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岡大徳のポッドキャスト
by 岡大徳
病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。 www.daitoku0110.news
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令和8年度改定|歯科技工士連携加算はこう変わる 対象拡大と施設基準の厳格化
令和6年度改定で新設された歯科技工士連携加算は、算定が一定の広がりを見せています。一方で、加算を算定しない理由として「必要性を感じない(従来の技工指示等で対応可能)」や「歯科医師と歯科技工士が連携を行う時間の調整が難しい」が上位を占め、連携の実効性には課題が残りました。本稿は、この課題を受けた令和8年度改定の見直し内容を、算定要件と施設基準の両面から整理します。今回の見直しは、加算の対象を広げる一方で、施設基準を引き上げる内容です。第一に、対象範囲は、補綴時診断料への新設、印象採得の対象補綴物の拡大、光学印象の評価の再編という3方向に広がります。第二に、算定回数は、同一の補綴物でも工程ごとに別に算定できるルールへ改まります。第三に、施設基準は、歯科技工士の負担軽減・処遇改善に資する体制と、院内掲示・ウェブサイト掲載が追加されます。第四に、技工料は、保険医療機関と歯科技工所の相互の連携に基づき決定する旨が留意事項に明記されます。1. 見直しの背景|「連携する時間がない」を制度で解きほぐす見直しの背景には、連携加算が使われる場面の狭さと、歯科技工士の人材確保という2つの事情があります。制度の狙いを押さえると、個々の要件変更の意味が読み取りやすくなります。連携加算が使われる場面は、これまで補綴物の製作工程の一部に限られていました。従来の対象は、印象採得(光学印象を含む)、咬合採得、仮床試適の3工程です。設計や材料を決める補綴時診断は対象外であり、連携が最も効果を発揮する上流工程が評価されていませんでした。さらに、同一の補綴物では製作工程につき1回しか算定できず、複数工程で連携しても評価は1回分にとどまりました。歯科技工士の人材確保は、連携加算のもうひとつの狙いです。厚生労働科学研究は、歯科技工士不足の解決策として、歯科医師と歯科技工士の情報共有と連携体制の整備、そしてICTの活用を提言しました。しかし令和7年度の検証調査では、加算が人材定着・確保に寄与した程度について「現時点ではわからない」が54.3%を占めています。加算による評価が歯科技工士に届いているかを確かめる仕組みが、今回の施設基準の見直しにつながりました。2. 対象範囲の拡大|補綴時診断料への新設、印象採得の拡大、光学印象の再編対象範囲は、3つの区分で広がります。いずれも、対面による連携を歯科技工士連携加算1(60点)、情報通信機器による連携を歯科技工士連携加算2(80点)として評価する形に統一されました。補綴時診断料には、歯科技工士連携加算1・2が新設されます。対象となるのは、高強度硬質レジンブリッジ(M017-2)、チタンブリッジ(M017-3)、3次元プリント有床義歯(M018-2)を製作する場合です。このうち3次元プリント有床義歯は、令和8年度改定で新たに評価される項目です。歯科医師が歯科技工士に意見を求め、その内容を踏まえて補綴時診断を行った場合に算定します。同時に2以上の新たな欠損補綴について説明した場合でも、算定は1回です。設計段階での相談が評価対象に加わった点が、今回の目玉といえます。印象採得は、対象補綴物が大きく広がります。現行の対象は、レジン前装金属冠(M011)、レジン前装チタン冠(M011-2)、CAD/CAM冠(M015-2)の3つに限られていました。改定案では、前歯部の歯冠補綴物またはブリッジを製作する場合が広く対象となります。拡大されたのは対象補綴物の種類であり、前歯部の印象採得を行う場合という前提は現行と変わりません。歯科医師が歯科技工士とともに色調採得および口腔内の確認等を行い、補綴物の製作に活用するという要件も同じです。光学印象は、評価そのものが組み替えられます。現行は「光学印象歯科技工士連携加算」として50点であり、対象はCAD/CAMインレー(M015-3)、方法は対面のみでした。改定案では、対象にCAD/CAM冠(M015-2)が加わり、名称も歯科技工士連携加算1・2に統一されます。あわせて情報通信機器を用いた連携が算定できるようになり、点数も60点・80点へ引き上げられます。区分 現行 改定案 補綴時診断料 対象外 加算1:60点/加算2:80点(新設) 印象採得 レジン前装金属冠等の3種 前歯部の歯冠補綴物またはブリッジ 光学印象 50点・対面のみ・CAD/CAMインレー 加算1:60点/加算2:80点、CAD/CAM冠を追加 咬合採得・仮床試適 加算1・加算2を算定可 点数の見直しはなく、併算定ルールのみ変更3. 併算定ルールの見直し|「製作工程につき1回」から「工程ごと」へ併算定のルールは、算定機会を増やす方向へ転換します。連携の回数に応じた評価となる点で、実務への影響が最も大きい見直しです。現行は、1つの補綴物につき1回しか算定できません。印象採得で加算を算定すると、同じ補綴物について咬合採得や仮床試適の加算は算定できない仕組みでした。工程ごとに連携しても、評価は最初の1回で打ち止めとなります。改定案は、同一の補綴物でも工程ごとに別に算定できます。「同日に行った場合を除き、別に算定する」との規定が、補綴時診断料と印象採得、印象採得と咬合採得、咬合採得と仮床試適という隣接する工程の間に置かれました。有床義歯のように補綴時診断から装着まで4回程度の来院を要する治療では、来院日ごとの連携が評価されます。ただし同日に複数の工程を行った場合は、重複して算定できません。各工程では、加算1か加算2のいずれか1つだけを算定します。「1装置につき、いずれか1つのみ算定する」との規定が、各区分に共通で置かれました。同じ工程で対面と情報通信機器の両方を用いても、算定できるのは一方のみです。4. 施設基準の見直し|処遇改善体制と情報公開を要件化施設基準は、要件が実質的に厳しくなります。届出済みの医療機関も、追加された要件への対応が必要です。なお経過措置の有無は個別改定項目に示されておらず、告示・通知での確認が欠かせません。歯科技工士連携加算1の施設基準には、3つの要件が追加されます。従来からの要件は、歯科技工士の配置または他の歯科技工所との連携体制の確保です。ここに、歯科技工士の負担軽減および処遇の改善に資する体制の整備、連携体制に関する事項の院内掲示、そして掲示事項の原則ウェブサイト掲載が加わります。加算による評価を歯科技工士に還元し、その体制を患者にも示すことが求められます。歯科技工士連携加算2の施設基準は、加算1の要件をすべて満たすことが前提となります。加えて、情報通信機器を用いた歯科診療を行うにつき十分な体制の整備が必要です。現行では加算1と加算2の要件が並列に置かれていましたが、改定案では加算1を土台とする積み上げ型に整理されました。施設基準の項番と対象項目も改まります。現行の「二の二」は「三の二」となり、名称に補綴時診断料と光学印象が加わります。光学印象の連携加算が独立した加算から統合された点が、名称の変更に表れています。5. 技工料の取扱いの明確化|相互の連携に基づく費用決定歯冠修復および欠損補綴の通則についても、取扱いが明確化されます。補綴物を円滑に製作・委託できる環境を整えるための見直しです。算定留意事項は、現行の5が削除され、新たに9が設けられます。新設される9では、歯科技工の委託に当たり、製作技工に要する費用および製作管理に要する費用の決定を、保険医療機関と歯科技工所の相互の連携に基づき行うこととされました。委託先の歯科技工所と協議のうえで費用を決める運用が、留意事項として明文化された形です。この明確化は、歯科技工所従事者の賃上げ議論を背景としています。歯科技工所への支払いは歯科医療機関を経由するため、評価の効果が現場に届く仕組みが課題とされてきました。ただし賃上げそのものへの対応は別の項目で措置されるため、本項目は費用の決定過程を明確にする位置づけと理解するのが適切です。まとめ|「対象を広げ、還元を求める」改定令和8年度改定は、歯科技工士連携加算の対象を広げる一方で、算定する医療機関に体制整備と情報公開を求めます。対象範囲は、補綴時診断料への新設、印象採得の対象拡大、光学印象の再編により3方向へ広がります。算定回数は、同日実施を除き工程ごとに別に算定できるルールへ改まります。施設基準は、歯科技工士の負担軽減・処遇改善に資する体制、院内掲示、ウェブサイト掲載が追加されます。技工料は、保険医療機関と歯科技工所の相互の連携に基づき決定する旨が明記されます。届出済みの医療機関ほど、追加された施設基準への対応を早めに確認しておくことをおすすめします。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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口腔機能指導加算12点が廃止|新設「口腔機能実地指導料46点」の算定要件
令和8年度診療報酬改定で、歯科衛生士による口腔機能の指導が「加算」から独立した「指導料」へ生まれ変わります。現行の口腔機能指導加算は、歯科衛生実地指導料の加算であるため、両方の指導を同時に行わなければ算定できません。この制約が影響し、歯科衛生実地指導料を算定した患者のうち口腔機能指導加算を算定した割合は、令和6年8月審査分で約1.3%にとどまりました。本記事では、この課題を解消するために新設される「口腔機能実地指導料」の中身を、現行制度と比較しながら整理します。新設される口腔機能実地指導料は46点で、月1回に限り算定できます。第一に、評価体系が加算から独立した指導料へ変わります。第二に、算定には研修を受けた歯科衛生士の配置と、施設基準の届出が新たに求められます。第三に、指導内容を文書により提供することが、算定の必須条件となります。1. 評価体系の見直し:加算12点から独立した指導料46点へ最大の変更点は、口腔機能に関する指導が歯科衛生実地指導料の「注」から切り離され、独立した項目になることです。改定案では、歯科衛生実地指導料の注3(口腔機能指導加算12点)が削除されます。これに代わって、口腔機能実地指導料46点が新設されます。この見直しの背景には、加算という位置づけがもたらしていた算定上の制約があります。加算である以上、歯科衛生士はプラーク除去方法の指導など歯科衛生実地指導料の要件を満たしたうえで、さらに口腔機能の指導を上乗せしなければなりませんでした。令和6年8月審査分の社会医療診療行為別統計では、歯科衛生実地指導料のみの算定回数が約1,178万回であるのに対し、口腔機能指導加算は約16万回でした。算定していない理由からも、現行の建付けの課題が読み取れます。令和7年度検証調査(回答1,122件、複数回答可)では、「歯科衛生士が忙しく指導を行う時間がない」が30.3%で最多となり、「専門的な指導を行う歯科衛生士がいない」が28.6%で続きました。2つの指導を同時に行う負担と、専門人材の不足が、算定を阻んでいたわけです。なお算定回数そのものは、直近で増加に転じています。令和7年のNDBデータによると、口腔機能指導加算の算定回数は1月の約17万回から3月には約21万回へ増え、5月まで20万回台で推移しました。期中改定による点数の引上げと周知が、算定行動に影響したとみられます。独立した指導料への移行は、この負担と評価の両面に応える見直しといえます。12点の加算に代えて、46点の指導料として口腔機能の指導そのものが評価されます。ただし現行の加算は歯科衛生実地指導料(80点又は100点)への上乗せであったため、単純に34点の増点と捉えることはできません。歯科衛生実地指導料との併算定の可否や、指導内容の具体的な範囲は、今後発出される告示・通知で確認する必要があります。2. 新たな要件:研修受講と施設基準の届出口腔機能実地指導料を算定するには、研修を受けた歯科衛生士の配置が必要です。算定要件では、口腔機能発達不全症および口腔機能低下症の実地指導に係る研修を受講した歯科衛生士が指導を行うことと定められています。施設基準でも、口腔機能の指導等に係る適切な研修を受けた歯科衛生士を1名以上配置することが求められます。研修が要件化された理由は、口腔機能低下症等への指導が専門的知識を前提とするためです。中医協の資料では、ICFや健康行動理論といった健康概念を用いた指導が、科学的研究によって効果を示していることが紹介されています。関連学会では、口腔機能の基礎知識、口腔機能検査法、口腔機能訓練法、口腔機能管理指導法を項目とする研修プログラムが計画されています。ただしこのプログラムは中医協資料に示された一例であり、要件に該当する研修の具体的な範囲は、今後の通知で示される見込みです。施設基準では、研修に加えて設備および体制の整備も求められます。具体的には、歯科衛生士が口腔機能の指導を行うための設備と体制を有していることが条件です。届出が必要な項目であるため、算定を予定する医療機関は、地方厚生局長等への届出を済ませる必要があります。届出の時期や経過措置の有無は、今後の通知で確認してください。3. 算定のルール:対象患者・指示・文書提供・回数算定にあたっては、対象患者、指示、文書提供、回数の4つのルールを押さえる必要があります。対象患者は、口腔機能の発達不全を有する患者、または口腔機能の低下を来している患者です。指導は、主治の歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が行います。指導後には、指導内容に係る情報を文書により提供しなければなりません。文書提供は算定要件に明記されているため、指導を実施しただけでは算定できません。なお提供先や文書の記載事項は算定要件に示されていないため、通知の内容を待つ必要があります。院内で提供文書の様式をあらかじめ整えておくと、運用がスムーズになります。算定回数は、月1回が上限です。継続的な口腔機能の管理を行う場合は、口腔機能管理料や小児口腔機能管理料といった歯科医師による管理の評価と、どう組み合わせるかを設計しておくとよいでしょう。なお令和8年度改定では、小児口腔機能管理料および口腔機能管理料の対象患者の範囲も拡大されます。まとめ:改定施行までに準備すべき3点令和8年度改定では、歯科衛生士による口腔機能の指導が、加算12点から独立した指導料46点へと変わります。第一に、口腔機能指導加算が削除され、口腔機能実地指導料46点が新設されます。第二に、算定には研修を受けた歯科衛生士の配置と、施設基準の届出が必要です。第三に、指導内容の文書提供が必須となり、算定は月1回が上限となります。改定施行までに、研修の受講計画、届出の準備、提供文書の様式整備という3点を進めておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度診療報酬改定|周術期等口腔機能管理計画策定料に150点の新区分
手術や入院中のリハビリテーション等を受ける患者の口腔機能管理は、医科歯科連携の柱として広がってきました。しかし、患者の状態が変わって管理計画を作り直しても、その計画変更を評価する区分は現行の点数表にありません。令和8年度診療報酬改定は、この点を含めて周術期等及び回復期等の口腔機能管理の評価を見直します。本記事は、個別改定項目「⑦ 周術期及び回復期等の口腔機能管理の推進」の内容を、改定案と現行の対比にそって解説します。今回の見直しは、計画策定料への新区分の追加と、歯周病の継続管理の対象拡大からなります。第一に、周術期等口腔機能管理計画策定料が、1(300点)と2(150点)の2区分になります。第二に、回復期等口腔機能管理計画策定料も、同じく1(300点)と2(150点)の2区分になります。第三に、歯周病継続支援治療の対象に、周術期等口腔機能管理料又は回復期等口腔機能管理料を算定している患者が加わります。なお、この見直しの狙いは、資料の「基本的な考え方」に示されたとおり、医科歯科連携の推進です。1. 周術期等口腔機能管理計画策定料は1と2の2区分になる周術期等口腔機能管理計画策定料は、1と2に分かれます。1は、現行の周術期等口腔機能管理計画策定料と同じ300点です。2は、管理計画を策定した後の計画変更を評価する区分であり、150点です。周術期等口腔機能管理計画策定料1の算定要件は、現行と同じ内容です。対象は、がん等に係る手術、放射線治療、化学療法、集中治療室における治療、緩和ケア(以下「手術等」)を実施する患者です。歯科疾患に係る手術については、入院期間が2日を超えるものに限られます。算定できるのは、歯科診療を実施している保険医療機関が、手術等を実施する保険医療機関からの文書による依頼に基づき、患者又はその家族の同意を得た上で、周術期等の口腔機能の評価と一連の管理計画の策定を行った場合です。さらに、その内容を説明し、管理計画を文書により提供することも要件であり、算定は当該手術等に係る一連の治療を通じて1回に限られます。周術期等口腔機能管理計画策定料2は、策定済みの管理計画を変更した場合を評価します。算定できるのは、注1に規定する管理計画を策定した患者について、その患者の状態の変化等により治療計画を変更した場合です。算定回数は、患者1人につき1回に限られます。ここで押さえるべき点は、1が「一連の治療を通じて1回」であるのに対し、2は「患者1人につき1回」と規定されている点です。2. 回復期等口腔機能管理計画策定料も1と2の2区分になる回復期等口腔機能管理計画策定料も、周術期等と同じ形で1と2に分かれます。1は、現行の回復期等口腔機能管理計画策定料と同じ300点です。2は、管理計画を策定した後の計画変更を評価する区分であり、150点です。回復期等口腔機能管理計画策定料1の算定要件は、現行と同じ内容です。対象は、医科点数表の区分番号A101に掲げる療養病棟入院基本料、区分番号A308に掲げる回復期リハビリテーション病棟入院料、区分番号A308-3に掲げる地域包括ケア病棟入院料を算定する患者です。算定できるのは、歯科診療を実施している保険医療機関が、リハビリテーション等を行う保険医療機関からの文書による依頼に基づき、患者又はその家族の同意を得た上で、回復期等の口腔機能の評価と一連の管理計画の策定を行った場合です。さらに、その内容を説明し、管理計画を文書により提供することも要件であり、算定は当該リハビリテーション等に係る一連の治療を通じて1回に限られます。回復期等口腔機能管理計画策定料2も、策定済みの管理計画を変更した場合を評価します。算定できるのは、注1に規定する管理計画を策定した患者について、その患者の状態の変化等により治療計画を変更した場合です。算定回数は、患者1人につき1回に限られます。周術期等と回復期等で、計画変更を評価する仕組みは共通しています。3. 歯周病の継続管理の対象に、周術期等・回復期等の口腔機能管理料の算定患者が加わる歯周病の継続管理については、算定要件に新たな対象患者が追加されます。今回の資料では、現行の【歯周病安定期治療】が【歯周病継続支援治療】として示されています。この歯周病継続支援治療の留意事項通知に、周術期等口腔機能管理料又は回復期等口腔機能管理料を算定している患者が加えられます。現行の留意事項通知が対象としているのは、区分番号B002に掲げる歯科特定疾患療養管理料を算定している患者だけです。この患者のうち、当該管理料の「注1」に規定する治療計画に歯周病に関する管理計画が含まれ、かつ、留意事項通知の(1)と同様の状態にある患者について、歯周病安定期治療を算定できます。改定案では、この対象に5つの管理料が追加されます。追加されるのは、区分番号B000-6に掲げる周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)、区分番号B000-7に掲げる周術期等口腔機能管理料(Ⅱ)、区分番号B000-8に掲げる周術期等口腔機能管理料(Ⅲ)、区分番号B000-9に掲げる周術期等口腔機能管理料(Ⅳ)、区分番号B000-11に掲げる回復期等口腔機能管理料です。これらのいずれか又は歯科特定疾患療養管理料を算定している患者であって、各区分に規定する治療計画に歯周病に関する管理計画が含まれ、(1)と同様の状態にある患者について、歯周病継続支援治療を算定できます。この追加により、周術期等・回復期等の口腔機能管理から歯周病の継続管理へつなぐ道筋が明確になります。現行の留意事項通知(2)は、歯科特定疾患療養管理料の算定患者だけを規定していました。改定案は、ここに周術期等・回復期等の口腔機能管理料の算定患者を加えることで、手術やリハビリテーション等の期間中から、その後の歯周病管理へと続く流れを後押しします。4. 実務では、計画変更の記録と対象患者の確認が鍵になる以下は、資料に明記された要件ではなく、算定要件から導かれる実務上の備えです。備えは2つあります。ひとつは、管理計画を変更した事実を記録に残す備えです。もうひとつは、歯周病継続支援治療の対象となる患者を確認する備えです。管理計画の変更については、変更の理由を明確にしておくことが役立ちます。策定料2が、患者の状態の変化等により治療計画を変更した場合を算定要件としているためです。変更前後の計画内容と変更理由を記録に残す運用であれば、要件との対応を説明しやすくなります。歯周病継続支援治療の対象確認については、治療計画に歯周病に関する管理計画が含まれているかどうかが分かれ目になります。算定要件が、各区分に規定する治療計画に歯周病に関する管理計画が含まれることを求めているためです。周術期等・回復期等の口腔機能管理計画を策定する段階から、歯周病に関する管理計画の要否を確認しておく運用が有効です。まとめ:計画変更の評価と、歯周病管理の対象拡大が要点令和8年度診療報酬改定は、周術期等及び回復期等の口腔機能管理について、3つの見直しを行います。第一に、周術期等口腔機能管理計画策定料が、1(300点)と2(150点)の2区分になります。第二に、回復期等口腔機能管理計画策定料も、1(300点)と2(150点)の2区分になります。第三に、歯周病継続支援治療の対象に、周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)〜(Ⅳ)又は回復期等口腔機能管理料を算定している患者が加わります。いずれの見直しも、医科歯科連携を推進する観点によるものです。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度診療報酬改定|歯科矯正の保険対象に「連続3歯以上の先天性欠損歯」を追加
保険診療における歯科矯正は、厚生労働大臣が定める疾患等に起因した咬合異常に限定されてきました。この限定の下では、咬合異常と有意に関係する先天性欠損歯を有する患者が対象から外れていました。本記事では、令和8年度診療報酬改定の個別改定項目「Ⅲ-7-⑥ 歯科矯正に係る患者の対象等の見直し」の内容を、初めて改定資料に触れる方にもわかるように解説します。今回の見直しは、対象患者の追加と説明の標準化という2つの柱で構成されます。対象患者の追加は、告示と歯科矯正相談料の2か所で行われます。告示では、連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常が、18歳未満の患者に限って保険給付の対象に加わります。歯科矯正相談料では、同じ咬合異常が算定対象となる疑い病態に加わります。説明の標準化としては、歯科矯正相談料の説明書に標準様式が定められ、その写しを診療録に添付する取扱いに変わります。1. 連続3歯以上の先天性欠損歯が保険給付の対象に加わる保険給付の対象追加は、療担規則等に基づく厚生労働大臣の定める掲示事項等(第十一の二)の改正で行われます。この告示は、歯科矯正を保険で行える場合を列挙した規定です。改定案では、列挙の末尾に「十八歳未満の患者であって、連続した三歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常」が追加されます。追加された対象には、年齢と実施医療機関という2つの条件がかかります。年齢の条件として、患者は18歳未満に限られます。実施医療機関の条件として、歯科点数表のN000歯科矯正診断料に係る施設基準を満たし、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関であることが求められます。この2つの条件は、既存の対象疾患と同じ枠組みの中に追加されたことによるものです。対象追加の根拠は、先天性欠損歯が顔面骨格の発育に与える影響にあります。中央社会保険医療協議会(中医協)に提出された資料では、先天性欠損歯が多いほど顔面骨格への影響が大きいことが示されました。同資料では、3歯以上の欠損は2歯以下より影響が大きいことも示されています。連続して隣接歯が欠損する状態は、長期的かつ多科的な治療を要する重篤な症状と位置づけられています。同じ告示の改定案では、対象疾患も2つ増えています。改定案の疾患名の列挙には、現行にない「原発性低リン血症性くる病」と「ロイス・ディーツ症候群」が加わっています。これらの追加は他の改定項目に由来する可能性がありますが、告示の対象疾患が増える点は本項目の改定案から読み取れます。なお、従来からある「六歯以上の先天性部分無歯症」の規定は改定後も残ります。この規定は欠損の連続性を問いません。今回追加される規定は、欠損が連続する場合に3歯以上で対象とする点で、従来の規定を補う関係にあります。2. 歯科矯正相談料の対象にも同じ咬合異常が加わる歯科矯正相談料の見直しは、留意事項通知(3)の改正で行われます。歯科矯正相談料は、学校保健安全法第13条第1項に規定する健康診断の結果を受けて、咬合異常等が疑われる患者に検査と説明を行った場合に算定する項目です。改定案では、算定対象となる疑い病態に「連続した3歯以上の先天性欠損歯に起因した咬合異常(18歳未満に限る。)」が加わります。対象の追加により、相談の入口と保険給付の対象が一致します。改定前の相談料は、大臣が定める疾患に起因した咬合異常、3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常、顎離断等の手術を必要とする顎変形症の3つを疑い病態としていました。改定後の相談料は、これらに先天性欠損歯による咬合異常を加えた4つを疑い病態とします。学校歯科健診をきっかけとした相談から治療までの流れが、この一致によって切れ目なくつながります。検査の記載も、あわせて明確化されます。改定前の通知は「歯科エックス線画像、口腔内写真、顔面写真等の撮影、スタディモデルの製作等を行い」と記載していました。改定後の通知は、E000写真診断の「1 単純撮影」「2 特殊撮影」またはE100「歯、歯周組織、顎骨、口腔軟組織」の「1 単純撮影」「2 特殊撮影」による画像と特定します。さらに、これらの検査は「必要に応じて行い」と改められ、症例に応じた実施であることが明示されます。3. 説明書の標準様式が定められ、診療録の取扱いも変わる説明書の標準様式は、患者への説明の質を担保するために定められます。中医協では、令和6年度改定で新設された歯科矯正相談料について、どの保険医療機関でも適切な説明ができるよう質の担保が必要だと指摘されました。令和7年6月には、日本矯正歯科学会と日本小児歯科学会が「歯科矯正相談料に関する基本的な考え方」で結果報告書(説明書)の標準様式を示しています。改定案は、この様式を「別紙様式●」として通知に位置づけます。標準様式の運用として、写しの診療録添付が求められます。改定案の(3)は、患者等に提供する文書の様式を「別紙様式●」またはこれに準じた様式とし、その写しを診療録に添付すると規定します。様式の番号は、正式な通知の発出時に確定します。診療録の記載要件は、写しの添付に置き換わる形で削除されます。改定前の(5)は、健康診断の実施日、結果、学校名、説明した診断結果等の要点を診療録に記載するよう求めていました。改定後は、この(5)が削除されます。診療録への対応は、標準様式の写しの添付に一本化されます。4. 実務では3つの確認が必要になる改定への対応では、対象・体制・様式の3点を確認してください。対象については、連続する欠如歯の本数と患者の年齢が要件を満たすかを診断時に確認します。体制については、歯科矯正診断料に係る施設基準の届出が済んでいるかを確認します。様式については、標準様式に沿った説明書を準備し、写しを診療録に添付する運用へ切り替えます。確認の際は、正式な告示と通知の発出を待つ点にも注意してください。本記事が扱う「個別改定項目について」は、答申の時点で示された改定案です。様式番号などの細部は、正式な告示および留意事項通知で確定します。まとめ:対象追加と説明の標準化が同時に進む令和8年度診療報酬改定では、歯科矯正に係る患者の対象等が2つの柱で見直されます。第1の柱である対象患者の追加として、連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常が、18歳未満かつ歯科矯正診断料の届出医療機関という条件の下で保険給付の対象に加わります。同じ咬合異常は歯科矯正相談料の対象にも加わり、相談から治療までの流れがつながります。第2の柱である説明の標準化として、説明書の標準様式が定められ、写しの診療録添付が従来の記載要件に代わります。学校歯科健診をきっかけに矯正相談を受ける子どもにとって、保険診療の入口が広がる改定といえます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】小児保隙装置が大幅見直し|可撤式1,200点新設と調整・修理の評価
令和8年度診療報酬改定では、小児の咬合機能の獲得に向けた評価が大きく変わります。これまで小児保隙装置は、クラウンループとバンドループだけが600点で評価され、装着後の調整や修理には評価がありませんでした。臨床では可撤式保隙装置(小児義歯)が最も多く使われているにもかかわらず、診療報酬上は一部の症例を除いて原則認められていませんでした。本記事は、この診療実態と評価のギャップを埋める今回の見直しについて、新設項目と算定要件を整理して解説します。今回の見直しは、装置の「製作」と「装着後の管理」の両面を評価する内容です。第一に、歯科口腔リハビリテーション料1に「3 小児保隙装置の場合 180点」が新設され、装着後の調整と修理が月1回評価されます。第二に、小児保隙装置が「1 固定式保隙装置 850点」と「2 可撤式保隙装置 1,200点」の2区分に再編され、可撤式保隙装置(小児義歯)が新たに位置づけられます。第三に、可撤式保隙装置の算定には5つの症例要件のいずれかへの該当が求められ、診療録と診療報酬明細書の摘要欄への記載が必須となります。1. 装着後の調整・修理を評価する新区分が誕生歯科口腔リハビリテーション料1に、小児保隙装置の調整と修理を評価する新区分が設けられます。改定案では「3 小児保隙装置の場合 180点」が新設され、従来の「3」(口蓋補綴・顎補綴により算定した装置を装着している患者が対象)は「4」に繰り下がります。装置を装着したまま経過を診るという小児歯科の日常が、初めて診療報酬上の評価対象となります。新区分の背景には、保隙装置が装着後に変形や破損を起こしやすいという診療実態があります。保隙装置には恒常的に咬合力がかかるため、ループの先端が舌側に偏位したり、ループが歯肉に埋入したりします。中医協に示された大学病院の実態調査(昭和歯学会雑誌、1997年)では、装着後にみられた不快事項として、可撤式保隙装置の不適合が46.0%、破損が35.5%と報告されています。装置の機能を維持するには定期的な調整と修理が欠かせないにもかかわらず、これまで評価がありませんでした。算定要件は、対象患者、行為、目的、回数、記載事項の5点で構成されます。対象患者は、区分番号M016-2に掲げる小児保隙装置を装着している患者です。行為は、当該装置の調整または修理です。目的は、正常な咬合関係の獲得です。回数は、月1回に限られます。記載事項として、調整または修理の内容等の要点を診療録に記載します。回数制限をめぐっては、摂食機能療法との関係に注意が必要です。歯科口腔リハビリテーション料1には、摂食機能療法を算定した日は算定できないという制限と、摂食機能療法の治療開始日から3月を超えた場合は両者を合わせて月6回までとする制限があります。改定案では、この2つの制限がかかる区分が「2及び3」から「2及び4」へと振り替わります。したがって、新設された「3 小児保隙装置の場合」は、条文上いずれの制限の対象にもなりません。区分の繰り下がりを見落とすと、算定可否の判断を誤ります。2. 小児保隙装置が2区分に再編され、可撤式が新設小児保隙装置の製作の評価も、装置の種類に応じた2区分へと再編されます。現行の小児保隙装置600点は、改定案で「1 固定式保隙装置 850点」と「2 可撤式保隙装置 1,200点」に分かれます。装置の構造と製作の手間の違いが、点数に反映される形です。固定式保隙装置は、現行の算定対象をそのまま引き継ぎます。算定できるのは、クラウンループまたはバンドループを装着した場合に限られます。この範囲は改定前と変わらず、点数だけが600点から850点へと引き上げられます。可撤式保隙装置は、床義歯形態の装置を装着した場合の新しい評価です。従来、小児義歯は先天性無歯症など限られた疾患にしか認められていませんでした。一方で、前述の実態調査では保隙装置の48.6%を可撤式保隙装置(小児義歯)が占め、臨床での主力となっています。今回の見直しは、この可撤式保隙装置を小児保隙装置として正面から位置づけ、1,200点で評価します。3. 可撤式保隙装置の算定には症例要件と記載が必須可撤式保隙装置を算定するには、5つの症例要件のいずれかに該当する必要があります。対象となるのは、次の症例です。* イ 両側性の乳臼歯を早期喪失した症例* ロ 片側性の2歯以上の乳臼歯を早期喪失した症例* ハ 片側性乳臼歯1歯欠損であっても、支台歯に加重負担をきたす可能性がある症例* ニ 乳前歯を早期喪失した症例* ホ 永久歯を早期喪失し、将来の補綴処置に備えて保隙を行う必要がある症例これら5症例のうちどれに該当するかは、記録に残さなければなりません。記載先は、診療録と診療報酬明細書の摘要欄の2か所です。該当症例を特定せずに算定すると、返戻や査定の対象となります。記載義務は、前述の調整・修理の評価にも共通します。調整・修理では、調整または修理の内容等の要点を診療録に記載します。可撤式保隙装置の製作では、該当する症例区分を診療録と摘要欄に記載します。いずれも「何をしたか」「なぜ算定できるか」を診療録で説明できる状態にしておくことが、算定の前提となります。まとめ:製作と管理の両輪で小児の咬合機能獲得を支える令和8年度改定は、小児の咬合機能の獲得を製作と管理の両面から支える内容です。管理面では、歯科口腔リハビリテーション料1に「3 小児保隙装置の場合 180点」が新設され、装着後の調整と修理が月1回評価されます。製作面では、小児保隙装置が固定式850点と可撤式1,200点の2区分に再編され、臨床実態に即した可撤式保隙装置が新たに位置づけられます。算定に当たっては、可撤式保隙装置の5つの症例要件と、診療録および摘要欄への記載を確認してください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度診療報酬改定】新製有床義歯管理料が1装置140点へ|併算定も解禁
有床義歯の管理は、平成26年度改定以降、「新製有床義歯管理料」と「歯科口腔リハビリテーション料1」の2本立てで評価されてきました。この2本立ての評価体系には、両者がいずれも調整と指導を1口腔単位で評価するため、義歯の構造や形態ごとに異なる指導の手間を反映できないという課題がありました。本稿では、令和8年度診療報酬改定の個別改定項目「Ⅲ-7-③ 有床義歯管理の評価体系の見直し」を、算定単位、算定要件、併算定の3点から解説します。今回の見直しは、新製有床義歯管理料を装置ごとの評価に改め、歯科口腔リハビリテーション料1との役割分担を明確にする内容です。第1に、算定単位が1口腔単位から1装置単位へ変わり、点数は局部義歯140点・総義歯140点となります。第2に、算定要件が整理され、新製有床義歯管理料は義歯の取扱いの説明を、歯科口腔リハビリテーション料1は義歯の調整・指導を担います。第3に、両者の併算定制限が撤廃され、同月・同日でも算定できるようになります。1. 算定単位の見直し:1口腔単位から1装置単位へ新製有床義歯管理料は、算定単位が1口腔単位から1装置単位へ見直されます。この見直しに伴い、点数区分も患者の状態による区分から義歯の種類による区分へ変わります。算定単位の変更は、有床義歯の構造や形態が多種多様である実態を踏まえたものです。中央社会保険医療協議会(中医協)の資料では、有床義歯の構造や形態は欠損範囲や欠損部位に応じて多種多様であり、新たな有床義歯を製作する際の確認・指導事項は装置や装着部位によって異なると整理されました。たとえば部分床義歯では、義歯床に加えてクラスプやレストといった支台装置・維持装置の適合確認が必要になります。装置ごとに指導内容が異なる以上、装置ごとに管理を評価する仕組みが求められたわけです。点数区分は、現行の「困難な場合」の有無から、「局部義歯」と「総義歯」の別へ改められます。現行の新製有床義歯管理料は、1口腔につき「2以外の場合」190点、「困難な場合」230点の2区分でした。改定案では、1装置につき「1 局部義歯の場合」140点、「2 総義歯の場合」140点の2区分となります。区分は分かれていますが、点数はいずれも140点で同一です。[新製有床義歯管理料:現行 → 改定案]* 算定単位:1口腔につき → 1装置につき* 区分1:2以外の場合 190点 → 局部義歯の場合 140点* 区分2:困難な場合 230点 → 総義歯の場合 140点装置単位への変更により、上下顎に義歯を新製した場合の評価は手厚くなります。従来は上下顎に義歯を新製しても1口腔単位のため190点(困難な場合230点)でした。改定後は1装置140点を2装置分算定できるため、280点となります。2. 算定要件の見直し:説明は新製管理料、調整はリハビリテーション料算定要件の見直しでは、新製有床義歯管理料と歯科口腔リハビリテーション料1の役割分担が明確になります。前者は新製義歯の取扱いの説明を、後者は義歯の調整・指導を担う整理です。新製有床義歯管理料の要件からは、「適合性等の検査」と「保存・清掃方法等の指導」が外れます。現行の要件は、有床義歯の適合性等について検査を行い、併せて取扱い、保存、清掃方法等について必要な指導を行った上で、その内容を文書により提供することでした。改定案の要件は、当該有床義歯の取扱いについて必要な説明を行った上で、その内容を文書により提供することに整理されます。装着した日の属する月に、当該有床義歯を製作した保険医療機関において算定する点と、文書提供が要件である点は変わりません。歯科口腔リハビリテーション料1の要件からは、逆に新製義歯の取扱い説明が除かれます。改定案では、「1 有床義歯の場合」の対象から、新製有床義歯管理料における新製した有床義歯の着脱や保管の方法等の取扱いについての説明が明示的に除外されます。1口腔単位で義歯に係る調整または指導を行った場合に月1回算定する点は変わりません。診療録への記載事項は、「調整部位又は指導内容等の要点」から「調整又は指導内容等の要点」へ改められます。検査の位置づけについては、条文上の記述が両区分から姿を消す点に注意が必要です。新製有床義歯管理料からは「適合性等について検査を行い」が削除されます。歯科口腔リハビリテーション料1からも、現行要件にあった「有床義歯の適合性や咬合関係等の検査を行い、患者に対して義歯の状態を説明した上で」という具体的な記述が削除されます。したがって、検査が新製有床義歯管理料から歯科口腔リハビリテーション料1へ移されたという整理ではありません。実際の取扱いは、今後の通知および疑義解釈で確認が必要です。点数区分は、新製有床義歯管理料と同様に簡素化されます。現行の歯科口腔リハビリテーション料1「1 有床義歯の場合」は、「イ ロ以外の場合」104点、「ロ 困難な場合」124点の2区分でした。改定案では、この2区分が廃止され、114点に一本化されます。困難な場合の定義を新製有床義歯管理料から引用していた要件も削除されます。3. 併算定の見直し:同月・同日の算定が可能に併算定の見直しにより、新製有床義歯管理料と歯科口腔リハビリテーション料1は同じ月に算定できるようになります。両者の役割分担が明確になったことを受けた取扱いです。現行の併算定制限は削除されます。現行の新製有床義歯管理料の注2は、同管理料を算定した日の属する月について、歯科口腔リハビリテーション料1(1に限る)を算定できないと定めていました。改定案では、この注2が削除されます。削除に代わり、歯科口腔リハビリテーション料1の要件に併算定を認める規定が置かれます。改定案の要件では、新製有床義歯管理料を算定した月と同月に当該義歯の調整または指導を行った場合、同日であっても歯科口腔リハビリテーション料1を算定して差し支えないと明記されます。この規定は、装着日の属する月の翌月以降の調整・指導を歯科口腔リハビリテーション料1で算定すると定めていた現行規定に置き換わります。翌月以降の調整・指導を歯科口腔リハビリテーション料1で算定する取扱い自体は変わらず、装着月から算定できる点が新しくなります。4. 実務への影響:算定額と運用の変化を押さえる実務では、算定額の変化と運用上の留意点を押さえる必要があります。算定額は上下顎の新製で増え、運用では説明と調整の切り分けが求められます。算定額は、上下顎に総義歯を新製し、同月に調整を行うケースで大きく変わります。現行では、新製有床義歯管理料のみを算定し、同月の歯科口腔リハビリテーション料1は算定できませんでした。改定後は、新製有床義歯管理料140点×2装置=280点に、歯科口腔リハビリテーション料1の114点を加えた394点となります。[上下顎に総義歯を新製し、同月に調整した場合:現行 → 改定案]* 新製有床義歯管理料:190点、または「困難な場合」に該当すれば230点(いずれも1口腔) → 280点(140点×2装置)* 歯科口腔リハビリテーション料1:算定不可 → 114点* 合計:190点または230点 → 394点現行の「困難な場合」に該当するかどうかは、現行通知の定義によります。総義歯や多数歯欠損の症例では230点を算定している医療機関が多く、その場合の増加幅は394点との差の164点です。自院の実際の算定区分に当てはめて比較してください。運用では、説明と調整・指導の切り分けが記録上のポイントになります。新製有床義歯管理料では、義歯の取扱いについての説明内容を文書で提供します。歯科口腔リハビリテーション料1では、調整または指導内容等の要点を診療録に記載します。同日に両者を算定する場合、文書の内容と診療録の記載が重複しないよう、それぞれの趣旨に沿って整理してください。まとめ:装置単位化と役割分担の明確化が今回の要点令和8年度診療報酬改定における有床義歯管理の見直しは、装置単位化と役割分担の明確化に集約されます。新製有床義歯管理料は、1口腔単位から1装置単位へ改められ、局部義歯140点・総義歯140点となります。算定要件は、新製有床義歯管理料が義歯の取扱いの説明を、歯科口腔リハビリテーション料1が義歯の調整・指導を担う形へ整理されます。併算定制限は撤廃され、同月に当該義歯の調整または指導を行えば、同日でも両者を算定できます。上下顎の義歯を新製する機会の多い医療機関ほど、今回の見直しの影響は大きくなります。詳細な取扱いは、今後発出される告示・通知および疑義解釈でご確認ください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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障害者歯科に新加算80点|特別管理加算の対象患者5類型と施設基準を解説
障害者は、歯科疾患の重症化リスクと再発リスクが高い患者群です。しかし、その受け皿となる障害者歯科治療の専門歯科医療機関は、全国的に不足しています。中央社会保険医療協議会(中医協)の資料の推計によれば、専門歯科医療機関の推定供給率が20%未満の都道府県は14に上ります。この状況を受け、令和8年度診療報酬改定は、専門歯科医療機関が行う歯科医学的管理を新たに評価します。本稿は、その新設項目である「特別管理加算」の内容を、算定に必要な観点から整理して解説します。令和8年度診療報酬改定は、障害者歯科治療を専門に担う歯科医療機関の特別な歯科医学的管理を、歯科疾患管理料の加算として新たに評価します。この新設項目は、「特別管理加算」として80点を所定点数に加算するものです。特別管理加算の対象患者は、不随意運動や強度行動障害など、歯科治療への協力が得られにくい5つの状態に整理されています。算定にあたっては、施設基準を満たしたうえで、地方厚生局長等への届出が必要です。1. 特別管理加算は歯科疾患管理料に80点を上乗せする特別管理加算は、歯科疾患管理料の加算として新設される項目です。この加算は、障害者の歯科治療を専門に担う歯科医療機関が、通常の管理に加えて特別な歯科医学的管理を行った場合に算定できます。点数は80点です。歯科疾患管理料は、継続的な管理を必要とする歯科疾患を有する患者に対して、口腔を一単位としてとらえた管理を評価する項目です。この歯科疾患管理料には、注1および注2に規定する管理があります。特別管理加算は、この注1または注2の管理に「加えて」特別な歯科医学的管理を行った場合に、初めて算定できます。つまり、歯科疾患管理料の算定が前提となる構造です。前提となる管理を超えて求められる内容が、「特別な歯科医学的管理」です。この特別な管理が必要とされる理由は、障害者歯科に固有の困難性にあります。中医協の資料は、「歯科治療上の課題」として、協力性確保の困難性、姿勢や異常反射・筋の異常緊張の制御の困難性、コミュニケーションの困難性、歯科治療時の医学的管理の困難性の4点を挙げています。特別管理加算は、これら4つの困難性に対応する専門的な手間を、診療報酬上で可視化する仕組みといえます。2. 対象患者は5つの状態に整理されている特別管理加算の対象患者は、告示に示された5つの状態、またはこれらに準ずる状態にある患者です。5つの状態は、身体面の困難、理解面の困難、全身管理上の困難という軸で並んでいます。以下、イからホまで順に確認します。イは、身体の不随意運動や緊張による困難を示す状態です。具体的には、脳性麻痺等で身体の不随意運動や緊張が強く、体幹の安定が得られない状態が該当します。この状態の患者には、安定した診療姿勢を確保する工夫が必要です。ロは、理解と協力の面での困難を示す状態です。具体的には、知的発達障害等により開口保持ができない状態が該当します。あわせて、治療の目的が理解できず治療に協力が得られない状態も該当します。ハは、全身状態に起因して治療の継続が困難な状態です。具体的には、重症の呼吸器疾患等で頻繁に治療の中断が必要な状態が該当します。中医協の資料は、障害者が重篤な合併症を有することが多く、歯科診療時に呼吸が抑制されやすい点に注意が必要だと指摘しています。ニは、医療的ケアを要する状態です。具体的には、人工呼吸器を使用している状態が該当します。あわせて、気管切開等を行っており歯科治療に際して管理が必要な状態も該当します。ホは、行動面の困難が著しい状態です。具体的には、強度行動障害の状態であって、日常生活に支障を来すような症状・行動が頻繁に見られ、歯科治療に協力が得られない状態が該当します。強度行動障害は、令和6年度改定で歯科診療特別対応加算の対象患者にも追加された状態です。3. 算定には施設基準の届出が必要となる特別管理加算を算定するには、施設基準の届出が必要です。施設基準は、人員に関する基準と、設備・体制に関する基準の2つで構成されます。この2つを満たしたうえで、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関だけが算定できます。人員に関する基準は、障害者歯科治療に従事する歯科医師の配置です。現時点の資料は「配置されていること」と記載するにとどまり、経験年数や研修要件は示されていません。設備・体制に関する基準は、障害者歯科治療を行うにつき十分な設備および体制の整備です。中医協の議論では、こうした専門歯科医療機関の代表例として、いわゆる口腔保健センターが取り上げられました。障害者歯科治療を行う口腔保健センター140施設のうち、障害者用ユニットを有する施設は110、全身麻酔設備を有する施設は52です(日本歯科医師会調べ、令和4年10月1日時点)。ただし、告示上の施設基準は口腔保健センターに限定されていません。届出という手続きを課した背景には、適切な運用を担保する狙いがあります。支払側委員は、専門施設による重点的な対応を新たに評価する場合、口腔保健センター等の専門施設が障害児や障害者に対して歯科医学的管理を実施した場合に限るべきだと意見を述べていました。施設基準は、この意見を制度上の歯止めとして反映したものと読めます。4. 実務では「届出」と「対象患者の確認」が起点となる特別管理加算への対応は、届出の可否判断と対象患者の確認という2つの作業から始まります。この2つは、算定できる医療機関の範囲と、算定できる患者の範囲をそれぞれ画するものです。届出の可否判断では、自院の歯科医師の配置状況と設備状況を基準に照らします。この確認により、そもそも算定対象の医療機関に該当するかどうかが決まります。施設基準の詳細は、今後発出される告示および通知で確定します。対象患者の確認では、イからホまでの5類型と、患者の実際の状態を照合します。この照合の結果は、診療録に具体的に記載しておくことが望まれます。「これらに準ずる状態」の解釈についても、通知で示される取扱いを確認する必要があります。まとめ:障害者歯科の専門的管理が診療報酬で評価される令和8年度診療報酬改定は、障害者歯科治療を専門に担う歯科医療機関の歯科医学的管理を、特別管理加算として新たに評価します。この加算は、歯科疾患管理料に80点を上乗せするものです。対象患者は、不随意運動、理解の困難、呼吸器疾患、医療的ケア、強度行動障害という5つの状態に整理されています。算定には、歯科医師の配置と設備・体制の整備という施設基準を満たし、地方厚生局長等へ届け出る必要があります。専門歯科医療機関にあたる施設は、まず自院の届出可否を確認するところから対応を始めてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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CDI・ESBLが加算対象に|令和8年度改定の感染症対策を解説
令和6年度改定で、感染管理が特に重要な入院患者への評価が整備されました。このとき、特定感染症入院医療管理加算が新設され、二類感染症患者療養環境特別加算が特定感染症患者療養環境特別加算に改称されたうえで対象範囲を拡大しました。この2つの加算は、感染症法に位置づけられた三類~五類感染症などを対象疾病としてきました。しかし対象疾病の範囲は、感染症法に位置づけのないクロストリジオイデス・ディフィシル感染症(CDI)とESBL産生腸内細菌目細菌感染症をカバーできていません。この2疾患は接触感染で院内感染を起こし、在院日数の延長や死亡率の上昇につながるため、個室隔離が推奨されています。本稿では、この課題に対応した令和8年度改定の見直し内容と、算定にあたっての留意点を解説します。令和8年度改定では、両加算の対象疾病にCDIとESBL産生腸内細菌目細菌感染症を追加します。追加の受け皿として、告示に感染症法の類型によらない区分を新設します。算定にあたっては、分離・同定による菌の検出と薬剤耐性の確認を行い、当該感染症と診断する必要があります。単なる保菌者は、いずれの加算でも対象になりません。1.見直しの背景:個室隔離が推奨されるのに評価されない2疾患があった見直しの背景には、感染症法の類型と院内感染対策の必要性がずれているという課題があります。両加算はこれまで、感染症法上の分類(二類~五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症)を対象疾病の骨格としてきました。この骨格は、届出や公衆衛生上の対応が必要な感染症を広く拾えます。一方で、院内感染対策として個室管理が推奨されながら感染症法の対象疾病になっていない感染症は、骨格から漏れていました。CDIとESBL産生腸内細菌目細菌感染症が、その代表例です。CDIは、下痢や偽膜性腸炎を引き起こし、入院期間を平均10日程度延長させる腸管感染症です。国内では入院患者10,000人あたり7.4人が発症し、ICUでは22.2人と発症率が高まります。発症した患者では、1人あたりの総入院費用が1.3~1.8倍程度に増加するという報告もあります。原因菌はアルコール消毒では死滅しない「芽胞」をつくるため、患者の個室隔離と、手袋・ガウンを用いた接触感染対策が推奨されています。ESBL産生腸内細菌目細菌感染症は、治療可能な抗菌薬が限られ、血流感染時の全死亡率を1.7倍に高める薬剤耐性菌感染症です。国内では大腸菌の約30%、肺炎桿菌の約15%がESBL産生菌とされ、全国の病院の約9割でこれらの菌が検出されています。ESBL産生菌もまた接触感染で拡散するため、気道分泌物や創部浸出液が多い患者では、個室隔離を優先的に実施することが望ましいとされています。この2疾患の取扱いが、中医協で論点として整理されました。整理された論点は、「感染症法の対象疾病ではないが、個室管理が推奨される感染症をどう評価するか」というものです。令和8年度改定は、この論点に対して対象疾病の範囲を見直すという答えを示しました。2.見直しの内容:告示に受け皿を設け、通知に2疾患を明記する見直しの内容は、告示への区分新設と通知への疾患名追加という2段構えです。告示では、感染症法の類型に当てはまらない感染症を受け止める区分を新たに設けます。通知では、その区分に該当する具体的な疾患としてCDIとESBL産生腸内細菌目細菌感染症を明記します。この2段構えにより、感染症法の類型に含まれない感染症も対象疾病に位置づけられます。特定感染症入院医療管理加算では、告示の算定要件に「その他他者に感染させた場合に重症になるおそれがある感染症の患者」を追加します。現行の告示は、三類感染症、四類感染症、五類感染症、指定感染症の患者とその疑似症患者を対象としてきました。改定案では、これらに加えて上記の区分を規定します。通知の対象疾患リストの末尾には、クロストリジオイデス・ディフィシル感染症と基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌感染症を追加します。特定感染症患者療養環境特別加算では、告示の算定要件に「その他個室管理が必要な感染症」を追加します。現行の告示は、二類感染症から五類感染症まで、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症の患者とその疑似症患者を対象としてきました。改定案では、これらに加えて上記の区分を規定します。通知の対象疾患リストにも、クロストリジオイデス・ディフィシル感染症と基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌感染症を追加します。なお、療養環境特別加算で2疾患が追加されるのは、通知のうち個室加算の対象者を定めるリストです。告示に新設される区分の名称も「その他個室管理が必要な感染症」であり、陰圧室加算の対象疾患を追加する記載は改定資料に示されていません。実際の運用は、告示・通知の最終的な発出内容で確認してください。3.算定上の留意点:診断の確定と記録が算定の前提になる算定上の留意点は、診断の確定、保菌者の除外、記録の3点です。追加された2疾患は、いずれも検査で診断を確定させたうえで算定します。診断が確定していない段階での隔離は、加算の対象になりません。算定にあたっては、レセプトへの記載も求められます。診断の確定には、症状や所見からの疑い、分離・同定による菌の検出、薬剤耐性の確認という3段階が必要です。通知では、既に対象となっている薬剤耐性菌感染症などと同じ扱いとして、CDIとESBL産生腸内細菌目細菌感染症を診断確定の要件が課される疾患群に位置づけました。この要件は、両加算に共通して適用されます。単なる保菌者は、両加算のいずれでも対象になりません。菌が検出されただけの状態と、感染症を発症した状態を区別する必要があります。ESBL産生菌の保菌者に対して感染予防目的で個室管理を行った場合も、加算の算定対象にはならない点に注意が必要です。診療報酬明細書の摘要欄には、対象となった感染症を記載します。特定感染症入院医療管理加算では当該患者に係る感染症を、特定感染症患者療養環境特別加算では個室管理を必要とする原因となった感染症を記載するよう、通知で求められています。この記載義務は現行から続く取扱いであり、今回追加される2疾患でも同様に記載が必要です。算定期間の考え方は、従来の取扱いを引き継ぎます。特定感染症入院医療管理加算は、1入院につき7日を限度として算定します。ただし、他の患者に感染させるおそれが高いことが明らかで、感染対策の必要性が特に認められる患者では、この7日の限度が適用されません。疑似症患者については、いずれの加算も初日に限り算定します。4.実務対応:検査から記録までの流れを院内で共有する実務対応として、検査体制、隔離判断、記録の3つを改定前に点検することをおすすめします。今回の見直しは点数の新設ではなく、対象疾病の範囲の拡大です。改定資料にも、施設基準を変更する記載はありません。一方で、算定漏れを防ぐには、現場の運用を対象疾病の追加に合わせて整える必要があります。以下は改定資料の記載ではなく、算定要件から導かれる点検の視点です。検査体制については、通知が求める「分離・同定による当該細菌の検出及び薬剤耐性の確認」まで到達できる運用かを確認します。CDIとESBL産生腸内細菌目細菌感染症は、いずれもこの要件が課される疾患群に位置づけられました。検査を外部委託している場合は、結果の返却時期と隔離開始日の関係を整理しておきます。隔離判断については、感染管理部門が用いる隔離基準と、加算の算定要件との対応を明確にします。院内の隔離基準は、保菌者への予防的隔離を含むことが少なくありません。予防的隔離と、発症患者に対する加算算定対象の隔離を区別できる運用にしておくと、算定判断が容易になります。記録については、主治医の判断と摘要欄記載をつなぐ様式を準備します。診療録には、他者へ感染させるおそれがあると医師が認めた旨と、個室管理の必要性を残します。医事課がこの記録を確認して摘要欄に感染症名を記載する流れをつくると、算定と記録の齟齬を防げます。5.まとめ:感染症法の枠を超えて院内感染対策を評価する改定令和8年度改定では、特定感染症入院医療管理加算と特定感染症患者療養環境特別加算の対象疾病に、CDIとESBL産生腸内細菌目細菌感染症を追加します。追加の受け皿として、告示には感染症法の類型によらない区分が新設されます。算定には、分離・同定による菌の検出と薬剤耐性の確認を経た診断が必要であり、単なる保菌者は対象になりません。院内では、検査体制、隔離判断、記録の運用を改定前に点検しておくことが、確実な算定につながります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定|結核病棟の必要度除外と加算増点をやさしく解説
結核の入院患者数は、長期にわたって減り続けている。日本は2021年に結核低まん延国となり、2024年の罹患率は人口10万人当たり8.1まで低下した。この患者減少により、結核病棟を維持することが難しくなっているうえ、重症度、医療・看護必要度や平均在院日数の基準を満たすことが困難な事例も生じている。そこで本稿は、令和8年度診療報酬改定の個別改定項目「Ⅲ-6-③ 結核に係る入院医療提供体制の確保」について、変更点と実務対応を解説する。今回の改定は、結核患者を評価対象から外す2つの除外規定と、結核病棟入院基本料の加算増点という3つの柱で構成される。第1に、ユニット化病床では、一般病棟と結核病棟の両病棟全体で評価する場合に限り、結核患者を重症度、医療・看護必要度の評価対象から除外する。第2に、モデル病床等では、結核患者を重症度、医療・看護必要度の評価対象と平均在院日数の算出対象の双方から除外する。第3に、結核病棟入院基本料の入院期間に応じた加算は、14日以内の期間が400点から600点になるなど、4区分すべてで増点される。1. 改定の背景:結核病棟を単独で維持できなくなっている改定の背景には、患者減少と基準未達という2つの事実がある。結核患者の減少は結核病床の利用率を押し下げ、都道府県は病棟以外の受け皿を組み合わせて体制を保っている。その受け皿に入院する結核患者は、急性期一般入院料が求める基準から大きく外れた特性を持つ。結核患者の減少は、結核病床の利用率低下という形ではっきり表れている。結核病床の利用率は、1984年の56.5%から2023年の26.8%まで下がった。結核病床数は都道府県によるばらつきが大きく、100床未満の県が多数を占める。年間の菌喀痰塗抹陽性肺結核患者数も、100人未満の県が大半である。この患者減少に対応するため、都道府県は3つの類型を組み合わせて受入体制を構築している。第1の類型がユニット化病床であり、平均入院患者数が概ね30名程度以下の小規模な結核病棟を一般病棟と併せて1看護単位とする仕組みである(38医療機関571床、令和3年4月1日時点)。第2の類型がモデル病床であり、結核患者収容モデル事業で指定された一般病床または精神病床を指す(107医療機関482床、令和6年4月1日時点)。第3の類型が感染症病床であり、他の患者と同室にしない条件を守れる場合に結核患者を入院させられる(359医療機関1,797床の内数、令和6年4月1日時点)。これら3類型に入院する結核患者は、一般病棟の基準を満たしにくい。急性期一般入院料1の重症度、医療・看護必要度Ⅱは、割合①20%、割合②27%を該当基準とする。これに対し、7対1の結核病棟における該当患者割合は、割合①5.6%、割合②9.8%にとどまる。モデル病床等における結核患者も、割合①6.1%、割合②12.0%と低い。平均在院日数はさらに差が大きく、モデル病床の結核患者は59.5日と、急性期一般入院料1の基準16日を大幅に上回る。2. 見直し①:ユニット化病床の必要度評価から結核患者を除外する第1の見直しは、ユニット化病床において、重症度、医療・看護必要度の評価対象から結核患者を除外する取扱いである。現行では、7対1の結核病棟が単独で基準を満たせない場合に、一般病棟と結核病棟の両病棟全体で評価してよいとされている。この全体評価を行う場合に、結核患者を評価対象から外すことが今回明確化された。除外の対象となるのは、両病棟全体で評価する場合に限られる点に注意が必要である。施設基準の通知では、評価対象から除外する患者として、従来の「産科患者」「15歳未満の小児患者」に「結核患者」が加わった。ただし結核患者の除外は、両病棟全体で評価を行う場合、モデル病床に入院する場合、感染症病床に入院する場合の3つに限定される。したがって、原則どおり一般病棟と結核病棟で別々に評価する場合には、結核患者は従来どおり評価対象に含まれる。なお、ユニット化病床のその他の要件は変わらない。看護配置基準が同じ入院基本料を算定することという条件は維持される。結核病床を構造上区分するなど、医療法が定める構造設備の基準を守ることも従来どおりである。平均在院日数を一般病棟のみで計算する取扱いも、変更されない。3. 見直し②:モデル病床等の必要度と平均在院日数から結核患者を除外する第2の見直しは、モデル病床等において、重症度、医療・看護必要度と平均在院日数の両方から結核患者を除外する取扱いである。モデル病床等の結核患者は、これまで一般病棟全体の評価に含まれていた。合併症や精神疾患を持つ長期入院の患者が一般病棟の分母に加わることで、基準達成が難しくなっていた実態を踏まえた見直しである。平均在院日数については、施設基準の別表第二に2つの区分が新設された。1つ目が「二十五」であり、結核の治療が必要な者のうち、一般病床または精神病床に入院する結核を主病とする患者であって、(1)合併症が重症または専門的高度医療若しくは特殊医療を必要とする患者、(2)合併症が結核の進展を促進しやすい病状にある患者、(3)入院を要する精神障害者である患者、のいずれかに該当する者を対象とする。2つ目が「二十五の二」であり、医療法施行規則第10条第5号の規定により感染症病床に入院する、結核を主病とする患者を対象とする。重症度、医療・看護必要度については、施設基準の通知に除外規定が追加された。除外の対象は、結核患者収容モデル事業を行う一般病床または精神病床に入院する場合と、医療法施行規則第10条第4号により感染症病床に入院する場合である。ここで注意したいのは、平均在院日数側と必要度側で規定の書きぶりが異なる点である。平均在院日数側の別表第二「二十五」は、合併症や精神障害に関する3つの要件を明記する。これに対し必要度側の通知は、「結核患者収容モデル事業」を行う一般病床または精神病床に入院する場合と規定するにとどまる。なお、別表第二の3要件は、モデル事業実施要領が定める収容要件と同じ内容である。この見直しにより、モデル病床等を持つ一般病棟の基準達成は現実的な水準に近づく。平均在院日数59.5日という長期の結核患者が算出の対象から外れるため、一般病棟の平均在院日数は短縮方向に働く。該当患者割合が6.1%と低い結核患者が外れることで、必要度の該当割合も改善する。結果として、合併症を持つ結核患者の受入れが、一般病棟の施設基準を圧迫しにくくなる。4. 見直し③:結核病棟入院基本料の入院期間加算を増点する第3の見直しは、結核病棟入院基本料の入院期間に応じた加算の増点である。結核患者の入院患者数が減る中で、結核医療の提供を持続的に確保することが増点の理由とされている。4つの期間区分すべてで点数が引き上げられ、引上げ幅は最大200点に達する。改定案と現行の対比は、次のとおりである(「現行 → 改定案」の順、カッコ内は増点幅)。* 14日以内の期間:400点 → 600点(+200点)* 15日以上30日以内の期間:300点 → 480点(+180点)* 31日以上60日以内の期間:200点 → 360点(+160点)* 61日以上90日以内の期間:100点 → 120点(+20点)特別入院基本料等を算定する場合の点数は、次のとおりである。* 14日以内の期間:320点 → 500点(+180点)* 15日以上30日以内の期間:240点 → 400点(+160点)* 31日以上60日以内の期間:160点 → 300点(+140点)* 61日以上90日以内の期間:区分の設定なし増点の重心は、入院60日目までの期間に置かれている。14日以内は1.5倍、15日以上30日以内は1.6倍、31日以上60日以内は1.8倍となる。一方で61日以上90日以内は1.2倍にとどまる。特別入院基本料等以外を算定する病棟で患者1人が90日間入院したと仮定すると、この加算だけの合計は現行の19,400点から改定案の30,480点となり、11,080点の増となる。長期入院を促すのではなく、受入れ初期から中期の体制コストを手厚く評価する設計といえる。なお、この増点はあくまで結核病棟入院基本料の加算である。モデル病床や感染症病床に入院する結核患者は、一般病棟の入院基本料等を算定するため、この加算の対象にならない。増点の効果を試算する際は、自院のどの病床で算定しているかを取り違えないようにしたい。5. 実務対応:改定前に確認すべき3つのポイント医療機関が確認すべき実務のポイントは3つある。自院の病床類型の整理、除外対象患者の判定と記録、増点を織り込んだ収支の見直しである。いずれも、届出内容と日々の必要度評価に直結する。第1に、自院の結核病床がどの類型に当たるかを整理する。ユニット化病床、モデル病床、感染症病床のいずれに該当するかで、適用される除外規定が変わるためである。ユニット化病床では、両病棟全体で評価しているかどうかによって、結核患者を除外できるかが分かれる。第2に、除外対象となる結核患者の判定基準と記録方法を定める。平均在院日数の算出から除外できるのは「結核を主病とする患者」であり、一般病床または精神病床の患者には合併症や精神障害に関する3要件のいずれかへの該当も求められる。一方、必要度の除外は入院している病床の類型で規定されている。根拠となる規定が両者で異なるため、どちらの除外に当たるかを患者ごとに記録しておきたい。なお、資料上、感染症病床に関する引用条項は、平均在院日数側が医療法施行規則第10条第5号、必要度側が同条第4号と記載されている。告示・通知の正式発出時に条項を確認することをおすすめする。第3に、加算の増点を織り込んで結核病棟の収支を見直す。入院期間区分ごとの点数が変わるため、レセプトコンピュータのマスタ更新が必要になる。自院の平均在院日数と入院患者数を用いて、増点による診療報酬の変化を試算しておくとよい。まとめ:3つの見直しが結核患者の受入体制を支える令和8年度診療報酬改定は、結核患者の受入体制を確保するため、3つの見直しを行う。第1に、ユニット化病床では、両病棟全体で評価する場合に結核患者を重症度、医療・看護必要度の対象から除外する。第2に、モデル病床等では、結核患者を重症度、医療・看護必要度の対象と平均在院日数の算出対象の双方から除外する。第3に、結核病棟入院基本料の入院期間に応じた加算を、最大200点増点する。患者減少が続く中でも結核医療を提供し続けられるよう、評価の物差しと点数の両面から手当てする改定といえる。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度診療報酬改定】感染対策向上加算1に微生物学的検査体制加算30点を新設
令和8年度診療報酬改定で、感染対策向上加算が見直されます。この見直しの対象は、感染対策向上加算1を届け出る医療機関です。感染対策向上加算1の届出医療機関のうち、院内に微生物学的検査室を「有する」と回答した施設は約6割です(感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)登録データ)。この検査室の有無で、薬剤耐性菌の検出割合に差がみられます。この差を踏まえ、抗菌薬適正使用を推進する評価の仕組みが求められました。本稿では、新設される加算の内容、算定要件と施設基準、見直しの背景、医療機関に求められる対応を順に解説します。今回の見直しは、院内に微生物学的検査室を有する医療機関を新たに評価する、という1点に集約されます。第一に、微生物学的検査体制加算として30点が新設されます。第二に、施設基準は告示と通知の2段階で定められ、検査室を「有する」だけでなく「業務に活用する」ことが求められます。第三に、見直しの根拠は、微生物学的検査室の有無で薬剤耐性菌の分離率に有意差があるという調査データです。第四に、届出を予定する医療機関は、検査室の位置づけと業務実態の整理が必要になります。1. 新設される微生物学的検査体制加算の内容微生物学的検査体制加算は、感染対策向上加算1に上乗せして算定する30点の加算です。この加算は、感染対策向上加算の注として新設されます。感染対策向上加算1を算定する保険医療機関に入院している患者について、所定点数に30点を更に加算する構造です。この加算の対象となるのは、感染対策向上加算1を算定する場合に限られます。感染対策向上加算2および3には、同様の加算が設けられていません。院内の抗菌薬適正使用の監視体制が施設基準に組み込まれているのは加算1と加算2ですが、今回の新設は加算1のみを対象としています。加算2を届け出る医療機関は、この加算を算定できません。加算1のみを対象とした設計は、告示の条番号にも表れています。感染対策向上加算の施設基準等を定める告示(二十九の二)に、微生物学的検査体制加算の施設基準が(5)として新たに加わります。この追加に伴い、現行の(5)から(7)は(6)から(8)に繰り下がります。同様に、算定要件の注も1つずつ繰り下がるため、通知や届出様式を参照する際は番号のずれに注意が必要です。2. 算定要件と施設基準微生物学的検査体制加算の施設基準は、告示と通知の2段階で構成されます。告示が枠組みを定め、通知が具体的な運用を定める形です。この2段階の要件を両方満たさなければ、届出はできません。告示が定める要件は、「当該保険医療機関内に微生物学的検査室を有していること」の1点です。この要件は、外部の検査機関への委託ではなく、院内に検査室を置くことを求めています。検査の外注が中心の医療機関は、この時点で要件を満たしません。通知が定める要件は、2つあります。1つ目は、感染対策向上加算1の届出を行っている保険医療機関であることです。2つ目は、当該保険医療機関内に微生物学的検査室を有しており、感染対策向上加算1の施設基準通知に定める1の(10)、(14)および(21)に係る業務等に活用していることです。ここで参照される(10)、(14)および(21)は、感染対策向上加算1の施設基準通知に定める各項目を指します。個別改定項目の資料には各項目の本文が示されていないため、該当する業務の内容は通知本文で必ず確認してください。通知が「活用していること」を求める点が、今回の要件の要です。検査室を設置しているだけでは足りず、感染制御チームの業務と検査室が結びついている必要があります。届出にあたっては、検査結果の共有経路、耐性菌検出時の報告の流れ、抗菌薬使用に対する助言の記録などを、業務の実態として示せるよう整理しておくことが求められます。3. 見直しの背景今回の見直しの背景には、微生物学的検査室の有無と薬剤耐性菌の検出状況を比較した調査データがあります。このデータは、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)の登録データにもとづくものです。中央社会保険医療協議会の議論では、このデータが評価の見直しを検討する論拠として示されました。調査データが示す第一の事実は、微生物学的検査室の保有割合が加算区分によって大きく異なることです。感染対策向上加算1の届出医療機関1,121施設では、約60%が検査室を「あり」と回答しました。一方、感染対策向上加算2の届出医療機関653施設では、「あり」の回答が約17%にとどまります。ただし、いずれの区分でも約26%が未記入であるため、この割合は回答状況を含めて読む必要があります。調査データが示す第二の事実は、検査室を有する施設で薬剤耐性菌の分離率が低いことです。感染対策向上加算1の届出医療機関551施設(検査室なし110、検査室あり441)を比較すると、MRSAの分離率の中央値は検査室なしの6.8%に対し、検査室ありは4.9%でした。第3世代セファロスポリン耐性大腸菌は5.0%に対し2.9%、フルオロキノロン耐性大腸菌は6.3%に対し4.0%です。いずれの差も統計的に有意(pただし、このデータは検査室の設置が耐性菌を減らしたことを直接示すものではありません。検査室ありの施設は、病床数の中央値が395床と、検査室なしの241床を上回ります。平均在院日数の中央値も12.70日と、検査室なしの17.44日より短くなっています。施設規模などの違いが背景にある点を踏まえて読む必要があります。これらの事実を踏まえ、支払側委員は評価の見直しを求めました。具体的には、微生物学的検査室の有無により評価にメリハリを付けるべきとする意見が示されています。この意見と、微生物学的検査室が抗菌薬適正使用に果たす役割を踏まえ、新たな評価の新設に至りました。4. 医療機関に求められる対応届出を予定する医療機関には、3つの確認作業が求められます。確認の順序は、加算1の届出状況、検査室の有無、業務での活用実態です。この順に自院の状況を点検すると、対応の要否と課題が整理できます。第一に確認すべきは、感染対策向上加算1の届出状況です。加算1を届け出ていない医療機関は、微生物学的検査体制加算を算定できません。加算2または加算3を届け出ている医療機関は、まず加算1の施設基準を満たせるかどうかから検討することになります。第二に確認すべきは、微生物学的検査室の有無です。院内に検査室があれば、要件の入口はクリアします。検査を外部委託している医療機関は、院内での検査体制の構築が前提となるため、投資判断を含めた中期的な検討が必要です。第三に確認すべきは、検査室の業務での活用実態です。検査室があっても、感染制御チームの業務と結びついていなければ要件を満たしません。日常業務の記録が要件に対応しているかを、通知に定める該当項目に沿って確認してください。記録が不十分な場合は、届出前に運用の見直しと記録様式の整備を進める必要があります。まとめ令和8年度診療報酬改定では、感染対策向上加算1に微生物学的検査体制加算30点が新設されます。この加算の施設基準は、告示が「院内に微生物学的検査室を有すること」を、通知が「加算1の届出」と「検査室の業務活用」を定める2段階の構成です。見直しの根拠は、検査室を有する施設で薬剤耐性菌の分離率が有意に低いという調査データにあります。加算1を届け出る医療機関は、検査室の有無と業務での活用実態を早めに点検し、届出に向けた準備を進めてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定 感染症検査の見直し3つの要点
令和8年度診療報酬改定は、感染症に係る検査の算定要件を見直します。現行の要件には、3つの課題があります。第1に、多剤耐性菌に有効な新規抗菌薬の投与に必要な追加の薬剤感受性検査について、算定の可否が明確ではありません。第2に、新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」)とその他の感染症を同時に対象とする検査が、COVID-19のみを疑う場合でも算定できます。第3に、多項目の病原体を同時に検出する検査のうち、SARS-CoV-2核酸検出を含むものには、施設基準の届出と対象患者の限定が課されていません。本記事は、これら3つの課題に対応する改定内容を、算定要件の変更点に沿って解説します。今回の見直しは、抗菌薬の適正使用と検査の適正実施を柱に、3つの検査の要件を変更します。第1に、細菌薬剤感受性検査は、多剤耐性菌に有効な抗菌薬の適応判定のために再度実施した場合、改めて所定点数を算定できます。第2に、同時抗原検査は、同時に検出する感染症のすべてが疑われる患者に、算定対象を限定します。第3に、ウイルス・細菌核酸多項目同時検出(以下「マルチプレックスPCR」)は、SARS-CoV-2核酸検出を含むものも施設基準と対象患者の要件の対象とします。1. 細菌薬剤感受性検査:多剤耐性菌への追加検査を評価細菌薬剤感受性検査は、多剤耐性菌に有効な抗菌薬の適応判定を行う場合に、再度の算定が認められます。この取扱いは、算定要件に新たな項目として明記されます。細菌薬剤感受性検査の追加実施が必要になる背景には、新規抗菌薬の登場があります。近年、多剤耐性グラム陰性桿菌の治療薬として、セフィデロコル(CFDC)、セフタジジム・アビバクタム(AVI/CAZ)、レレバクタム・イミペネム・シラスタチン(REL/IPM)の3剤が承認されました。これらの新規抗菌薬は、国内の薬剤感受性装置の感受性プレートに搭載されておらず、従来の抗菌薬と同時に測定できません。そのため医療機関は、別途の感受性プレートを用いて、追加で薬剤感受性検査を実施する必要があります。追加の薬剤感受性検査については、これまで算定の可否が明確ではありませんでした。細菌薬剤感受性検査は、細菌感染症に対する一連の治療につき1回に限り算定するのが原則です。この原則のもとで、一連の治療中に同一検体から培養された同一の菌に対して複数回の検査を実施した場合の取扱いが、示されていませんでした。改定案は、この原則を算定要件に明記したうえで、例外となる場合をあわせて新設します。取扱いが明確ではなかった追加検査は、改定後、一定の条件を満たせば算定できます。条件は2つあります。第1に、細菌薬剤感受性検査の結果、カルバペネム系抗菌薬を含む通常の治療で用いられる抗菌薬に対する非感受性又は耐性が確認されることです。第2に、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)等、多剤耐性を有する細菌に対して有効な抗菌薬の適応判定を行う必要があることです。この2つを満たして本検査を再度実施した場合、改めて所定点数を算定できます。2. 同時抗原検査:すべての対象疾患を疑う患者に限定同時抗原検査は、同時に検出する感染症のすべてが疑われる患者に、算定対象が限定されます。この見直しは、SARS-CoV-2とその他のウイルスを同時に測定する3つの検査に及びます。対象となる3つの検査は、いずれも感染症免疫学的検査に位置付けられています。第1が、SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス抗原同時検出定性です。第2が、SARS-CoV-2・RSウイルス抗原同時検出定性です。第3が、SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス・RSウイルス抗原同時検出定性です。これら3つの検査は、現行では、COVID-19のみを疑う場合でも算定できます。現行の算定要件は、対象患者を「COVID-19が疑われる患者」、実施目的を「COVID-19の診断」と定めているためです。この要件のもとでは、インフルエンザウイルス感染症やRSウイルス感染症を疑わない発熱患者のスクリーニングにも、同時抗原検査を使えます。スクリーニング目的での使用には、関係学会が慎重な姿勢を示しています。日本感染症学会と日本臨床微生物学会は、令和7年8月25日の提言で、同時検査キットの使い方に言及しました。提言は、COVID-19とインフルエンザのいずれか一方しか流行していない時期について、「特別な必要性がない場合は単独の検査キットを優先的に使用することが望ましい」としています。関係学会の提言を踏まえ、改定後の算定要件は、対象患者と実施目的の両方を書き換えます。対象患者は、当該検査が対象とするすべての感染症が疑われる患者となります。実施目的も、すべての感染症の診断となります。たとえばSARS-CoV-2・インフルエンザウイルス抗原同時検出定性は、COVID-19及びインフルエンザウイルス感染症が疑われる患者に対して、両者の診断を目的として実施した場合に、1回に限り算定します。検査結果が陰性であった場合の追加算定は、改定後も維持されます。ただし、追加算定の条件となる「診断がつかない」疾患の範囲は、検査によって扱いが異なります。SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス抗原同時検出定性は、「COVID-19以外」から「COVID-19又はインフルエンザウイルス感染症以外」に広がります。SARS-CoV-2・インフルエンザウイルス・RSウイルス抗原同時検出定性も、対象の3疾患以外に広がります。一方、SARS-CoV-2・RSウイルス抗原同時検出定性は、現行から「COVID-19又はRSウイルス感染以外」とされており、この部分に変更はありません。3. マルチプレックスPCR:評価体系の再編と要件の適用拡大マルチプレックスPCRは、評価体系の再編とあわせて、施設基準と対象患者の要件の適用範囲が広がります。見直しは、微生物核酸同定・定量検査の区分立てから対象患者の定義まで、3段階で行われます。第1段階が、区分立ての整理です。現行は、「ウイルス・細菌核酸多項目同時検出(SARS-CoV-2核酸検出を含まないもの)」と「結核菌群リファンピシン耐性遺伝子及びイソニアジド耐性遺伝子同時検出」を同一区分の963点にまとめ、SARS-CoV-2核酸検出を含むものを別区分の1,350点としています。改定後は、結核菌群の耐性遺伝子同時検出を独立した区分(963点)とします。マルチプレックスPCRは1つの区分にまとめ、「イ SARS-CoV-2核酸検出を含むもの」を1,350点、「ロ SARS-CoV-2核酸検出を含まないもの」を963点に整理します。点数そのものは、いずれも据え置かれます。第2段階が、施設基準と対象患者の要件の適用拡大です。現行では、施設基準の届出と対象患者の限定は、SARS-CoV-2核酸検出を含まないものにのみ課されています。改定後は、これらの要件がマルチプレックスPCRの区分全体にかかります。SARS-CoV-2核酸検出を含むものも、届出を行った保険医療機関において、厚生労働大臣が定める患者に実施した場合に限り算定できます。この変更は、実務への影響が大きいと考えられます。令和5年度のマルチプレックスPCRの算定回数は、99%以上をSARS-CoV-2核酸検出を含むものが占めているためです。第3段階が、対象患者の定義の見直しです。現行の対象患者は、「重症の呼吸器感染症と診断された、又は疑われる患者」と「集中治療を要する患者」のいずれにも該当する患者です。改定後は、次の2つのいずれかに該当する患者となります。イが、重症の呼吸器感染症と診断された、又は疑われる患者であって、集中治療を要する患者です。ロが、COVID-19又はインフルエンザウイルス感染症等が疑われ、重症化のおそれが高い患者です。ロの追加は、日本感染症学会の実施指針が対象患者に重症化リスク因子を有する患者を含めていることを踏まえたものです。対象患者の見直しにあわせて、施設基準も一部が簡素化されます。現行の施設基準は、必要な医師の配置と、対象患者の治療を行うにつき十分な体制の整備の2つを求めています。改定後は、必要な医師の配置のみが残ります。まとめ:3つの見直しに共通する視点は「適正使用」令和8年度診療報酬改定は、感染症に係る検査の要件を3点にわたって見直します。第1に、細菌薬剤感受性検査は、カルバペネム系抗菌薬等への非感受性又は耐性が確認され、多剤耐性菌に有効な抗菌薬の適応判定が必要な場合に、再度の算定が可能となります。第2に、同時抗原検査は、同時に検出するすべての感染症が疑われる患者に、算定対象が限定されます。第3に、マルチプレックスPCRは、SARS-CoV-2核酸検出を含むものにも施設基準と対象患者の要件が課され、対象患者には重症化のおそれが高い患者が加わります。3つの見直しに共通する視点は、抗菌薬と検査の適正使用です。必要な検査には評価を広げ、必要性の低い検査は絞り込む。この方向性を踏まえ、自院の検査運用と届出状況を早めに確認しておくことをおすすめします。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】抗HLA抗体検査、移植待機患者は感作歴なしでも算定可能に
令和6年度診療報酬改定では、移植待機患者に対する抗HLA抗体スクリーニング検査が、輸血歴や妊娠歴等の感作歴(免疫が他人のHLAに反応する状態になる経験)がある患者に限って算定できることとされました。しかし、感作歴のない移植待機患者にも、抗HLA抗体陽性の患者が一定程度存在します。この限定要件のもとでは、陽性患者を移植前に把握できず、臓器生着率の向上という目的を十分に果たせません。本稿では、令和8年度診療報酬改定における「抗HLA抗体検査の算定要件の見直し」(Ⅲ-5-5-④)の内容と実務上の留意点を解説します。今回の見直しは、日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者について、感作歴の有無にかかわらず抗HLA抗体スクリーニング検査を算定可能とするものです。見直しの背景には、感作歴のない待機患者でも抗HLA抗体陽性率が高いという国内外の報告があります。見直しの内容は、算定要件から「輸血歴や妊娠歴等から医学的に既存抗体陽性が疑われるもの」という限定を削除することです。見直し後も、算定回数の上限と摘要欄への記載要件は従来どおり維持されます。1. 見直しの背景:感作歴のない待機患者にも陽性者が存在する見直しの背景は、令和6年度改定で設けた感作歴の限定が、実態と合わなくなった点にあります。この限定は、抗体陽性の可能性が高い患者を効率的に検査するための要件でした。しかし、その後の知見は、感作歴を陽性の指標とすることの限界を示しています。令和6年度改定は、移植前の抗HLA抗体検査を新たに保険適用としました。移植前の抗HLA抗体は、ドナー選択や移植後の治療方針に重大な影響を及ぼす因子です。この因子を事前に把握できれば、術前に脱感作を行うなどの対応が可能となり、臓器生着率の向上につながります。そこで令和6年度改定では、輸血歴や妊娠歴等の感作歴がある症例に限り、移植前の検査を算定可能としました。一方、感作歴のない症例でも抗HLA抗体が陽性となる報告が、中医協の議論では複数示されました。海外の報告では、感作歴がないと考えられる一般健常男性の63%が、MFI 1000以上の抗HLA抗体を有していました(Class ⅠとⅡを合わせた陽性率)。腎移植待機患者を対象とした海外の報告では、感作歴のない患者の77%が抗HLA抗体陽性でした(MFI 1000超)。本邦の報告でも、生体腎移植待機患者のうち感作歴のない78例中28例(35.9%)が抗体スクリーニング検査で陽性でした。これらの報告を踏まえ、中医協は抗HLA抗体検査の対象患者要件を論点として取り上げました。論点の前提として、抗HLA抗体陽性患者は臓器生着率が低い点が示されました。あわせて、待機期間中の事前の治療が推奨される点も示されました。その結果、「これまでの議論の整理」では、感作歴にかかわらず検査を実施できるよう対象患者を見直す方向が示されました。2. 見直しの内容:対象患者から感作歴の限定を削除見直しの内容は、算定要件の対象患者から感作歴に関する限定を削除することです。削除の対象は、現行の要件に置かれた「であって、輸血歴や妊娠歴等から医学的に既存抗体陽性が疑われるもの」という文言です。この文言の削除により、日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者は、感作歴の有無を問わず算定の対象となります。新旧の算定要件は、次のとおり対応します(自己抗体検査「48」抗HLA抗体(スクリーニング検査)の算定要件(29))。■ 対象患者:ここだけが変わります* 現行:肺移植、心移植、肝移植、膵移植、小腸移植若しくは腎移植後の患者又は日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者であって、輸血歴や妊娠歴等から医学的に既存抗体陽性が疑われるもの* 改定案:肺移植、心移植、肝移植、膵移植、小腸移植若しくは腎移植後の患者又は日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者■ 算定回数・記載要件:変更はありません* 算定回数:原則として1年に1回* 追加算定:抗体関連拒絶反応を強く疑う場合等、医学的必要性がある場合は1年に1回に限り更に算定可能* 記載要件:追加算定時は理由及び医学的な必要性を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載対象患者の範囲は、移植後の患者と移植希望登録者の2つに整理されます。移植後の患者とは、肺移植、心移植、肝移植、膵移植、小腸移植または腎移植を受けた患者です。移植希望登録者とは、日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録された患者です。今回の見直しは、このうち移植希望登録者について、感作歴による絞り込みをなくすものです。移植後の患者については、今回の見直しによる実質的な変更はありません。移植後の患者は、令和6年度改定より前から算定の対象とされていました。感作歴の限定は、令和6年度改定で移植希望登録者を追加した際に付された条件です。したがって、今回削除される文言は、移植希望登録者に係る条件として整理して理解してください。3. 実務上の留意点:算定回数と記載要件は従来どおり実務では、要件のうち何が変わり、何が変わらないかを区別して運用してください。変わるのは対象患者の範囲だけです。算定回数の上限、追加算定の考え方、記載要件のいずれも従来どおり維持されます。算定回数は、原則として1年に1回です。この原則を超える場合は、抗体関連拒絶反応を強く疑う場合等、医学的必要性が求められます。医学的必要性がある場合でも、追加算定は1年に1回が上限です。追加算定を行う場合は、記載要件を満たす必要があります。記載する内容は、追加算定の理由と医学的な必要性です。記載する場所は、診療録および診療報酬明細書の摘要欄です。算定にあたっては、患者が日本臓器移植ネットワークの移植希望登録者であるかの確認が前提となります。感作歴の限定がなくなった一方で、移植希望者としての登録という要件は残るためです。なお、登録状況を診療録で確認できる運用をあらかじめ整えることは、通知上の要件ではなく実務上の備えとしての提案です。まとめ:感作歴の有無を問わない検査で、移植前の抗体把握を確実に令和8年度改定では、抗HLA抗体スクリーニング検査の対象患者が見直されます。見直しの背景には、感作歴のない待機患者でも抗HLA抗体陽性率が高いという報告があります。見直しの内容は、日本臓器移植ネットワークの移植希望登録者について、感作歴による限定を削除することです。見直し後も、原則1年に1回という算定回数と、追加算定時の摘要欄への記載要件は変わりません。移植前の抗体把握を確実にすることが、臓器生着率の向上につながります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度診療報酬改定】臍帯血移植にNGS-SBT法実施加算2,000点を新設
臍帯血移植は、非血縁者間の造血幹細胞移植のうち過半を占める主要な治療法です。この臍帯血移植では、移植に用いる臍帯血のHLA検査等の安全性確認試験(組織適合性試験)が全例で実施されてきました。しかし、この組織適合性試験の費用は、検査方法を問わず手術料に包括評価されてきました。そのため、治療成績の向上が確認されている次世代シーケンサー(NGS)法を用いても、その費用は診療報酬上で別途評価されませんでした。本稿では、令和8年度診療報酬改定の個別改定項目「Ⅲ-5-5 難病患者等に対する適切な医療の評価-③ 臍帯血移植の見直し」について、改定内容と背景を解説します。今回の見直しは、質の高い造血幹細胞移植を推進する観点から、NGS-SBT法による組織適合性試験を新たな加算で評価するものです。第一に、改定内容は、K922造血幹細胞移植の「3 臍帯血移植」に「NGS-SBT法実施加算」として2,000点を上乗せする点にあります。第二に、算定対象は、臍帯血移植に用いる臍帯血の組織適合性試験にNGS-SBT法を用いた場合に限られます。第三に、加算新設の根拠は、NGS法が従来法より多くのHLAアレルを判定し、生着率の向上と白血病再発率の低下につながるというエビデンスです。1. 改定内容:2,000点の加算を新設改定内容は、造血幹細胞移植の算定要件(注6)に、NGS-SBT法を用いた場合の加算を追加するものです。この加算の新設により、包括評価の原則を維持したまま、NGS-SBT法を用いた場合だけが例外的に上乗せ評価されます。新設される加算は、「NGS-SBT法実施加算」として2,000点を所定点数に加算します。この2,000点は、臍帯血移植の所定点数に上乗せされます。現行の所定点数は66,450点であり、加算分は20,000円に相当します。なお、令和8年度の所定点数そのものは、今後の告示で確認する必要があります。一方、包括評価の原則そのものは変わりません。改定後の注6も、臍帯血移植に用いられた臍帯血に係る組織適合性試験の費用は所定点数に含まれると規定します。つまり、従来法(PCR-SSO法)で組織適合性試験を実施した場合、これまでどおり手術料に包括され、別途の算定はできません。なお、算定上の細かな取扱いは、今後発出される留意事項通知等で示されます。特に、NGS-SBT法を用いたことの記録方法や、加算の算定単位に関する取扱いは、告示・通知の内容を確認する必要があります。また、算定要件が用いる「NGS-SBT法」という名称は、中医協資料が「NGS法(NGS-HLAタイピング)」と説明した手法に対応するものと考えられます。この名称の対応関係と対象となる検査の範囲も、留意事項通知で確認してください。2. 改定の背景:NGS法が治療成績を向上させるエビデンス改定の背景には、NGS法が従来法より多くのHLAアレルを判定できるという技術的な進歩があります。この判定範囲の差が、移植の治療成績の差につながることが、本邦からの報告で示されました。中央社会保険医療協議会は、このエビデンスを踏まえ、臍帯血移植の評価のあり方を論点として議論しました。判定できるHLAアレルの数は、従来法とNGS法で大きく異なります。従来法は、蛍光ビーズを用いてHLA-A、B、C、DRB1の4座を判定します。NGS法は、次世代シーケンサーを用いてHLA-A、B、C、DRB1、DRB3/4/5、DQA1、DQB1、DPA1、DPB1の11座を判定します。この11座の判定により、従来法では同定できないアレルの同定が可能になります。判定範囲の拡大は、不適合な臍帯血ユニットの事前回避を可能にします。レシピエントのHLA-DP/DQに対する抗体を持つ臍帯血を用いた場合、好中球の生着率は55.6%にとどまります。抗体を持たない臍帯血を用いた場合、好中球の生着率は91.8%に達します。また、HLA-DPB1不適合移植は、適合移植より白血病再発率が有意に高いことも報告されています。いずれの型も従来法では判定できないため、NGS法によってはじめて回避が可能になります。もっとも、NGS法には医療機関側の負担が伴います。結果の返却までに要する時間は、従来法が数日以内であるのに対し、NGS法は1〜2週間程度です。費用面の負担も、従来法より大きくなります。今回の加算は、こうした負担を診療報酬上で評価し、治療成績の高い検査方法の普及を後押しするものです。3. 医療機関への影響:算定漏れの防止が実務の要点医療機関への影響は、臍帯血移植を実施する施設で、加算の算定漏れを防ぐ体制が必要になる点にあります。この体制づくりでは、検査方法の確認と院内での情報共有が要点となります。第一の要点は、用いた検査方法の確認です。臍帯血の安全性確認試験は、臍帯血の管理に係る一連の行為として実施され、その費用は臍帯血移植の所定点数に含まれると整理されています。そのため、移植を実施する保険医療機関は、当該臍帯血のHLAタイピングにNGS-SBT法が用いられたかを、検査結果等で確認する必要があります。第二の要点は、診療科と医事課の情報共有です。検査方法の情報は、移植を担当する診療科に届きます。一方、加算を算定するのは医事課です。両者の間で情報が共有されなければ、NGS-SBT法を用いても加算を算定できません。加算を算定できるか否かで2,000点(20,000円)の差が生じるため、院内のレセプト点検項目に加えることが有効です。第三の要点は、移植計画への織り込みです。NGS法は結果返却までに1〜2週間程度を要します。この所要期間の差は、移植の準備スケジュールに影響します。緊急性の高い症例では、検査方法の選択と移植時期の調整を、あらかじめ検討しておく必要があります。まとめ:質の高い造血幹細胞移植への評価令和8年度診療報酬改定は、臍帯血移植の組織適合性試験にNGS-SBT法を用いた場合を、新たな加算で評価します。この加算は、「NGS-SBT法実施加算」として2,000点を所定点数に上乗せするものです。加算の根拠は、NGS法が11座のHLAアレルを判定し、生着率の向上と白血病再発率の低下につながるエビデンスにあります。臍帯血移植を実施する医療機関は、用いられた検査方法を確認し、算定漏れを防ぐ体制を整えてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】臓器移植実施体制確保加算とは|所定点数400%の新加算を解説
令和8年度診療報酬改定の個別改定項目に、「Ⅲ-5-5 難病患者等に対する適切な医療の評価-② 臓器移植手術に係る評価の新設」が盛り込まれました。臓器移植を担う施設は、いつ来るか分からない臓器提供の連絡に備え、365日対応可能なチームを維持しています。しかし、この待機体制そのものは、これまで手術料の中で正面から評価されてきませんでした。本稿では、新設される「臓器移植実施体制確保加算」について、新設の背景、加算の中身、実務上の押さえどころの3点を整理します。臓器移植実施体制確保加算は、臓器採取術及び臓器移植術の所定点数に400%を上乗せする、極めて大型の加算です。新設の背景には、移植実施施設が負う待機体制と緊急対応の負担があります。加算の対象は、肺・心・肝・膵・小腸・腎に係る採取術及び移植術です。算定には、臓器提供施設や臓器あっせん機関等と連携して当該手術を行うことが求められます。1. 新設の背景:移植実施施設が抱える「見えない負担」臓器移植実施体制確保加算が新設される背景には、移植実施施設の体制整備が持つ特殊性があります。中央社会保険医療協議会(中医協)は、この特殊性を「臓器移植施設の体制整備について」という論点として提示しました。以下では、その特殊性を、待機体制、人員投入、手術の緊急性という3つの側面から確認します。第1の側面は、年間の実施件数に比して過大な待機体制です。臓器移植の実施体制を有する大学病院等において、移植を担当する診療科の手術件数は多くとも年間30件程度にとどまります。それでも各診療科は、臓器あっせん機関からの連絡に備え、チームとして365日対応可能な体制を整えています。この体制維持コストは、実際に手術を行った回数だけでは回収できません。第2の側面は、1事例あたりの人員投入の大きさです。脳死症例発生の可能性に係る連絡を受けてから移植手術が終了するまで、10名程度の医師が約3日間業務に当たります。中医協資料では、1回の提供事例において1つの診療科から必要となる人員として、院内調整スタッフ(医師)2人、ドナー手術チーム(外科医)4人、レシピエント手術チーム(外科医)4人程度と提供臓器の処置を担当する外科医2〜3人が挙げられています。さらに、臓器搬送は原則として公共交通機関で行われるため、医師自身が臓器を運びます。摘出手術は深夜・未明に及ぶことが多く、事例の約6割で計13〜24時間の移動が発生します。第3の側面は、手術の緊急性がもたらす院内調整の困難です。移植手術は全例が緊急手術となります。しかも一般の緊急手術と異なり、移植手術チーム以外にも麻酔科医や手術室スタッフの確保が必要です。診療科の余剰人員だけでは対応できないため、定時手術との並列実施が難しく、定時手術が延期される例も発生しています。加えて、移植手術の開始時刻はドナー手術の時刻に左右されるため、移植実施施設の都合だけでは決められません。2. 加算の内容:対象患者・対象手術・算定要件・点数臓器移植実施体制確保加算は、対象患者、対象手術、算定要件、点数の4点で整理できます。対象患者は、臓器採取術又は臓器移植術を算定する患者です。対象手術は、K区分番号で個別に指定された採取術及び移植術です。算定要件は、臓器提供施設及び臓器あっせん機関等との連携です。点数は、当該手術の所定点数の100分の400に相当する点数です。対象手術は、K区分番号で個別に列挙されています。臓器別に整理すると、次のとおりです。* 肺:K514-3、K514-4* 心・心肺:K605からK605-4まで* 肝:K697-6、K697-7* 膵・膵腎:K709-2からK709-6まで* 小腸:K716-5、K716-6* 腎:K779-2、K780※臓器の区分は区分番号の系列に基づく整理です。各枝番の正式名称、及び生体由来か死体由来かの別は、診療報酬点数表でご確認ください。対象手術には、採取術と移植術の双方が含まれます。この点が、加算の設計思想をよく表しています。移植実施施設は、レシピエントへの移植術だけでなく、ドナー手術チームを提供施設へ派遣して採取術も担うためです。採取術と移植術を一体で評価することで、1つの提供事例に投入される人的資源の全体をカバーする形になっています。算定要件は、他機関との連携です。ここで注意したいのは、個別改定項目の中で連携先の書き方が2通りある点です。「第2 具体的な内容」は「臓器提供施設、臓器あっせん機関若しくは他の保険医療機関と連携して」と記載しています。一方、[算定要件]は「臓器提供施設及び臓器あっせん機関等と連携して」と記載しています。前者はいずれかとの連携で足りるとも読め、後者は双方との連携を求めるとも読めます。どちらの解釈が正しいかは、告示及び留意事項通知で確認する必要があります。移植医療は、提供施設、あっせん機関、移植実施施設の3者が役割を分担して初めて成立します。連携を要件に据えた点には、この分担構造を診療報酬上も明確に位置づける狙いがうかがえます。点数は、所定点数の100分の400です。つまり、加算額は当該手術の所定点数の4倍にあたり、加算を含めた合計は所定点数の5倍となります。仮に所定点数が10万点の手術であれば、加算だけで40万点が上乗せされる計算です。加算の水準としては大きく、移植実施体制の確保を重点的に後押しする趣旨がうかがえます。3. 実務上の押さえどころ:関連項目との関係と今後の確認事項臓器移植実施体制確保加算を正しく理解するには、関連する既存の評価との違いを押さえることが有効です。既存の評価には、脳死臓器提供管理料とDPCの体制評価指数があります。いずれも臓器「提供」側に着目した評価です。これに対して今回の加算は、臓器「移植」を実施する側の体制に着目します。脳死臓器提供管理料は、ドナーに対する脳死判定やコーディネート等の費用を包括的に評価する項目です。同管理料の請求はレシピエントに対して行われ、提供側の医療機関との分配は相互の合議に委ねられています。なお同管理料についても、今回の改定では「① 脳死臓器提供管理料の見直し」として、認定ドナーコーディネーターの配置や省令改正を踏まえた評価の見直しが予定されています。DPCの体制評価指数では、令和6年度改定において、法的脳死判定後の臓器提供の実績が評価されています。ただしこの評価も、臓器を提供した施設の実績を見るものです。移植を実施する側の待機体制を手術料に上乗せして評価する仕組みは、今回が新たな一歩となります。今後の確認事項は、例年どおりであれば3月に発出される告示及び留意事項通知です。個別改定項目の段階では、施設基準の有無、連携先の範囲、算定に当たって求められる記録の範囲までは示されていません。特に、前章で触れた連携先の書き方の違いは、算定可否に直結します。対象となる医療機関は、告示及び通知の内容を確認したうえで、連携の実態を診療録等にどう記録するかを事前に整理しておくことが望まれます。まとめ令和8年度診療報酬改定では、臓器移植実施体制確保加算が新設されます。新設の背景には、年間最大30件の手術のために365日体制を維持し、1事例に10名程度の医師を約3日間投入するという、移植実施施設の負担があります。加算の対象は、肺・心・肝・膵・小腸・腎に係る採取術及び移植術です。算定には、臓器提供施設や臓器あっせん機関等との連携が求められます。点数は所定点数の100分の400であり、加算の水準としては大きなものです。ただし連携先の範囲や記録の要否など、実務に直結する部分は告示及び留意事項通知を待つ必要があります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】脳死臓器提供管理料の見直し|3つの加算を新設
脳死下の臓器提供を取り巻く制度は、令和5年以降に大きく変わりました。しかし、脳死臓器提供管理料は包括的かつ一律の評価のままで、制度改正によって新たに必要となった業務や医療資源が反映されていませんでした。そこで令和8年度診療報酬改定では、個別改定項目Ⅲ-5-5「難病患者等に対する適切な医療の評価」の①として、脳死臓器提供管理料の評価が見直されます。本記事は、この見直しの背景と具体的な内容を、実務で使える形に整理してお伝えします。見直しの中身は、脳死臓器提供管理料への加算3種の新設です。第一の加算は、臓器提供に関する専門の知識を有する者が説明等を行った場合を評価する「脳死臓器提供体制向上加算」(5,000点)です。第二の加算は、法的脳死判定に当たって実施する脳血流の画像診断を評価するもので、3区分の点数を合算して加算します。第三の加算は、法的脳死判定日以後も継続して用いる補助循環装置等を評価するもので、8区分の点数を合算して加算します。見直しの背景:3つの制度改正が評価の前提を変えた見直しの背景には、臓器提供の実務を変えた3つの制度改正があります。1つ目はガイドラインの改正であり、院内の人材が担える業務の範囲を広げました。2つ目は令和5年の省令改正であり、脳血流消失の確認による臓器提供を可能にしました。3つ目は令和7年の省令改正であり、補助循環装置を使用したままの脳死判定を可能にしました。1つ目のガイドライン改正は、認定ドナーコーディネーターの役割を大きく前進させました。認定ドナーコーディネーターとは、臓器提供と移植に関する十分な知識を有し、家族の意思決定支援や説明・承諾取得、法的脳死判定の補助などを担う専門人材です。令和7年10月8日の「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)改正により、認定ドナーコーディネーターは臓器提供に関する説明・同意取得等を実施できるようになりました。この人材を院内に配置すれば、あっせん機関のコーディネーターの到着を待つ時間が不要になり、提供プロセスを約1〜2日短縮できると見込まれています。2つ目の省令改正は、脳死判定の補助検査に脳血流消失の確認を加えました。令和5年12月の改正により、眼球損傷や鼓膜損傷等で瞳孔所見や脳幹反射所見を確認できない症例でも、脳血流の消失を確認することで臓器提供が可能となりました。脳血流の消失は、CTアンギオグラフィや血管造影法等の画像診断で確認します。この検査の実施によって、2024年1月から2025年9月末までに6例の臓器提供が実現しました。3つ目の省令改正は、補助循環装置の使用下でも脳死判定を可能にしました。令和7年10月の改正により、脳死判定の前提条件である血圧の最低基準に平均動脈圧による測定が加わりました。従来は収縮期血圧のみでの評価が難しかった補助循環装置の使用者からも、これにより安全な臓器提供ができるようになりました。以上3つの改正で生じた業務と費用を評価に反映する目的で、今回の見直しが行われます。見直し①:認定ドナーコーディネーターによる説明・同意取得を評価第一の見直しは、臓器提供に係る説明等に対する「脳死臓器提供体制向上加算」(5,000点)の新設です。この加算は、臓器提供に関する専門の知識を有する者が臓器提供に係る説明等を行った場合に、所定点数へ加算します。個別改定項目の「具体的な内容」では、認定ドナーコーディネーターにより臓器提供に係る同意取得が行われた場合に加算を設けると記載されています。一方、算定要件の文言は「臓器提供に関する専門の知識を有する者」となっており、対象者の具体的な範囲は今後の通知等で確認する必要があります。想定される効果は、臓器提供を希望する意思の尊重です。認定ドナーコーディネーターが院内で説明と同意取得を担えば、家族の意思決定を専門的に支援できます。提供プロセスの短縮は、終末期における患者や家族の負担軽減にもつながります。参考として、中医協の資料には、急変により臓器提供を断念した事例が18例あったことが示されています(同資料の参考値として、令和6年度の脳死下臓器提供数は139例)。見直し②:法的脳死判定時の脳血流の画像診断を評価第二の見直しは、法的脳死判定に当たって実施する画像診断への加算の新設です。この加算は、次に掲げる画像診断を実施した場合に、各区分の点数を合算して所定点数へ加算します。ここでいう法的脳死判定とは、臓器の移植に関する法律第6条第2項に規定する判定を指します。【画像診断の区分と点数】* イ 動脈造影カテーテル法 …… 1,920点* ロ シングルホトンエミッションコンピューター断層撮影(SPECT) …… 800点* ハ コンピューター断層撮影(造影剤を使用した場合) …… 720点見直し③:法的脳死判定後も継続する補助循環装置等を評価第三の見直しは、法的脳死判定日以後も継続して実施する手術への加算の新設です。この加算は、臓器提供者に法的脳死判定日以後も継続して次に掲げる手術を実施した場合に、各区分の点数を合算して所定点数へ加算します。対象は、補助循環装置等を用いた8つの区分です。【手術の区分と点数】* イ 大動脈内バルーンパンピング法(IABP法) …… 2,420点* ロ 人工心肺 …… 1,720点* ハ 体外式膜型人工肺 …… 1,720点* ニ 経皮的心肺補助法 …… 1,790点* ホ 経皮的循環補助法(ポンプカテーテルを用いたもの) …… 2,110点* ヘ 補助人工心臓 …… 2,860点* ト 小児補助人工心臓 …… 4,960点* チ 植込型補助人工心臓 …… 2,860点なお、見直し②と見直し③の加算には、個別改定項目の段階で加算名称が示されていません。名称や詳細な算定上の取扱いは、告示・通知等で確認してください。実務上の留意点:算定と請求の枠組みは従来どおり実務では、算定と請求の基本的な枠組みを現行の取扱いから確認しておく必要があります。以下は現行の留意事項通知に基づく整理であり、改定後の具体的な取扱いは通知等で改めて確認してください。押さえるべき点は3つあります。第一に算定する医療機関、第二に請求の相手方、第三に医療機関の間の費用分配です。第一に、脳死臓器提供管理料(K914)は、移植を行った保険医療機関が算定します。所定点数は現行で40,000点であり、今回の個別改定項目には所定点数そのものの変更は示されていません。算定できるのは、臓器の移植に関する法律第6条第2項に規定する脳死した者の身体から臓器の移植が行われた場合です。今回新設される3つの加算も、この所定点数に対する加算として算定します。第二に、費用の請求はレシピエント側に対して行います。ドナーに実施した脳死判定やコーディネート等の費用は、脳死臓器提供管理料として包括的に評価されているためです。臓器提供者の脳死後に臓器提供者の身体へ行われる処置の費用も、引き続き所定点数に含まれます。第三に、臓器提供施設と移植実施施設の間の分配は、相互の合議に委ねられます。診療報酬の請求は移植を行った保険医療機関が行うため、実際に管理を担った提供施設への配分は当事者間の取り決めによります。新設される加算の取扱いも同じ枠組みに沿うと考えられるため、合議の内容を見直す余地がないかを確認してください。まとめ:3つの加算で提供体制と医療資源を評価令和8年度診療報酬改定では、脳死臓器提供管理料に3つの加算が新設されます。1つ目は、臓器提供に係る説明等を評価する脳死臓器提供体制向上加算(5,000点)です。2つ目は、法的脳死判定に当たって実施する脳血流の画像診断を評価する加算です。3つ目は、法的脳死判定日以後も継続する補助循環装置等を評価する加算です。いずれもガイドライン改正と省令改正で変化した実務を評価へ反映するものであり、臓器提供を希望する意思の尊重と提供機会の確保を後押しします。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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オンライン精神療法に初診566点|令和8年度改定で要件はこう変わる
「情報通信機器を用いた精神療法の適切な実施に関する指針」が新たに策定されました。この指針は、一定の条件を満たす場合に初診のオンライン精神療法を可能としています。しかし現行の診療報酬は、初診のオンライン精神療法を評価の対象としていません。そこで令和8年度診療報酬改定は、個別改定項目「Ⅲ-5-4-⑱ 情報通信機器を用いた精神療法の見直し」で、指針に沿った初診を新たに評価します。本記事は、この⑱の改定内容を、点数・施設基準・維持される要件・実務対応の4点で整理します。今回の見直しの柱は、初診に対する評価の新設と、施設基準への時間外対応要件の追加です。第一に、通院精神療法「1のロの(1)」について、情報通信機器を用いた場合の566点が新設されます。第二に、施設基準に「休日及び保険医療機関の表示する診療時間以外の時間の対応等が可能な体制」が追加されます。第三に、3種類以上の抗うつ薬等を処方した場合の算定不可などの取扱いは、これまでどおり維持されます。1. 初診のオンライン精神療法に566点を新設改定案は、情報通信機器を用いた精神療法の対象に初診を加え、566点を新設します。現行の注12は、対象を「1のハの(1)の①又は(2)の①」に限っています。改定案の注12は、対象を「1のロの(1)若しくはハの(1)の①又は(2)の①」に広げます。この結果、算定できる点数は、それぞれ566点、357点、274点の3区分となります。566点の対象となる「1のロの(1)」は、初診に係る評価区分です。現行の対象である「ハ」は、点数表上「イ及びロ以外の場合」に当たる区分です。したがって今回の追加は、初診に対応する区分そのものを新たに対象へ加える見直しといえます。対象範囲を読む際は、次の3点に注意してください。第一に、注12が対象とするのはいずれも「1 通院精神療法」の枝番であり、「2 在宅精神療法」は対象に含まれません。第二に、現行のオンライン評価は「ハの(1)の①」のように枝番の①に対応しており、精神保健指定医による場合を評価する構造です。第三に、通院精神療法の区分そのものが同じ改定の「⑪ 通院・在宅精神療法の見直し」でも見直されるため、「ロの(1)」が具体的にどの類型を指すかは、改定後の点数表で確認する必要があります。⑱だけを読んで枝番を推測せず、⑪とセットで確認してください。566点は、対面で行った場合の所定点数に代えて算定します。この「代えて算定する」という構造は、現行の357点や274点と同じです。つまりオンラインで実施した場合には、対面の点数ではなく、置き換え後の点数のみを算定します。届出を行った保険医療機関でなければ算定できない点も、現行と変わりません。初診の対象患者は、指針が示す条件を満たす患者に限られます。指針は、オンライン初診精神療法の実施を、オンライン再診精神療法に十分な経験がある医師が診察することを前提としています。その上で対象を、行政が対応を行っている未治療者、治療中断者、ひきこもりの者等としています。さらに実施の条件として、医療機関と行政との連携体制の構築、診察時に患者の側に保健師等がいる状況、患者自身の希望を挙げています。どの患者にもオンライン初診を行えるわけではない、という点が最大の注意点です。ただし、ここで紹介した指針の内容は、中医協資料に添付された案(令和7年12月1日時点の未定稿)に基づきます。診療報酬上の対象患者や算定要件は、改定に伴う留意事項通知で確定します。実際の運用に当たっては、確定した指針と通知の双方を必ず確認してください。2. 施設基準に休日・時間外の対応体制を追加改定案は、施設基準を2項目に整理し、休日及び診療時間外の対応体制を追加します。現行の施設基準は、「情報通信機器を用いた精神療法を行うにつき十分な体制が整備されていること」の1項目だけです。改定案は、この1項目を(1)として維持します。その上で(2)として、「休日及び保険医療機関の表示する診療時間以外の時間の対応等が可能な体制が整備されていること」を新設します。追加される(2)は、指針が求める急変時の対応体制を診療報酬上の要件としたものです。指針は、患者が希望した場合や緊急時に、実施した医師自らが速やかに対面診療を行える体制を求めています。あわせて指針は、時間外や休日にも医療を提供できる体制での実施を望ましいとしています。ただし指針は、自院での時間外・休日対応が難しい場合の代替も認めています。地域の精神科病院と平時から十分な連携体制を確保し、その精神科病院が時間外・休日の対応を担う場合には、体制が確保されているものとみなされます。この施設基準の追加は、届出の実務に直接影響します。現行のオンライン精神療法は、届出医療機関数も算定回数も限定的な状況にあります。届出医療機関は、令和7年11月時点で病院と診療所を合わせて約150施設にとどまります。今回の見直しは、初診という新しい評価を用意する一方で、体制面の要件を1段階引き上げる内容といえます。3. 処方制限と加算の取扱いは変更なし改定案は、算定を制限する既存のルールを、そのまま維持します。第一に、1回の処方において3種類以上の抗うつ薬又は3種類以上の抗精神病薬を投与した場合は、算定できません。第二に、注3から注5まで及び注7から注11までに規定する加算は、別に算定できません。第三に、算定には地方厚生局長等への届出が必要です。これらの制限は、いずれも現行の注12から文言が変わっていません。多剤処方に係る制限は、指針が「向精神薬等の不適切な多剤・大量・長期処方は厳に慎む」と求めていることと対応します。初診が評価対象に加わっても、この2つの制限は初診にも同じように及びます。4. 医療機関が今から準備すべき3点医療機関は、届出・連携・体制の3点を確認しておくと、改定後に円滑に対応できます。第一に、施設基準の追加に伴う届出内容を確認します。第二に、行政との連携ルートを整理します。第三に、休日及び時間外の対応体制を確保します。第一の届出では、追加される施設基準(2)を満たせるかどうかを点検します。既に届出を行っている医療機関も、体制要件が2項目に増える点を踏まえた確認が必要です。これから届出を行う医療機関は、(1)の体制整備とあわせて(2)の対応体制を用意します。具体的な届出様式や経過措置は、告示・通知の発出後に確認してください。第二の連携では、保健所や自治体のアウトリーチ支援との接点をつくります。オンライン初診の対象は、行政が対応している未治療者、治療中断者、ひきこもりの者等です。この対象に届くためには、行政側から医療機関へつなぐ経路が欠かせません。診察時に保健師等が患者の側にいる状況をどう作るかを、事前に取り決めておくことが実務上の鍵になります。第三の体制では、自院対応と連携対応のどちらを選ぶかを決めます。自院で休日・時間外に対応できる医療機関は、その体制を明文化します。自院での対応が難しい医療機関は、地域の精神科病院との連携体制を平時から確保します。いずれの場合も、急変時に対面診療へ速やかに切り替える手順を、あらかじめ院内で共有しておきましょう。まとめ:条件付きの初診評価と体制要件の追加がセットで進む令和8年度診療報酬改定の⑱は、指針の策定を踏まえ、オンライン精神療法の要件を見直します。見直しの第一の柱は、初診に係る566点の新設です。第二の柱は、施設基準への休日・時間外対応体制の追加です。一方で、3種類以上の抗うつ薬等に係る処方制限や、加算の算定不可の取扱いは維持されます。初診の評価は限られた条件の下で認められるものであり、体制面の責任も重くなる改定である、と押さえておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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「早期診療体制充実加算」が3区分に再編|令和8年度診療報酬改定の要点
令和8年度診療報酬改定は、精神科の外来診療を評価する早期診療体制充実加算を見直します。この加算は、現行では病院と診療所という施設類型ごとに点数を定めています。一方で、その施設基準が求める時間外診療や精神科救急医療の体制は、診療所の届出を伸び悩ませてきました。本稿は、早期診療体制充実加算の見直しについて、背景、改定内容、医療機関が取るべき対応の順に整理します。今回の見直しは、施設類型による2区分を、体制に応じた3区分へ再編します。3区分は早期診療体制充実加算1、2及び3であり、精神科を最初に受診した日から3年以内の点数を、それぞれ50点、20点、15点とします。施設基準は、精神疾患の早期発見等に必要な診療を行う体制の確保に加えて、休日及び診療時間外の対応が可能な体制の整備を求めます。休日及び診療時間外の対応は、自院だけでなく、連携体制を有する病院による対応も認めます。ただし、新設される加算3には現行の下限15点を下回る10点が置かれます。1. 見直しの背景:届出の伸び悩みと時間外要件の壁今回の見直しは、届出が伸び悩む実態と、その打開策としての連携を背景とします。早期診療体制充実加算は、精神疾患の早期発見と早期からの重点的な診療を評価する加算です。この加算の届出は、令和7年8月時点で病院185施設、診療所76施設にとどまります。届出が進まない理由は、時間外診療と精神科救急医療の体制に関する要件に集中しています。こうした要件のうち時間外の対応については、地域の精神科救急医療を担う病院との連携によって確保できるとの実態が示されました。早期診療体制充実加算は、精神疾患の早期発見と、質の高い継続的な診療体制を評価する加算です。この加算は、通院・在宅精神療法に上乗せする形で算定します。施設基準は、精神科救急医療の提供や時間外診療体制の確保、常勤の精神保健指定医の配置、30分以上又は60分以上の通院・在宅精神療法に係る診療実績などを求めています。この加算の届出は、病院で横ばい、診療所で低い水準にとどまっています。病院の届出は、令和6年8月も令和7年8月も185施設で変わりません。診療所の届出は、令和6年8月の32施設から令和7年8月の76施設へ増えました。ただし、病院の185施設と比べれば、なお少ない水準です。届出が進まない理由は、体制に関する2つの要件に集中しています。令和6年度改定の結果検証に係る特別調査によれば、届出を行わない診療所の59.9%が「時間外診療の提供に関する要件を満たすことが困難であるため」を挙げました。次いで多かったのは「精神科救急医療の提供に関する要件を満たすことが困難であるため」の53.6%です。なお、診療実績に関する要件は2つの選択肢に分かれており(31.4%と46.9%)、いずれか一方でも挙げた診療所は54.1%にのぼります。この時間外の要件は、病院との連携によって実質的に満たせるとの実態が中医協に示されました。自院の診療時間が平日日中のみである診療所も、救急患者の受け入れ等を行う病院と平時から情報共有を行っていれば、時間外にかかりつけ患者へ対応できる体制を構築しています。中医協は、この実態を踏まえ、地域の精神科救急医療提供体制を担う病院との連携体制を構築したうえで、入院患者の地域移行・地域定着等に積極的に取り組む診療所を評価対象に加えることを論点としました。連携体制の構築だけで評価対象になるとは示されていない点に注意が必要です。2. 改定内容①:評価を3区分に再編する改定案は、早期診療体制充実加算の評価を3区分に再編します。現行の区分は、病院と診療所という施設類型で点数を分けています。改定後の区分は、加算1、加算2及び加算3という3段階で点数を分けます。加算3は今回新設する区分であり、精神科を最初に受診した日から3年以内で15点、それ以外で10点とします。現行と改定案の点数は、次のとおりです。現行は、病院と診療所という施設類型で点数が分かれます。改定案は、加算1、加算2及び加算3という3段階で点数が分かれます。■ 現行(施設類型による2区分)* 病院の場合 … 3年以内:20点/3年超:15点* 診療所の場合 … 3年以内:50点/3年超:15点■ 改定案(体制に応じた3区分)* 早期診療体制充実加算1 … 3年以内:50点/3年超:15点* 早期診療体制充実加算2 … 3年以内:20点/3年超:15点* 早期診療体制充実加算3(新設) … 3年以内:15点/3年超:10点※「3年以内」は、当該保険医療機関の精神科を最初に受診した日から3年以内の期間を指します。この3区分は、いずれも「精神科を最初に受診した日から3年以内かどうか」で点数を分ける枠組みを維持します。早期の重点的な診療を手厚く評価するという加算の考え方は、今回の見直しでも変わりません。点数の水準だけを見れば、現行の診療所の50点が加算1に、現行の病院の20点が加算2に一致します。ただし、この一致は点数の数値が同じであることを意味するにすぎません。施設類型による区分が廃止される以上、病院が加算1を、診療所が加算2や加算3を届け出ることも制度上は起こり得ます。一方で、加算3(2)の10点は、現行にない低い点数です。現行の点数は病院・診療所とも下限が15点でした。今回の見直しは、評価の上限を変えずに、下限を10点まで広げる構造になっています。各区分に該当するための具体的な要件は、今後の告示及び通知で示されます。個別改定項目の資料も「評価を3つに分け、それぞれ要件を新たに設定する」と述べるにとどまり、加算1から3のどの区分にどの体制が対応するかを明示していません。また、資料が掲げる施設基準は告示レベルの記載であり、精神科救急医療の提供や診療実績といった詳細な要件は通知で定まります。届出を検討する医療機関は、告示及び通知の公表を待って区分を判断する必要があります。3. 改定内容②:施設基準に休日・時間外の対応体制を加える改定案は、施設基準に休日及び診療時間外の対応体制を追加します。現行の施設基準は、精神疾患の早期発見及び症状の評価等に必要な診療を行う体制の確保だけを定めています。改定後の施設基準は、この体制の確保を(1)として残したうえで、体制の水準に「十分」と「必要」の2段階を設けます。改定後の施設基準は、さらに(2)として、休日及び診療時間外の対応が可能な体制の整備を求めます。現行の施設基準は、1項目だけで構成されています。その内容は「精神疾患の早期発見及び症状の評価等の必要な診療を行うにつき十分な体制が確保されていること」です。改定後の(1)は、この体制を「十分又は必要な体制が確保されていること」と改めます。現行の「十分な体制」に「必要な体制」という水準が加わる形です。この書き分けは、加算1から3の区分ごとに求める体制の水準を変えるための表現と考えられます。改定後の(2)は、今回新設する要件です。その内容は「休日及び保険医療機関の表示する診療時間以外の時間の対応等が可能な体制が整備されていること」です。この要件は、休日や診療時間外にも患者へ対応できる体制の確保を、加算の前提として明確に位置づけます。この(2)は、体制を確保する主体を「当該保険医療機関又は連携体制を有する病院において」と定めています。つまり、自院が単独で時間外に対応できなくても、連携体制を有する病院が対応できれば要件を満たします。この連携による体制確保は、時間外診療の要件を最大の障壁としてきた診療所にとって、届出への道を開くものです。4. 医療機関が取るべき対応医療機関は、自院の体制を確認し、届出の区分を見極める準備を進める必要があります。現に届出を行う病院は、休日及び時間外の対応体制が新たな要件を満たすかを確認します。現に届出を行う診療所は、50点の区分を維持できるかを確認します。届出を行っていない診療所は、地域の病院との連携体制の構築を検討します。いずれの医療機関も、告示及び通知で区分ごとの要件を確認します。現に届出を行う病院は、休日及び時間外の対応体制を点検してください。施設類型による区分が廃止されるため、病院であることを理由に区分が決まることはなくなります。体制の充実度によっては、現行の20点を上回る加算1に届く場合も、加算3にとどまる場合もあり得ます。現に届出を行う診療所は、50点の区分を維持できるかを点検してください。現行の50点と同じ水準は、改定後の加算1です。診療実績や体制の要件がどの区分に割り当てられるかによって、算定できる区分は変わります。届出を行っていない診療所は、地域の病院との連携体制の構築を検討してください。改定後の施設基準(2)は、連携体制を有する病院による時間外対応を認めます。地域の精神科救急医療を担う病院と平時から情報共有を行う体制を整えることが、届出への第一歩になります。いずれの医療機関も、告示及び通知で区分ごとの要件を必ず確認してください。本稿で紹介した内容は、中医協の個別改定項目に示された改定案に基づくものです。区分ごとの具体的な施設基準や算定上の留意事項は、今後公表される告示及び通知で確定します。まとめ令和8年度診療報酬改定は、早期診療体制充実加算を施設類型による2区分から体制に応じた3区分へ再編します。3区分の点数は、精神科を最初に受診した日から3年以内で、加算1が50点、加算2が20点、加算3が15点です。施設基準には、休日及び診療時間外の対応が可能な体制の整備が新たに加わります。この対応は連携体制を有する病院によるものでも認められ、時間外診療の要件を障壁としてきた診療所にも届出の道が開かれます。他方で、加算3(2)の10点は現行の下限15点を下回る新しい水準であり、体制によっては現行より低い評価となる点に注意が必要です。区分ごとの具体的な要件は、今後の告示及び通知で確認してください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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児童思春期支援指導加算が2区分へ|令和8年度改定で月平均4人から届出可能に
令和6年度診療報酬改定は、20歳未満の精神疾患患者を多職種で支える体制を評価するため、通院・在宅精神療法に児童思春期支援指導加算を新設しました。しかし、この加算の届出は全国で伸び悩んでいます。届出医療機関が3施設以下の県は16県にのぼり、未届の理由としては医師や多職種の配置の困難とともに患者数の少なさが挙げられました。そこで令和8年度診療報酬改定は、児童思春期の精神疾患患者の受入体制をさらに確保する観点から、同加算の要件と評価を見直します。本稿は、この見直しの内容を、改定前後の対比と届出実務の視点から整理します。見直しの柱は、実績要件の水準に応じて加算を2区分に細分化した点にあります。第一に、改定案は従来の1区分を児童思春期支援指導加算1と児童思春期支援指導加算2に分けます。第二に、加算1は従来と同じ「過去6か月間の初診20歳未満患者が月平均8人以上」を実績要件とし、点数を全区分で引き上げます。第三に、加算2は「過去3か月間の初診20歳未満患者が月平均4人以上」を実績要件とし、加算1より低い点数を設定します。第四に、医師と多職種の配置要件および研修要件は、加算1と加算2で共通です。以下、この4点を順に解説します。1. 見直しの背景:届出が伸び悩む実態見直しの背景には、新設から間もない児童思春期支援指導加算が、地域によってはほとんど広がっていない実態があります。厚生労働省保険局医療課の調べ(令和7年8月1日時点)によると、届出医療機関が3施設以下にとどまる県は16県に達しました。つまり、加算の恩恵が届いていない地域が全国に相当数残っています。この状況について、医療機関は複数の理由を挙げています。令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査「精神医療等の実施状況調査」は、未届の理由を複数回答で尋ねました。回答割合の高い順に並べると、次のとおりです。▼未届の理由(病院n=300/診療所n=204)* 適切な研修を修了した精神科の専任の常勤医師の配置が困難* 病院54.7%/診療所50.0%* 保健師等のうち2名かつ2職種以上の配置が困難* 病院46.7%/診療所37.3%* 患者が少なく、過去6か月間に初診を実施した20歳未満の患者数が月平均8人未満* 病院42.0%/診療所36.8%* 児童思春期の患者の診療に習熟した医師がいない* 病院39.3%/診療所32.4%* 一定の患者数はいるが、月ごとの偏りで満たせない時期がある* 病院14.3%/診療所16.2%これらの理由のうち、今回の見直しが対応するのは患者数の実績要件だけです。医師や多職種の配置に関する要件は、改定案でも緩和されません。中央社会保険医療協議会でも、支払側(1号側)委員が「患者数が少ない地域があることを踏まえ、患者数の実績要件に応じて評価を細分化するべき」と意見を述べています。改定案の2区分化は、この議論の帰結にあたります。2. 加算1と加算2の区分:実績要件だけが分かれ目改定案は、児童思春期支援指導加算を加算1と加算2の2区分に分け、両者を実績要件だけで区別します。したがって、体制に関する要件は2区分で完全に共通です。この構造を理解すると、自院がどちらの区分に該当するかを短時間で判定できます。共通となる体制要件は、医師配置、多職種配置、研修の3項目です。第一に、児童思春期の患者に対する精神医療に係る適切な研修を修了した精神科の専任常勤医師を、1名以上配置します。週3日以上かつ週22時間以上勤務する専任の非常勤医師2名以上の組み合わせによる常勤換算も、従来どおり認められます。第二に、当該支援に専任の保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士または公認心理師を、2名以上かつ2職種以上配置します。このうち1名以上は、適切な研修を修了した者でなければなりません。第三に、適切な研修は、国または医療関係団体等が主催する15時間以上の研修であり、診察・治療・家族面接・発達障害の支援・多職種の業務および連携を講義と演習で扱い、複数職種によるグループワークやディスカッション等を含む必要があります。加算2の施設基準は、この3項目をそのまま準用します。一方、分かれ目となる実績要件は、患者数の水準と評価期間の両方で異なります。加算1は、過去6か月間に初診を実施した20歳未満の患者数が月平均8人以上であることを求めます。この水準は現行と同一です。加算2は、過去3か月間に初診を実施した20歳未満の患者数が月平均4人以上であることを求めます。加算2は、患者数の水準を半分に下げたうえで、評価期間を6か月から3か月に短縮します。この短縮により、加算2の該当判定は直近3か月の実績で行われます。なお、告示上の施設基準も文言が改まります。現行の「必要な体制及び実績を有していること」は、改定案で「必要な体制及び十分又は必要な実績を有していること」となります。ただし、どちらの表現がどちらの区分に対応するかは、改定案の記載からは特定できません。この点は今後の告示・通知で確認する必要があります。3. 点数体系:加算1は引き上げ、加算2は新設点数体系では、加算1が全区分で引き上げとなり、加算2は加算1より低い水準で新設されます。両区分とも、60分以上の通院・在宅精神療法を行った場合を最上位に置き、それ以外の場合を経過期間で2段階に分ける構成です。ただし、経過期間の区切りは加算1が2年、加算2が1年であり、両者で異なります。加算1の点数は、現行の児童思春期支援指導加算を各区分で上回ります。▼児童思春期支援指導加算1(カッコ内は現行点数)* 60分以上の通院* 在宅精神療法(最初に受診した日から3月以内)* 1,100点(現行1,000点)* 上記以外で、最初に受診した日から2年以内* 490点(現行450点)* 上記以外* 290点(現行250点)加算2の点数は、加算1の水準を下回ります。▼児童思春期支援指導加算2(新設)* 60分以上の通院* 在宅精神療法(最初に受診した日から3月以内)* 500点* 上記以外で、最初に受診した日から1年以内* 400点* 上記以外* 100点上記の「最初に受診した日」は、当該保険医療機関の精神科を最初に受診した日を指します。施設基準の「初診を実施した20歳未満の患者の数」とは別の概念であるため、両者を混同しないよう注意してください。算定上の取扱いも、区分の新設に合わせて整理されます。60分以上の通院・在宅精神療法に係る点数は、加算1・加算2のいずれも1回に限り算定します。また、通院・在宅精神療法の注3または注4に規定する加算を算定した場合は、児童思春期支援指導加算を算定できません。この併算定の制限は、現行から変わりません。4. 届出実務:未届施設は加算2、届出済施設は加算1届出実務では、現在の届出状況に応じて対応が2通りに分かれます。未届の医療機関は、加算2による新規届出を検討します。届出済の医療機関は、加算1への切替えを前提に実績を確認します。いずれの場合も、判断の起点は自院の初診患者数です。未届の医療機関がまず確認すべきは、直近3か月間の初診20歳未満患者数です。この3か月で月平均4人以上を満たせば、体制要件をクリアしている限り加算2を届け出られます。特に、医師と多職種を配置しながら月平均8人の壁で届出を見送ってきた施設にとって、加算2は現実的な選択肢となります。一方、体制要件を満たしていない施設は、研修修了者の確保から着手する必要があります。研修は15時間以上と定められているため、計画的な受講調整が欠かせません。届出済の医療機関が確認すべきは、加算1の実績要件を維持できるかどうかです。加算1の実績要件は現行と同一水準であるため、通常は継続して算定できます。ただし、初診患者数が月平均8人を割り込んだ場合には、加算2への移行を検討することになります。この場合、点数は患者ごとに次のように下がります。▼加算1から加算2へ移行した場合の点数の変化* 60分以上の通院* 在宅精神療法* 1,100点から500点へ* 最初に受診した日から1年以内の患者* 490点から400点へ* 最初に受診した日から1年を超え2年以内の患者* 490点から100点へ加算1と加算2では経過期間の区切りが異なるため、患者層ごとに影響額を試算しておくと安全です。特に、通院期間が1年を超え2年以内の患者では、点数の下げ幅が最も大きくなります。なお、本稿の内容は個別改定項目(いわゆる短冊)の段階の情報です。算定要件の細目や届出様式は、今後発出される告示・通知で確定します。実際の届出にあたっては、必ず正式な通知を確認してください。まとめ:実績要件の細分化で受入体制の裾野を広げる令和8年度診療報酬改定は、児童思春期支援指導加算を加算1と加算2の2区分に細分化します。この見直しは、届出医療機関が3施設以下の県が16県にのぼる状況と、未届の理由に患者数の少なさが挙げられた調査結果に基づきます。加算1は、過去6か月間の初診20歳未満患者が月平均8人以上という現行水準を維持したうえで、点数を全区分で引き上げます。加算2は、過去3か月間の初診20歳未満患者が月平均4人以上という緩和された実績要件を新設し、加算1より低い点数を設定します。体制要件は2区分で共通であるため、医療機関は自院の初診患者数を確認するだけで該当区分を判定できます。児童思春期の精神疾患患者の受入体制を全国に広げる一歩として、自院の実績を早めに点検しておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度診療報酬改定|臨床心理技術者の経過措置が令和10年5月末で終了
令和8年度診療報酬改定は、臨床心理技術者に係る経過措置を見直します。この経過措置は、臨床心理技術者等を診療報酬上の公認心理師とみなす取扱いであり、平成31年4月1日から「当分の間」続いてきました。終了時期が示されないまま運用されてきたため、医療機関は心理職の人員体制をいつまでに整えるべきか判断できませんでした。本記事は、この経過措置の終了期日と、医療機関に求められる対応を整理します。今回の見直しは、臨床心理技術者等を公認心理師とみなす経過措置を、令和10年5月31日をもって終了させます。この終了の背景には、公認心理師の養成が進み、登録者数が令和6年度末時点で73,743人に達した状況があります。終了の影響は、入院料等の算定要件から特掲診療料の施設基準まで、心理職を評価する規定の全体に及びます。医療機関に求められる対応は、改定が施行される令和8年6月から令和10年5月31日までの2年間で、該当する職員の資格取得と人員体制の点検を進めることです。1.見直しの背景:公認心理師の養成が進み、経過措置の役割が終わる経過措置の見直しは、公認心理師の養成状況を踏まえたものです。中央社会保険医療協議会(中医協)は、「公認心理師の養成状況を踏まえ、診療報酬上の臨床心理技術者に係る経過措置を終了すること」を論点として示しました。この論点は、資格制度の定着によって、みなし規定を置く必要性が薄れたという判断に基づきます。公認心理師は、平成27年に成立した公認心理師法により創設された国家資格です。同法は平成29年9月15日に全面施行され、第1回の国家試験は平成30年に実施されました。試験はその後も毎年1回以上実施され、合格者が登録簿に登録されることで公認心理師となります。公認心理師の登録者数は、この制度創設以降、一貫して増加してきました。登録者数は、平成30年度末の24,056人から、令和6年度末には73,743人まで伸びています。主たる勤務先の内訳を令和5年度公認心理師活動状況等調査でみると、保健医療分野が24.1%を占め、教育分野(27.1%)、福祉分野(24.7%)に次ぐ規模となっています。この人材の広がりを受けて、平成30年度改定で設けられた経過措置が役割を終えます。平成30年度改定は、診療報酬上評価する心理職を「公認心理師」に統一しました。統一にあたっては、資格取得までの移行期間を確保するため、従来の臨床心理技術者を公認心理師とみなす経過措置が併せて設けられました。この移行期間が、今回の改定で終期を迎えます。2.改定の内容:「当分の間」から「令和10年5月31日まで」へ改定の内容は、みなし規定の期限を明記することです。現行の規定は、経過措置の期間を「平成31年4月1日から当分の間」と定めています。改定案の規定は、この期間を「令和10年5月31日までの間」と改めます。みなし対象者の範囲そのものは、改定の前後で変わりません。みなし対象となる者は、現行どおり次のいずれかに該当する者です。第一に、平成31年3月31日時点で、臨床心理技術者として保険医療機関に従事していた者です。第二に、公認心理師に係る国家試験の受験資格を有する者です。これらに該当する者は、令和10年5月31日までは公認心理師とみなされ、同年6月1日以降はみなされません。期限が明記される規定は、算定要件と施設基準の双方にわたります。算定要件では、第1章第2部「入院料等」の通則17が改められます。施設基準では、第1「基本診療料の施設基準等」の10が改められます。いずれも、期間の記載だけが「当分の間」から「令和10年5月31日までの間」に置き換わります。同様の取扱いは、これら以外の規定にも及びます。算定要件では、D285に掲げる認知機能検査その他の心理検査と、第8部第3節の経過措置が同様の扱いとなります。施設基準では、特掲診療料の施設基準等が同様の扱いとなります。つまり、心理職について公認心理師を求めるすべての規定で、みなし規定が同じ日に終わります。3.実務への影響:令和10年6月1日から資格の有無が問われる実務への影響は、令和10年6月1日を境に生じます。同日以降、公認心理師の登録を受けていない職員は、診療報酬上の公認心理師として扱えません。この扱いは、届出や算定の可否に直結します。第一の影響は、施設基準の充足に現れます。公認心理師の配置を要件とする入院料や加算では、みなし職員を人員に算入できなくなります。要件を満たせなくなった場合、届出の変更や取り下げが必要となります。第二の影響は、個別の点数の算定に現れます。D285の認知機能検査その他の心理検査のように、公認心理師が実施した場合を評価する項目では、みなし職員による実施が算定の対象外となります。心理職の実施を前提とする評価では、実施者の資格確認が欠かせません。第三の影響は、令和8年度改定で見直される他の評価の活用に現れます。同改定は、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害に対する公認心理師による心理支援を推進する観点から、心理支援加算の要件及び評価を見直します。同改定はまた、急性期等の入院料における精神保健福祉士、作業療法士又は公認心理師の病棟配置について、新たな評価を行います。これらの評価を活用するには、公認心理師の確保が前提となります。4.医療機関の対応:残り2年間で資格取得と体制点検を進める医療機関に求められる対応は、猶予期間内に完了させる必要があります。猶予期間は、診療報酬本体の改定が施行される令和8年6月から、経過措置が終了する令和10年5月31日までの2年間です。なお、令和8年度診療報酬改定は令和8年6月施行とされており、薬価の改定(令和8年4月施行)とは施行時期が異なります。第一に取り組むべき対応は、該当職員の把握です。心理職として配置している職員のうち、公認心理師の登録を受けていない者を洗い出します。洗い出しの結果は、施設基準ごとに整理しておくと、後の判断が容易になります。第二に取り組むべき対応は、資格取得の計画づくりです。公認心理師試験は毎年1回以上実施されており、直近の第8回試験は令和7年3月2日に実施されました。ただし、公認心理師となるのは試験に合格した時点ではなく、公認心理師登録簿への登録を受けた時点です。経過措置の終了までに登録を完了させる必要があるため、受験資格を有する職員には、できるだけ早い回での受験を促してください。なお、各回の試験日程は公表されるまで確定しないため、一般財団法人公認心理師試験研修センターの案内で必ず確認してください。第三に取り組むべき対応は、人員体制の見直しです。資格取得が間に合わない可能性がある場合は、公認心理師の採用や、届出内容の変更をあらかじめ検討します。令和10年6月1日の直前に判断すると、届出の間に合わない事態を招きます。まとめ:期日が決まった今こそ、心理職の体制を点検する令和8年度診療報酬改定は、臨床心理技術者等を公認心理師とみなす経過措置を、令和10年5月31日をもって終了させます。この終了は、登録者数が73,743人に達した公認心理師の養成状況を踏まえたものです。終了の影響は、入院料等の算定要件から特掲診療料の施設基準まで、心理職を評価する規定の全体に及びます。医療機関は、改定が施行される令和8年6月から令和10年5月31日までの2年間で、該当職員の把握、資格取得の計画づくり、人員体制の見直しを進めてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】認知療法・認知行動療法の見直し3つのポイント
令和8年度診療報酬改定は、質の高い精神医療を推進する観点から、認知療法・認知行動療法の要件と評価を見直しました。見直しの背景には、医師及び看護師が共同して行う場合の算定実績が伸び悩んだ事実があります。この類型は毎回の看護師面接後に医師の面接を求めており、届出医療機関数は令和6年8月1日時点で7施設、算定件数は令和6年8月審査分で12件にとどまりました(中央社会保険医療協議会「個別事項について(その13)精神医療②」による。算定件数は1か月分の数値です)。本稿は、今回の見直しを3つのポイントに整理し、医療機関が届出と算定の準備を進める際の判断材料を示します。今回の見直しは、多職種による実施を後押しする方向で、算定要件・施設基準・対象手法の3点を変更しました。第1のポイントは、医師及び看護師が共同して行う場合について、毎回医師が患者と5分以上面接する要件を廃止した点です。第2のポイントは、公認心理師による心理支援を伴う場合を330点で新設した点です。第3のポイントは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する認知処理療法を新たに評価の対象に加えた点です。1.医師及び看護師が共同して行う場合の要件緩和医師及び看護師が共同して行う場合(350点)の見直しは、毎回の医師面接の廃止、面接録音の廃止、看護師の経験要件の緩和という3点で構成されます。いずれも、看護師が中心となって一連の治療を担いやすくするための緩和です。点数そのものは350点で据え置かれました。対象患者も変更されず、入院中の患者以外のうつ病等の気分障害の患者に限られます。毎回の医師面接を求める要件は廃止されました。現行の留意事項通知は、看護師による30分を超える面接の後に、当該療法に習熟した医師が5分以上の面接を行うことを算定の条件としています。改定後は、この5分以上の面接を求める記載が削除され、看護師により30分を超える面接が行われた場合に算定できます。ただし、初回時と治療終了時を予定する回の面接は、引き続き専任の医師が実施し、専任の看護師が同席する必要があります。面接内容の録音を求める要件も廃止されました。現行の要件は、看護師が面接を実施する場合に、患者の同意を得た上で内容を録音し、専任の医師がその内容を指示又は指導の参考とすることを求めています。改定後は、この録音に関する規定が削除されます。日々の運用における記録作業の負担は、この削除によって軽くなります。看護師の経験要件は、水準を下げる方向で緩和されました。現行の施設基準は、認知療法・認知行動療法1の届出医療機関の外来に2年以上勤務し、面接に120回以上同席した経験を求めています。改定後の同席回数は60回以上に緩和されます。自ら実施した実績の要件も、10症例120回以上から5症例60回以上に緩和され、あわせて面接を録画・録音して医師又は研修講師の確認と指導を受ける要件が削除されます。一方で、対象となる看護師は「専任の看護師」から「専任の常勤看護師」に改められる点に注意が必要です。2.公認心理師による心理支援を伴う場合の新設公認心理師による心理支援を伴う場合は、「3」として330点で新設されました。医療機関が押さえるべき内容は、算定要件、施設基準、「2」との共通ルールの3点です。新設の根拠には、認知行動療法的アプローチを用いた専門的な心理支援が、基本的な心理支援よりも短期間で患者の状態を改善したとする中央社会保険医療協議会の提出データがあります。算定要件は、医師の関与と実施者の勤務経験を軸に定められました。算定の前提として、認知療法・認知行動療法に習熟した医師が一連の治療に関する計画を作成し、患者に説明を行います。その上で医師が必要と判断した場合に、公認心理師が計画に基づく30分を超える面接を実施したときに算定できます。実施する公認心理師は、認知療法・認知行動療法を実施している保険医療機関において週1日以上常態として勤務し、かつ所定労働時間が週22時間以上の勤務を2年以上行った経験のある専任の者に限られます。複数の実施医療機関で勤務する場合は、それらの勤務を合算して判断します。算定回数の上限は、他の類型と同じく一連の治療につき16回です。施設基準は、認知療法・認知行動療法1の基準に加えて、公認心理師の配置と経験を求めます。配置要件は、当該保険医療機関内に専任の常勤公認心理師を1名以上勤務させることです。経験要件は2つあり、1つは認知療法・認知行動療法1の届出医療機関の外来に2年以上勤務し、面接に60回以上同席した経験です。もう1つは、うつ病等の気分障害、強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害又は神経性過食症の患者に対して、認知行動療法的アプローチに基づく心理支援に係る面接を過去に5症例60回以上実施した経験です。さらに研修の修了も要件となり、その研修は、国・関係学会・医療関係団体等が主催して修了証が交付されること、認知行動療法の基本的技能に係る内容を含む2日以上のものであること、厚生労働省の「認知行動療法研修事業」でスーパーバイザーを経験した者が講師に含まれることの3つを満たす必要があります。運用ルールは、「2」と「3」で共通に整理されました。初回時と治療終了時を予定する回の面接は、専任の医師が実施し、専任の看護師又は公認心理師が同席します。初回から治療を終了するまでの間の面接は、初回時に同席した看護師又は公認心理師が実施します。点数の扱いも共通で、「1」「2」「3」は一連の治療において同一の点数を算定します。この取扱いは、現行の「1」及び「2」に関する規定に「3」を加えたものです。例外として、医師と看護師又は公認心理師が同席して30分以上の面接を行った日に限り、「1」の480点を算定できます。3.PTSDに対する認知処理療法の追加心的外傷後ストレス障害に対する認知療法・認知行動療法では、認知処理療法を用いた場合が新たに評価されます。この見直しは、算定の際に準拠すべきマニュアルの選択肢を広げるものです。点数や算定回数の変更はありません。準拠すべきマニュアルには、認知処理療法実施マニュアルが追加されました。現行の留意事項通知は、厚生労働科学研究班作成の「PTSD(心的外傷後ストレス障害)の認知行動療法マニュアル〔持続エクスポージャー療法/PE療法〕」に従って行った場合に限り算定できると定めています。改定後は、これに加えて、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター研究班作成の「認知処理療法実施マニュアル」に従った場合も算定できます。PTSD患者への治療選択肢は、この追加によって診療報酬上も広がります。まとめ:多職種で担う体制づくりが算定の前提になる令和8年度改定は、認知療法・認知行動療法を多職種で提供しやすくする方向で3点を見直しました。第1に、医師及び看護師が共同して行う場合は、毎回の医師面接と面接録音の要件が廃止され、看護師の経験要件も緩和されます。第2に、公認心理師による心理支援を伴う場合が330点で新設され、専任の常勤公認心理師の配置と経験・研修の要件が定められます。第3に、PTSDに対する認知処理療法が新たに評価の対象となります。届出を検討する医療機関は、看護師と公認心理師の勤務形態、同席と実施の経験回数、研修修了証の有無を早めに確認してください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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心理支援加算の見直し|令和8年度改定で対象疾患拡大・280点へ
令和8年度診療報酬改定で、通院・在宅精神療法の「心理支援加算」が見直されます。現行の心理支援加算は、外傷体験を有し心的外傷に起因する症状を有する患者だけを対象とするため、心理支援を必要とする多くの患者を評価できていません。実際、算定上の課題として「対象となる患者の基準に該当しないが、支援を必要としている患者がいる」と答えた病院は63.7%にのぼります。本稿は、この心理支援加算の見直しを4つの変更点に整理し、届出までに医療機関が準備すべき事項を示します。今回の見直しは、対象患者の間口を広げると同時に、実施体制の質を担保する改定です。第一に、対象疾患を神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害に拡大します。第二に、実施者に係る要件を新設し、公認心理師に一定の勤務実績を求めます。第三に、施設基準を新設し、専任の常勤精神保健指定医の配置と地方厚生局長等への届出を求めます。第四に、評価を250点から280点に引き上げます。これら4つの変更を受けて、医療機関には対象患者の洗い出し、公認心理師の勤務実績の確認、届出の準備という3つの対応が求められます。1. 対象疾患を神経症性障害等に拡大する対象疾患の拡大は、今回の見直しの中心です。現行の心理支援加算は、対象患者を「外傷体験を有し、心的外傷に起因する症状を有する者」に限定しています。この限定により、対象患者はPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準に準じた範囲にとどまっていました。改定案は、この限定を外し、対象を神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害の患者に拡大します。中医協資料は、この3疾患群をICD-10のF40からF48に対応するものとして示しており、現行の対象患者もこの範囲に含まれます。拡大の根拠は、算定実態の調査結果と支援効果の研究結果の2つです。算定実態については、算定を行っていない理由として「外来にて心理支援は実施しているが、算定対象となる患者はいないため」という回答が47.2%で最多でした。支援効果については、精神科外来に通院中の神経症性障害等(ICD-10のF40-F48)の患者に対し、通院精神療法に加えて公認心理師による心理支援を導入した研究があります。この研究では、心理支援を導入した群で患者の状態のさらなる改善が認められ、より効果的な通院精神療法の実施に寄与しました。対象疾患の拡大に伴い、外傷体験に関する詳細な要件は削除されます。現行の留意事項通知は、医師に対して外傷体験の有無と内容の確認、外傷体験および心的外傷に起因する症状の詳細の診療録記載を求めています。改定案は、これらの記載要件を削除します。ただし、医師が心理支援を必要とされる理由等を診療録に記載する要件は残ります。2. 実施者に係る要件を新設する実施者に係る要件の新設は、対象拡大と対をなす質の担保策です。現行の心理支援加算は、実施者を「精神科を担当する医師の指示を受けた公認心理師」とだけ定め、経験や勤務形態を問いません。改定案は、この実施者に、精神科医療における勤務実績を新たに求めます。新設される実施者要件は、精神科を標榜する保険医療機関における勤務経験です。改定案の文言は「精神科を標榜する保険医療機関(他の精神科を標榜する保険医療機関においても勤務する場合は、それらの勤務を合算する。)において、週1日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務を1年以上行った経験のある公認心理師」です。週1日以上の常態勤務と週22時間以上の所定労働時間という2つの条件を同時に満たす勤務を、1年以上行った経験が求められます。複数の精神科標榜医療機関に勤務する場合は、それらの勤務を合算して判断できます。なお、この勤務経験を「どの医療機関で積んだものまで認めるか」は、現時点の資料からは読み取れません。自院での勤務に限るのか、他の精神科標榜医療機関での勤務も含むのかによって、対象となる公認心理師の範囲は変わります。詳細な解釈は、今後発出される通知および疑義解釈で確認してください。実施方法そのものに変更はありません。公認心理師が対面による心理支援を30分以上実施した場合に算定できる点は、現行どおりです。精神科を担当する医師が通院・在宅精神療法を実施した月の別日に当該支援を実施した場合も、引き続き算定できます。3. 施設基準を新設し届出を必要とする施設基準の新設は、算定手続きそのものを変える変更点です。現行の「一の一の六」は、通院・在宅精神療法の注9に規定する「別に厚生労働大臣が定める患者」、すなわち心的外傷に起因する症状を有する患者を定めた規定でした。改定案は、この規定を施設基準に置き換えます。新設される施設基準は、精神保健指定医の配置1点です。具体的には、当該保険医療機関内に専任の常勤の精神保健指定医が1名以上配置されていることを求めます。この施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関でなければ、心理支援加算を算定できません。届出が必要になる点は、実務上もっとも注意すべき変更です。現行の心理支援加算は、患者要件と実施要件を満たせば届出なしで算定できます。改定後は、届出を済ませるまで算定できません。届出の様式、提出時期および経過措置の有無は、今後発出される告示および通知で確認してください。4. 評価を250点から280点に引き上げる評価の引き上げは、要件の厳格化に見合う手当てです。現行の心理支援加算は250点です。改定案は、これを280点に引き上げます。引き上げ幅は30点で、率にすると12%の増となります。算定回数の上限と期間に変更はありません。心理支援加算は、初回算定日の属する月から起算して2年を限度として、月2回に限り算定できます。この上限は改定後も維持されます。5. 届出までに医療機関が準備すべき3つの対応医療機関に求められる対応は、対象患者の洗い出し、公認心理師の勤務実績の確認、届出の準備の3つです。いずれも、改定内容の4つの変更点に対応します。第一の対応は、対象患者の洗い出しです。現在は算定していないものの心理支援を実施している患者について、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害に該当するかを確認します。該当する患者が多いほど、今回の対象拡大の効果は大きくなります。第二の対応は、公認心理師の勤務実績の確認です。心理支援を担当する公認心理師について、週1日以上の常態勤務と週22時間以上の所定労働時間を満たす勤務を1年以上行った経験があるかを確認します。複数の精神科標榜医療機関に勤務する公認心理師については、勤務時間の合算の記録をあらかじめ整理しておきます。第三の対応は、届出の準備です。専任の常勤精神保健指定医が1名以上配置されているかを確認し、配置がなければ体制の見直しを検討します。配置が確認できたら、告示および通知の発出を待って速やかに届け出ます。まとめ令和8年度診療報酬改定は、心理支援加算を4点にわたって見直します。対象疾患は神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害に拡大されます。実施者には、精神科標榜医療機関において週1日以上常態として勤務し、かつ所定労働時間が週22時間以上である勤務を、1年以上行った経験が求められます。施設基準には、専任の常勤精神保健指定医1名以上の配置が新設され、届出が必要になります。評価は250点から280点に引き上げられます。心理支援を実施している医療機関は、対象患者の洗い出し、公認心理師の勤務実績の確認、届出の準備という3つの対応を早期に進めてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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精神保健福祉士の病棟専従要件を見直し|令和8年度改定で病棟外業務を明確化
精神科医療では、入院前から退院後まで同一の精神保健福祉士が関わる継続的な支援が、地域移行の推進に有効とされています。しかし、これまでの施設基準は「当該病棟に専従の常勤精神保健福祉士が1名以上配置されていること」と定めるのみでした。中医協では、従事できる業務の範囲や業務を行う場所が示されていない点が、課題として整理されています。本記事では、令和8年度診療報酬改定で示された「精神保健福祉士の病棟の専従要件の見直し」の内容と、届出医療機関に求められる実務対応を解説します。今回の見直しは、病棟に専従配置された精神保健福祉士が病棟外で行える業務を、2つの類型で明確化するものです。第1の類型として、当該病棟の患者の支援を目的とする場合、保険医療機関外への付き添いなど、病棟外での業務が認められます。第2の類型として、本来業務に影響のない範囲であれば、入棟予定の患者や退棟・退院した患者への支援を、病棟以外の場所で行えます。対象は精神保健福祉士配置加算(精神病棟入院基本料)を含む5つの入院料・加算に及びます。なお本項目では、配置人数の変更も点数の見直しも示されていません。1. 見直しの背景:同一の精神保健福祉士による伴走支援を推進する見直しの背景には、精神保健福祉士に期待される役割と、病棟専従という配置形態とのズレがあります。中医協の議論では、期待される役割の広がりと、要件の不明確さの2点が課題として示されました。期待される役割は、入院中の支援にとどまりません。中医協に提出された資料では、精神保健福祉士は入院前の受け入れ調整から、入院中の支援計画の作成、退院後の同行訪問や生活環境調整まで、あらゆる場面でのシームレスな患者支援を担うと整理されています。本人や家族と継続的に関わることで信頼関係を築く点にこそ、この職種の専門性があるという位置づけです。一方、要件の不明確さは、中医協で課題として明示されました。精神病棟入院基本料の注7に規定する精神保健福祉士配置加算では、「専従の常勤精神保健福祉士が1名以上」とだけ定められています。この点について、中医協の資料(個別事項について(その11)・(その13))は、従事できる業務の範囲や業務を行う場所を今後の議論課題として挙げていました。同資料では、他の入院料についても、病棟に専従であっても病棟の患者に係る院外での指導等を行うのではないかという課題が示されています。こうした課題を受けて、今回の見直しは「同一の精神保健福祉士による継続的な伴走支援を推進する観点」を基本的な考え方に掲げています。伴走支援とは、支援者が入院前から退院後まで途切れずに患者と並走し、生活の再建を支える関わり方を指します。この考え方に沿って、専従要件の解釈が具体的に書き下ろされました。2. 見直しの内容:病棟外業務を2つの類型で明確化見直しの内容は、専従の精神保健福祉士が病棟外で業務を行える場面を、2つの類型として施設基準に明記する点にあります。第1の類型は当該病棟の患者への支援であり、第2の類型は入棟前後・退院後の患者への支援です。両者は認められる条件が異なるため、区別して押さえる必要があります。第1の類型は、当該病棟の患者の支援を目的とする、病棟外での業務です。改定案では、専従の常勤精神保健福祉士を「病棟を担当する者として当該病棟の患者に関する業務に主として従事するもの」と定義したうえで、当該病棟の患者の支援を目的とする場合には、当該保険医療機関外に付き添うなど、当該病棟外で業務を行うことは差し支えないとされました。資料が示す具体例は「当該保険医療機関外に付き添う等」のみであり、入院中の患者に同行する施設見学などが想定されます。ただし個々の業務が該当するかどうかは、今後の通知や疑義解釈で確認してください。第2の類型は、入棟予定の患者や退棟・退院した患者への、病棟以外の場所での業務です。こちらは「その業務に影響のない範囲において」という条件が付されたうえで、当該病棟に入棟予定の患者、または当該病棟から退棟もしくは退院した患者への支援に係るものであれば、当該病棟以外の場所で業務を行うことは差し支えないとされました。ここでの記載は「当該病棟以外の場所」であり、第1の類型のような医療機関外への言及はありません。入院前の面談などが想定されますが、認められる場所の範囲は通知や疑義解釈で確認する必要があります。2つの類型に共通するのは、対象患者が当該病棟に関係する患者に限られる点です。専従要件そのものが撤廃されたわけではなく、病棟の患者に関する業務に主として従事するという原則は維持されています。他病棟の患者を担当する業務や、病棟と無関係な院内業務まで認められた見直しではない点に注意してください。3. 対象範囲:5つの入院料・加算に同様の取扱いを適用対象範囲は、精神病棟入院基本料の精神保健福祉士配置加算を筆頭とする、5つの入院料・加算です。いずれも精神保健福祉士の専従配置を求めている点が共通しており、今回の見直しは同様の取扱いとして適用されます。具体的な対象は、次のとおりです。* 精神保健福祉士配置加算(精神病棟入院基本料)* 精神保健福祉士配置加算(精神療養病棟入院料の「注5」に掲げるもの)* 児童・思春期精神科入院医療管理料* 認知症治療病棟入院料* 地域移行機能強化病棟入院料ただし、専従配置の求め方は区分ごとに異なります。認知症治療病棟入院料1の現行の施設基準は、「当該保険医療機関内に専従する精神保健福祉士又は専従する公認心理師がいずれか1人以上」であり、病棟専従ではありません。各区分に見直しがどう反映されるかは、告示・通知で自院の該当箇所を確認してください。これら5区分の届出医療機関は、いずれも今回の見直しの対象となります。特に地域移行機能強化病棟入院料は、長期入院患者の地域移行を目的とする入院料であり、退院後の生活環境の調整が業務の中心を占めます。同様に、児童・思春期精神科入院医療管理料でも、入院前の相談や退院後の学校・家庭との調整が支援の要になります。専従の精神保健福祉士が病棟外で動けるようになる意義は、これらの病棟で特に大きいといえます。4. 実務対応:業務範囲の整理と記録の整備を進める実務対応として、届出医療機関には3つの準備が求められます。ここからは制度上の要求ではなく、筆者が実務上の備えとして推奨する内容です。順に、業務範囲の整理、記録の整備、病棟体制の担保を挙げます。第1に、認められる業務の範囲を院内で整理してください。今回の見直しは、病棟外業務を無制限に認めるものではありません。どの患者を対象とする、どのような外出であれば専従要件を満たすのか、上記2つの類型に沿った院内基準を文書化しておくと、指導監査の場面で説明しやすくなります。第2に、病棟外業務の記録を整備してください。専従の精神保健福祉士が病棟を離れる場合、その業務が当該病棟の患者の支援に該当することを、後から示せる必要があります。日時、対象患者、目的、行き先を残す様式をあらかじめ用意しておくと、記録の負担を抑えられます。第3に、精神保健福祉士の不在時に病棟の支援体制を担保してください。第2の類型には「その業務に影響のない範囲において」という条件が付いています。この条件を満たすには、本来の病棟業務が滞らない体制が前提になります。他職種とのタスクシェアや、複数名での分担を検討しておきましょう。まとめ:継続的な支援を可能にする、運用の明確化今回の「精神保健福祉士の病棟の専従要件の見直し」は、同一の精神保健福祉士による継続的な伴走支援を推進するための、運用の明確化です。第1に、当該病棟の患者の支援を目的とする場合、保険医療機関外への付き添いなど、病棟外での業務が認められます。第2に、本来業務に影響のない範囲であれば、入棟予定の患者や退棟・退院した患者への支援を、病棟以外の場所で行えます。第3に、対象は精神保健福祉士配置加算をはじめとする5つの入院料・加算に及びます。届出医療機関は、認められる業務範囲を院内で整理したうえで、記録の様式と病棟の支援体制を早めに整えておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定|通院・在宅精神療法 指定医の初診30分以上に550点を新設
通院・在宅精神療法は、診察時間と実施者が精神保健指定医であるかどうかによって、評価が分かれてきました。しかし、初診日の評価は「60分以上」の区分しかなく、30分以上60分未満の初診は初診日以外の診療と同じ区分(イ及びロ以外の場合)で算定していました。令和8年度診療報酬改定は、質の高い精神医療の提供を推進する観点から、この通院・在宅精神療法の要件と評価を見直します。本稿では、その見直し内容を3つの変更点に整理してお伝えします。見直しの内容は、初診の評価を手厚くする一方で、精神保健指定医以外の医師による精神療法に体制の裏づけを求めるものです。第一に、精神保健指定医による初診30分以上60分未満の区分を新設し、550点を評価します。第二に、精神保健指定医による初診60分以上の評価を、通院・在宅ともに650点へ引き上げます。第三に、精神保健指定医以外の医師が行う場合について、新設の施設基準を届け出ていない医療機関では所定点数の100分の60に減算します。1. 初診30分以上60分未満に550点を新設新設された区分は、精神保健指定医が初診日に30分以上60分未満の精神療法を行った場合を評価します。点数は通院精神療法・在宅精神療法ともに550点です。現行では同じ診療を「イ及びロ以外の場合」(通院は30分以上、在宅は30分以上60分未満)として410点で算定していたため、実質140点の引上げとなります。なお、この新設区分は精神保健指定医が行う場合に限られます。精神保健指定医以外の医師が初診日に30分以上60分未満の精神療法を行った場合は、引き続き「イ及びロ以外の場合」で算定します。この新設の背景には、初診で把握すべき情報の多さがあります。精神科の診察では、例えばうつ病において把握すべき情報が多岐にわたり、これらは初診時に把握することが望ましいと考えられています。実際にNDBデータでも、30分以上の通院・在宅精神療法のうち一定程度が初診患者に対するものでした。中央社会保険医療協議会では、精神科外来において初診をより積極的に診療する体制を確保する必要があるとして、初診の評価のあり方が論点に挙げられていました。一方で、初診日の算定には従来からの時間要件があります。現行の留意事項では、初診料を算定する初診の日に通院・在宅精神療法を行った場合、診療に要した時間が30分を超えたときに限り算定できるとされています。新設区分「30分以上60分未満」とこの時間要件との関係は、今後発出される通知で確認が必要です。2. 初診60分以上の評価を650点へ引上げ引上げの対象は、精神保健指定医が初診日に60分以上の精神療法を行った場合です。通院精神療法は600点から650点へ、在宅精神療法は640点から650点へ改定されます。この改定により、精神保健指定医が行う初診60分以上の点数は、通院・在宅ともに650点でそろいます。この引上げは、精神保健指定医が地域で果たす役割をさらに評価する趣旨によるものです。他方、精神保健指定医以外の場合の点数は、改定案で「(略)」とされており、変更が示されていません。結果として、初診60分以上における精神保健指定医と指定医以外の点数差は、現行よりも拡大します。■ 初診日の評価(精神保健指定医が行う場合)【通院精神療法】* 60分以上* 600点 → 650点* 30分以上60分未満* (410点)→ 550点(新設)【在宅精神療法】* 60分以上* 640点 → 650点* 30分以上60分未満* (410点)→ 550点(新設)※( )内は、現行「イ及びロ以外の場合」で算定していた場合の点数です。3. 精神保健指定医以外の場合に施設基準を新設新設される算定要件(注13)は、精神保健指定医以外の医師が行う通院・在宅精神療法を対象とします。厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た医療機関以外で行われる場合、所定点数の100分の60に相当する点数を算定します。対象は、通院・在宅ともに措置入院退院後の患者に係る区分(イ)を除く各区分の「精神保健指定医以外の場合」です。減算の影響は、点数に置き換えると明確になります。ただし、改定案では精神保健指定医以外の場合の点数が「(略)」とされており、点数そのものは示されていません。以下は現行点数が据え置かれる前提での試算です。通院精神療法の初診60分以上(指定医以外)は550点から330点、30分以上は390点から234点、30分未満は290点から174点となります。在宅精神療法の初診60分以上(指定医以外)は、600点から360点となります。届出に必要な施設基準(一の一の九)は、次の2つの要件のいずれかを満たすことです。* 精神科救急医療を行う体制が整備されている保険医療機関で実施されていること* 当該療法が精神医療に十分な経験を有する医師により行われていることこの施設基準を届け出ていない場合には、減算に加えて2つの制限がかかります。まず、当該患者に対して1回の処方で3種類以上の抗うつ薬または3種類以上の抗精神病薬を投与した場合には、算定できません。次に、注9に規定する心理支援加算を別に算定できません。4. 医療機関に求められる実務対応実務対応は、届出の判断と初診体制の設計という2つの作業に分かれます。いずれも、自院の医師構成と診療体制を起点に検討します。届出の判断では、精神保健指定医以外の医師が精神療法を担当しているかどうかを最初に確認します。担当している場合には、精神科救急医療の体制または医師の経験という2要件のいずれを満たせるかを整理します。いずれも満たせない場合には、精神保健指定医以外の医師が行う精神療法が100分の60の算定となる前提で、収支への影響を見積もります。初診体制の設計では、初診に30分以上を確保できる予約枠の運用が要点になります。あわせて、診療に要した時間を診療録に確実に記録する運用も欠かせません。30分以上60分未満と60分以上では点数が100点異なるため、時間の記録が算定の根拠となります。まとめ:初診を手厚く、質は施設基準で担保令和8年度診療報酬改定における通院・在宅精神療法の見直しは、初診の評価を手厚くする方向と、質を施設基準で担保する方向の2つで構成されます。初診については、精神保健指定医による30分以上60分未満に550点を新設し、60分以上を通院・在宅ともに650点へ引き上げます。精神保健指定医以外の医師が行う場合については、施設基準を届け出ない医療機関で所定点数の100分の60に減算します。自院の医師構成と初診の運用を、この2つの方向に照らして早めに点検しておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定|精神科急性期医師配置加算の見直し2つのポイント
令和8年度診療報酬改定では、精神科急性期医師配置加算(A249)の施設基準が見直されます。現行の施設基準は、治療抵抗性統合失調症の治療実績を加算の算定病棟だけで数えるため、医療機関全体で整えた治療体制を評価できていません。また現行の施設基準は、加算2イの算定対象入院料を限定するため、拠点的な急性期機能を担う病院の精神病棟を評価できていません。本稿は、この2つの課題に対応する見直しの内容と、届出に向けた実務上の確認点を解説します。今回の見直しは、算定できる医療機関を広げる2つの要件緩和で構成されます。第一に、加算1及び加算3のクロザピン新規導入件数について、実績の集計範囲が算定病棟から医療機関全体へ広がります。第二に、加算2イの算定対象入院料に、精神病棟入院基本料及び特定機能病院入院基本料の精神病棟の15対1入院基本料が追加されます。いずれの見直しも、これまで要件を満たせなかった医療機関に届出の道を開くため、実績の集計方法と病棟ごとの届出区分を早めに確認する必要があります。現行の精神科急性期医師配置加算と2つの課題精神科急性期医師配置加算は、精神科の急性期医療に医師を手厚く配置する体制を評価する加算です。この加算は、加算1、加算2(イ及びロ)、加算3で構成されます。加算1(600点)と加算3(400点)は、急性期の精神疾患患者と治療抵抗性統合失調症患者への密度の高い入院医療を評価し、精神科救急急性期医療入院料と精神科急性期治療病棟入院料1を算定する病棟が対象です。加算2イ(500点)は、精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の入院医療体制を評価し、精神病棟入院基本料(10対1・13対1)と特定機能病院入院基本料(7対1・10対1・13対1)を算定する精神病棟が対象です。今回の見直しが対象とするのは、このうち加算1、加算3及び加算2イです。加算1及び加算3の第一の課題は、クロザピンの新規導入実績を病棟単位で求める点にあります。クロザピンは、治療抵抗性統合失調症に有効な一方で無顆粒球症などの重篤な副作用を伴うため、CPMS(クロザピン患者モニタリングサービス)への登録をはじめとする医療機関単位の体制整備が欠かせません。現行の施設基準は、この体制を病棟単位の実績(加算1は年6件以上、加算3は年3件以上)で確認しています。しかし中央社会保険医療協議会(中医協)に示された調査では、クロザピンの新規導入が精神病棟入院基本料や特定機能病院入院基本料の病棟など、加算の対象外の多様な病棟でも実施されていました。加算2イの第二の課題は、算定対象入院料の限定が実態と合わない点にあります。精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の受け入れには、精神病床を有する総合病院や特定機能病院の役割が期待されています。ところが中医協に示されたDPCデータ(令和7年1月時点)では、精神病床を有する特定機能病院又は拠点的な急性期機能を担う医療機関のうち、加算2イを算定している医療機関が101施設、算定していない医療機関が70施設でした。算定していない70施設の内訳は、算定可能な病棟を有する医療機関が36施設、算定可能な病棟を有しない医療機関が34施設です。算定可能な病棟を有しない34施設のうち27施設は、精神病棟入院基本料の15対1入院基本料を算定していました。つまり急性期医療の拠点でありながら、入院基本料の区分を理由に評価の対象外となる医療機関が存在していました。見直し1:クロザピン新規導入実績を医療機関全体で評価見直しの1つ目は、加算1及び加算3のクロザピン新規導入件数を、医療機関全体の実績で評価する変更です。施設基準の文言は、「治療抵抗性統合失調症患者に対する入院医療に係る実績」から「当該保険医療機関において治療抵抗性統合失調症患者に対する治療に係る実績」へ改められます。加算1は「相当程度」、加算3は「一定程度」という実績水準の表現が維持されます。一方で実績を数える範囲は、当該加算を算定する病棟から医療機関全体へ広がります。なお告示上は「入院医療に係る実績」が「治療に係る実績」へ改められるため、実績として数えられる範囲の細部は施設基準の通知で確認が必要です。この変更は、加算の算定病棟以外でクロザピンを導入している医療機関に有利に働きます。従来は、精神科救急急性期医療入院料等を算定する病棟でクロザピンを導入しなければ、件数として数えられませんでした。今後は、精神病棟入院基本料の病棟や特定機能病院入院基本料の病棟で導入した件数も、医療機関全体の実績として合算できます。その結果、病棟の運用実態にかかわらず、医療機関としてのクロザピン提供体制がそのまま評価されます。ただし具体的な件数の基準は、告示ではなく通知で示される点に注意が必要です。現行の年6件(加算1)及び年3件(加算3)という水準が据え置かれるかどうかは、令和8年度改定の施設基準通知で確認することになります。したがって届出を検討する医療機関は、直近1年間のクロザピン新規導入件数を病棟別に整理し、通知の公表後すぐに医療機関全体の件数へ組み替えられるよう準備しておくと安全です。見直し2:加算2イの算定対象に15対1入院基本料を追加見直しの2つ目は、加算2イの算定対象入院料に15対1入院基本料を追加する変更です。追加される入院料は、精神病棟入院基本料の15対1入院基本料と、特定機能病院入院基本料の精神病棟の15対1入院基本料の2つです。この見直しにより、拠点的な急性期機能を担いながら15対1入院基本料を算定してきた精神病棟が、新たに加算2イの算定対象に加わります。精神病棟入院基本料では、算定要件の注記が「10対1入院基本料又は13対1入院基本料」から「10対1入院基本料、13対1入院基本料又は15対1入院基本料」へ改められます。あわせて施設基準でも、対象となる精神病棟入院基本料の区分に十五対一入院基本料が加えられます。この2か所の改正により、15対1の精神病棟が算定対象として明確に位置づけられます。特定機能病院入院基本料では、算定要件の注記から入院基本料の区分の限定そのものが削除されます。現行の「精神病棟の7対1入院基本料、10対1入院基本料又は13対1入院基本料を算定するものに限る」という記載は、「精神病棟に限る」という記載へ改められます。施設基準でも同様に区分の限定が外れるため、特定機能病院の精神病棟は入院基本料の区分を問わず加算2イの対象となります。この改正の趣旨は、個別改定項目に明記されたとおり15対1入院基本料の追加にあります。実務対応:届出前に確認したい3つのポイント見直しを届出に結びつけるには、3つのポイントを順に確認します。確認すべき対象は、クロザピンの実績、病棟の入院基本料区分、そして加算2イの他の施設基準です。第一のポイントは、クロザピンの新規導入件数を医療機関全体で集計し直すことです。集計にあたっては、病棟ごとの導入件数と導入日を一覧化し、加算1又は加算3のいずれの水準に届くかを確認します。この作業により、これまで要件を満たせず届出を見送っていた医療機関でも、算定の可能性が見えてきます。第二のポイントは、精神病棟が算定している入院基本料の区分を確認することです。確認の結果、精神病棟入院基本料の15対1又は特定機能病院入院基本料の精神病棟を算定していれば、加算2イの届出候補になります。この判定は、届出の要否を検討する最初の入口となります。第三のポイントは、加算2イの他の施設基準を満たせるかを点検することです。加算2イは、当該病棟の常勤医師配置16対1以上、内科・外科等の標榜、入院を要する(第二次)救急医療体制等の設置、精神科リエゾンチーム加算の届出、直近3か月間の新規入院患者の5%以上が精神科身体合併症管理加算の対象、精神科医による搬送患者の12時間以内の診察が毎月5人以上といった要件を求めます。今回の見直しで緩和されるのは算定対象入院料だけであるため、これらの要件は従来どおり満たす必要があります。まとめ精神科急性期医師配置加算の見直しは、算定できる医療機関を広げる2つの要件緩和です。加算1及び加算3では、クロザピンの新規導入実績を医療機関全体で評価します。加算2イでは、算定対象入院料に精神病棟入院基本料及び特定機能病院入院基本料の精神病棟の15対1入院基本料を追加します。いずれの緩和も、精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者や治療抵抗性統合失調症患者への医療提供体制を全国に広げることを狙いとしています。届出を検討する医療機関は、クロザピンの実績集計と入院基本料区分の確認から着手し、今後公表される施設基準通知で具体的な水準を確かめてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】精神病棟入院基本料18対1・20対1が1年で二分される
精神科医療では、長期入院患者の地域移行が長年の課題である。この課題に関し、人員配置が少なく平均在院日数の要件が設定されていない入院料を届け出る病棟では、1年以上の長期入院患者の割合が高い傾向にある。そこで本稿は、令和8年度診療報酬改定における精神病棟入院基本料の見直し内容を整理し、対象病棟が取るべき対応を解説する。令和8年度改定は、18対1及び20対1の精神病棟入院基本料を、入院期間1年を境に2区分へ分けた。この見直しの背景には、両入院料が平成16年度改定以来の経過措置であり、そこに長期入院患者が滞留している実態がある。改定案は、1年未満の点数を現行より引き上げ、1年以上の点数を現行より引き下げる。対象病棟は、1年以上の患者が半数を超えると病棟全体で減収に転じるため、入院1年を迎える前の退院支援が急務となる。1. 見直しの背景:経過措置病棟への長期入院患者の滞留見直しの背景は、経過措置としての位置づけ、長期入院患者の滞留、中医協での意見対立という3点に整理できる。以下、順に説明する。18対1及び20対1入院基本料は、平成16年度改定以降、経過措置として存続してきた。この経過措置は「当分の間、算定できるものとする」という扱いであり、20年以上にわたって継続している。届出状況は近年横ばいであり、令和6年8月1日時点で18対1が21医療機関3,538床、20対1が10医療機関1,446床である。この経過措置病棟には、1年以上の長期入院患者が滞留している。厚生労働省は「人員配置が少なく、平均在院日数の要件設定がない入院料を届け出る病棟においては、1年以上の長期入院患者の割合が高い傾向にある」と整理している。滞留の要因として、これらの入院料に平均在院日数の要件が設定されていない点が指摘されている。長期入院患者の滞留に対し、中医協では支払側と診療側が異なる主張を展開した。支払側は、20対1及び18対1以下について経過措置を終了するか平均在院日数の要件を設定し、15対1以上に集約すべきと主張した。診療側は、重度の精神症状を呈する患者が入院期間にかかわらず増加している実態を挙げ、精神病床の評価を正当に行うべきと主張した。2. 改定内容:1年未満は引き上げ、1年以上は引き下げ改定内容は、18対1と20対1のいずれについても、現行1本の点数を入院期間別の2区分に分け、1年未満を引き上げ、1年以上を引き下げるものである。18対1入院基本料は、753点の1本の点数を2区分に分けた。* イ 1年未満の場合 816点(現行753点から63点の引き上げ)* ロ 1年以上の場合 703点(現行753点から50点の引き下げ)* 区分間の差 113点20対1入院基本料も、697点の1本の点数を2区分に分けた。* イ 1年未満の場合 754点(現行697点から57点の引き上げ)* ロ 1年以上の場合 649点(現行697点から48点の引き下げ)* 区分間の差 105点両入院料に共通するのは、1年を境としたメリハリ付けである。厚生労働省は基本的な考え方として、「長期入院患者に対する地域移行に係る取組を更に推進する必要があること等を踏まえ、人員配置基準の低い精神病棟入院基本料について、長期入院患者に対する評価を見直す」と説明している。つまり今回の見直しは、一律の引き下げではなく、早期退院を促す方向への評価の組み替えである。なお個別改定項目⑨に示されたのは、この点数の2区分化のみである。支払側が求めた経過措置の終了や平均在院日数の要件設定は、⑨には含まれていない。3. 対象病棟への影響と対応対象病棟が受ける影響は、1年以上の患者割合によって決まる。したがって対応の要は、入院1年を迎える前の退院支援にある。損益の分かれ目は、1年以上の患者が半数を超えるかどうかである。18対1では、1年以上の患者割合が約56%を超えると、引き下げ分が引き上げ分を上回り病棟全体で減収に転じる。20対1では、この分岐点が約54%となる。いずれも公表された点数から単純計算した目安であり、長期入院患者が多い病棟ほど不利になる構造を示している。減収額は、1年以上の患者1人あたりで見ると小さくない。18対1で1年以上の患者を1人受け入れ続けた場合、1日あたり50点、すなわち500円の減収となる。この減収は、1床を1年間埋め続ければ約18万円に達する。減収を避けるには、入院1年を迎える前の退院支援が要となる。中医協の資料は、多職種による包括的ケアを実践した病棟で平均在院日数が減少し、地域平均生活日数が増加した事例を紹介している。また精神科入退院支援加算を算定する医療機関は、在宅復帰率が高く平均在院日数が短い傾向にある。退院支援と並ぶ選択肢が、入院料そのものの転換である。ただし転換先の要件は軽くない。精神科地域包括ケア病棟入院料は、精神科入退院支援加算の届出、精神保健指定医の公務員としての業務実績、精神科救急医療への参画など、届出病棟に限らず院内全体で満たすべき施設基準が設定されている。その結果、令和7年10月時点の届出は31施設にとどまる。転換を検討する場合は、これらの要件を満たせるかどうかの確認が前提となる。まとめ:1年の壁を意識した病棟運営へ令和8年度改定は、18対1及び20対1の精神病棟入院基本料を、入院期間1年で2区分に分けた。この見直しの背景には、経過措置として存続してきた両入院料に長期入院患者が滞留している実態がある。改定案は、1年未満を引き上げ、1年以上を引き下げる。対象病棟は、1年の壁を意識した退院支援体制の構築が求められる。なお本稿は答申時点の個別改定項目に基づく。特に「1年」の起算方法、すなわち通算の可否や再入院の取扱いは、個別改定項目には示されていない。算定要件、施設基準及び経過措置の詳細とあわせて、今後発出される告示及び通知で確認してほしい。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】精神科救急急性期医療入院料の対象患者拡大を解説
精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者は、急性期の全身管理と専門的な精神科医療の双方を必要とします。こうした患者は、身体面の急性期に対応できるICU等を備えた病院の精神病床でいったん受け入れられ、その後、専門的な精神科医療を担う病院へ転院する流れが想定されます。しかし現行制度では、この転院患者が精神科救急急性期医療入院料等の算定対象に含まれていませんでした。そこで本メルマガでは、令和8年度診療報酬改定における精神科救急急性期医療入院料等の対象患者の見直しを解説します。今回の改定は、精神科救急急性期医療入院料及び精神科救急・合併症入院料の対象患者に、新たな転院患者を追加するものです。追加される患者は、ICU等の高度急性期病床を有する病院の精神病床に入院していた患者です。この患者が当該保険医療機関へ転院した場合に、対象患者となります。一方、精神科急性期治療病棟入院料は、今回の追加対象に含まれません。改定の背景:身体と精神を併せ持つ患者の医療提供体制の推進今回の改定は、精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の医療提供体制を推進する観点から行われました。このような患者は、精神症状への対応だけでなく、身体面の急性期治療も同時に必要とします。そのため、身体治療の急性期は高度急性期病床を持つ病院が担い、その後の精神科医療は専門病院が担う、という役割分担が望まれます。しかし現行制度では、この役割分担を診療報酬が十分に評価できていませんでした。高度急性期病床を持つ病院の精神病床から専門病院へ転院した患者が、精神科救急急性期医療入院料等の対象患者に含まれていなかったためです。この結果、身体・精神の連携を担う病院間の転院が、診療報酬の面で評価されにくい状況でした。今回の見直しは、この転院患者を対象患者に加えることで、両者の連携を後押しするものです。追加される対象患者:高度急性期病床を持つ病院からの転院患者追加される対象患者は、高度急性期病床を持つ他の病院の精神病床から当該保険医療機関へ転院した患者です。この患者が対象となるには、転院元の病院と、そこでの入院料に関する2つの条件を満たす必要があります。以下では、この2つの条件を順に説明します。第一の条件は、転院元の病院が高度急性期病床を持つことです。具体的には、次のいずれかを算定する病棟又は病室を有する病院が該当します。* 救命救急入院料 ・特定集中治療室管理料(ICU)* ハイケアユニット入院医療管理料(HCU)* 脳卒中ケアユニット入院医療管理料(SCU)* 小児特定集中治療室管理料(PICU)* 総合周産期特定集中治療室管理料(母体・胎児集中治療室管理料を算定するものに限る)第二の条件は、その病院の精神病床で所定の入院料を算定していたことです。具体的には、転院元の病院において、次のいずれかを算定した後に当該病棟へ転院した患者が対象となります。対象となる入院料は、精神病棟入院基本料(10対1、13対1及び15対1入院基本料に限る)、特定機能病院入院基本料(精神病棟に限る)、精神科救急急性期医療入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料、児童・思春期精神科入院医療管理料の6区分です。以上の2つの条件を満たす転院患者が、今回新たに対象患者へ加わります。つまり、身体の急性期治療が可能な病院の精神病床でいったん受け入れられ、その後に専門病院へ移った患者を評価する仕組みです。対象となる2つの入院料と、対象外の入院料今回の見直しは、2つの入院料に同じ形で適用されます。適用されるのは、精神科救急急性期医療入院料と精神科救急・合併症入院料です。両者ともに、上記の転院患者を対象患者へ追加する規定が新設されました。精神科救急急性期医療入院料では、対象患者の第3区分として新設されました。従来の第3区分(治療抵抗性統合失調症治療薬による治療のための転棟患者)は、繰り下がって第4区分となります。精神科救急・合併症入院料でも、同じ考え方で対象患者の第4区分として新設されました。従来の第4区分(治療抵抗性統合失調症治療薬による治療のための転棟患者)は、繰り下がって第5区分となります。一方、精神科急性期治療病棟入院料は、今回の追加対象に含まれません。別表第十のタイトルには3つの入院料が並びますが、転院患者が追加されるのは上記2つのみです。実務では、この点を取り違えないよう注意が必要です。実務上のポイント:転院元の体制と入院料の確認実務では、転院元の医療機関の体制と入院料を確認することが重要です。対象患者となるかどうかは、転院してきた患者そのものではなく、転院元での状況によって決まるためです。まず、転院元が高度急性期病床を持つ病院かを確認します。救命救急入院料やICU等を算定する病棟・病室を持つ病院であるかが判断の起点です。次に、その病院で患者が算定していた入院料を確認します。精神病棟入院基本料等の対象6区分のいずれかに該当すれば、当該病棟への転院後に対象患者となります。こうした確認を行うことで、身体と精神を併せ持つ患者の転院が、適切に評価されるようになります。転院元の情報を診療録や診療情報提供書で把握し、算定要件との照合を確実に行いましょう。まとめ令和8年度診療報酬改定では、精神科救急急性期医療入院料及び精神科救急・合併症入院料の対象患者が拡大されました。新たに追加されるのは、ICU等の高度急性期病床を有する病院の精神病床から当該保険医療機関へ転院した患者です。この見直しは、精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の医療提供体制を推進するものです。なお、精神科急性期治療病棟入院料は今回の追加対象に含まれない点に留意してください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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精神科救急急性期医療入院料の要件見直し|「入院形態」から「必要性」評価へ
精神科救急急性期医療入院料等は、年間の新規入院患者のうち6割以上が非同意入院であることを、施設基準として求めてきました。この入院形態に基づく要件は、基準を満たすために非自発的入院を促しかねないと指摘されてきました。令和8年度診療報酬改定は、この割合要件を、緊急的な入院医療の必要性を測る「精神科救急等病棟必要性チェックリスト」の得点へと見直します。この見直しにより、施設基準は「非同意入院の割合」から「チェックリストの得点」を問う要件へと変わります。改定後の要件は、年間新規患者の6割以上がチェックリストで3点以上であることとされました。この見直しの狙いは、入院形態を問わず、緊急的な入院医療の必要性そのものを評価することにあります。あわせて、令和8年5月31日までの非同意入院患者を3点以上とみなす経過措置が設けられ、精神科救急・合併症入院料も同様に見直されます。見直しの背景:入院形態そのものを問う現行要件の課題現行の割合要件は、非同意入院という入院形態そのものを基準としている点に課題がありました。この課題を、要件の内容、算定病棟の実態、指摘されてきた懸念の順に説明します。現行の施設基準は、算定病棟に対し、年間新規患者の6割以上が非同意入院であることを求めています。ここでいう非同意入院とは、措置入院、緊急措置入院、医療保護入院、応急入院、鑑定入院、医療観察法入院の6つを指します。つまり現行要件は、患者の入院医療の必要性ではなく、本人の同意によらない入院の割合を、病棟の質の指標として用いてきました。この非同意入院の割合は、算定病棟の多くで6割を大きく上回っています。保険局医療課の調べでは、精神科救急急性期医療入院料の算定病棟における非同意入院割合は、6割台よりも高い水準に分布の山が寄っていました。要件の下限である6割を、実態が大きく超えている状況です。この入院形態を問う要件には、非自発的入院を促しかねないという懸念が寄せられてきました。精神病床の入院患者では、医療保護入院が約半数を占めています。そのため、過度な強制入院につながらないよう配慮すべきという声が強まっていました。支払側委員も、患者の特性に応じた治療・ケアの観点から、入院の必要性を判断する指標やチェックリストを患者割合要件として活用すべきと意見していました。見直しの具体的内容:チェックリスト得点への置き換え改定は、割合要件の判定基準を「非同意入院か否か」から「チェックリストで3点以上か否か」へ置き換えます。この置き換えを、要件の変更点と、その根拠となった研究データの順に説明します。要件の変更点は、6割という水準を保ったまま、その分子の数え方を入れ替えたことです。現行要件は「年間新規患者の6割以上が6つの非同意入院のいずれかであること」でした。改定後の要件は「年間新規患者の6割以上が精神科救急等病棟必要性チェックリストで3点以上であること」となります。判定の対象が、入院形態から、緊急的な入院医療の必要性を測る得点へと移ります。このチェックリストは、高規格病棟を必要とする患者をおおむね捉えられることが、研究で裏づけられています。全国161の該当医療機関のうち81医療機関から得られた2164名のデータを用いた分析では、チェックリスト3点以上の割合は73.1%であり、非自発入院の割合74.9%とほぼ一致しました。また、臨床判断による必要性評価を基準とした場合、3点以上という基準は感度83.64%、特異度51.87%、AUC0.75を示しました。この結果は、入院形態を問わず、必要性の高い患者をおおむね捉えられることを示しています。経過措置と対象範囲:円滑な移行への配慮この見直しには、経過措置と対象拡大という2つの配慮が設けられています。この2つを、移行期の負担軽減と、同時に見直される入院料の順に説明します。経過措置は、移行期の患者を非同意入院の実績で読み替える仕組みです。令和8年5月31日までに新規入院した患者については、6つの非同意入院のいずれかに該当すれば、チェックリストで3点以上とみなします。この読み替えにより、チェックリストの運用が定着するまでの間、算定病棟の負担が軽減されます。対象範囲は、精神科救急急性期医療入院料にとどまりません。同じ考え方に基づき、精神科救急・合併症入院料についても、割合要件が同様に見直されます。緊急的な入院医療を担う病棟の評価を、入院形態から必要性へと統一する方向です。まとめ令和8年度診療報酬改定は、精神科救急急性期医療入院料等の割合要件を、非同意入院の割合からチェックリストの得点へと見直します。改定後の要件は、年間新規患者の6割以上がチェックリストで3点以上であることです。この見直しは、非自発的入院を促しかねない現行要件を改め、入院形態を問わず入院医療の必要性そのものを評価することを狙いとしています。あわせて、令和8年5月31日までの経過措置が設けられ、精神科救急・合併症入院料も同様に見直されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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精神科救急医療体制加算の見直し|令和8年度改定を実績評価の視点で解説
精神科救急医療体制加算は、充実した精神科救急医療体制の構築を評価する加算です。この加算は、従来、精神科救急医療体制整備事業の類型に応じて評価されてきました。しかし、この類型に応じた評価では、個々の病棟が実際に担う救急受入の実績が点数へ十分に反映されませんでした。そこで本記事では、令和8年度改定における精神科救急医療体制加算の見直しの内容を解説します。今回の見直しは、救急受入実績に基づく評価への転換を柱とします。まず、評価体系が事業類型に応じたものから救急受入実績に基づくものへ改められます。次に、加算の区分が3区分から2区分へ再編されます。さらに、120床を超えて届出を行う場合の特例的な規定が廃止されます。評価体系の見直し:類型から実績へ評価体系は、事業類型に応じた評価から救急受入実績に基づく評価へ見直されます。この転換により、加算の区分も再編されます。現行の精神科救急医療体制加算は、3つの区分で構成されていました。区分は、精神科救急医療体制整備事業の類型に応じて分けられていました。点数は、加算1が600点、加算2が590点、加算3が500点です。見直し後の加算は、2つの区分へ再編されます。点数は、加算1が600点、加算2が500点です。中間区分であった590点の加算2は廃止されます。なお、改定後も「加算2」という名称は残りますが、その点数は現行の加算3を引き継ぐ500点です。この再編により、評価の基準は事業類型から救急受入の実績へと移ります。施設基準の見直し:実績の水準で区分施設基準は、救急受入実績の水準によって加算1と加算2を区分するよう改められます。区分の差は、求められる実績の量に表れます。加算1の施設基準は、精神科救急医療に係る十分な実績を求めます。現行では、相当程度の実績で加算1を算定できました。見直し後は、十分な実績が加算1の要件となります。この引き上げにより、加算1はより高い救急受入実績を担う病棟へ重点化されます。加算2の施設基準は、精神科救急医療に係る相当程度の実績を求めます。加算2は、病床数や体制の要件を加算1と共有します。一方で、実績の要件は、加算1の「十分な実績」より緩やかな「相当程度の実績」にとどまります。この違いにより、実績の水準に応じた2段階の評価が実現します。120床超特例の廃止120床を超えて届出を行う場合の特例的な規定は、廃止されます。この特例は、病床数の上限を例外的に緩めるものでした。現行の特例は、120床を超える病棟にも加算の算定を認めていました。特例の対象は、2つの条件をともに満たす病棟です。第一に、令和4年3月31日時点で旧医科点数表の精神科救急入院料を算定していることです。第二に、都道府県等から、地域の医療提供体制や医療計画上の必要性等に係る文書が提出されていると確認できることです。対象となる病棟は、この特例により、当時の病床数を上限として加算を算定できました。ただし、特例で算定する場合、点数は所定点数の100分の60(60%)に減額されていました。見直し後は、この特例が廃止されます。加算を算定する病棟の病床数は、原則どおり120床までとなります。60%に減額して算定する規定も、あわせて削除されます。この廃止により、病床数の要件は全ての病棟で一律となります。まとめ:実績評価への一本化がポイント今回の見直しは、精神科救急医療体制加算を救急受入実績に基づく評価へ転換するものです。評価体系は、事業類型に応じたものから救急受入実績に基づくものへ改められ、区分は3区分から2区分へ再編されます。施設基準は、加算1に十分な実績を、加算2に相当程度の実績を求め、実績の水準で2段階に区分されます。加えて、120床を超えて届出を行う場合の特例的な規定が廃止されます。実績評価への一本化が、今回の見直しの核心です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定|精神病床の透析患者受け入れを後押しする包括範囲の見直し
維持透析を必要とする精神疾患患者は、精神病床での受け入れを必要とする場面があります。しかし従来の精神科入院料は透析に係る費用を包括的に評価しており、精神病床は透析費用を別途算定できませんでした。この包括評価は、精神病床が透析患者を受け入れにくい要因となっていました。令和8年度診療報酬改定は、この課題を解消し透析患者の受け入れを推進するため、精神科入院料の包括範囲を見直します。今回の見直しは、6つの精神科入院料の包括範囲から透析に係る評価を除外するものです。対象は、精神科救急急性期医療入院料をはじめとする6種類の入院料です。除外されるのは、人工腎臓、腹膜灌流、およびこれらに係る特定保険医療材料の評価です。この除外により、精神病床は透析費用を出来高で算定できるようになります。見直しの背景:透析患者を受け入れにくい包括評価今回の見直しは、維持透析を必要とする精神疾患患者の受け入れを推進する狙いがあります。維持透析の患者が精神疾患を併発すると、透析と精神科医療の両方を受けられる病床が必要になります。この受け皿を担うのが精神病床です。今回の見直しの対象となる入院料は、いずれも包括払いを基本とします。包括払いとは、個々の診療行為ごとに費用を積み上げるのではなく、あらかじめ定められた1日あたりの入院料にまとめて評価する方式です。この方式では、入院料に含まれる診療行為を実施しても、その費用を別途請求できません。従来の包括払いは、透析に係る費用も入院料に含めていました。そのため、これらの入院料を算定する精神病床は、透析患者を受け入れても、透析にかかる費用を回収できませんでした。この算定上の制約が、精神病床による透析患者の受け入れをためらわせる要因となっていたのです。対象となる入院料:精神病床で算定する6種類見直しの対象は、精神病床で算定する6つの特定入院料です。いずれも包括払いを基本とする入院料であり、今回の見直しで包括範囲がそろって変わります。対象となる6つの入院料は、次のとおりです。* 精神科救急急性期医療入院料* 精神科急性期治療病棟入院料* 児童・思春期精神科入院医療管理料* 精神療養病棟入院料* 認知症治療病棟入院料* 地域移行機能強化病棟入院料これら6つの入院料は、急性期から療養、地域移行まで、精神医療のさまざまな段階をカバーします。そのため今回の見直しは、幅広い精神病床で透析患者を受け入れやすくする効果を持ちます。除外される項目:透析に係る3つの評価6つの入院料の包括範囲からは、透析に係る3つの評価が除外されます。いずれも人工腎臓または腹膜灌流に直接関わる項目です。除外される3つの評価は、次のとおりです。* 人工腎臓(区分番号J038)* 腹膜灌流(区分番号J042)* 特定保険医療材料(区分番号J400のうち、人工腎臓または腹膜灌流に係るもの)これら3つの評価は、改定前は入院料に含まれ、別途算定できませんでした。改定後は包括範囲から外れ、入院料とは別に算定できるようになります。なお、透析以外の診療行為の取り扱いは、改定前と変わりません。現場への影響:透析費用を出来高で算定可能に除外により、精神病床は透析費用を出来高で算定できるようになります。出来高とは、実施した診療行為ごとに費用を積み上げて算定する方式です。透析を実施した分だけ費用を請求できるため、受け入れに伴う負担が軽くなります。透析費用を算定できることは、精神病床が透析患者を受け入れる動機になります。維持透析を必要とする精神疾患患者にとって、これは受け入れ先の広がりを意味します。透析と精神科医療の両方を必要とする患者が、適切な病床にたどり着きやすくなるのです。まとめ:包括範囲の見直しで透析患者の受け入れを推進令和8年度診療報酬改定は、維持透析を必要とする精神疾患患者の受け入れを推進するため、精神科入院料の包括範囲を見直します。対象は、精神科救急急性期医療入院料など6つの入院料です。これら6つの入院料の包括範囲から、人工腎臓、腹膜灌流、およびこれらに係る特定保険医療材料の評価を除外します。除外により、精神病床は透析費用を出来高で算定できるようになり、透析患者を受け入れやすくなります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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精神科慢性身体合併症管理加算とは?令和8年度改定で新設された700点の全貌
精神科慢性身体合併症管理加算は、令和8年度診療報酬改定で新たに設けられた加算です。精神病床に入院する患者は、高齢化が進んでいます。高齢化に伴い、糖尿病などの身体合併症を慢性的に抱える患者が増えています。こうした患者には、精神科以外の医師による継続的な診療体制が欠かせません。しかし、この継続的な身体管理には、これまで独立した評価がありませんでした。本メルマガは、この課題に対応するため新設された加算の内容を、対象患者から施設基準まで解説します。精神科慢性身体合併症管理加算は、精神科以外の医師が身体合併症を管理した場合を評価する、月1回700点の加算です。対象となる患者は、糖尿病の患者や特定疾患療養管理料の対象疾患を有する患者に限られます。算定するには施設基準の届出が必要で、算定した日には既存の精神科身体合併症管理加算を併算定できません。施設基準では、精神科を標榜する病院であることと、病棟への内科医の配置が求められます。新設の背景|高齢化する精神病床と身体合併症への対応精神科慢性身体合併症管理加算は、精神病床の高齢化という背景から新設されました。この加算は、慢性的な身体管理を要する患者への診療体制を確保し、適切な対応を推進する狙いを持ちます。精神病床に入院する患者は、高齢化が進んでいます。高齢化した患者は、糖尿病をはじめとする身体合併症を慢性的に抱えるケースが増えています。こうした身体合併症は、精神疾患とは異なる専門的な管理を必要とします。そのため、精神科以外の医師による継続的な診療が求められます。継続的な身体管理は、これまで十分に評価されてきませんでした。従来の評価は、急性期の身体合併症への対応が中心でした。一方で、慢性的に管理が必要な身体合併症への継続的な対応には、独立した評価がありませんでした。この空白を埋めるため、本改定は継続的な管理を行った場合を新たに評価します。加算の概要と対象患者|700点で評価する診療と対象疾患精神科慢性身体合併症管理加算は、精神科以外の医師による診察を月1回700点で評価します。対象となる患者は、糖尿病や特定疾患療養管理料の対象疾患を有する患者に限られます。この加算は、精神科以外の医師が診察を行った場合に算定します。精神病床に入院し、慢性的に身体合併症への対応を要する患者が対象です。その患者に対して、内科医などの精神科以外の医師が身体合併症の診察を行うと、月1回700点を所定点数に加算できます。対象となる患者は、次の疾患を有する患者に限定されています。* 糖尿病の患者* 特定疾患療養管理料の対象疾患(胃炎及び十二指腸炎を除く。)の患者特定疾患療養管理料の対象疾患には、胃炎及び十二指腸炎が含まれません。この2つの疾患は、本加算の対象から除外されています。対象疾患を確認する際は、この除外規定に注意が必要です。算定要件|届出・回数・併算定できないケース精神科慢性身体合併症管理加算の算定には、施設基準の届出が前提となります。算定は月1回に限られ、他の加算や医師の診察内容によっては算定できないケースがあります。算定する保険医療機関は、施設基準の届出を済ませている必要があります。届出先は、地方厚生局長等です。届出た医療機関が、厚生労働大臣の定める疾患を有する精神障害者に必要な治療を行った場合に、この加算を算定できます。算定の対象となる患者には、入院料の条件があります。対象は、精神科慢性身体合併症管理加算を算定できる入院基本料または特定入院料を、現に算定している患者に限られます。この条件を満たす患者について、1月に1回だけ所定点数に加算します。この加算を算定した日には、精神科身体合併症管理加算(A230-3)を併算定できません。両者は同じ日に重ねて算定することができません。したがって、既存の精神科身体合併症管理加算との使い分けが必要になります。精神療法を行った医師が、そのまま身体合併症の診察もした場合は、この加算を算定できません。入院精神療法(I001)や通院・在宅精神療法(I002)を行った医師本人が診察したケースが該当します。この場合、身体合併症の診察であっても加算を算定できません。一方で、精神療法を行った医師とは別の医師が身体合併症を診察した場合は、算定の対象となります。施設基準|精神科標榜と内科医の配置精神科慢性身体合併症管理加算の施設基準は、精神科の標榜と内科医の配置を柱とします。この基準は、精神疾患と身体合併症の両面に対応できる体制を求めるものです。施設基準として、次の3つの要件が定められています。* 精神科を標榜する保険医療機関である病院であること* 当該病棟に内科の医師が配置されていること* 精神障害者であって身体合併症を有する患者の治療を行うにつき十分な体制を有していることこれらの要件は、身体合併症への継続的な対応を担保する狙いを持ちます。精神科の標榜は、精神疾患への対応を前提として求められます。内科医の配置は、身体合併症への専門的な診療を確保するために必要です。十分な体制の確保は、精神と身体の両面を継続的に管理するために欠かせません。まとめ|身体と精神の両面を支える新たな評価精神科慢性身体合併症管理加算は、精神病床の高齢化に対応するため新設された、月1回700点の加算です。対象となる患者は、糖尿病や特定疾患療養管理料の対象疾患を有する患者に限られます。算定するには施設基準の届出が必要で、算定した日には精神科身体合併症管理加算を併算定できません。施設基準では、精神科を標榜する病院であることと、病棟への内科医の配置が求められます。この加算は、精神疾患を抱える患者の身体合併症を継続的に管理する体制を、診療報酬の面から支えるものです。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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精神科リエゾンチーム加算が300点から最大1,000点へ|令和8年度改定の全容
令和8年度診療報酬改定は、精神科リエゾンチーム加算の要件と評価を見直します。精神科リエゾンチーム加算は、一般病棟に入院する患者の精神症状を早期に把握し、精神科専門医療につなぐチーム診療を評価する加算です。この加算は、現行では対象患者の状態を問わず週1回300点の一律評価にとどまっており、多様な精神疾患に対応するチームの専門性を反映できていませんでした。本記事は、令和8年度改定で加算がどう変わるのかを、背景・改定内容・実務対応の順に整理します。改定の要点は、認知症・せん妄以外の患者への診療を手厚く評価する点にあります。第1に、加算が「1 認知症又はせん妄の場合 300点」と「2 それ以外の場合 700点」の2区分に分かれます。第2に、区分2の患者に週2回以上診療した場合の「複数回診療加算」300点が新設されます。この2点により、区分2の患者では週あたり最大1,000点の算定が可能となります。なお、算定頻度は改定前後を通じて週1回が上限です。1. 見直しの背景:専門性が評価に反映されていなかった見直しの背景には、精神科リエゾンチームの専門性と現行評価とのギャップがあります。中央社会保険医療協議会(中医協)は、「様々な精神疾患に対応できる精神科リエゾンチームの専門性を評価する観点から、精神科リエゾンチーム加算の要件及び評価を見直す」との方向性を示しました。この方向性は、令和6年度入院・外来医療等における実態調査の結果に基づいています。実態調査は、精神科リエゾンチームが多様な精神疾患に介入している実態を明らかにしました。介入した患者像は、せん妄を有する患者が97.7%、抑うつを有する患者が90.1%、その他の精神疾患を有する患者が88.5%、認知症患者が83.2%、自殺企図で入院した患者が77.9%でした。つまり、チームの介入対象は認知症やせん妄にとどまらず、抑うつ、自殺企図、その他の精神疾患まで広がっています。対象の広がりに対し、認知症とせん妄への対応は他の加算でも担われています。実態調査によれば、認知症ケア加算やせん妄ハイリスクケア加算を届け出る医療機関の多くも、認知症やせん妄には対応できると回答しました。これに対し、統合失調症や気分障害などの多様な精神疾患に対応できると回答した医療機関は、精神科リエゾンチーム加算の届出施設に偏っていました。この差が、認知症・せん妄以外の患者への評価を引き上げる根拠となります。2. 改定内容①:加算が300点と700点の2区分に分かれる改定の第1の柱は、加算の2区分化です。現行の「精神科リエゾンチーム加算(週1回)300点」は、令和8年度改定後、次の2区分に再編されます。* 区分1:認知症又はせん妄の場合 …… 300点* 区分2:それ以外の場合 …… 700点区分1は、認知症またはせん妄の患者を対象とし、現行と同じ300点を維持します。区分2は、それ以外の患者を対象とし、700点へと大幅に引き上げられます。ここでいう「それ以外」とは、抑うつを有する患者、精神疾患を有する患者、自殺企図により入院した患者のうち、認知症とせん妄に該当しない患者です。区分1と区分2の具体的な線引きは、今後の通知等で示される見込みです。改定案の算定要件は、区分の判定基準までは定めていません。認知症と抑うつを併存する患者などの取扱いは、告示・通知の内容を確認してください。算定対象となる患者の範囲そのものは、改定後も変わりません。届出を行った保険医療機関において、精神科の医師、看護師、精神保健福祉士等が共同して精神症状の評価等の必要な診療を行った場合に算定します。対象患者は、抑うつ若しくはせん妄を有する患者、精神疾患を有する患者、自殺企図により入院した患者です。認知症ケア加算1を別に算定できない点も、現行から変更ありません。算定頻度も、実質的には変わりません。現行は点数名に「(週1回)」と付されており、改定案では算定要件の注1に「週1回に限り」と規定されます。つまり、週1回が上限である点は改定前後で同じであり、規定場所が整理されただけです。3. 改定内容②:複数回診療加算300点が新設される改定の第2の柱は、複数回診療加算の新設です。区分2(認知症・せん妄以外)の患者に対し、週2回以上精神科リエゾンチームによる診療を行った場合、複数回診療加算として週1回に限り300点を加算できます。この加算により、区分2の患者では週あたり最大1,000点(700点+300点)の算定が可能となります。複数回診療加算には、2つの制限があります。第1に、対象は区分2の患者に限られ、区分1(認知症・せん妄)の患者は対象外です。第2に、週2回以上診療しても、加算できるのは週1回・300点までです。4. 実務対応:区分の判定と記録の整備がカギになる実務では、区分の判定と記録の整備が算定の前提となります。区分1と区分2で点数が400点も開くため、患者ごとの区分判定が算定額を左右します。区分判定では、認知症とせん妄の有無を診療録上で明確にする必要があります。抑うつと認知症を併存する患者、術後せん妄から精神症状が遷延した患者など、区分の境界に位置する症例は少なくありません。こうした症例では、チームがどの病態を主たる対象として介入したのかを、精神症状の評価結果とともに記録しておきましょう。診療回数の管理も、複数回診療加算の算定に欠かせません。複数回診療加算は、週2回以上の診療を要件とします。したがって、各回の診療日、参加職種、評価内容をチーム記録に残す運用が求められます。なお、現行の留意事項は、1週間当たりの算定患者数を1チームにつき概ね30人以内としています。この取扱いが改定後どうなるかは個別改定項目に示されていないため、通知等での確認が必要です。まとめ:認知症・せん妄以外への介入が評価の中心へ令和8年度改定は、精神科リエゾンチーム加算を専門性に応じた評価へと組み替えます。加算は「認知症又はせん妄の場合 300点」と「それ以外の場合 700点」の2区分となり、後者には週2回以上の診療を評価する複数回診療加算300点が新設されます。最大1,000点となるのは区分2の患者に限られ、算定が週1回を上限とする点は改定前後で変わりません。届出医療機関は、区分判定の根拠と診療回数を記録に残す運用を、施行前に整えておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】精神科地域密着多機能体制加算を新設|最大800点の算定要件を解説
精神病床に入院する患者数は、減少を続けています。この減少が続くと、小規模な精神科病院や病床削減に取り組む精神科病院は運営が難しくなり、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」(以下「にも包括」)を支える医療機関が地域から失われます。そこで令和8年度診療報酬改定は、小規模医療機関または病床削減に取り組む医療機関を支える新たな評価を設けました。本記事は、この新たな評価である「精神科地域密着多機能体制加算」の内容を、算定要件、施設基準、関連する見直しの順に解説します。精神科地域密着多機能体制加算は、質の高い入院医療と地域定着支援を一体的に提供する病院を、病床規模と実績に応じて3区分で評価する加算です。第1に、点数は1日につき加算1が800点、加算2が250点、加算3が50点であり、精神病棟入院基本料(10対1、13対1、15対1)または精神科急性期治療病棟入院料を算定する患者が対象となります。第2に、施設基準は全区分共通の「通則」と、区分ごとの個別基準の二層で構成され、個別基準は精神病床の規模と病床削減の進み具合で区分が分かれます。第3に、令和6年度改定で新設された精神科地域包括ケア病棟入院料は、経過措置を設けたうえで廃止されます。1. 加算の点数と算定要件精神科地域密着多機能体制加算は、3つの区分に分かれた1日単位の加算です。区分ごとの点数は、加算1が800点、加算2が250点、加算3が50点です。この3区分は、後述する精神病床の規模と病床削減の進み具合によって分かれます。対象患者は、精神病棟入院料(10対1入院基本料、13対1入院基本料または15対1入院基本料を算定するものに限る)または精神科急性期治療病棟入院料を算定する入院患者です。したがって、18対1や20対1、特別入院基本料を算定する患者は、対象から外れます。算定要件は、精神科を標榜し、施設基準の届出を行った保険医療機関であることです。この保険医療機関に入院する患者について、届け出た区分に従い、所定点数に加算します。加算の対象となる入院料を現に算定していることが、算定の前提となります。2. 施設基準の構造と区分ごとの要件施設基準は、全区分に共通する「通則」と、区分ごとの個別基準の二層で構成されます。この二層構造を理解すれば、自院がどの区分を狙えるかを短時間で判断できます。通則は、病院全体の規模と体制を問う6項目です。第1に、にも包括の構築に貢献するにつき十分な体制を整備していることが求められます。第2に、許可病床数が350床以下であることが求められます。第3に、許可病床数に占める精神病床の割合が6割5分以上であることが求められます。第4に、常勤の精神保健指定医を2名以上配置していることが求められます。第5に、地域の精神科救急医療体制の確保に協力する体制と実績を有していることが求められます。第6に、退院支援に関する部門を設置していることが求められます。通則を満たしたうえで、加算1は「精神病床100床以下」の最も小規模な病院を評価します。この区分は、精神病床の平均在院日数が150日以内であること、精神療養病棟入院料または認知症治療病棟入院料を算定する病床の割合が3割以下であること、地域生活に向けた重点的な支援の体制と実績を有すること、入院患者の退院が着実に進んでいることを求めます。多職種配置については、常勤の精神保健福祉士2名以上、常勤の作業療法士1名以上、常勤の公認心理師1名以上を、それぞれ求めます。加算1と同じ多職種配置を求めつつ、加算2は「精神病床101~150床」または「病床削減を進める151~250床」の病院を評価します。この区分は、精神病床の平均在院日数が150日以内であること、精神療養病棟入院料または認知症治療病棟入院料を算定する病床の割合が3割以下であること、地域生活に向けた重点的な支援の体制と実績を有すること、入院患者の退院が着実に進んでいることを求めます。つまり、平均在院日数と多職種配置を含め、加算1と共通の要件が並びます。加算1と異なるのは、対象となる精神病床の規模と、病床削減の指標です。151床以上250床以下の病院は、届出前月末の精神病床の許可病床数を3年前の年度の1日当たり入院料算定患者数で割った値が0.95以下であること、届出から1年が経過するごとに同様の値が0.95以下であることを求められます。加算2よりも要件を緩め、加算3は「精神病床250床以下」で病床削減に着手した病院を評価します。この区分は、平均在院日数を250日以内とし、地域生活に向けた重点的な支援についても「適切な」体制と実績で足ります(加算1・2は「十分な」体制と実績)。病床割合の要件も、加算1・2が精神療養病棟入院料と認知症治療病棟入院料の合計で3割以下を求めるのに対し、加算3は精神療養病棟入院料を算定する病床のみが3割以下であれば足ります。多職種配置も、常勤の精神保健福祉士、作業療法士、公認心理師の合計2名以上で足ります。一方で加算3は、病床削減について3つの条件を重ねて求めます。第1に、届出前月末の精神病床の許可病床数を3年前の年度の1日当たり入院料算定患者数で割った値が0.97以下であることを求めます。第2に、届出時の精神病床の許可病床数を上回らないことを求めます。第3に、届出から1年が経過するごとに、当該月末の精神病床の許可病床数を3年前の精神病床の許可病床数で割った値が0.95以下であることを求めます。この第3の指標は、加算2が入院料算定患者数を分母とするのに対し、許可病床数を分母とする点で異なります。3. 精神科地域包括ケア病棟入院料の廃止と経過措置新たな加算の新設とあわせて、精神科地域包括ケア病棟入院料(1日につき1,535点)は廃止されます。この入院料は令和6年度改定で新設されたものです。中医協の資料「個別事項について(その2)精神医療①」は、届出病棟に限らず院内全体で満たす必要のある施設基準が設定されていること、令和7年10月時点の届出医療機関数が31施設にとどまることを、課題として挙げていました。廃止に伴い、経過措置が2つ設けられます。算定要件については、令和8年3月31日時点で届出を行っていた病棟が令和8年6月1日までに精神科急性期治療病棟入院料2の届出を行った場合、精神科地域包括ケア病棟入院料の算定期間と通算して180日を限度に、同入院料2のハを算定できます。施設基準については、同じく令和8年3月31日時点の届出病棟に限り、令和8年9月30日までの間、基本診療料の施設基準等の第九の十五の(1)ならびに(3)のイおよびニからヘまでを満たせばよいこととされます。まとめ:小規模・病床削減の病院を3区分で支える精神科地域密着多機能体制加算は、にも包括を支える病院を将来にわたって確保するための新たな評価です。点数は1日につき800点、250点、50点の3区分であり、精神病棟入院料(10対1、13対1、15対1)または精神科急性期治療病棟入院料の算定患者が対象となります。施設基準は、350床以下・精神病床6割5分以上などの通則と、病床規模および病床削減の進み具合に応じた個別基準の二層で構成されます。あわせて、精神科地域包括ケア病棟入院料は、経過措置を設けたうえで廃止されます。自院の精神病床数と平均在院日数、多職種の配置状況を確認し、狙える区分を早期に見極めてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】精神病棟看護・多職種協働加算を新設|13対1で357点
厚生労働省は、令和8年度診療報酬改定で「精神病棟看護・多職種協働加算」を新設します。精神病棟入院基本料等の急性期の入院料は、これまで看護職員の配置だけを評価し、精神保健福祉士、作業療法士、公認心理師(以下、3職種)の病棟配置を評価していませんでした。この記事では、新設される精神病棟看護・多職種協働加算の趣旨、対象入院料と点数、施設基準を解説します。精神病棟看護・多職種協働加算は、看護職員と3職種を併せて配置した精神病棟を1日につき最大357点で評価します。第1に、新設の趣旨は、多職種の配置による質の高い精神医療の提供の推進です。第2に、対象は、精神病棟入院基本料と特定機能病院入院基本料(精神病棟)の13対1・15対1、および精神科急性期治療病棟入院料2の3つです。第3に、施設基準は、看護職員と3職種を合算した人員配置、3職種1名以上の配置、平均在院日数の3つを要件とします。なお、点数は対象入院料ごとに異なります。1. 新設の趣旨:多職種配置による質の高い精神医療の推進精神病棟看護・多職種協働加算は、多職種の配置による質の高い精神医療の提供を推進する観点から新設されます。改定資料の「第1 基本的な考え方」は、急性期等の入院料における3職種の病棟配置について新たな評価を行うと明記しています。つまり、この加算は、看護職員以外の職種を病棟に置く体制そのものを評価する点数です。多職種の配置は、入院医療から地域生活への移行を進めるうえで、繰り返しその必要性を指摘されてきました。良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針(平成26年厚生労働省告示第65号)は、医師、看護職員、精神保健福祉士、作業療法士等の多職種チームによる質の高い医療の提供を求めています。精神疾患の回復期には、精神保健福祉士による環境調整、作業療法士によるリハビリテーション、公認心理師による心理的ケアの必要性が高まるからです。多職種の配置は、実際の調査でも効果を示しています。中央社会保険医療協議会(中医協)に提出された調査によると、精神病棟入院基本料を届け出る病棟のうち、3職種を各1名以上配置した病棟の平均在院日数は353.9日でした。3職種の配置がない病棟を含む全体の平均在院日数429.2日と比べると、約75日短い水準です。在宅復帰率も、全体の63.8%に対し、3職種を各1名以上配置した病棟では70.2%と高い傾向を示しました。2. 対象入院料と加算点数:13対1で357点、15対1で196点精神病棟看護・多職種協働加算の対象は、3つの入院料です。第1に、精神病棟入院基本料の13対1入院基本料と15対1入院基本料が対象になります。第2に、特定機能病院入院基本料のうち精神病棟の13対1入院基本料と15対1入院基本料が対象になります。第3に、精神科急性期治療病棟入院料2が対象になります。いずれも、地方厚生局長等への届出を行った病棟の入院患者について、1日につき所定点数に加算します。精神病棟入院基本料では、13対1で357点、15対1で196点を算定します。点数は、急性期病院A、急性期病院B、精神病棟入院料の3区分に分かれますが、いずれも13対1が357点、15対1が196点で共通です。特定機能病院入院基本料では、13対1で355〜357点、15対1で90〜92点を算定します。点数は、特定機能病院A・B・Cの3区分に分かれます。13対1は、Aが356点、Bが357点、Cが355点です。15対1は、Aが91点、Bが92点、Cが90点です。精神病棟入院基本料の15対1(196点)と比べると、特定機能病院の15対1は半分以下の水準にとどまります。精神科急性期治療病棟入院料2では、入院期間に応じた3段階の点数を算定します。30日以内の期間は123点です。31日以上60日以内の期間は107点です。61日以上90日以内の期間は58点です。入院が長引くほど点数が下がる逓減制であり、早期退院を促す設計といえます。3. 施設基準:合算配置・3職種1名以上・平均在院日数精神病棟看護・多職種協働加算の施設基準は、3つの要件で構成されます。第1の要件は、看護職員と3職種を合算した人員配置です。第2の要件は、3職種のうちいずれかを1名以上配置することです。第3の要件は、平均在院日数の上限です。3つの要件の水準は、13対1と15対1で異なります。13対1入院基本料の場合、合算した人員配置は10対1以上が必要です。具体的には、1日に看護を行う看護職員、作業療法士、精神保健福祉士および公認心理師の数が、常時、入院患者数10またはその端数を増すごとに1以上でなければなりません。この規定にかかわらず、作業療法士、精神保健福祉士または公認心理師の数は1以上とします。平均在院日数は60日以内が上限です。15対1入院基本料の場合、合算した人員配置は13対1以上が必要です。具体的には、看護職員と3職種の数が、常時、入院患者数13またはその端数を増すごとに1以上でなければなりません。この規定にかかわらず、3職種のうちいずれかの数は1以上とします。平均在院日数は100日以内が上限です。特定機能病院入院基本料の場合、精神病棟入院基本料と同じ施設基準を適用します。13対1は精神病棟入院基本料の13対1の基準を、15対1は同じく15対1の基準を、それぞれ満たす必要があります。精神科急性期治療病棟入院料2の場合、15対1の基準のうち人員配置の2要件のみを適用します。適用されるのは、合算13対1以上の配置と、3職種のうちいずれかを1名以上配置する要件です。平均在院日数の要件は適用しません。4. まとめ:看護職員以外の病棟配置が点数になる精神病棟看護・多職種協働加算は、看護職員と3職種を併せて配置した精神病棟を1日につき最大357点で評価します。新設の趣旨は、多職種の配置による質の高い精神医療の提供の推進です。対象は、精神病棟入院基本料と特定機能病院入院基本料(精神病棟)の13対1・15対1、および精神科急性期治療病棟入院料2です。施設基準は、看護職員と3職種を合算した人員配置、3職種1名以上の配置、平均在院日数の3つを要件とします。すでに3職種を病棟配置している医療機関は、届出の可否を早期に確認することをお勧めします。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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痛み止めの飲み過ぎが頭痛を悪化させる|脳外科医が教える月10日の境界線
頭痛が起きたら痛み止めを飲む。この当たり前の対処が、頭痛を悪化させることがあります。日本では2〜3%、200万人以上がこの状態に該当するとされています。しかも、その多くが自分の飲み過ぎに気づいていません。そこで今回は、脳神経外科専門医の山本俊先生に、痛み止めと頭痛の関係を聞きました。山本先生が伝えるのは、飲み過ぎの基準を知り、正しいタイミングで正しい薬を使うという原則です。第一に、飲み過ぎの基準は回数ではなく日数であり、複合鎮痛薬は月10日、単一成分薬は月15日が境界線です。第二に、片頭痛専用のトリプタンでさえ月10日以上で同じ問題を起こす一方、最新のCGRP阻害薬はこの問題を起こしません。第三に、薬は頭痛の起こり始めに「狙い撃ち」してこそ効きます。飲み過ぎの基準は回数ではなく日数痛み止めの飲み過ぎで悪化する頭痛には、正式な名前があります。かつては「薬物乱用頭痛」と呼ばれていました。響きが悪いことから、現在は「薬剤の使用過多による頭痛」に名称が変わっています。市販の複合鎮痛薬などを慢性的に飲み過ぎることで、かえって頭痛がひどくなる現象です。この状態にある人は、日本で2〜3%、200万人以上とされています。ただし山本先生は、実感としてはもっと多いのではないかと述べています。理由は把握のしにくさにあります。医師はお薬手帳で処方薬を確認できますが、患者が自分で買って飲む市販薬までは追えません。飲み過ぎの基準は、薬のタイプによって2つに分かれます。イブやバファリンなどの複合鎮痛薬は、月10日以上が基準です。週2〜3回のペースが、すでにこの線を超えます。ロキソニンやカロナールなどの単一成分薬は、月15日以上が基準です。2日に1回以上飲んでいれば、この線を超えます。ここで最も誤解されやすいのが、基準の数え方です。基準になるのは回数ではなく日数です。1日に3回飲んでも、1日とカウントされます。「6時間以上空けて飲んでいるから大丈夫」という理解は、この点で成り立ちません。山本先生は、これを「なかなか誰も教えてくれない事実」だと語ります。複合鎮痛薬が飲み過ぎに陥りやすい理由は、成分にあります。市販薬の裏面には、無水カフェインが高い頻度で含まれています。加えて、長いカタカナのあとに「尿素」と付く成分も入っています。この尿素系成分は海外の鎮痛薬には含まれていませんが、日本の複合鎮痛薬には入っており、依存する傾向を誘発します。よく効くと感じるからこそ、飲む日数が増えていきます。専用薬にも基準があり、最新薬にはない飲み過ぎの問題は、市販薬に限りません。片頭痛には、トリプタンという専用薬があります。トリプタンは頭痛の起こり始めに飲めば高い効果を発揮し、痛みをしっかり抑えます。しかし、そのトリプタンでさえ、月10日以上の内服で薬剤の使用過多による頭痛を起こします。基準は、複合鎮痛薬と同じです。この事実は、ひとつの矛盾を生みます。頭痛の頻度が多い人ほど、トリプタンを飲む日数が増えます。頭痛を良くするために飲んでいるのに、飲むことで余計にひどくなる。山本先生が予防治療の発信に力を入れる理由が、ここにあります。そもそも頭痛の回数を減らさなければ、この循環から抜け出せません。回数を減らす手段が、CGRP阻害薬です。CGRPは片頭痛の起こり方に関わる物質であり、これをブロックする薬が頭痛の頻度を劇的に減らします。さらにCGRP阻害薬には、これまでの薬にない特徴があります。どれだけ飲んでも、飲み過ぎによる頭痛にならないという点です。山本先生は、これを従来薬との大きな違いとして挙げています。薬は起こり始めに狙い撃つ飲む薬が正しくても、飲むタイミングが遅ければ効きません。片頭痛が大きくなってから飲んでも、まったく効かない。これは最新の薬でも同じです。ベストなタイミングは、「ちょっと痛いな」と感じる起こり始めです。山本先生は、この飲み方を「狙い撃ち」と表現します。狙い撃ちの対極にあるのが、「乱れ打ち」です。起こりそうだからとりあえず複合鎮痛薬を飲む。痛みが大きくなってからいっぱい飲む。我慢しているうちに、どんどんひどくなる。この飲み方が、飲み過ぎの状態をつくります。同じ「薬を飲む」でも、狙い撃ちと乱れ打ちはまったく違う行為です。狙い撃ちを可能にするのが、予兆の把握です。片頭痛には予兆があります。首や肩が強く凝って張ってくる。天気が変わる、雨が降る。人によっては、天気が良くなるときに起こります。自分がいつも頭痛を起こすパターンを知っておけば、予兆の段階で早めに専用薬を飲み、痛みが大きくなる前にやっつけられます。こうした情報が届いていない現状を、山本先生は大きな問題と捉えています。毎日痛み止めを飲む状態が何十年も続いた人は、なかなか元に戻りません。市販薬を売る現場にいる薬剤師や販売員は、この状態を防ぐ「ガードレール」になり得ます。しかし医師ひとりが日本中の薬局を回ることはできません。だからこそ、医師だけでなく薬剤師や販売員を含めた多くの人による啓発が必要だと語ります。まとめ:飲み過ぎに気づいても、手遅れではない痛み止めの飲み過ぎは、頭痛を悪化させます。基準は回数ではなく日数であり、複合鎮痛薬は月10日、単一成分薬は月15日が境界線です。専用薬のトリプタンにも月10日の基準がある一方、CGRP阻害薬は飲み過ぎによる頭痛を起こしません。そして薬は、頭痛の起こり始めに狙い撃ちしてこそ効きます。「自分は飲み過ぎかもしれない」と感じた方へ。手遅れということはありません。医師に怒られるのではないかという不安も、必要ありません。頭痛専門医はこうした患者に慣れており、温かく話を聞いたうえで、良くしていく道筋を一緒に描きます。頭痛治療はここまで進化しています。人生が変わる可能性のあるチャンスを、取り逃さないでください。山本俊先生からの発信をもっと受け取りたい方へ山本俊先生は、頭痛外来で患者と向き合いながら、AIを使った研究にも取り組む脳神経外科専門医です。メルマガでは、頭痛に悩む方へ専門家だから届けられる最新の治療情報を、医療従事者やAIに関心のある方へ研究・知的生産にAIエージェントを組み込む実例を、毎週土曜日に発信しています。▶ 山本俊の「頭痛」と「脳」のメルマガ Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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月28日の片頭痛がゼロに|CGRPが変えた最新の予防治療を脳外科医が解説
片頭痛の予防治療は、長いあいだ「半分に減らせれば上出来」の世界でした。月30日のうち28日痛む患者を14日まで減らす。その限界が10年以上続いてきました。しかし今、28日をゼロにする治療が現実になっています。そこで今回は、脳神経外科専門医の山本俊先生に、片頭痛治療に何が起きたのかを聞きました。山本先生が語るのは、片頭痛が「我慢する病気」から「解放される病気」へ変わったという事実です。第一に、変化の起点はCGRPという物質の発見であり、片頭痛の発症メカニズムがほぼ解明されました。第二に、CGRPをブロックする月1回の注射と新しい飲み薬が、片頭痛専用の薬として登場しました。第三に、これらの薬は副作用がほとんどなく、数%に軽い便秘が起こる程度です。CGRPの発見が片頭痛治療を変えた片頭痛の予防治療そのものは、決して新しい考え方ではありません。予防治療とは、痛みが起きてから薬を飲むのではなく、毎日の服薬や定期的な注射で頭痛の回数そのものを減らすアプローチです。日本でも2010年頃から、この考え方は存在していました。ただし、当時の予防薬には出自の問題がありました。使われていたのは、てんかんの薬など、片頭痛とは関係のない薬剤の転用です。「頭痛にも効くじゃないか」という発見から使い始めた経緯であり、効果はあっても限界がありました。月28日の頭痛を14日にする。その壁が10年以上動きませんでした。この壁を壊したのが、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質の発見です。CGRPは、片頭痛が起こる原因そのものに関わる物質です。原因に関わる物質が特定されれば、それをブロックするという治療戦略が成り立ちます。片頭痛のためだけに作られた薬が、ここで初めて可能になりました。CGRPの働きは、三叉神経血管説として説明されます。顔や脳に神経線維を送る三叉神経が、CGRPを分泌します。分泌されたCGRPが脳の血管に伝わり、血管がずきんずきんと痛む。これが片頭痛の起こり方です。山本先生は、片頭痛の発症メカニズムは「まだ完全には解明されていない」とされながらも、事実上ほぼ解明されていると述べています。注射と飲み薬という2つの選択肢がある発症メカニズムが分かれば、あとはCGRPを何らかの形でブロックするだけです。ブロックの仕方には2通りあります。ひとつは、CGRPという物質そのものをやっつける方法です。もうひとつは、CGRPを受け取る受容体をブロックする方法です。山本先生は、どちらもブロックすることに変わりはなく、細かい違いより「ブロックすれば劇的に良くなる」という理解で十分だと説明しています。治療の形は、注射と飲み薬の2つに分かれます。注射は2021年から使えるようになり、日本でも広く使われています。飲み薬は、ゲパントと呼ばれるタイプの薬が2025年末以降に登場しました。注射が苦手な人にとって、飲み薬は非常に人気のある選択肢です。効き目は注射とほぼ同等であり、頭痛が劇的に減る、あるいは起こらなくなるところまで期待できます。投与のペースは、注射なら毎月1回、飲み薬なら基本的に毎日です。予防治療である以上、頭痛が多い月も少ない月も同じペースで続けます。ただし、一生続ける必要はありません。3ヶ月ほど試して効果が良ければ、一度やめてみるという調整も実際に行われています。副作用の少なさが治療のハードルを下げたCGRP阻害薬の最も画期的な点は、効果ではなく副作用の少なさだと山本先生は言います。CGRPは全身に存在する物質です。それをブロックすれば、体のどこかに影響が出そうに思えます。しかし実際には、頭痛がなくなる以外のことがほとんど起こりません。報告されている副作用は、数%の患者に起こる軽い便秘程度です。割合そのものが低く、起きたとしても便秘薬で対応できることがほとんどです。副作用がほぼないという事実が、「まず試してみよう」という一歩のハードルを大きく下げています。治療選択肢が増えたからこそ、山本先生は発信の独立性を重視しています。片頭痛治療の進歩に伴い、多くの製薬会社がこの領域に参入しています。特定の会社に寄ることは患者の利益になりません。山本先生は製薬会社からの援助を一切受けず、自分の意思で発信することを発信の前提としています。まとめ:チャンスを逃さないでほしい片頭痛は、我慢する病気から解放される病気へ変わりました。変化の起点はCGRPの発見であり、三叉神経血管説によって発症メカニズムはほぼ解明されています。CGRPをブロックする月1回の注射と、新しく登場したゲパント系の飲み薬が、片頭痛専用の治療として使えます。しかも副作用は、数%の軽い便秘程度にとどまります。山本先生は、この治療で人生が変わった患者の顔が何人も浮かぶと語ります。子どもから大人まで、多くの人が片頭痛に悩んでいます。今からでも遅くありません。頭痛が劇的に良くなれば、その先の人生がガラッと変わります。頭痛専門医にかかり、こうした治療があることを知ること。その一歩が、かけがえのない機会につながります。山本俊先生からの発信をもっと受け取りたい方へ山本俊先生は、頭痛外来で患者と向き合いながら、AIを使った研究にも取り組む脳神経外科専門医です。メルマガでは、頭痛に悩む方へ専門家だから届けられる最新の治療情報を、医療従事者やAIに関心のある方へ研究・知的生産にAIエージェントを組み込む実例を、毎週土曜日に発信しています。▶ 山本俊の「頭痛」と「脳」のメルマガ Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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「片頭痛=片側」は誤り|脳神経外科医が明かす頭痛の見分け方
頭痛に悩む多くの人が、市販の痛み止めで我慢したまま暮らしています。この我慢は、頭痛外来にたどり着く人の少なさと、「画像に異常がない」で終わってしまう診療経験に支えられています。そこで今回は、脳神経外科専門医の山本俊先生に、頭痛外来の診察と治療の実際を聞きました。山本先生が伝えるのは、頭痛は正しく見分ければ減らせるという事実です。第一に、診察はまず命に関わる危険な頭痛を除外することから始まります。第二に、片頭痛と緊張型頭痛を分ける決定的な違いは、痛む場所ではなく光・音・においの過敏症状です。第三に、予防治療は月15回の片頭痛を10回、5回へと減らします。診察は危険な頭痛の除外から始まる山本先生の診察は、頭痛そのものではなく、頭痛による生活の支障を聞くことから始まります。緊張して診察室に入る患者に、いきなり痛みの性状を尋ねても、実際の困りごとは見えてきません。生活の支障を先に聞く姿勢が、患者中心の診療の入口になります。生活の支障を確認したうえで、山本先生は患者を2つのパターンに分けます。ひとつは、これまで経験のない頭痛が起きて来院する人です。もうひとつは、長年同じ頭痛で困り続けてきた人です。この2つのどちらに当てはまるかが、その後の診察の進み方を決めます。前者の「これまで経験のない頭痛」では、命に関わる頭痛を念頭に置いた質問が続きます。「人生で初めての頭痛ですか」「これまで経験がない頭痛ですか」「突然の頭痛ですか」。脳神経外科医として、山本先生はこの除外を最も大切にしています。危険な頭痛の除外には、MRI検査が欠かせません。ただし、山本先生は画像に異常がないことを終着点にしません。画像に異常がなくても起こる頭痛を一次性頭痛と呼び、その代表が片頭痛と緊張型頭痛です。「ここで終わりではないですよ」という一言が、次の治療への扉を開きます。片頭痛と緊張型頭痛を分けるのは過敏症状一次性頭痛の治療では、片頭痛と緊張型頭痛の見分けが出発点になります。この2つを分ける最大の違いは、過敏症状の有無です。過敏症状は、国際的な診断基準にも含まれる条件です。代表的な過敏症状は3つあります。光の過敏は、暗いところに行きたくなる形で現れます。音の過敏は、静かなところに行きたくなる形で現れます。においの過敏は、香水や人混みのにおいで頭痛が悪化する形で現れます。3つ目のにおいの過敏は注目されにくいものの、診断の手がかりとして重要です。過敏症状を基準に置くと、「頭の片側が痛むから片頭痛」という理解は正しくないとわかります。痛む場所は、片頭痛と緊張型頭痛を分ける決定的な条件ではありません。片頭痛の患者に緊張型頭痛が起こることもあり、複数の頭痛が混ざる状態は珍しくありません。医師でも判断が難しいからこそ、山本先生は診断基準を軸に据えています。予防治療は月15回の片頭痛を5回に減らす見分けができるようになると、患者は自分の頭痛を自分で分析できるようになります。山本先生は診断基準をスライドで詳しく説明し、判断力を患者と一緒に育てます。その結果、「先月は緊張型頭痛が多かった」「今月は片頭痛が多くて辛かった」と、患者自身が言葉にできるようになります。自己理解が進んだ患者に対して、山本先生が特に重視するのが予防治療です。予防治療は、痛みが起きてから抑えるのではなく、頭痛の回数そのものを減らすことを目指します。片頭痛には専用の薬があり、治療法は大きく進歩しています。予防治療の効果は、患者自身が数えられる形で現れます。月に15回あった片頭痛が、治療を続けるうちに10回になり、5回になります。この減り方を患者が自分で実感できることを、山本先生は診療の共有目標としています。まとめ:我慢せず、頭痛専門医への一歩を頭痛は、正しく見分ければ減らせます。診察はまず命に関わる危険な頭痛の除外から始まります。片頭痛と緊張型頭痛を分けるのは、痛む場所ではなく光・音・においの過敏症状です。そして予防治療は、月15回の片頭痛を5回へと減らします。それでも多くの人が、イブやバファリンなどの市販薬で我慢し続けています。母親が我慢する姿を見て育った人もいれば、「画像に異常はない」とロキソニンを渡されて終わった人もいます。しかし、頭痛をわかってくれる専門医は日本全国にいます。我慢をやめて受診する一歩が、生活の質を大きく変え、人生が変わるような経験につながります。山本俊先生からの発信をもっと受け取りたい方へ山本俊先生は、頭痛外来で患者と向き合いながら、AIを使った研究にも取り組む脳神経外科専門医です。メルマガでは、頭痛に悩む方へ専門家だから届けられる最新の治療情報を、医療従事者やAIに関心のある方へ研究・知的生産にAIエージェントを組み込む実例を、毎週土曜日に発信しています。▶ 山本俊の「頭痛」と「脳」のメルマガ Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定:非がん患者の緩和ケアはどう変わるか|対象疾患の追加と包括範囲の見直し
緩和ケアの診療報酬は、これまで悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群及び末期心不全の患者を主な対象として評価されてきました。しかし、末期の呼吸器疾患や腎不全の患者も、呼吸困難、倦怠感、痛みといった身体的苦痛をがん患者と同程度の頻度で抱えており、現行の評価体系ではその苦痛に対する専門的な緩和ケアを十分に評価できていませんでした。令和8年度診療報酬改定は、この対象疾患のずれを是正するため、非がん患者に対する緩和ケアの評価を見直します。本稿では、その見直しの内容を3点に整理して解説します。見直しの柱は、対象疾患の拡大と包括範囲の見直しの2つです。第1に、緩和ケア診療加算、外来緩和ケア管理料及び在宅麻薬等注射指導管理料等の対象に、末期呼吸器疾患患者と末期腎不全患者が加わります。第2に、緩和ケア病棟入院料の対象患者に、終末期の末期腎不全患者が加わります。第3に、緩和ケア病棟入院料の包括範囲から神経ブロックが除外され、出来高で算定できるようになります。1. 緩和ケア診療加算等の対象に、末期呼吸器疾患と末期腎不全が加わる緩和ケア診療加算等の対象疾患には、末期呼吸器疾患と末期腎不全が追加されます。追加の対象となるのは、緩和ケア診療加算(A226-2)、外来緩和ケア管理料、在宅麻薬等注射指導管理料(C108)、注入ポンプ加算(C161)及び携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算(C166)です。ただし、現行の対象疾患は項目ごとに異なります。したがって、追加される疾患も項目ごとに2通りに分かれます。第1の系統は、緩和ケア診療加算と外来緩和ケア管理料です。この2項目の現行の対象は、悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群及び末期心不全の患者です。呼吸器疾患と腎不全は、いずれも対象に入っていません。そのため、この2項目には末期呼吸器疾患と末期腎不全の2疾患が追加されます。第2の系統は、在宅麻薬等注射指導管理料、注入ポンプ加算及び携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算です。この3項目の現行の対象には、末期の心不全と呼吸器疾患の患者が既に含まれています。含まれていないのは、腎不全だけです。そのため、この3項目に追加されるのは末期の腎不全のみです。この追加を受けて、在宅麻薬等注射指導管理料の「3」は、名称が「心不全、呼吸器疾患又は腎不全の場合」(1,500点)に改められます。この2通りの追加のうち、範囲が大きく広がるのは第1の系統です。緩和ケア診療加算の改定案は、算定対象を「一般病床に入院する悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群、末期心不全、末期呼吸器疾患又は末期腎不全の患者」と規定します。これらの患者のうち、疼痛、倦怠感、呼吸困難等の身体的症状又は不安、抑うつなどの精神症状を持つ者が、患者の同意に基づく緩和ケアチームの診療を受けた場合に算定できます。外来緩和ケア管理料についても、同様の取扱いとなります。対象拡大にあたり、末期呼吸器疾患の患者には3つの要件がすべて示されます。第1に、呼吸器疾患に対して適切な治療が実施されていることです。第2に、在宅酸素療法又はNPPV(非侵襲的陽圧換気)を継続的に実施していることです。第3に、過去半年以内に10%以上の体重減少を認めることです。これら3要件のいずれにも該当する患者が、末期呼吸器疾患の患者に当たります。一方、末期腎不全の患者には、2通りの該当パターンが示されます。共通する前提は、腎不全に対して適切な治療が実施されていること、及び器質的な腎障害により慢性的に日本腎臓学会慢性腎臓病重症度分類Stage G5以上に該当し腎代替療法を必要とする状態であることの2点です。この2点に加え、血液透析療法又は腹膜透析療法を実施しており、かつPalliative Performance Scale(PPS)が40%以下である患者が、第1のパターンに該当します。もう一方は、腎代替療法を必要とする状態であるものの、透析療法の開始又は継続が困難な患者です。これらの対象拡大に伴い、施設基準も同様に見直されます。緩和ケア診療加算の施設基準では、緩和ケアに関する研修を受けた医師の配置要件について、対象疾患の記載に末期呼吸器疾患と末期腎不全が加わります。注2に規定する施設基準についても、同じ記載の見直しが行われます。2. 緩和ケア病棟入院料の対象患者に、終末期の末期腎不全患者が加わる緩和ケア病棟入院料の対象患者には、終末期の末期腎不全患者が追加されます。透析の差し控えや中断を選択した末期腎不全患者は、末期のがん患者と同様に急速に身体機能が悪化し、密度の高い緩和ケアを要します。この臨床経過を踏まえ、緩和ケア病棟の対象患者が見直されました。対象患者の追加は、算定要件の注1に反映されます。現行の注1は、悪性腫瘍の患者及び後天性免疫不全症候群の患者以外が入院した場合、特別入院基本料の例により算定すると規定していました。改定案では、この例外規定の対象から終末期の末期腎不全の患者が外れます。つまり、終末期の末期腎不全患者は、緩和ケア病棟入院料そのものを算定できるようになります。算定要件の見直しに合わせて、施設基準も改められます。緩和ケア病棟入院料1の施設基準では、入院させる患者の範囲に「終末期の末期腎不全に罹患している患者」が加わります。緩和ケアに関する研修を受けた医師の配置要件についても、対象疾患に終末期の末期腎不全の患者が加わります。3. 緩和ケア病棟入院料の包括範囲から神経ブロックが除外される緩和ケア病棟入院料の包括範囲からは、神経ブロックが除外されます。神経ブロックは、緩和的放射線治療と同じくがん疼痛に対して有効な場合があります。しかし現行では、放射線照射が包括範囲外で出来高算定できる一方、神経ブロックは包括範囲内に置かれていました。この取扱いの差がある中で、緩和ケア病棟入院患者への神経ブロックの実施割合は、放射線治療と比較して低い状況にあります。包括範囲からの除外は、算定要件の注3に反映されます。改定案では、包括範囲から除く費用として、第11部第2節神経ブロック料が新たに列挙されます。あわせて、神経ブロックに係る第3節薬剤料及び第4節特定保険医療材料料も除外されます。したがって、緩和ケア病棟入院患者に神経ブロックを実施した場合、手技料と関連する薬剤料・材料料を出来高で算定できます。なお、緩和ケア病棟入院料は、点数自体も引き上げられます。緩和ケア病棟入院料1は、30日以内の期間が5,135点から5,277点に、31日以上60日以内の期間が4,582点から4,724点に、61日以上の期間が3,373点から3,515点になります。緩和ケア病棟入院料2は、30日以内の期間が4,897点から5,025点に、31日以上60日以内の期間が4,427点から4,555点に、61日以上の期間が3,321点から3,449点になります。この引き上げの理由は、個別改定項目の文書には示されていません。まとめ:対象疾患の拡大と包括範囲の見直しが2本柱令和8年度改定は、非がん患者に対する緩和ケアの評価を2つの方向で見直します。対象疾患の面では、緩和ケア診療加算、外来緩和ケア管理料及び在宅麻薬等注射指導管理料等に末期呼吸器疾患患者と末期腎不全患者が加わり、緩和ケア病棟入院料には終末期の末期腎不全患者が加わります。包括範囲の面では、緩和ケア病棟入院料から神経ブロックが除外され、出来高算定が可能になります。対象疾患の追加には要件が細かく定められているため、算定を検討する医療機関は、末期呼吸器疾患の3要件と末期腎不全の2パターンの要件を早期に確認してください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】投与時閉鎖式接続器具使用加算150点を徹底解説
抗がん剤は、調製する薬剤師や投与する看護師などの医療従事者に、ばく露のリスクをもたらします。このばく露リスクを下げる閉鎖式接続器具は、これまで無菌製剤処理(調製)の段階でのみ評価されてきました。一方、患者への投与の段階では、閉鎖式接続器具を用いても診療報酬上の評価がありませんでした。そこで本稿では、令和8年度診療報酬改定で新設される「投与時閉鎖式接続器具使用加算」を解説します。令和8年度改定は、抗がん剤の投与時に閉鎖式接続器具を用いた場合の加算150点を新設します。この加算の対象は、無菌製剤処理料1の「イ」に該当する患者です。加算の算定要件は、製剤処理時と投与時の両方で閉鎖式接続器具を用いることです。加算の施設基準は、外来腫瘍化学療法診療料1の届出を行っていることです。改定の背景:抗がん剤のばく露リスクと環境汚染改定の背景には、抗がん剤のばく露リスクがあります。抗がん剤は、細胞の増殖を抑える強い作用を持つ薬剤です。この強い作用は、患者だけでなく、薬剤を扱う医療従事者の健康にも影響を及ぼします。医療従事者は、薬剤の調製時や投与時に、飛散した薬剤へ意図せずばく露するおそれがあります。このばく露リスクは、国内の疫学調査でも裏づけられています。厚生労働省は、抗がん剤のばく露リスクに関する国内の疫学調査を踏まえ、今回の評価を検討しました。あわせて、閉鎖式接続器具を用いた場合に抗がん剤による環境汚染が低減するという報告も踏まえています。これらの調査と報告が、投与時の評価を新設する根拠となりました。環境汚染の低減に役立つのが、閉鎖式接続器具です。閉鎖式接続器具は、バイアル内外の差圧を調節する機構を持つ器具です。この機構により、薬剤の飛散などを防止します。飛散を防止することで、医療従事者へのばく露と作業環境の汚染をあわせて抑えます。加算の内容と対象患者:投与時閉鎖式接続器具使用加算150点今回新設されるのは、投与時閉鎖式接続器具使用加算です。この加算は、無菌製剤処理料1に上乗せする加算です。加算の点数は150点です。加算の趣旨は、調製時に続いて投与時のばく露対策も評価することにあります。加算の対象は、無菌製剤処理料1の「イ」の対象患者です。今回の加算は、この「イ」の対象患者に投与する場合に限って算定できます。算定要件と施設基準:調製時と投与時の両方が条件加算の算定要件は、閉鎖式接続器具を2つの場面で用いることです。1つ目の場面は、無菌製剤処理料1のイを実施する調製時です。2つ目の場面は、患者への投与時です。この2つの場面の両方で閉鎖式接続器具を用いた場合に、加算を算定できます。調製時だけ、あるいは投与時だけの使用では算定できない点に注意が必要です。加算の施設基準は、外来腫瘍化学療法診療料1の届出です。加算を算定するには、外来腫瘍化学療法診療料1に係る届出を行っている保険医療機関である必要があります。まとめ令和8年度改定は、抗がん剤の投与時に閉鎖式接続器具を用いた場合の加算150点を新設します。この加算は、医療従事者のばく露リスクと環境汚染を抑える対策を、調製時に続いて投与時にも評価するものです。加算の対象は無菌製剤処理料1の「イ」の患者、算定要件は調製時と投与時の両方での閉鎖式接続器具の使用、施設基準は外来腫瘍化学療法診療料1の届出です。抗がん剤を扱う医療機関は、この3つの条件を確認し、投与時のばく露対策と加算の算定を進めていきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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がん未発症の家族も対象に|遺伝性乳癌卵巣癌症候群の診療報酬改定ポイント
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)は、BRCA1遺伝子又はBRCA2遺伝子の変異により、乳癌や卵巣癌を発症しやすくなる遺伝性の疾患です。この疾患では、がんを発症していない人でも、両側乳房切除や卵管・卵巣切除により発症リスクを下げられることが、近年のエビデンスで示されています。しかし従来は、がんを発症していない家族が、診断に必要な検査や指導について診療報酬の算定対象外でした。本稿では、この課題を解消する令和8年度診療報酬改定の見直し内容を解説します。今回の見直しでは、がんを発症していない家族が新たに算定対象へ追加されます。見直しの背景には、HBOC患者へのリスク低減手術の有効性を示すエビデンスがあります。この背景を踏まえ、BRCA1/2遺伝子検査では、HBOCと診断された人の父母・子・兄弟姉妹が対象に加わります。同様に、がん患者指導管理料でも、HBOCと診断された人の父母・子・兄弟姉妹が対象に加わります。見直しの背景:がん未発症でもリスク低減手術が有効今回の見直しは、がんを発症していないHBOC患者へのリスク低減手術の有効性を根拠としています。HBOC患者は、生涯にわたって乳癌や卵巣癌を発症するリスクが高い状態にあります。このリスクに対しては、乳癌や卵巣癌を発症する前の段階で、両側乳房切除や卵管・卵巣切除を行う「リスク低減手術」が選択肢となります。近年、このリスク低減手術が発症予防に有効であるとのエビデンスが蓄積されてきました。有効なリスク低減手術を活かすには、がんを発症する前にHBOCを診断することが欠かせません。HBOCの診断には、BRCA1遺伝子及びBRCA2遺伝子の変異を調べるBRCA1/2遺伝子検査が用いられます。この検査により変異が確認されれば、患者はがん発症前でも自らのリスクを把握できます。リスクを把握した患者は、リスク低減手術を含めた診療方針を、医師とともに検討できるようになります。BRCA1/2遺伝子検査:家族が新たに対象へBRCA1/2遺伝子検査では、HBOCと診断された人の家族が新たに算定対象へ加わります。血液を検体とするこの検査は、乳癌や卵巣癌など複数のがんで用いられ、その用途のひとつがHBOCの診断です。現行では、HBOCの診断を目的とする場合、対象はHBOCが疑われる乳癌又は卵巣癌の患者に限られていました。つまり、HBOCの診断では、がんを発症した患者でなければ保険で検査を受けられませんでした。改定後は、この対象に、HBOCと診断された人の父母・子・兄弟姉妹が追加されます。この結果、がんを発症していない家族でも、保険でBRCA1/2遺伝子検査を受けられるようになります。対象となる家族には、明確な条件が設けられています。追加される家族は、BRCA1/2遺伝子検査(血液を検体とするもの)によりHBOCと診断された人の、父母・子・兄弟姉妹に限られます。この条件により、HBOCの家族歴が確認された人へ、検査が的確に届く仕組みとなっています。がん患者指導管理料:家族への説明・相談も対象へがん患者指導管理料でも、HBOCと診断された人の家族が新たに算定対象へ加わります。現行では、指導管理料ニの対象は、乳癌・卵巣癌又は卵管癌と診断された患者のうち、HBOCが疑われる患者に限られていました。つまり、がんを発症した患者への説明・相談だけが評価されていました。改定後は、HBOCが疑われる乳癌又は卵巣癌の患者に加え、HBOCと診断された人の父母・子・兄弟姉妹も対象となります。この結果、がんを発症していない家族への説明・相談も、診療報酬で評価されるようになります。対象となる家族には、専門的な体制による指導が行われます。この指導では、臨床遺伝学に十分な知識を有する医師と、がん診療の経験を有する医師が共同で対応します。両医師は、診療方針・診療計画・遺伝子検査の必要性などを説明します。この説明を通じて、家族は内容を十分に理解し、納得したうえで診療方針を選択できます。まとめ令和8年度診療報酬改定では、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の評価が見直され、がんを発症していない家族が新たに算定対象へ加わります。この見直しの背景には、がん発症前のリスク低減手術の有効性を示すエビデンスがあります。この背景を踏まえ、BRCA1/2遺伝子検査では、HBOCと診断された人の父母・子・兄弟姉妹が対象に加わります。同様に、がん患者指導管理料でも、HBOCと診断された人の父母・子・兄弟姉妹が対象に加わります。今回の見直しにより、家族はがんを発症する前でも、検査と指導を保険のもとで受けられるようになります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定|がん患者指導管理料の見直しをわかりやすく解説
がん患者指導管理料イは、これまで患者1人につき1回しか算定できませんでした。しかし、がん治療では再発や終末期など、複数の局面で診療方針の大きな変更が生じます。この実態を踏まえ、令和8年度診療報酬改定は、がん患者指導管理料イの算定要件を見直しました。本記事では、この見直しの具体的な内容と背景を、初めて学ぶ方にもわかるよう解説します。今回の見直しは、がん患者指導管理料イの算定要件を2点変更するものです。第1に、病状の変化により診療方針の変更等の話し合いが必要となった場合、更に1回まで算定できるようになりました。第2に、末期の悪性腫瘍の患者について、「入院中の患者以外」という制限を撤廃しました。これらの見直しの狙いは、診療方針に関する意思決定支援と、患者の心理的不安を軽減する指導を推進することにあります。がん患者指導管理料イとは何かがん患者指導管理料イは、医師と看護師が患者と診療方針を話し合った場合に算定する診療報酬です。具体的には、届出を行った保険医療機関において、医師が看護師と共同して診療方針等を十分に話し合い、その内容を文書等で患者に提供した場合に算定します。がんと診断され、継続して治療を行う患者が対象です。この管理料は、平成26年度改定で新設され、その後段階的に拡充されてきました。新設時は「がん患者カウンセリング料」を組み替えたもので、医師と看護師の共同による治療方針の話し合いを評価する仕組みでした。令和4年度改定では、対象を末期の悪性腫瘍の患者にまで広げ、診療方針に関する意思決定支援を実施した場合も算定できるようにしました。今回の令和8年度改定は、この意思決定支援の評価をさらに一歩進めるものです。変更点①:病状変化時に「更に1回」算定できる今回の見直しの中心は、算定回数を柔軟にした点です。現行では、がん患者指導管理料イは患者1人につき1回に限り算定できます。この回数に加えて、改定後は次の条件を満たす場合に更に1回算定できるようになりました。すなわち、病状の変化に伴って診療方針の変更等について話し合いが必要となった場合です。この変更の根拠は、がん治療における意思決定の局面が複数あるという点にあります。がん治療では、病期の進行や治療効果の変化に伴い、診療方針の変更を検討する必要が生じます。特に、根治を目的とした治療の後に転移や再発が判明し、根治が困難な状況となった場合には、治療方針の大きな変更が必要となります。こうした重要な意思決定の局面ごとに、患者への支援を評価できるようにしたわけです。変更点②:末期がん患者の「入院患者以外」制限を撤廃もう一つの変更は、末期がん患者への算定対象を広げた点です。現行では、末期の悪性腫瘍の患者への意思決定支援は「入院中の患者以外」に限って算定できました。この「入院中の患者以外」という文言を、改定後は削除します。これにより、末期がんで入院中の患者に対する意思決定支援も算定の対象となります。この撤廃は、意思決定支援を必要とする場面を制度が取りこぼさないための見直しです。終末期においては、治療方針の大きな変更が必要となることが多く、患者本人への精神的支援や意思決定支援が求められます。従来はこの支援を、入院患者には算定できませんでした。制限の撤廃によって、療養の場を問わず、必要な支援を評価できるようになります。見直しの背景と意義今回の見直しは、意思決定支援と心理的不安の軽減を推進するという方針に基づきます。厚生労働省は、悪性腫瘍の患者に対する診療方針等に関する患者の意思決定支援を推進する観点を掲げています。あわせて、患者の心理的不安を軽減するための指導の実施を推進する観点も示しています。この2つの観点が、算定要件を見直す土台となっています。こうした方針は、がん医療の現場が抱える課題を反映したものです。がん患者が直面する意思決定は、診断時の1回だけではありません。転移や再発により根治不能と判断され、診療方針を大きく変更する必要がある場合にも、重要な意思決定が求められます。今回の見直しは、この実態に制度を近づけ、質の高いがん医療及び緩和ケアの評価につなげる一歩といえます。まとめ令和8年度改定は、がん患者指導管理料イの算定要件を2点見直しました。第1に、病状の変化により診療方針の変更等の話し合いが必要となった場合、更に1回まで算定できます。第2に、末期がん患者について「入院中の患者以外」という制限を撤廃し、入院患者も対象としました。これらの見直しは、診療方針に関する意思決定支援と心理的不安を軽減する指導を推進する狙いを持ちます。がん治療の複数の局面で必要となる患者支援を、制度として評価する内容といえます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】人口減少地域のIMRT施設基準見直しを徹底解説
人口減少地域では、放射線治療を専ら担当する医師の確保が難しくなっている。強度変調放射線治療(IMRT)の施設基準は常勤医2名以上を求めており、医師が集まらない地域ではIMRTを提供できない。本稿は、令和8年度診療報酬改定で行われたIMRTの施設基準見直しを解説する。今回の見直しにより、一定の要件を満たす地域では常勤医1名でIMRTを実施できるようになった。対象となるのは、がん医療圏内にIMRT実施施設がない地域がん診療連携拠点病院等である。これらの施設は、特定機能病院等の医師と遠隔で共同して放射線治療計画を策定する。見直しでは、治療を実施する施設と遠隔で支援する施設のそれぞれに、満たすべき要件が定められた。見直しの背景:人口減少地域で放射線治療医が不足している今回の見直しは、人口減少地域における放射線治療医の不足を背景としている。IMRTは、腫瘍の形状に合わせて放射線の強度を調整する高精度な治療である。この治療には専門の医師が欠かせない。従来の施設基準は、放射線治療を専ら担当する常勤医を2名以上求めており、うち1名には5年以上の経験を課していた。人口減少地域では、この人数を確保できない医療機関が少なくない。医師の不足は、患者の治療機会に直接影響する。IMRTを実施できる施設が1つもないがん医療圏では、患者が遠方まで通院せざるを得ない。この提供体制を地域で確保するため、今回の改定は遠隔の医師との共同を認めた。遠隔連携により、地域の施設は常勤医1名でIMRTを実施できるようになる。実施施設の要件:常勤医1名で実施するための6つの条件常勤医1名でIMRTを実施する施設は、次の6つの要件をすべて満たす必要がある。この場合の常勤医は、5年以上の放射線治療の経験を有する医師に限られる。* ア(施設区分):地域がん診療連携拠点病院、または体外照射を年間200症例以上実施する地域がん診療病院であること* イ(圏内の状況):所在するがん医療圏に、IMRTの施設基準を届け出た他の医療機関がないこと* ウ(機器・施設):直線加速器、治療計画用CT装置、三次元放射線治療計画システム、セキュリティ対策を講じた遠隔放射線治療システムを備え、第三者機関による直線加速器の出力線量の評価を受けていること* エ(連絡体制):支援施設の放射線治療医と常時連絡がとれる体制にあること* オ(指針):遠隔放射線治療と医療情報のセキュリティ対策に関する指針が策定されていること* カ(実施水準):関係学会のガイドラインに基づき、治療を適切に実施していること支援施設の要件:遠隔で治療計画を支える施設の6つの条件実施施設を遠隔で支援する施設も、次の6つの要件をすべて満たす必要がある。支援施設の要件は、実施施設の要件と対をなして提供体制の質を担保する。* ア(施設区分):特定機能病院、都道府県がん診療連携拠点病院、または地域がん診療連携拠点病院であること* イ(医師配置):放射線治療を専ら担当する常勤医が3名以上おり、うち2名が5年以上の経験を有すること* ウ(支援医師):支援する医師は5年以上の経験を持つ常勤医であり、1名につき2施設までを支援できること* エ(機器):セキュリティ対策を講じた遠隔放射線治療システムを備えていること* オ(指針・記録):遠隔放射線治療の指針が策定・遵守され、実施に係る記録が保存されていること* カ(実施水準):関係学会のガイドラインに基づき、支援を適切に実施していることまとめ:遠隔連携で地域のがん医療を守る令和8年度改定は、人口減少地域のIMRT提供体制を守るために施設基準を見直した。がん医療圏内にIMRT実施施設がない地域では、特定機能病院等の医師と遠隔で共同して治療計画を策定できる。この連携を前提に、実施施設は常勤医1名でIMRTを実施できるようになった。実施施設と支援施設のそれぞれに定められた要件が、遠隔でも質の高いがん医療を支える。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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がんゲノム検査のエキスパートパネル省略要件を新設|令和8年度改定の算定要件を解説
がんゲノムプロファイリング検査(以下、CGP検査)は、がんに関わる多数の遺伝子変異を一度に調べ、患者ごとに適した治療薬を探す検査です。従来、CGP検査の結果を評価するがんゲノムプロファイリング評価提供料は、多職種の専門家による検討会(エキスパートパネル)で検査結果を検討することを算定の要件としてきました。しかし、投与できる薬が見つからない症例まで一律にエキスパートパネルを求めることが、効率的な提供の課題となっていました。本稿では、令和8年度診療報酬改定によるエキスパートパネル省略要件の見直しを解説します。今回の改定は、投与できる薬が見つからない症例でも、エキスパートパネルを省略してCGP検査と評価提供料を算定できるようにしました。エキスパートパネルを省略するには、ア・イ・ウの3つの要件をすべて満たさなければなりません。この省略要件のうちウでは、投与可能な薬が臨床試験や治験を含めても存在しない場合まで対象に含めた点が特徴です。あわせて、CGP検査の区分は「固形腫瘍」と「造血器腫瘍又は類縁疾患」の2つに整理されました。見直しの背景と趣旨今回の見直しは、質の高いがんゲノム医療を効率的に提供することを目的としています。この目的の背景には、エキスパートパネルを省略できる症例に関する知見が集積したことがあります。エキスパートパネルは、CGP検査の結果を医学的に解釈する多職種の検討会です。この検討会には、がん薬物療法や遺伝医学に関する専門医、遺伝カウンセリングの技術を持つ者などが参加します。多くの専門家が関与するため、実施には相応の時間と体制が必要になります。こうした体制の負担を踏まえ、今回の改定では、一定の要件を満たす症例でエキスパートパネルを省略できる規定が新たに設けられました。省略できる症例に関する知見が積み重なったことが、この規定を設けた背景にあります。エキスパートパネル省略の3要件エキスパートパネルを省略するには、ア・イ・ウの3つの要件をすべて満たす必要があります。このうちイとウの判断には、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の調査結果を参照します。要件アは、固形腫瘍を対象とするCGP検査を実施した場合です。造血器腫瘍などを対象とした検査は、省略の対象になりません。要件イは、C-CAT調査結果において、二次的所見を疑う病的変異が検出されない場合です。二次的所見とは、本来の検査目的とは別に偶然見つかる、遺伝性疾患などに関わる変異を指します。二次的所見が疑われる場合は、専門的な検討が必要になるため、省略の対象から外れます。要件ウは、投与可能な医薬品の有無に関する2つの場合のいずれかを満たすことです。この2つの場合を、次の章で詳しく説明します。見直しの中心となる省略対象要件ウは、投与可能な薬の有無に応じて①と②の2つの場合を定めており、いずれも今回新たに設けられた規定です。このうち、投与可能な薬が存在しない場合(②)まで対象に含めた点が、今回の見直しの中心にあたります。①は、検査で得られた遺伝子変異に基づいて投与可能な薬が存在する場合です。ただしこの場合は、検査に用いた体外診断用医薬品や医療機器の薬事承認・認証された使用目的に従うとき、または関連学会の指針に従うときに限られます。②は、投与可能な薬が臨床試験や治験を含めても存在しない場合です。この判断には、C-CAT調査結果を用います。薬が見つからない症例まで省略の対象に含めたことで、エキスパートパネルを求めずに算定できる範囲が広がりました。検査区分の整理あわせて、改定案ではCGP検査の区分が2つに整理されました。区分は「1 固形腫瘍を対象とする場合」と「2 造血器腫瘍又は類縁疾患を対象とする場合」であり、いずれも44,000点です。従来のCGP検査は、区分が分かれていない単一の項目でした。今回、対象とする腫瘍の種類に応じて2つの区分に整理され、造血器腫瘍を対象とする区分が新設されました。この整理に伴い、がんゲノムプロファイリング評価提供料の適用範囲も明確になりました。評価提供料は、区分「1 固形腫瘍を対象とする場合」を行ったときに算定できます。まとめ令和8年度診療報酬改定は、投与できる薬がない症例でも、エキスパートパネルを省略してCGP検査と評価提供料を算定できる規定を設けました。エキスパートパネルを省略するには、固形腫瘍を対象とすること、二次的所見がないこと、投与可能な薬の有無に関する要件を満たすことという、ア・イ・ウの3要件をすべて満たす必要があります。今回の見直しは、質の高いがんゲノム医療を効率的に提供するための一歩といえます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】外来腫瘍化学療法診療料の見直しを徹底解説
抗悪性腫瘍剤には、静脈内に点滴する製剤のほかに、皮下注射で投与する製剤があります。現行の外来腫瘍化学療法診療料は、皮下注射による投与を評価の対象としていませんでした。そこで令和8年度診療報酬改定では、皮下注射を新たに評価対象に加える見直しが行われます。本記事は、この外来腫瘍化学療法診療料の見直しを解説します。今回の見直しは、投与方法に応じた評価と安全対策の強化という2つの柱で構成されます。第1に、皮下注射により外来化学療法を実施した場合の評価を新設しました。第2に、外来腫瘍化学療法診療料1について、患者の急変時等に対応する指針の整備を要件としました。あわせて、連携充実加算などの加算の対象範囲を、皮下注射を実施した場合にも拡大しました。見直しの背景:外来での安心・安全な化学療法の推進今回の見直しは、外来における安心・安全な化学療法を推進する観点から行われました。悪性腫瘍の患者に対する化学療法は、入院ではなく外来で実施される機会が増えています。外来での化学療法は、患者が日常生活を送りながら治療を続けられる利点があります。一方で外来では、副作用への対応や急変時の備えを、医療機関があらかじめ整えておく必要があります。この背景のもとで、投与方法の多様化への対応が課題となりました。抗悪性腫瘍剤には、静脈内に点滴する製剤のほかに、皮下注射で投与する製剤があります。しかし現行の点数は、投与方法を区別せず、初回からの回数だけで評価していました。そこで今回の改定では、皮下注射を評価対象に加え、投与方法の違いを点数に反映させる見直しが行われました。見直し①:皮下注射による外来化学療法の評価新設第1の柱は、皮下注射による外来化学療法の評価を新設した点です。この新設は、投与方法に応じた点数区分の細分化として行われました。現行の点数は「初回から3回目まで」と「4回目以降」という回数だけで区分していました。改定案では、この各区分をさらに「静注製剤等の場合」と「その他の場合(皮下注射)」に細分化しました。具体的な点数は、外来腫瘍化学療法診療料1で次のように変わります。現行では、初回から3回目までが800点、4回目以降が450点でした。改定案では、静注製剤等の場合は初回から3回目までが801点、4回目以降が451点となります。皮下注射を含むその他の場合は、初回から3回目までが351点、4回目以降が201点として新たに設けられます。この細分化により、皮下注射の場合には静注製剤等とは別の点数が設定されました。皮下注射(その他の場合)の点数は、いずれの区分でも静注製剤等より低い水準です。なお診療料2と診療料3でも、同じ考え方で「静注製剤等の場合」と「その他の場合」への細分化が行われています。見直し②:急変時対応指針の整備を要件化第2の柱は、外来腫瘍化学療法診療料1について、急変時対応指針の整備を要件とした点です。この指針は、患者の急変時の緊急事態等に対応するためのものです。現行の施設基準では、この指針を整備することが「望ましい」という努力目標にとどまっていました。改定案では、この指針を整備していることが必須の要件となりました。要件化の狙いは、外来での安全な化学療法の実施を確実にすることです。外来化学療法では、投与中や投与後に患者の状態が急変する可能性があります。急変時に医療機関が迅速に対応するには、あらかじめ指針を整えておく必要があります。努力目標から要件への格上げによって、診療料1を算定する医療機関には、安全対策の整備がより明確に求められることになりました。見直し③:関連加算の対象を皮下注射にも拡大皮下注射の評価新設に伴い、関連する加算の対象範囲も拡大されました。対象となるのは、連携充実加算とがん薬物療法体制充実加算の2つです。連携充実加算は月1回150点、がん薬物療法体制充実加算は月1回100点を、それぞれ所定点数に加算する仕組みです。これらの加算は、現行では診療料1のイの(1)を算定した患者が対象でした。現行のイの(1)は、投与方法を区別しない「初回から3回目まで」の区分です。改定案では、皮下注射による投与を評価するイの(2)を新たに設けたことに伴い、加算の対象を「イの(1)又は(2)」に広げました。この見直しにより、皮下注射で化学療法を受ける患者に対しても、薬剤師による副作用の指導や処方提案などの体制が評価されることになりました。まとめ:投与方法に応じた評価と安全対策を強化令和8年度改定における外来腫瘍化学療法診療料の見直しは、外来での安心・安全な化学療法を推進するために行われました。見直しの柱は2つあります。第1に、皮下注射により外来化学療法を実施した場合の評価を新設し、投与方法に応じて点数を細分化しました。第2に、外来腫瘍化学療法診療料1について、急変時対応指針の整備を努力目標から要件に格上げしました。あわせて、連携充実加算などの加算の対象を、皮下注射を実施した場合にも拡大しました。これらの見直しにより、投与方法の多様化への対応と安全対策の強化が、診療報酬のうえで進められることになりました。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】無菌製剤処理加算の見直しを徹底解説|対象年齢は15歳未満へ
令和8年度の診療報酬改定では、保険薬局の無菌製剤処理加算が見直されました。従来の加算は6歳未満の乳幼児だけを対象にしていましたが、6歳以上の小児でも体重に応じた投与量の調整が必要になるという実情に合っていませんでした。本稿では、この無菌製剤処理加算の見直し内容を、変更点ごとに整理して解説します。今回の見直しは、対象年齢の拡大と点数の引き上げの2点です。対象年齢は、6歳未満の乳幼児から15歳未満の小児へと拡大されました。点数は、中心静脈栄養法用輸液の小児加算が137点から237点へと引き上げられました。一方、抗悪性腫瘍剤(147点)と麻薬(137点)の小児加算は据え置かれています。見直しの背景:15歳未満でも体重ごとの調製が必要見直しの背景には、6歳以上の小児でも年齢や体重に応じた無菌調製が必要になるという実情があります。医薬品の添付文書では、「小児」を15歳未満とすることが多く、15歳未満の患者への注射薬の調製では、体重ごとに投与量を調整する場面が多くなります。ところが従来の加算は6歳未満の乳幼児だけを対象としていたため、乳幼児でなくても調製に手間がかかるにもかかわらず、評価されない場合がありました。この評価されない場面は、中心静脈栄養法用輸液で特に顕著でした。中心静脈栄養で必要となるエネルギー量は、体重1kgあたりで年齢とともに変化します。たとえば1〜7歳では1日あたり75〜90kcal/kg、12〜15歳では40〜60kcal/kgと幅があり、患者ごとに個別の調製が求められます。こうした調製の負担は、6歳未満に限られるものではありません。負担の増加は、無菌製剤処理加算の算定実績にも表れています。無菌製剤処理加算の算定回数は年々増加傾向にあり、届け出る薬局も算定する薬局もともに増えています。こうした実情を踏まえ、6歳以上の小児の薬剤調製の実態に見合う形へと、加算の対象が見直されました。変更点1:対象年齢を6歳未満から15歳未満へ拡大1つ目の変更点は、小児加算の対象年齢の拡大です。無菌製剤処理加算のうち小児に対する上乗せ分は、これまで「6歳未満の乳幼児」だけを対象としていました。今回の見直しで、この対象が「15歳未満の小児」へと拡大されます。対象年齢の拡大により、6歳以上15歳未満の患者への調製も評価されるようになります。従来は6歳の誕生日を迎えると小児加算の対象から外れ、通常の点数しか算定できませんでした。見直し後は、14歳までの患者に無菌製剤処理を行った場合も、小児加算を算定できます。これにより、体重ごとの投与量調整という実際の負担が、点数に反映されることになります。変更点2:中心静脈栄養法用輸液の点数を137点から237点へ引き上げ2つ目の変更点は、中心静脈栄養法用輸液の小児加算の引き上げです。15歳未満の小児に中心静脈栄養法用輸液の無菌製剤処理を行った場合、加算点数が137点から237点へと引き上げられます。これは1日につき100点の増点です。引き上げの対象は、3種類の薬剤のうち中心静脈栄養法用輸液に限られます。無菌製剤処理加算は、中心静脈栄養法用輸液・抗悪性腫瘍剤・麻薬の3種類を対象としています。このうち小児加算が引き上げられたのは中心静脈栄養法用輸液だけで、抗悪性腫瘍剤(147点)と麻薬(137点)は据え置かれました。前述のとおり、中心静脈栄養では年齢や体重に応じたエネルギー量の調整が特に必要になるため、その負担が点数に反映されたものといえます。改定前後の小児加算の点数を、薬剤ごとに整理すると次のとおりです。中心静脈栄養法用輸液は、137点から237点へと引き上げられます。抗悪性腫瘍剤は、147点のまま据え置かれます。麻薬も、137点のまま据え置かれます。なお、基本点数(中心静脈栄養法用輸液69点、抗悪性腫瘍剤79点、麻薬69点)は、いずれも変わりません。まとめ:対象拡大と増点で小児調製の実情に対応令和8年度改定における無菌製剤処理加算の見直しは、小児の薬剤調製の実情に加算を合わせるものです。1つ目に、小児加算の対象年齢が6歳未満から15歳未満へと拡大されました。2つ目に、中心静脈栄養法用輸液の小児加算が137点から237点へと引き上げられました。抗悪性腫瘍剤と麻薬の小児加算は据え置かれています。これらの見直しにより、6歳以上15歳未満の患者に対する体重ごとの調製の負担が、診療報酬に反映されることになります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【2026年度診療報酬改定】産科管理加算の新設をわかりやすく解説
分娩件数の減少により、分娩を取り扱う産科病棟では混合病棟化と他科患者の増加が進んでいる。この状況では、母子の心身の安定・安全に配慮した管理体制の確保が課題となっている。この課題に対応するため、本メルマガでは令和8年度(2026年度)診療報酬改定で新設される「産科管理加算」の内容を解説する。産科管理加算は、分娩を伴う入院患者への産科管理を評価する新たな加算である。この加算の点数は、病院で1日につき250点、有床診療所で1日につき50点に設定されている。この加算の算定には、分娩開始日以降の入院患者へ必要な産科管理を行い、かつ地方厚生局長等への届出を行うことが求められる。この届出には、産科の標榜、十分な療養環境、専任助産師の配置など、4つの施設基準への適合が必要となる。産科管理加算が新設された背景産科管理加算は、産科病棟をめぐる環境変化を背景に新設された。この環境変化とは、分娩件数の減少に伴う産科病棟の混合病棟化と他科患者の増加を指す。この混合病棟化と他科患者の増加により、母子の心身の安定・安全へ配慮した対応が難しくなっている。こうした状況を踏まえ、産科における管理と継続ケアの体制が新たに評価されることとなった。この評価の対象は、母子の心身の安定・安全に配慮した産科の管理体制である。あわせて、妊娠・産後を含む継続ケアを行う体制も評価の対象に含まれる。産科管理加算の概要と点数産科管理加算は、分娩を伴う入院患者を対象に、施設区分へ応じた2段階の点数を1日につき算定する。この加算の対象患者は、分娩を伴う入院中の患者である。この患者へ必要な産科管理を行った場合に、所定点数へ加算する。この加算の点数は、施設区分に応じて次の2段階に分かれる。病院の場合は、1日につき250点を算定する。有床診療所の場合は、1日につき50点を算定する。産科管理加算の算定要件産科管理加算の算定には、届出と、分娩開始日以降の産科管理が要件となる。この届出は、後述の施設基準へ適合する保険医療機関が、地方厚生局長等へ行う。この産科管理は、分娩を伴う入院中の患者のうち、分娩が開始した日以降の患者へ提供する。なお、この体制は、母子保健事業等との連携を前提とする。この連携の相手先には、院内助産・助産師外来が含まれる。同様に、産後ケア事業等の母子保健事業等も連携の相手先となる。産科管理加算の施設基準産科管理加算の届出には、次の4つの施設基準を満たす必要がある。この施設基準は、標榜科、療養環境、助産師の配置に関する要件で構成される。第1に、産科又は産婦人科を標榜し、分娩を取り扱う保険医療機関であることが求められる。第2に、母子の心身の安定・安全の確保を図ることができる十分な療養環境が整備されていることが求められる。第3に、母子保健及び福祉に関する事業等との地域連携に係る業務について十分な経験を有する専任の助産師が配置されていることが求められる。第4に、病院が算定する産科管理加算の1については、産前産後の妊産婦及び新生児を管理する病棟であり、かつ当該病棟へ助産師が常時1人以上配置されていることが求められる。まとめ産科管理加算は、産科病棟の混合病棟化を背景に、分娩を伴う入院患者への産科管理を評価する新加算である。この加算の点数は、病院で250点、有床診療所で50点をいずれも1日につき算定する。この加算の算定には、分娩開始日以降の産科管理と、4つの施設基準への適合に基づく届出が必要となる。分娩を取り扱う保険医療機関では、自院の標榜科・療養環境・助産師配置が施設基準を満たすかを確認し、届出の準備を進めることが望まれる。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定|小児の高額な検査・薬剤を包括から外す2つの見直しを解説
小児医療では、造血器腫瘍のゲノム検査やRSウイルスの予防薬など、高額な検査・薬剤を用いる場面がある。こうした高額な項目の多くは、入院料や小児科外来診療料に「包括」されてきた。包括されると、その費用が個別に評価されず、医療機関の持ち出しになりやすい。本メルマガでは、この課題に対応した令和8年度診療報酬改定の見直しを解説する。今回の見直しは、高額な検査・薬剤を包括の対象から除外し、別に算定できるようにする2点からなる。第一に、造血器腫瘍等を対象とするがんゲノムプロファイリング検査を、小児入院医療管理料や集中治療系の入院料の包括対象から除外する。第二に、抗RSウイルス薬「ニルセビマブ」の投与当日を、小児科外来診療料の算定対象から除外する。いずれも、高額な項目を出来高で算定できるようにし、必要な医療を提供しやすくする点で共通する。がんゲノムプロファイリング検査を入院料の包括から除外がんゲノムプロファイリング検査のうち造血器腫瘍等を対象とするものは、小児入院医療管理料や集中治療系の入院料の包括対象から除外され、別に算定できるようになった。この見直しの理由は、検査料が高額でありながら、入院中に実施する必要性が特に高いためである。がんゲノムプロファイリング検査とは、腫瘍の多数の遺伝子を一度に調べ、治療方針の決定に役立てる検査である。この検査は、白血病やリンパ腫といった造血器腫瘍を含む小児がんで用いられる。検査料は高額で、専門家会議による結果の検討に対する「評価提供料」も伴う。こうした高額な検査は、従来、これらの入院料に「包括」されていた。包括とは、複数の医療サービスをまとめて一つの点数で評価する仕組みである。包括された項目は、実施しても入院料と別に算定できない。そのため、高額な検査を行うほど医療機関の負担が大きくなっていた。今回の改定では、造血器腫瘍又は類縁疾患を対象とする場合に限り、この検査を包括対象から除外した。除外の対象となる入院料は、救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料、小児入院医療管理料の5つである。これらの病棟では、当該検査に係る検査料と評価提供料を、入院料と別に算定できるようになった。抗RSウイルス薬ニルセビマブを小児科外来診療料から除外抗RSウイルス薬「ニルセビマブ」の投与当日は、小児科外来診療料の算定対象から除外された。これは、従来から同様に扱われてきた「パリビズマブ」と足並みをそろえる見直しである。小児科外来診療料とは、小児科の外来診療を包括的に評価する点数である。この点数は、検査や処置、投薬などをまとめて1日単位で算定する。ただし、高額な薬剤を用いる日には、包括では費用をまかないきれない場合がある。高額な薬剤を用いる日を包括の対象外とする扱いは、従来から「パリビズマブ」で行われてきた。パリビズマブは、RSウイルス感染症を予防する抗体製剤である。RSウイルスは、早産児や基礎疾患のある乳幼児で重症化しやすい呼吸器感染症を起こす。こうした高額な予防薬を投与する当日は、小児科外来診療料の対象から除外し、薬剤を別に算定できるようにしてきた。このパリビズマブと同じRSウイルス予防薬として、令和6年5月に「ニルセビマブ」が薬価収載された。ニルセビマブは、抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤に分類される。今回の改定では、このニルセビマブの投与当日も、パリビズマブと同様に小児科外来診療料の算定対象から除外した。あわせて、施設基準で定める対象薬剤も、「抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤」へと整理された。2つの見直しに共通する考え方2つの見直しは、高額な項目を包括から切り出し、出来高で算定できるようにする点で共通する。出来高とは、個々の医療サービスごとに算定する仕組みである。この仕組みなら、高額な検査・薬剤の費用が、そのまま診療報酬に反映される。この考え方の背景には、包括評価と費用のバランスがある。包括評価は、日常的な医療をまとめて評価し、算定を簡素にする利点がある。一方で、高額な項目まで包括に含めると、その費用が評価されず、必要な医療の提供が妨げられかねない。そこで今回の改定は、必要性が高く高額な項目を包括から除外し、両者のバランスを整えた。まとめ令和8年度診療報酬改定は、小児医療の高額な検査・薬剤を包括から除外する2つの見直しを行った。第一に、造血器腫瘍等を対象とするがんゲノムプロファイリング検査を、小児入院医療管理料や集中治療系の入院料の包括対象から除外した。第二に、抗RSウイルス薬ニルセビマブの投与当日を、小児科外来診療料の算定対象から除外した。いずれも、高額な項目を出来高で算定できるようにし、必要な小児医療を提供しやすくする見直しである。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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難病外来指導管理料2を新設|小児の成人移行期医療を評価【令和8年度改定】
慢性疾患を抱えた小児は、成人になっても継続的な医学管理を必要とします。しかし従来の診療報酬は、小児科から成人の診療科へ移った患者の医学管理を、十分に評価してきませんでした。本メルマガは、この課題に対応した令和8年度改定の「難病外来指導管理料」の見直しを解説します。今回の改定は、難病外来指導管理料を2つの区分に再編し、成人移行期の患者を新たに評価しました。従来の難病外来指導管理料は「難病外来指導管理料1」となり、点数は270点で変わりません。新設の「難病外来指導管理料2」は、小児科以外の診療科が270点を算定できる区分です。難病外来指導管理料2は、小児科から紹介された患者について、紹介後5年以内に限り算定できます。改定の背景 ── 成人移行期医療の「管理料の壁」今回の見直しは、成人移行期医療をめぐる「管理料の壁」を解消するものです。この壁は、小児科療養指導料と難病外来指導管理料が対象とする疾患の範囲が違うことから生じていました。成人移行期医療とは、小児期に発症した慢性疾患の患者を、小児科から成人の診療科へ引き継ぐ医療をいいます。医療の進歩により、長期の経過をたどる小児患者は増えています。そのため、成人医療へ円滑に移行する体制の整備が求められてきました。小児期の患者は、小児科で「小児科療養指導料」により管理されてきました。小児科療養指導料は、慢性疾患で生活指導が特に必要な15歳未満の患者を対象とし、270点を月1回算定できます。対象疾患には、脳性麻痺や先天性心疾患、小児慢性特定疾病などが含まれます。一方、成人の診療科では、慢性疾患の患者を「難病外来指導管理料」により管理します。難病外来指導管理料は、指定難病などを対象とし、270点を月1回算定できます。しかし対象疾患は指定難病などに限られ、小児科療養指導料より範囲が狭くなっています。この対象疾患の差は、疾病の数にはっきり表れています。令和7年4月1日時点で、小児慢性特定疾病は801疾病、指定難病は348疾病が指定されています。そのため小児科療養指導料で管理されていた患者が成人の診療科へ移ると、難病外来指導管理料の対象でない限り、紹介先は同等の管理料を算定できませんでした。改定の内容 ── 難病外来指導管理料の2区分化改定では、難病外来指導管理料を2つの区分に分けました。この2区分化により、成人移行期の患者が新たに算定対象へ加わりました。1つ目の区分は、従来の内容を引き継ぐ「難病外来指導管理料1」です。難病外来指導管理料1は、指定難病などを主病とする患者を対象とし、270点を月1回算定できます。この区分の要件は、従来の難病外来指導管理料から変わっていません。2つ目の区分は、今回新設された「難病外来指導管理料2」です。難病外来指導管理料2は、小児科以外の保険医療機関が算定でき、点数は1と同じ270点です。この区分により、成人移行期の患者を受け入れた診療科も、継続的な生活指導を評価されるようになりました。難病外来指導管理料2の算定要件難病外来指導管理料2の算定には、4つの要件を満たす必要があります。この4要件は、算定できる医療機関、対象となる患者、紹介の経路、算定できる期間を定めています。* 第1に、算定できる医療機関は、小児科を標榜する保険医療機関以外です。* 第2に、対象となる患者は、慢性疾患で生活指導が特に必要なものを主病とする、入院中以外の患者です。* 第3に、その患者は、小児科を標榜する他の保険医療機関から紹介を受けた患者に限られます。* 第4に、算定できる期間は、紹介を受けて初診を行った日から5年以内です。なお、難病外来指導管理料2も、必要な生活指導を継続して行った場合に、月1回に限り算定します。この5年以内という期間の限定は、成人の診療科への移行が定着するまでの継続を支えるものと考えられます。まとめ令和8年度改定は、難病外来指導管理料を2つの区分に再編しました。従来の内容は「難病外来指導管理料1」に引き継がれ、270点のまま変わりません。新設の「難病外来指導管理料2」は、小児科以外の診療科が、紹介後5年以内の患者について270点を算定できます。この見直しにより、成人移行期の小児は、良質な医療を切れ目なく受けられるようになります。用語メモ* 診療報酬:医療サービスに対して医療機関に支払われる対価。* 難病外来指導管理料:指定難病などを主病とする外来患者に、計画的な医学管理と療養上の指導を行った場合の評価(270点/月1回)。* 小児科療養指導料:小児科で、慢性疾患で生活指導が特に必要な15歳未満の患者に、必要な生活指導を継続して行った場合の評価(270点/月1回)。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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【令和8年度改定】新生児特定集中治療室管理料2の施設基準緩和を解説
新生児集中治療室(NICU)を有する病院では、低出生体重児の入院数が減少している。この傾向が続けば、施設基準を満たせず、NICUを維持できない医療機関が現れかねない。そこで本稿では、令和8年度診療報酬改定における「新生児特定集中治療室管理料の見直し」を解説する。今回の見直しは、新生児特定集中治療室管理料2の実績基準を緩和する内容である。緩和の対象は、総合周産期母子医療センターまたは地域周産期母子医療センターとして整備された医療機関に限られる。従来、これらの医療機関を含むすべての施設は、低出生体重児の新規入院患者数が年30件以上でなければならなかった。改定後は、対象施設に限り、この基準が年25件以上に緩和される。用語のポイント:新生児特定集中治療室管理料とは 新生児特定集中治療室管理料は、NICUで新生児を管理した場合に医療機関へ支払われる診療報酬です。施設基準により「管理料1」と「管理料2」に分かれており、今回の見直しは「管理料2」の施設基準が対象です。見直しの背景 — 低出生体重児の入院数の減少今回の見直しは、低出生体重児の入院数が減少している現状を踏まえている。NICUを有する病院では、出生体重2,500グラム未満の新生児(低出生体重児)の入院数が減少傾向にある。この減少が続けば、実績基準を満たせない医療機関が生じる。基準を満たせない医療機関は、新生児特定集中治療室管理料2を算定できなくなる。算定できなくなれば、地域の周産期医療体制を維持することが難しくなる。そこで、周産期医療体制を適切に維持する観点から、実績基準の見直しが行われた。見直しの対象施設 — 周産期母子医療センター緩和の対象は、都道府県が整備する周産期母子医療センターに限られる。対象となる施設は、総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センターの2種類である。これらのセンターは、「疾病・事業及び在宅医療に係る医療提供体制について」(令和5年3月31日付け医政地発0331第14号)に基づき、都道府県が整備している。いずれも、地域の周産期医療の中核を担う施設である。この中核施設に対象を絞る形で、実績基準の緩和が図られる。見直しの具体的内容 — 30件から25件への緩和見直しにより、対象施設の実績基準が30件以上から25件以上に緩和される。従来の基準では、直近1年間の低出生体重児の新規入院患者数が30件以上でなければならなかった。この基準は、単一の基準として、すべての施設に一律で適用されていた。改定後は、この基準が2つの選択肢に分かれる。1つ目の選択肢は、従来どおり、新規入院患者数が30件以上であることである。2つ目の選択肢は新設であり、対象施設に限り、新規入院患者数が25件以上であればよい。対象施設は、この2つの選択肢のいずれかを満たせばよい。まとめ今回の改定は、新生児特定集中治療室管理料2の実績基準を緩和する内容である。緩和の背景には、低出生体重児の入院数の減少がある。緩和の対象は、総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センターに限られる。これらの施設は、低出生体重児の新規入院患者数が25件以上であれば、施設基準を満たせるようになる。この見直しにより、地域の周産期医療体制の維持が図られる。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定:母体・胎児集中治療室管理料の見直し3つのポイント
周産期医療では、母体・胎児集中治療室(MFICU)が、リスクの高い妊産婦と胎児を集中的に管理する。このMFICUを評価する診療報酬が、母体・胎児集中治療室管理料である。しかし現行の管理料は、医師配置の要件が地域の実情に合わず、周産期医療の体制構築を十分に評価できていない。そこで本記事は、令和8年度診療報酬改定における母体・胎児集中治療室管理料の見直しを解説する。今回の見直しは、母体・胎児集中治療室管理料の要件を3つの点で変更する。第一に、医師配置に係る要件を緩和する。第二に、母体搬送の受入件数や帝王切開の実施件数などの実績を、新たな要件とする。第三に、算定対象となる「母体・胎児集中治療室管理を要する状態」に「産科異常出血」を追加する。1. 医師配置要件の緩和第一の見直しは、母体・胎児集中治療室の医師配置に係る要件を緩和する。この緩和の背景には、オンコールでの対応により速やかに診察を開始できる現状がある。現行の医師配置要件は、2つの選択肢のいずれかを満たすことを求めている。1つ目の選択肢は、専任の医師が常時、治療室内に勤務することである。2つ目の選択肢は、産婦人科または産科の医師が常時2名以上、院内に勤務することである。今回の緩和は、この2つ目の選択肢を対象とする。具体的には、届出病床数が6床以下の医療機関に限り、2名以上の配置を1名以上に緩める。ただし1名以上への緩和には、条件がある。その条件は、別の産婦人科・産科医が緊急呼出し当番により、30分以内に当該治療室での診療を開始できる体制の確保である。2. 実績要件の導入第二の見直しは、母体搬送の受入や帝王切開などの実績を、新たな算定要件とする。この実績要件は、地域周産期医療関連施設からの母体救急搬送の受入や、緊急帝王切開術への対応の重要性を踏まえたものである。実績要件では、次の4つのうち3つ以上を満たすことを求める。* ① 救急用の自動車または救急医療用ヘリコプターによる妊産婦の搬送受入件数が、年間10件以上であること* ② 多胎妊娠の分娩件数が、年間10件以上であること* ③ 帝王切開術による分娩件数が、年間50件以上であること* ④ 分娩時の妊娠週数が22週以上34週未満である分娩件数が、年間10件以上であること3. 算定対象への産科異常出血の追加第三の見直しは、算定対象となる状態に「産科異常出血」を追加する。産科異常出血は、分娩前のリスク因子にかかわらず生じうる。このため産科異常出血は、その状態に応じて、産後からの母体・胎児集中治療室での管理が必要となる。産科異常出血の追加とあわせて、算定対象の範囲も広がる。現行の算定対象は、リスクの高い妊娠と認められる妊産婦であった。改定後は、この妊産婦に加えて、分娩時または分娩後に重篤な合併症を来した者も、算定対象に含める。4. 経過措置実績要件の導入には、既存の届出施設に配慮した経過措置を設ける。令和8年3月31日の時点で総合周産期特定集中治療室管理料を届け出ている治療室は、令和9年5月31日までの間に限り、実績要件を満たしているものとみなす。まとめ令和8年度改定は、母体・胎児集中治療室管理料の要件を3つの点で見直す。第一に、6床以下の施設で医師配置要件を緩和する。第二に、母体搬送や帝王切開などの実績を要件とする。第三に、算定対象に産科異常出血を追加する。これらの見直しは、地域の周産期医療の体制構築を適切に評価することを目指す。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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令和8年度改定|救急患者連携搬送料の見直し3つのポイントを解説
救急医療の現場では、高次の救急医療機関に患者が集中し、その負担が増しています。そのため、救急患者を適切な医療機関へ転院搬送し、搬送先で確実に受け入れる体制の強化が課題となっています。本稿では、この課題に対応する令和8年度診療報酬改定の「救急患者連携搬送料の見直し」を解説します。今回の見直しは、3つの柱で構成されます。第一に、患者を転院搬送する側の評価を引き上げ、救急自動車以外による搬送も評価の対象とします。第二に、搬送先の医療機関が患者を受け入れて入院させる場合の評価を新設します。第三に、30分を超える長時間の搬送に対する加算を新設します。救急患者連携搬送料とは何か救急患者連携搬送料は、高次の救急医療機関が救急患者を他の医療機関へ転院搬送した場合に算定する診療報酬です。この搬送料は、救急外来での初期診療後、連携する他の医療機関で入院医療を提供することが適当と判断された患者を対象とします。対象となる患者を、搬送側の医療機関が自院の医師・看護師・救急救命士の同乗のもとで搬送したときに算定できます。この搬送料のねらいは、高次救急医療機関の受入余力の確保です。救急外来を受診した患者のうち、より専門的でない入院医療で対応できる患者を早期に他院へ搬送すれば、高次救急医療機関は重症患者の受入に注力できます。今回の改定は、このねらいをさらに進めるために、搬送側・受入側の双方と搬送の実態に応じた評価を整えるものです。見直し1:搬送する側の評価引き上げと対象拡大1つ目の見直しは、救急患者を転院搬送する側の評価です。この評価は「救急患者連携搬送料1」として再編され、医師等が同乗する場合の点数引き上げと、救急自動車以外による搬送の評価対象化という2つの変更が加えられました。医師等が同乗する場合の評価は、入院前に搬送する患者について引き上げられました。具体的には、入院中の患者以外の患者を搬送する場合の点数が、現行の1,800点から2,400点へと600点引き上げられます。この引き上げにより、入院前の早期の転院搬送がより手厚く評価されます。医師等が同乗する場合(1のイ)の点数は、現行から改定後へ次のように変わります。* 入院中の患者以外の場合:1,800点 → 2,400点(600点の引き上げ)* 入院初日の患者の場合:1,200点(変更なし)* 入院2日目の患者の場合:800点(変更なし)* 入院3日目の患者の場合:600点(変更なし)救急自動車以外による搬送も、新たに評価の対象となりました。この評価は「救急患者連携搬送料1のロ(その他の場合)」として新設され、医師等が同乗しない搬送を対象とします。この場合、搬送側の医療機関は患者の搬送手段について調整を行った上で搬送する必要があります。点数は、医師等が同乗する場合の半分以下の水準に設定されています。その他の場合(1のロ)の点数は、次のとおり新設されます。* 入院中の患者以外の場合:1,000点* 入院初日の患者の場合:500点* 入院2日目の患者の場合:350点* 入院3日目の患者の場合:200点見直し2:搬送先の受入評価の新設2つ目の見直しは、搬送先の医療機関が患者を受け入れる場合の評価の新設です。この評価は「救急患者連携搬送料2」として設けられ、搬送側だけでなく受入側にも評価を及ぼす点が特徴です。救急患者連携搬送料2は、受入時の対応に応じて2つの区分に分かれます。1つ目の区分(2のイ)は、搬送側で「連携搬送料1のロ」を算定した患者を、受入側が自院の医師等を同乗させて自院へ搬送し入院させた場合で、800点を算定します。2つ目の区分(2のロ)は、搬送側で「連携搬送料1のイ又はロ」を算定した患者を受入側が入院させた場合で、200点を算定します。いずれの区分も、入院初日に限り算定できます。2つの区分の点数は、次のとおりです。* 2のイ(受入側の医師等が同乗して自院へ搬送し入院させた場合):800点* 2のロ(搬送された患者を入院させた場合):200点見直し3:長時間搬送の加算新設3つ目の見直しは、長時間の搬送に対する加算の新設です。この加算は、搬送先までの搬送時間が長くなる場合でも円滑な転院搬送を進めるために設けられました。長時間加算は、搬送に要した時間が30分を超えた場合に700点を加算します。この加算の対象は、医師・看護師・救急救命士が同乗する搬送に限られます。具体的には、搬送側の「連携搬送料1のイ」または受入側の「連携搬送料2のイ」を算定する場合が対象です。施設基準のポイントこれらの評価には、それぞれ施設基準が定められています。施設基準は、搬送側の連携搬送料1と受入側の連携搬送料2で内容が異なります。搬送側(連携搬送料1)の施設基準は、救急搬送の実績と連携体制の確保を求めます。具体的には、救急搬送について相当の実績を有すること、連携先とあらかじめ転院体制を協議していること、搬送先から診療情報の提供を受けられる体制を整えていること、搬送後の病状急変に備えた緊急診療提供体制を確保していることが要件です。受入側(連携搬送料2)の施設基準は、対象となる医療機関の範囲を絞り込んでいます。具体的には、特定機能病院、救命救急センターを有する医療機関、急性期総合体制加算を届け出た医療機関のいずれにも該当しない医療機関であることが要件です。加えて、連携先とあらかじめ転院体制を協議していることが求められます。この基準により、高次救急を担うこれらの医療機関に該当しない医療機関が、患者の受入側として評価の対象となります。まとめ令和8年度診療報酬改定では、救急患者連携搬送料が3つの柱で見直されました。搬送する側については評価を引き上げ、救急自動車以外による搬送も評価の対象としました。搬送先については、患者を受け入れて入院させる場合の評価を新設しました。さらに、30分を超える長時間の搬送に対する加算を新設しました。これらの見直しは、高次救急医療機関と他の医療機関との連携を強化し、救急患者の適切な転院搬送と受入を推進することをねらいとしています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。 www.daitoku0110.news
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