EPISODE · Nov 11, 2021 · 20 MIN
ビオロッカらじお~Ep. 14-1~狂言ラジオドラマ「鬼瓦」~本編!
from 古典芸能のビオロッカらじお · host ビオロッカらじお
知らざぁ言って聞かせやしょう、ビオロッカらじお!! この番組はラロッカが聞き手となり、古典芸能おたくのビオレに他ではなかなか聞けない古典芸能の楽しみ方を聴いちゃいます。 今回は狂言「鬼瓦」をラジオドラマ風に読んでみました! ◆前回『菅原伝授手習鑑』より『寺子屋』の振り返り ---------- 狂言「鬼瓦」 〈シテ 大名〉 〈アド 太郎冠者〉 大名〈名のり〉 遠国(おんごく)に隠れもない、大名です。ながなが在京いたすところに、訴訟ことごとく叶い、安堵の御教書(みぎょうしょ)をいただき、新知を過分に拝領いたし、その上国もとへのお暇までを下されてござる。このようなありがたいことはござらぬ。まず太郎冠者を呼び出だいて、喜ばしょうと存ずる。ヤイヤイ太郎冠者、あるかやい。 冠者 ハアー。 大名 おるか、おるか。 冠者 ハアー。 大名 いたか。 冠者 お前に。 大名 念無(の)う早かった まず立て。 冠者 かしこまってござる。 大名 汝を呼び出だすは別なることでもない。ながなが在京するところに、訴訟思いのままに叶い、安堵の御教書をいただき、新知を過分に拝領したは、なにとありがたいことではないか。 冠者 かねがね かようのお仕合せを待ち受けまするところに、これは一段とめでたいことでござる。 大名 それよそれよ それにつき、まだ汝の喜ぶことがあるいやい。 冠者 それはまた、いかようなことでござる。 大名 国もとへの、お暇までを下されたは。 冠者 これは重ね重ね、おぼしめすままのお仕合せでござる。 大名 そのとおりじゃ。さて、かように何事も、思いのままに叶(かの)うというも、日ごろ因幡堂のお薬師を信仰(しんごう)するによって、その御利生(ごりしょう)でかなあろう。国もとへ下ったならば、参詣することもなるまいによって、お礼お暇乞のため、参詣しょうと思うが何とあろうぞ。 冠者 これは一段とようござりましょう。 大名 それならばおっつけて行こう。供をせい。 冠者 かしこまってござる。 大名 サアサア来い来い。 冠者 参りまする参りまする。 大名 さて、国もとではかようなことは知らいで、きょうかあすかと、待ちかねているであろうぞ。 冠者 おおせらるるとおり、今か今かとお待ちかねでござりましょう。 大名 戻ってこの仕合わせを話いたならば、さぞ喜ぶであろう。 冠者 殊(こと)ないお喜びでござりましょう。 大名 イヤ何かといううちに はやお前じゃ。 冠者 まことにお前でござる。 大名 汝もこれへ寄って拝め。 冠者 かしこまってござる。 大名 さて、いつ参っても、しんしんとした殊勝なお前ではないか。 冠者 まことにしんしんといたいた殊勝なお前でござる。 大名 さて、みどもが思うは、このたび仕合わせよう国もとへ下るも、ひとえにこのお薬師のおかげじゃによって、国もとへ下ったならば、このお薬師を勧請(かんじょう)しょうと思うが何とあろうぞ。 冠者 これは一段とようござりましょう。 大名 それならばこれほどにはならずとも、この御堂(みどう)は恰好のよい御堂じゃによって、この格好に建てたいほどに、汝もここかしこへ気を付けて、よう見覚えておけ。 冠者 何がさてかしこまってござる。 大名 さてもさても結構な御堂じゃなあ。 冠者 さようでござる。 大名 あの欄間の彫り物などは、殊の外手の込(こ)うだ細工じゃなあ。 冠者 よい細工でござる。 大名 とてものことに、うしろ堂へ廻ってみょう。 冠者 ようござりましょう。 大名 サアサア来い来い。 冠者 参りまする参りまする。 大名 この御堂は、飛騨の工匠(たくみ)が建てた御堂じゃというが、どれから見ても、なりのよい御堂ではないか。 冠者 まことにどれから見ましても、なりのよい御堂でござる。 大名 ハハア、虹梁(こうりょう)・蛙股(かえるまた)・破風。ヤイ太郎冠者。 冠者 何事でござる。 大名 あの破風の上にある者はなんじゃ。 冠者 こなたはあれを御存じござらぬか。 大名 イイヤ 何とも知らぬ。 冠者 あれは鬼瓦でござる。 大名 なに 鬼瓦。 冠者 さようでござる。 大名 あの鬼瓦をようよう見るに、たれやらが顔によう似たではないか。 冠者 イヤ申し、あの鬼瓦に似た顔があるものでござるか。 大名 イヤイヤ、たれやらが顔にそのままじゃと思うたが、たれであったか知らぬ。オオそれそれ。(泣く) 冠者 これはいかなこと。イヤ申し、こなたは何をそのように嘆かせらるるぞ。 大名 さればそのことじゃ。あの鬼瓦が、たれやらよう似たと思うたれば、国もとへ残いておいた、女どもの顔にそのままじゃいやい。(泣く) 冠者 まことにさよう仰せらるれば、どこやらがよう似させられてござる。 大名 あの目のくりくりとした所、また鼻のいかった所などは、よう似たではないか。 冠者 いかさまよう似させられてござる。 大名 またあの口の、耳せせまでくゎっと引き裂けた所は、常々汝を叱る時の顔にそのままじゃいやい。 冠者 なるほど常々叱らせらるる時のお顔にそのままでござる。 大名 この所でそれがしが女どもを、たれ見た者もあるまいに、あのように似るというは、ふしぎなことじゃなあ。 冠者 まことにふしぎなことでござる。 大名 みどもはあの鬼瓦を見たれば、しきりに女どもがなつかしうなったいやい。 冠者 ちかごろ ごもっともに存じまする。(大名は泣く。) 冠者 イヤ申し、まずお心を静めて、よう聞かせられい。このようにお仕合わせよう、おっつけ国もとへ下らせらるれば、そのまま御対面のなることでござる。嘆かせらるるところではござりますまい。ご機嫌を(ノ)直させられたならばようござりましょう。 大名 ウーン、まことに汝が言うとおり、おっつけ下れば、そのまま会わるることじゃ。その上このように仕合わせよう下るに、嘆くところではあるまい。機嫌を(ノ)直いて、めでとうどっと笑(わろ)うて戻ろう。 冠者 ようござりましょう。 大名 それへ出(で)い。 冠者 かしこまってござる。 大名 まだ出い。 冠者 心得ました。 大名 つっと出い。 冠者 ハアー。 大名 さあ笑え。(二人はいっしょに笑ってとめる) 〔※岩波書店「日本古典文學大系」(底本山本東本)をもとに〕 ---------- 次回は感想戦です。お楽しみに! ❔質問箱はこちら 演劇 古典 芸能 芸術 舞台芸術 能 狂言 文楽 人形浄瑠璃 歌舞伎 落語 オペラ
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