアナ・サルバトーレが、市場や投資家の注目を集めている最新動向、すなわち米中貿易問題の再燃についてお話しします。このエピソードは10月17日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。4月以来、米国と中国は非常に微妙なデタント(緊張緩和)状態にあります。ご存じの通り、トランプ大統領は「解放の日」以降の追加の報復関税を一時停止しました。それ以降、弊社は、この一時停止が長期間維持され、その間に米中が本格的な貿易合意に至ることには常に懐疑的な見方をしてきました。しかし、現在のエスカレーションが二国間関係の実質的な分断につながるということにも同じくらい懐疑的です。では、先週何が起きたのでしょうか。中国はレアアース輸出規制の強化を発表しました。レアアースは、電気自動車から防衛装備、高度な電子機器に至るまで、あらゆる製品の製造に不可欠な資源です。これに対し、トランプ政権は10月10日、中国からの全ての輸入品に11月1日から100%の関税を課すと表明しました。この日付は重要です。ちょうどその頃、トランプ大統領と習近平国家主席が韓国で開催されるAPECサミットで会談する予定だからです。今回のエスカレーションは非常に重大です。なぜなら、中国は世界のレアアース採掘のおよそ70%、加工・精製の90%を担っているからです。米国、日本、韓国、ドイツなど、世界中の多くの国が中国からの輸入に大きく依存しています。したがって、新たな輸出規制が導入されれば、各国は中国と個別に交渉して供給を確保しなければならない可能性があり、アジア、欧州、米国全体でサプライチェーン分断のリスクが高まります。今後の展開について、弊社は現在の米中貿易問題がどう進展するか、4つのシナリオを想定しています。弊社が基本ケースと考える、最も可能性の高いシナリオは、APEC会議に向けて、しばらくの間レトリックのエスカレーションが続き、恐らく期待値がリセットされた後、直近の現状に戻るというものです。なぜなら、米中両国とも、突然のサプライチェーンのデカップリングよりも、現在の均衡状態の維持を望んでいると考えられるからです。この均衡状態とは、実質的には「チップとレアアースの交換」です。つまり、米国は中国からレアアースを受け取り、その見返りとして米国の半導体チップの一部を中国に輸出するという構図です。ただし、この均衡があるからといって必ずしも、関税引き上げや追加の輸出規制といった一時的な貿易障壁の導入が排除されるわけではありません。より広範な流れとしては、今後も競争的な対立が続くでしょう。これは、伝統的な貿易戦術だけでなく、直接の連邦政府支出か、重要産業に関わる企業への政府出資拡大による国内投資をも含む超党派戦略です。例としては、IRA(インフレ抑制法)、CHIPS法、その他の超党派法案などが挙げられます。したがって、短期・中期的には、こうした貿易障壁が継続され、米国が中国からの選択的なデリスキング(リスク低減)を進めるための超党派的な産業政策が推進されるでしょう。弊社の基本シナリオでは、短期的な緊張の高まりはあるものの、最終的には大きな構造変化を伴わない限定的な合意に落ち着くと予想しています。他のシナリオも検討しています。ひとつは、11月1日以降に一時的なエスカレーションが発生するというダウンサイドケースです。双方が提案した政策を一度は完全に実施するものの、経済的なコストが明らかになると現状に戻るという展開です。より深刻なダウンサイドシナリオでは、エスカレーションの長期化を想定しています。このケースでは、両国が長期間にわたり貿易障壁を維持します。結果的に、両国が均衡状態の計算を変える判断を下すため、均衡は崩れるでしょう。そうなると、デカップリングが進み、サプライチェーンに大きな負荷がかかるでしょう。最後のシナリオは、急速なデ・エスカレーションです。激しいレトリックが逆に交渉再開のきっかけとなり、新たな枠組み合意に至る可能性があります。この場合、一部の関税は残るものの、関税水準は当初の提案よりも低く抑えられるでしょう。では、以上のことは何を意味するのでしょうか。基本ケースでは、弊社のエコノミストは、中国の2025年下期のGDP成長率が4.5%割れに減速すると予想していますが、輸出は米国向け以外が堅調に推移することで支えられる見通しです。弊社の株式ストラテジストはこうした状況について、今年初めに始まったローリングリカバリーが続くとの見方から、ボラティリティーが高まることで実際には押し目買いの好機になるとみています。一方、エスカレーションが長期化した場合、中国のデフレが長引き、さらなる政策対応が必要となる可能性があります。同様に、米国でも初期サイクルにあるローリングリカバリーが頓挫するリスクが高まります。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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政治がグローバル市場に与える影響
日本とフランスの政治動向が、国債市場にさらなるボラティリティをもたらしています。グローバル・エコノミストのアルニマ・シンハが、投資家が注視すべきリスクについて解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、グローバル・エコノミストのアルニマ・シンハが、世界各国の国債の見通しや選挙について解説します。このエピソードは10月15日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週、国債と財政の見通しの悪化についてレポートを出しましたが、まさにぴったりのタイミングで現実がシナリオ通りになりました。日本の選挙とフランスの政治的混乱を受け、長期金利が反応し、財政見通しが政治的な議論の一部となりました。市場は現在おおむね安定しましたが、こうしたボラティリティゆえに、債務と財政の見通しというテーマは引き続き注目されるでしょう。日本では、与党・自由民主党(LDP)が高市早苗氏を新しい党首に選出し、市場にとってはやや意外な結果となりました。高市氏の選出は、1885年に内閣制度が確立されて以来、初の女性首相誕生への道を開くものです。しかし、そうした結果が確定したわけではありません。最近の報道によると、最終決定は数週間後になる見通しです。日本の戦後政治におけるこの画期的な動きは、いくつかの点で日本の政治経済における変化の波をさらに揺るぎないものにしています。市場は、高市氏が日本のリフレトレードをさらに推進し、名目成長の回復を後押しすると見込んでいます。東京市場が再開すると、長期金利は14ベーシスポイント上昇し、日本のイールドカーブは急激にスティープ化しました。これは、財政懸念の高まりと選挙前のフラットニング・ポジションの巻き戻しによるものです。具体的には、インフレ救済措置、経済安全保障やサプライチェーンへの投資拡大、食料安全保障へのさらなる取り組みといった、より積極的な財政政策への期待が高まっているようです。弊社のストラテジストは恩恵を受ける分野として、ハイテク輸出企業や防衛・安全保障関連、インフラ・エネルギー企業などを挙げています。資本がこれらの分野に向かう可能性が高いからです。ただし、明確な立法の成熟度が欠けているため、財政政策の抜本的な転換は難しい可能性があるとエコノミストは警告しています。一方、金融政策への影響は限定的と見ています。高市早苗氏は日銀の植田総裁の慎重な姿勢に強く反対はしていないため、目先の利上げ期待は低下しているようです。しかし、特に円安が進めば、年内の利上げの可能性は消えていないことに注意が必要です。経済的には、弊社の基本シナリオは選挙結果によって裏付けられました。近い将来、日銀が利上げを行うとは予想していませんでした。実際、市場は次回会合での利上げ期待を織り込まなくなっています。フランスでも、弊社が債務持続可能性に関する分析レポートを発行して以降、長期金利が政治情勢の変化に反応しました。ルコルニュ首相は、市場が予想していたよりもはるかに早い時期に辞任し、しかも在任期間はわずか数週間でした。現在の議会では依然として過半数議席を持つ勢力はなく、膠着状態が続いています。数週間から数ヶ月以内に解散総選挙が行われる可能性も消えていません。拡大する財政赤字という動く標的に対し、財政健全化をどう進めるかについて意見が割れており、これが政治的不確実性の根本的原因となっています。フランスの財政健全化の遅れは、長年議論されてきたテーマです。ECBは、混乱につながるOATスプレッドの拡大を阻止するためにTPIという暗黙のバックストップを提供していますが、弊社の欧州エコノミストはTPIが発動される可能性は低いと見ています。フランスの財政持続可能性への懸念がスプレッド拡大の主因であり、これはファンダメンタルズを反映していると考えられるからです。弊社のかなり機械的な債務予測では、市場が最終的に何が持続可能で、何が持続不可能かを決定すると強調しました。ここでお話しした政治的イベントは、注視すべきカタリストです。今のところリスクは抑えられていますが、油断はいつでも高くつく可能性があるという明確なメッセージを伝えたいと思います。債務と財政のファンダメンタルズが悪化する中で、今後もリスクが増えると考えています。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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