EPISODE · Mar 9, 2026 · 18 MIN
#024 雲に乗って|解決しない和音が描く「ただいま」のない物語
from Masaru↽szk(マサルスズク)の つりざんまい ディープダイブ · host マサル
空に浮かぶ雲を見上げただけで、理由もなく胸が締めつけられる。そんな「言葉にならん郷愁」を、音だけで描こうとした楽曲――「雲に乗って」。この回では、対話形式でその作曲意図と仕掛けを、音楽的・精神的な両面から深く読み解いていきます。本作は、名曲「コンドルは飛んでいく」の“願いを空へ託す精神”を、日本の原風景と郷愁へと置き換えた、いわば魂の翻訳。けれど最大の特徴は、安心へ着地させないことにあります。この曲は、あえて——旋律は語りすぎず、和音は解決しすぎない。音楽でいう「ただいま(解決)」を鳴らさず、ずっと“玄関の前の気配”みたいな余韻に、聴き手をそっと置いていきます。その「解決しない透明な和音」こそが、懐かしさを完成させないための装置。だからこそ、リスナーは自分の記憶をその余白に流し込めて、「この曲、わしのために作られたんじゃないか」と錯覚するほど、パーソナルに響いてくるのです。二胡や楊琴のきらめき、笛の風のような息遣い。そして方言の切実な一言——「帰りたいと言わんでも、胸の奥で揺れとるけんか。」個人の思い出と、文化を受け継ぐ祈りが重なり合い、この曲は“帰る場所”を探すための招待状になっていきます。もし、最後に完璧な「ただいま」の和音が鳴ったなら、この物語は——どんなふうに変わるんでしょうか。
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