PODCAST · games
オーディオドラマ「五の線」
by 闇と鮒
ある殺人事件が身近なところで起こったことを、佐竹はテレビのニュースで知る。容疑者は高校時代の友人だった。事件は解決の糸口を見出さない状況が続き、ついには佐竹自身も巻き込まれる。石川を舞台にした実験的オーディオドラマです。 ※この作品はフィクションで、実際の人物・団体・事件には一切関係ありません。 ※不定期ですが地味に更新してまいります。こちらはポッドキャスト専用ブログですので、テキストデータはウェブサイトにあります。http://yamitofuna.org
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66,12月21日 月曜日 15時35分 ホテルゴールドリーフ
66.mp3【お知らせ】このブログは「五の線リメイク版」https://re-gonosen.seesaa.netへ移行中です。1ヶ月程度で移行する予定ですのでご注意ください。【公式サイト】http://yamitofuna.org【Twitter】https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVMご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。すべてのご意..
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65,12月21日 月曜日 14時55分 ホテルゴールドリーフ
65.mp3【お知らせ】このブログは「五の線リメイク版」https://re-gonosen.seesaa.netへ移行中です。1ヶ月程度で移行する予定ですのでご注意ください。【公式サイト】http://yamitofuna.org【Twitter】https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVMご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。すべてのご意..
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64,12月21日 月曜日 14時22分 金沢銀行本店
【お知らせ】このブログは「五の線リメイク版」https://re-gonosen.seesaa.netへ移行中です。1ヶ月程度で移行する予定ですのでご注意ください。【公式サイト】http://yamitofuna.org【Twitter】https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVMーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー64.mp3本多慶喜は12畳ほどの広さの専務室にある革張りの自席に座った。ため息をついたところで懐にしまっていた携帯電..
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63,【後編】12月21日 月曜日 13時51分 北上山運動公園駐車場
63.2.mp3【お知らせ】このブログは「五の線リメイク版」https://re-gonosen.seesaa.netへ移行中です。1ヶ月程度で移行する予定ですのでご注意ください。【公式サイト】http://yamitofuna.org【Twitter】https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVMご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。すべての..
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63,【前編】12月21日 月曜日 13時51分 北上山運動公園駐車場
63.1.mp3「何で電話かけてくるって?そりゃあお前、おたくの理事官さんが帳場のことはお前に聞けっておっしゃっていらっしゃったからやわ。あ? ほんなもん知らんわいや。こっちが聞きてぇわ。お前こそあいつにいらんことちゃべちゃべ喋ったんじゃねぇやろな。あ?…喋っとらん?…そうなんか…。」会話の内容から電話の相手は岡田であることがわかる。片倉は県警で松永と出くわした。出くわしたというよりも、松永が片倉をつけていたと言った方が表現が適切かもしれない。松永の口から岡田の名前が出たため..
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62,【後編】12月21日 月曜日 14時17分 マルホン建設工業
【お知らせ】このブログは「五の線リメイク版」https://re-gonosen.seesaa.netへ移行中です。1ヶ月程度で移行する予定ですのでご注意ください。【公式サイト】http://yamitofuna.org【Twitter】https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVMご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。すべてのご意見に目を通さ..
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62,【前編】12月21日 月曜日 14時17分 マルホン建設工業
【お知らせ】このブログは「五の線リメイク版」https://re-gonosen.seesaa.netへ移行中です。1ヶ月程度で移行する予定ですのでご注意ください。62.1.mp3「失礼します。」木製の重厚感ある扉を開いて佐竹は入室した。彼の目の前には仕立ての良いスーツを見に纏い、窓から外を眺める本多善昌の姿があった。本多善昌は衆議院議員本多善幸の実子である。本多善五郎が築き上げた裕福な生活基盤を受け継いだ善幸は一人息子である善昌を殊の外かわいがった。ありとあらゆるものを買い..
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61,12月21日 月曜日 13時10分 熨子山連続殺人事件捜査本部
61.mp3松永は自席に座って右脚を小刻みに動かしていた。「連れてきました。」一見するとヤクザかと思われる迫力の風貌をもった男が松永の前に立たされた。「組織犯罪対策課の十河と申します。」「そこに掛けろ。」松永の向かい側の座席に座った十河は、そこに広げられている穴山と井上に関する資料に目を通し始めた。「どうだ。なにか分かるか。」十河は資料にさっと目を通して松永の問いかけに即座に答えた。「ポンプ(注射器)が確認されますね。突きですからシャブ(覚醒剤)です。シャブとなるとこの辺りで..
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60,12月21日 月曜日 13時22分 フラワーショップアサフス
60.mp3店の奥にある畳敷きの文子の部屋で古田と片倉は彼女と向かい合っていた。「当時のことは剛志さんからお聞きしました。」「そうですか。」「単刀直入にお聞きします。文子さん。あなたは500万の口止め料を貰いましたね。それは誰からのものですか。」「剛志から聞いたでしょう。コンドウサトミという人です。」「いえ、私がお聞きしたいのはあなたが口止め料を振り込むようにと依頼した人です。コンドウサトミさんではありません。」文子は古田の言葉に黙ってしまった。「忠志さんは口止め料の受け取り..
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59,12月21日 月曜日 13時15分 金沢銀行本店 役員会議室
59.mp3金沢の南町に居を構える金沢銀行。大正期に当時の著名な建築家の手によって建てられた石造りの重厚な外観は権威的でもあり、その中も当時の面影を色濃く残した作りとなっている。10メートルほどの高さを持った一階営業店フロアは圧巻であり、中でもその背後の中央から左右に別れるように広がる階段は翼を広げた鷹を彷彿させ、来店する皆を圧倒する迫力を持っていた。金と権力が集まる石川県の第一地銀金沢銀行の中枢には、この階段を登って行かねばならない。赤絨毯が敷かれた階段の先には役員と関係者..
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58,12月21日 月曜日 12時45分 河北潟周辺
58.mp3「何だって?お前はその刑事にそんなこと言ったのか。」「ああ。」「まったく何てことしてくれたんだ。」「なんだよ。聞かれたことをその通り話して何が悪いんだ。」「あのなぁ。俺はお前とは連絡とって無いって言ってしまったんだぞ。あぁ辻褄が合わなくなってるじくるじゃないか。」「はぁ?なんでそんな嘘をつく必要があるんだよ。」「いや…。」確かに佐竹のいう通りだ。村上は佐竹に余計な面倒をかけたくないとの気持ちから片倉に嘘の答弁をした。警察から事情を聴取されたという佐竹からの連絡もな..
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57,12月21日 月曜日 12時24分 金沢銀行金沢駅前支店
57.mp3人気が少なくなったロビーの雑誌類を整理していた佐竹は、店内に設置されたデジタルサイネージに目をやって今の時刻を確認した。そろそろ休憩をとっても良い時間だ。一足先に休憩に入っている橘はもうしばらくすればここに戻ってくる。彼の帰りを確認して自分も休憩をとろう。そう思いながら佐竹はひと通り店内を見回した。彼が店内奥の職員通用口に目をやった時に、その扉は開かれた。「支店長。」山県は羽織っていたコートを脱いで、そばにあるコートハンガーにそれを掛けた。支店長の決裁を求める稟議..
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56,12月21日 月曜日 11時53分 県警本部交通安全部資料室
56.mp3「松永…。」片倉の前方10m先にはコート姿の松永が立っていた。「お前、そこで何をしている。」そう言って松永はこちらに歩いてくる。「おい、片倉。松永か。まつ…。」電話の先で声を発する古田を遮るように、片倉はそれを切った。「やれやれ。ちょっとは大人しくしていてくれればいいものなんだが…。」松永は伸びきった自分の髪の毛を掻きあげた。「ちょろちょろちょろちょろネズミが動きまわって目障りなんだよ。何を調べていた。」「別になんでもいいだろ。あんたこそなんでこんな所におるんや。..
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55,12月21日 月曜日 11時30分 県警本部捜査一課
55.mp3携帯電話の音がなった。胸元にしまってあるそれを取り出して、片倉は画面に表示される発信者の名前を見た。そこには古田登志夫の名前があった。「おうトシさん。」「片倉。なんやら次から次とどえらいもんが出てきたぞ。」「そうか。ちょっと待ってくれ。」そう言うと傍らの職員にしばらく離席する旨を伝え、彼は捜査一課から喫煙室へと移動を始めた。熨子山連続殺人事件の捜査本部は北署に設置されているが、県警本部との連携をとるために、ここにも連絡室なるものが設置されている。そのため県警本部全..
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54,12月21日 月曜日 11時12分 金沢銀行金沢駅前支店
54.mp3事業所融資の稟議書をパソコンに向かって作成していた佐竹は行内にある時計に目をやった。時刻は11時を回っていた。目、肩、腰に疲労を覚え始めていた彼はいったん手を止めて、両腕を天井に向けておもいっきり体を伸ばした。その時、自席の後方に位置する支店長席を見ると山県の姿は確認できなかった。彼は朝から店を出たきりだ。連絡も何もない。「支店長まだ帰ってこんな。」自分の隣に席がある橘がつぶやいた。「そうですね…。あれから次長に連絡ありましたか。」「いや、何にも。」「融資部からは..
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53,12月21日 月曜日 10時22分 熨子山連続殺人事件捜査本部
53.mp3「そうですか。その小西とかという目撃者の話によると、穴山と井上は18時の段階ですでに一緒にいたってことですね。」部屋の一角に設けられた会議スペース。大きなテーブルに様々な資料が雑多に置かれ、その中心に位置する席は主である松永が外出中であるため空席であった。関はその空いた席の横に座り、捜査員から上がってきた情報の取捨選択に暇がなかった。「目撃された田上から現場までどれくらいの時間がかかるんですか。」「30分から40分といったところでしょうか。」「ならば事件発生時刻ま..
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52,12月21日 月曜日 10時35分 喫茶ドミノ
52.mp3「コンドウサトミって誰ねんて…。」赤松剛志は誰に言うわけでもなく、コーヒーをすすりながら呟いた。「自分の頭のなかだけで考えとっても整理できん…。」そう言うと彼は胸元からヘミングウェイやピカソがかつて愛用していたメモ帳のようなものを取り出して、ペンを走らせ始めた。ー6年前の事件のことをここに書き出してみよう。赤松は父親の忠志を中心にしてそこから放射状に人物を書き出し始めた。先ずは6年前の事件の相関関係。マルホン建設とベアーズデベロップメント、そして本多善幸。その構造..
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51,12月21日 月曜日 10時18分 本多善幸事務所前
51.mp3駐車場に停めてあった自分の車に乗り込んで片倉は胸元からタバコを取り出しそれに火を着けた。助手席側には先程まで一緒にいた岡田が座っている。松永率いる捜査本部とは別に自分と古田が独自の捜査を行なっていることは極秘だ。このことが露見すると松永の叱責が自分に飛んでくることはおろか、命令を出した朝倉の責任も追求されよう。一緒に行動している古田も同様だ。片倉は村上から聴取した内容を頭の中で整理しながらタバコをふかした。「お前、どう思う。」「どうって言われても、正直課長が何を聞..
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50,12月21日 月曜日 9時30分 本多善幸事務所
50.mp3「少しだけお話をしたいんですよ。」本多事務所の受付の女性に名刺を渡して、片倉はその中の様子を伺った。名刺を受け取った女性はそれに目を落とした。そして怪訝な顔つきでその名刺と片倉の顔を何度か見合わせた。「どうしました。」「警察の方なら今村上が対応しています。」「は?私じゃなくて?」「ええ。」ーしまった。帳場の捜査とかち合った。…こうなったら一か八かだ。「それは失礼。」そう言うと片倉は女性の手にあった名刺を奪った。「私はその人間の監督をする立場の者です。事務所の前で待..
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49,3年前 8月3日 水曜日 15時13分 フラワーショップアサフス
49.mp3文子は固唾を呑んだ。「忠志さんは知ってしまったんです。指定暴力団の仁熊会が公共事業に関する用地取得に深く関わっていることを。それもこの開発目覚しい田上地区に関する用地取得。そしてこれから本格着工される北陸新幹線沿線の用地取得についてです。用地取得にありがちな不正は、地権者が取得者に対して賄賂を送って、その査定に便宜を図るよう依頼するというものです。これだけなら話は簡単です。」彼女はだまって眼鏡の奥に光る一色の目を見ている。「忠志さんが知ったのは用地取得に関する複雑..
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48,12月21日 月曜日 9時5分 フラワーショップアサフス
48.mp3桐本家の通夜は今日の19時からとの報が、町内の回覧板からもたらされた。赤松剛志の頭の中には昨日のうちに桐本家へ弔問した時の光景が巡っていた。ひとの不幸を知り仮通夜というものに足を運んだことが何度かある。自宅の仏間にその亡骸は安置され、顔には白布が被せてある。遺族と二三言葉をかわして焼香。近しい間柄なら顔を見ていってくれと言われ、その白布をとって対面する。この通常の仮通夜での粛々とした営みが、桐本家では行われていなかった。一枚の紙が桐本家の玄関に貼られていたのみであ..
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47,12月21日 月曜日 9時56分 喫茶BON
47.mp3金沢駅構内のテナントスペースの一角にあるBONに、佐竹が銀行員特有の大きなカバンをもって入ってきた。「あら、佐竹さんじゃない。」マスターの森は中年の男性であるが、女性のような口調で佐竹を意外そうに見ながら、声をかけた。佐竹は森の言葉には耳を貸さず、店内をひと通り見渡していた。入り口から見て死角となるところに陣取っていた古田は、入店してきた佐竹に手を上げて合図した。それに気づいた佐竹はようやく森の言葉に反応した。「ああ、マスター。ちょっと約束があったんだ。」「あらそ..
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46,12月21日 月曜日 9時05分 金沢銀行金沢駅前支店
46.mp3今年も余すところ少しとなり、金沢銀行金沢駅前支店の週明け月曜日は朝から混雑していた。クリスマス向けの現金引き出しで来店する個人客もいれば、年末の差し迫った資金繰りの悩みを抱えてくる企業の経理担当者もいる。時間的なもの、金銭的なもの、多種多様であるが皆一様に余裕が無い。どうしてこうも日本の年末というのは気忙しいのだろうか。古田はその落ち着きのない店内に入るやその周囲を見渡した。佐竹康之がここにいるかを探るためだった。「いらっしゃいませ。どういったご用件でしょうか。」..
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45,12月21日 月曜日 9時10分 金沢北署1階
45.mp3「なんやこれ…すごい人や…。」北署の前に小西は立ち尽くした。報道関係者が歩道に所狭しと待機している。このあたりではそうも見ない全国ネットのテレビ局の中継車、自らが所属するメディアを証明するための腕章をつけた記者と思われる者たちが通りを行き交っている。これらの者たちを横目に小西は北署の正面玄関をくぐって目の前にある生活安全課の若い署員に声をかけた。「あの、すんません。」「何ですか。」「えーっと。」小西が北署にくるのは初めてのことではない。北陸タクシーに勤務してから過..
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44,12月21日 月曜日 8時45分 県警本部駐車場
44.mp3「よし勤務先と住所は抑えた。」そう言うと車に乗り込み、エンジンをかけた片倉は手にしていたスマートフォンを胸元にしまいこんだ。「便利やなぁ。」「トシさん、もう紙を持ち歩く時代は終わったんやぞ。」「ほうか、ワシはいつまでたってもメモ帳や。ちょっとそれ見せぇや。」「何や。」「それ、ここに書き写す。」片倉と古田は、佐竹、赤松、村上の三名の住所と勤務先を仕入れて県警本部の401資料室からそそくさと出た。その際に片倉は書き写していると時間がかかると言って、つい最近手に入れたス..
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43,12月21日 月曜日 8時15分 熨子山連続殺人事件捜査本部
43.mp3昨日開設されたこの捜査本部には捜査員が始終詰めている状況だった。松永は捜査本部に入ってからというもの、一睡もしていない。流石に彼の顔に疲労がにじみ出てきていた。犯人の確保を最優先した検問体制を取るも、めぼしい情報は松永の元には入ってきていなかった。そんな中、一人の捜査員が気にかかる箇所があるとして、熨子山の検問状況報告書を持って松永と向き合った。「どうした。」「昨日の熨子山ですが、一点だけ気になる箇所があるのです。」「言ってみろ。」捜査員は資料を松永の前に広げた。..
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42,12月21日 月曜日 7時45分 金沢銀行金沢駅前支店
42.mp3支店長の山県を前にして、20名いる行員が二列横隊で並んでいる。支店長代理の佐竹はその中央に居た。山県は先週の総括、そして今週の動きについて自分の考えを述べる。彼の話は簡潔だった。今期の金沢駅前支店の預貸金の実績は順調だ。今後はその中身、すなわち不良な債権を処理するべく行動をして行って欲しいとのことだ。そして土曜日に結婚をした服部を指名し、職員を前に簡単なスピーチをさせた。軽くジョークを挟んだ内容に、週明け月曜日の駅前支店の重たい雰囲気は和んだ。結びに山県は熨子山連..
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41,12月20日 日曜日 21時12分 中華料理 談我
41.mp3金沢のオフィス街南町。その裏通りから一本横に逸れた場所に談我はあった。このあたりは金沢の金融機関が軒を並べており、談我はこれらの業界関係者の御用達となっていた。創業20年。外観は古ぼけたよくある近所の中華料理屋の体であるが、その客足は途絶えたことはない。日中はこの南町を本拠とし、金融機関たちは鎬を削る競争を繰り広げている。しかしそれは食を楽しみ、酒を飲む場である談我においては関係がなくなる。背広という戦闘服を纏った男達が日中の気忙しさから解放され、身も心も開放的に..
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40,12月20日 日曜日 19時32分 古田宅
40.mp3古田と片倉は今後の捜査について綿密に打ち合わせをしていた。一色の高校時代の交友関係を当たるためには、彼らの情報を仕入れねばならない。県警に戻ってそれらを一旦整理したいが、自分たちがこそこそと水面下で動いていることが松永たちに露見すると、厄介なことになる。今日は自分たちの頭の中を整理することとし、明日の日勤時にさりげなくそれらの情報を取得することにした。「しっかし、なんでまたこんな事件が起こるんや。」片倉はごろりと畳の上に転がった。「ほやからあいつは好かんかったんや..
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39,12月20日 日曜日 19時48分 佐竹宅
39.mp3帰宅した佐竹の心中は穏やかではなかった。ーなんで赤松の母さんは、俺に一色のことなんて聞いたんだ。俺は一色とは何の関係もない。赤の他人だ。俺は何も知らない。何も関係がない。あいつが悪いんだ。あいつが全部悪い。 佐竹は冷蔵庫を開け、そこに入っていた缶ビールを一気に飲んだ。ーまさか…俺…疑われているのか…。ふと動きを止めて部屋に飾ってある高校時代の写真に目をやった。写真の先にある赤松の表情は笑顔だ。ーいや、そんなはずはない。再度、佐竹はビールに口をつけた。赤松文子から唐..
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38,12月20日 日曜日 18時32分 古田宅
38.mp3「鍋島惇。」「まさか。なんでここであいつが出てくるんや。」「ふっ、なんでって、しゃあねぇやろ。高校時代の同級生やからな。しかも奴さんは高校時代の戦友と来たもんや。繋がってしまったからにはどうしようもない。」「でも、この鍋島は熨子山のヤマと関係あるんか。」「さぁ、それは分からん。そいつはこれからの捜査次第で関係性が出てくるかもしれんし、まったく関係がないかもしれん。とにかく、一色の周辺を洗っとったらこんなもんが出てきましたってことや。」「トシさん…あんた情報集めてく..
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37,12月20日 日曜日 18時10分 古田宅
37.mp3「部長と穴山と井上の接点というのは、こんなところや。」「ふーん。…やるかやらないか…それが問題ってか…。」「ああ。」「んで、殺っちまったってか…。」片倉は手にしていたノートを一旦畳んで、天を仰いだ。「よしトシさん。要点を整理しよう。」「ん?」「一色は穴山と井上に何かしらの制裁を加えたかった。」「うん。」「そしてその制裁にはスピードが必要やった。」「そうや。」「仮に今回の事件がその制裁やったとせんけ。憎き豆泥棒(性犯罪者)は死んでめでたしめでたし。ほやけどスピードっ..
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36,12月20日 日曜日 18時28分 県警本部前
36.mp3「あれか。」アイドリングをしていた車のエンジンが切られ、中から男が二人現れた。ひとりは身の丈180センチはあるかと思われる体格のよい30後半か40前半の男。彫りの深い彼の顔つきと体格はどこか日本人離れした様子だった。一般的には男前と言われる部類の容姿を持っている。ゆっくりとした動作のひとつひとつが、直江に威厳を持たせていた。一方、もうひとりの男は彼と対照的だった。身長165センチほどの彼は小太りだった。胴長短足の典型的な日本人の体型をしている。高山の表情はどこか柔..
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35,12月20日 日曜日 17時20分 古田宅
35.mp3県警本部から車で10分離れた金沢駅の近くに古田が住むアパートがあった。築15年。古田は離婚後、この木造二階建ての質素な作りのアパートに引っ越してきた。2DK、畳式の間取りは、古田ひとりが生活するには充分のスペースである。このうちの一部屋は古田の趣味でもある仕事部屋に割り当てられている。捜査に関する資料を外部に持ち出すことは禁じられているが、個人的に書き留めたメモ類であるとして古田はそれらを自宅に保管していた。無論このメモを見ることができる者は彼以外にない。古田のメ..
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34,12月20日 日曜日 17時30分 フラワーショップアサフス
34.mp3開発が進んでいるとは言え熨子山の麓に位置する田上は、金沢の中でも雪深い地区であった。車の窓から外を眺めるとアサフスのある一帯は一面銀世界となっていた。アイドリングしたままの車内にいる佐竹はアサフスに入店する機会を伺っていた。駐車場には彼の他に1台、客のものと思し召しき車両が止まっていた。客が店を離れるのを待ちながら、ふと彼は思った。ーさっきもこの店に来て、今またここに来るなんて不自然じゃないか?冷静になって考えて見れば、佐竹のこの気づきは至極当然のこと。先程は旧友..
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33,12月20日 日曜日 17時12分 金沢駅
33.mp3はくたか13号が金沢駅に進入してきた。時刻は17時12分。到着時刻は17時13分であるから定刻通りだ。東京から北陸までの電車での道程は一般的に新潟周りの路線が選択される。東京から越後湯沢までは上越新幹線。その後特急はくたかに乗り換える。はくたかに乗り換えてしばらくして、雪のため運行ダイヤが乱れるかもしれないとの車内アナウンスがあったが、日本の交通インフラは世界に冠たるものだ。電車は金沢駅のホームに滑り込む。最終的には一分の狂いも無く金沢に到着することができた。学生..
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32,12月20日 日曜日 17時03分 金沢駅付近
32.mp3混み始めた幹線道路に一台のトラックが走行している。ウィンカーを出すタイミングとハンドルをきるタイミングが極端に短く、大きな車体を乱暴に操りながら車の間を縫うようにそれは走っていた。傍目から見ればかなり乱暴な運転である。「あの…」助手席にいた美紀が不安そうに口を開いた。が、運転席の赤松は無言である。「危ないと思います…。」美紀がそういうのも無理もない。赤松がハンドルをきる度に車体が傾き、遠心力で彼女の華奢な体がシートの座面を滑るほどである。赤松は彼女の言葉に反応を示..
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31,12月20日 日曜日 17時16分 民政党石川県支部
31.mp3村上は民政党石川県支部の三階にあるホールの外にいた。受付に置かれたパイプ椅子に腰をかけて彼は携帯電話を触っていた。ホールの中では本多善幸が支援者に対して、国土建設大臣就任の挨拶を先ほどから述べている。「村上君。」パリっとした身なりの小柄な男は村上の前に立って声をかけた。「あっ専務。」村上は慌てて携帯電話をしまい、彼の前に直立不動に立った。声をかけてきたのは本多善幸の実弟、本多慶喜だった。「ああ、いい、いい。君も疲れているだろ。座ってなさい。」そう言うと男は村上の隣..
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30,12月20日 日曜日 16時50分 金沢市香林坊
30.mp3石川の流行と活気の集積地である香林坊に佐竹はいた。クリスマスという時期はだれかに何かをプレゼントする時期。ただそう言う理由だけで先ほどまで女性に人気のプレゼントについて調べていた。ネットが教えてくれたのは彼女らがもらって嬉しいプレゼント第一位は指輪だということ。彼氏や意中の人から貰うという前提があるのだが…。ほんの数時間前に佐竹はアサフスで山内美紀という女性に出会った。彼はこの女性に一方的に惹かれた。ついさっき初めて会って、ひと言言葉を交わしただけの関係。こんな関..
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29,12月20日 日曜日 16時42分 熨子山連続殺人事件捜査本部
29.mp3「大変です。」ひとりの捜査員が血相を変えて勢い良く捜査本部に入ってきた。「何だ。手がかりが見つかったか。」自分の頭の中をツリーのように書き出したホワイトボードと向かい合って座っている松永は右手に持ったマーカーをくるくると回しながら、ぶっきらぼうに言った。「いえ、新たに被害者が出ました。」松永の手が止まった。「何だと。」「先ほど七尾中署から連絡があり、顔面を鈍器のようなもので複数回殴打された遺体を発見とのことです。」「顔面をか。」「はい。死因と身元を特定するために、..
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28,12月20日 日曜日 15時48分 県警本部内
28.mp3「あぁトシさんか。捜査の方は進んでるか。あのな、未明の遺体の身元が分かった。メモとれるか。」「はい大丈夫です。控えられます。」「ひとりは穴山和也23才。住所は銚子。もうひとりは井上昌夫これまた23才。住所は土清水だ。」「穴山と井上…。」古田の反応にかなりの間があった。気になった本部長の朝倉はそれについて問いかけた。「どうした、トシさん。」「…本部長。」「何だ。」「申し訳ございません。」「は?」「私、本部長に報告しておりませんでした。」「トシさん。俺はあんたの言って..
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27,12月20日 日曜日 15時00分 金沢北高等学校
27.mp3金沢市北部の熨子山麓に位置する金沢北高は、文武両道を校訓とした厳格な校風の私立高校である。どこの学校にもありそうな校訓であるが、ここはを堅実に実践し、その成果を挙げていた。日本で最も偏差値が高いと言われる東京第一大学に、毎年卒業生を複数名送り込み、片やインターハイに出場する程の実力をもった部活動も数多く存在する。標語だけが一人歩きするような学校ではなかった。金沢北高では挨拶、身なりなどの規律面で校則に反したことがあれば、厳しく処分される。また、先生や先輩の指示は絶..
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26,12月20日 日曜日 15時00分 七尾市街地
26.mp3能登半島は海岸線が複雑に入り組んでおり、その景観の良さから観光スポットとして人気がある。石川県外の方は、能登と言えば荒々しい男の海の風景を連想されるだろうが、それは外浦と言われる日本海側の海の事であり、内浦と言われる富山湾側の海はそれと反して穏やかで女性的な表情を持っている。七尾市は内浦に面している。能登島という島をもつ能登半島の中央部の都市であり、能登地区の中心都市としての性格を持つ。地形的にも農林水産業が主たる産業となっており、そこから派生する二次産品や加工品..
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25,12月20日 日曜日 13時52分 フラワーショップアサフス
25.mp3外を見ると先ほどまで振っていた雪は止んでいた。アサフスに面した山側環状線では、断続的に何台ものパトカーが熨子山方面へ向かっていた。ついさっきも機動隊の車が走っていった。異様な光景だ。何か事件に展開があったのだろうかと赤松はテレビをつけた。しかし事件の続報を報じる局はなかった。サスペンスドラマやバラエティ番組の再放送、テレビショッピング等、日曜の日常がそこにあった。テレビのスイッチを切った赤松は店内の時計を見た。時刻は13時52分。15時頃には葬儀会場の方へ行って、..
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24,12月20日 日曜日 14時05分 佐竹宅
24.mp3アサフスで購入した花が入った箱を手にして自宅に帰ってきた佐竹は、それをダイニングテーブルの上に置いた。花が入った箱を丁寧に開封すると子豚のかたちの鉢に三種類の花が奇麗に収まっていた。佐竹は花に関する知識は持ち合わせていない。だから、それらの花がどういった種類のものなのか分からない。彼の部屋には植物の類いは一切なかった。あるのは雑誌書類、パソコン、テレビ、その他家電、家具といったもの。この実用性のみを追求した部屋に植物が加わるのは異色であった。だがそう言った環境だか..
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23,12月20日 日曜日 13時08分 熨子山連続殺人事件捜査本部
23.mp3「未明のガイシャの身元が判明しました。」察庁組だけが残る捜査本部に関が入って来た。捜査データを分析をしていたスタッフは手を止めて関の方を見た。「報告しろ。」「はい。ひとりは穴山和也。23才男性。住所は金沢市銚子。地元ガソリンスタンドに勤務する男です。県外出身者であり、アパートに一人暮らしをしていたようです。勤務先のガソリンスタンドの店長が、出勤日のはずなのに連絡がつかないとの事で警察に届けがあり、本人の特徴等を照らし合わせた結果、身元が判明したものです。」「ほう。..
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22,12月20日 日曜日 11時48分 県道熨子山線 熨子町集落周辺
22.mp3熨子山の登り口にあたる熨子町の集落周辺は、松永率いる捜査本部の指示で検問の体勢をさらに強化する事となった。1時間前には3名の警官が検問にあたっていたが、さらに補充され6名の人員が検問にあたっていた。熨子町に唯一アクセスできる県道熨子山線は石川県と富山県を結ぶ生活道路でもある。そのため事件後もいつもどおり石川・富山の双方からの往来があった。このように交通量が多い道路を完全封鎖するのは難しい。そのため警官の補充を持って検問体制の強化を図ったのだ。事件現場から最も近い熨..
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21,12月20日 日曜日 12時22分 熨子駐在所
21.mp3「よう。」駐在所の奥にある畳が敷かれた休憩室で横になって、うとうととしていた鈴木は、不意を討つ来訪者に睡眠を妨害された。彼は目を擦りながらその身を起こし訪問者の方を向いた。「なんや、トシじゃいや。」「おう、お休み中すまんな。」熨子駐在所を訪れたのは、捜査二課の古田だった。彼は休憩室に上がり、その畳の上にあぐらをかいて座った。「どうしたんや。急にこんなとこに来るなんて。」「まぁ、お前に直接、いろいろ聞きたい事あってな。」古田と鈴木は昔なじみの同期の間柄である。どちら..
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20,12月20日 日曜日 11時00分 金沢北署「熨子山連続殺人事件捜査本部」
20.mp3北署の大会議室に設けられた「熨子山連続殺人事件捜査本部」には捜査員が集結していた。上座には松永を中心とした幹部組10名がずらりと並び、それと向かい合うように県警本部および所轄の捜査員総勢60名が座っていた。上座の中には本部長の朝倉と警備課長の三好、金沢北署署長の深沢の三人の姿も見える。張りつめた空気の中でキャリア組とノンキャリア組がひとりひとりの顔を確認するかのように視線を動かしていた。捜査一課の片倉は松永の隣に座り彼の表情を横目で見ていた。「それでは定刻となりま..
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19,12月20日 日曜日 11時52分 喫茶「ドミノ」
19.mp3ひととおり説明した赤松は手元に置いてあるメニューに目を通し、その中から定食を頼んだ。佐竹も赤松と同じものを頼む事にした。「今になって考えてみれば、あいつがウチの店に来てから何度か警察が来た事があったわ。」「警察が?」「ああ。」「警察が何をしに?」胸ポケットにしまってあった煙草を取り出した佐竹はそれをテーブルに置いた。赤松に「どうぞ」と促された彼はそれを咥えて火をつけた。「ほら俺の親父、6年前に事故で死んだやろう。」紫煙を口から勢い良く吹き出しながら佐竹は頷く。「そ..
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ABOUT THIS SHOW
ある殺人事件が身近なところで起こったことを、佐竹はテレビのニュースで知る。容疑者は高校時代の友人だった。事件は解決の糸口を見出さない状況が続き、ついには佐竹自身も巻き込まれる。石川を舞台にした実験的オーディオドラマです。 ※この作品はフィクションで、実際の人物・団体・事件には一切関係ありません。 ※不定期ですが地味に更新してまいります。こちらはポッドキャスト専用ブログですので、テキストデータはウェブサイトにあります。http://yamitofuna.org
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闇と鮒
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