EPISODE · Apr 25, 2026 · 19 MIN
#39 タンポポの綿毛飛ばしマン
from 親子の生態図鑑 · host せいちゃんとまっさ
春の散歩は、名前を呼ぶことから始まる。チューリップ、ムスカリ、ハルジオン、芝桜、よもぎ、つくし——まっさが名前を出すより先に、せいちゃんはもう指を伸ばしている。知っていることを、知っていると言わない子どもの静かさがある。「知ってたんかい」と笑うしかない場面が、今日だけで何度あっただろう。綿毛を飛ばした。「久々にやった気がする」とまっさが言う。子どもと一緒にいると、忘れていた動作が戻ってくる。吹く、触る、匂いを嗅ぐ、拾う——そして「戻しとこ」と言う。取ってはいけないものがある、という感覚を、まっさはルールではなく所作で伝えようとしている。橋の上で、足元の高さについて話していたら、せいちゃんが聞いた。「命って何?」。心臓が止まること、とまっさが答えると、せいちゃんは「骨がバキバキに折れるかも」と付け加えた。どちらが哲学者かわからない会話だった。今日の散歩は、発見の記録であり、命名の練習であり、「取らない」という倫理の反復だった。そしてそれは、弓道場の前を通り過ぎるように、静かに、あっさりと終わった。
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