EPISODE · Feb 14, 2025 · 12 MIN
ボイスドラマ「アイドル」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
『アイドル』は、高山市を舞台にした青春ドラマであり、音楽と夢、そして「本当の自分」をテーマにした物語です。アイドル活動と学園生活——まったく別の世界を生きる少女・栄美(エイミ)が、ある日、思いがけず「真実」と向き合うことになります。華やかなステージに立つ「EMIRI」と、学校では地味で目立たない「栄美」。彼女の二つの顔、そして彼女を取り巻く人々の想いが、音楽とともに交錯していく——。本作は、Podcast番組「Hit’s Me Up!」の公式サイトやSpotify、Amazon、Appleなどでも楽しめる作品となっています。ぜひ、音楽とともに物語の世界を感じていただければと思います!(CV:桑木栄美里)【ストーリー】<シーン1/ドーム公演>■J-POPイメージBGM/japanese-vocals-300539110.wav■SE/曲が終わったあとの大歓声(エミリコール「エミリ!」「エミリ!」「エミリ!」)「みんな、今日はありがとう!」45,000人の観客がペンライトを振る。アンコール最後の曲が終わっているのに、いつまでも、いつまでも。ソロアイドルの単独公演としては巨大過ぎるハコ。ステージ上だけでなく、アリーナやスタンドにまで細部にわたった演出。映像装置のせいで本来は55,000人のキャパであるドームが45,000人の収容人数となった。まさか満員御礼になるとは思ってもみなかった。ファンは予想以上に行動力がある、ということなんだ。アンコールも含めたセットリストはすでに終わっている。私はアコースティックのギターを抱えた。舞台監督がヒゲをさすりながらニヤリと笑う。彼にはリハのあと、即興で弾き語ったのを見られていた。ドラム、キーボード、ピアノ、リード&サイドギター。楽器だけが置かれたステージに、私はゆっくりと歩いていく。私の登場と同時にアンコールの拍手は止み、どよめきがおこる。やがて、割れんばかりの大歓声が私を包んでいった。■SE/大歓声と拍手BGM/faerie-hill-spring-347048818.wavBGM/seeds-in-the-sky-346427248.wav<シーン2/学校の教室/始業のチャイム>「ふぁ〜。もう5時限目かあ」アイドル・EMIRIの素顔。それは、高山市内の城山高校に通う1年生。本名・栄美(エイミ)という名前は、ファンの誰も知らない。言うつもりもないけど。だって、校則でアルバイトも課外活動も禁止なんだもん。違反したら即退学だし。アルバイトじゃなくてちゃんとした仕事なんだけどなあ。クラスの中は、昨日のEMIRIのライブの話で盛り上がっていた。私は、授業中以外は、いやたまに授業中も、机に突っ伏して寝ている。だめだめ。先生が教室に入ってくる前に起きなくちゃ。今日も今日とてゆ〜っくり顔をあげると、あ。まただ。机に置いた教科書がなくなっている。きっといつもの女子グループによるイジメだ。教室の隅から、”トイレに行ったら見つかるかも〜”という声があがる。にやけた声で笑いながら。仕方ない。私は立ち上がり、トイレへ向かう。廊下を歩く私を見て、みんながクスクス笑っている。そのわけは、トイレの鏡を見て理解した。私の背中に習字の半紙がくっついている。そこには、下手くそな文字で差別的な言葉が書かれていた。はあ、よくやる。私が誰ともつるまず、女子のどのグループにも属さず、毎日独りで登下校しているのが気に食わないみたい。そう。みんなが推してる人気アイドル『EMIRI』の正体をクラスの誰も知らない。メイクもせず、三つ編みに丸メガネ。ステージのときのオーラなど微塵もないのだから当然ね。みんな、私のこと、コミュ症で陰キャなオタク女子だと思ってる。あたってるけど・・・そう。栄美はEMIRIとは別人。真逆な人間だもん。仕事やライブが入ると学校は休まないといけない。まあ、最近は、学校って簡単に休めるからラクだけど。トイレの床に落ちていた教科書を拾い、教室へ戻る。後ろの扉から入ろうとすると・・・あーあ、鍵がかかってる。仕方なく前の席から入っていくと、担任の教師と目が合った。『オマエ、何回授業に遅れたら気がすむんだ?あ〜ん?』半分笑いながら黒板を指で叩く。もう。いじめがなくならないのは、教師にも問題があるんじゃないかなあ。『バツとして今日は居残りで補習だ』『あ、無理です。今日は家の用事があって』『きいてないぞ』『そんな・・・。朝マネージャ・・いえ母から電話入れているはずです』『あ〜ん?ああ、これか・・・なになに・・・叔父さんの三回忌法要?夕方から法要?まあ、いいけど。今度から気をつけろよ。今度遅れたら校庭10周だぞ』ちょっと先生、昨日のライブでアリーナの最前列にいたよね。あの席はファンクラブ会員専用シート。しかも最前列をとろうと思ったら、チケット発売日の午後3時にオンタイムでサイトをクリックしないと無理。確か、その時間教室は、先生不在で自習になっていたっけ。教室では、クラスの男子も女子もみんな必死でチケットをとっていたし。席に戻る私を、女子グループが下卑た笑いで迎える。私がデザインしたEMIRIアパレルグッズのカーディガンを羽織って。ウケる。一緒になって笑う男子グループも、机にアクリルグッズを置いている。文房具はどうしたの?筆箱の中もぜんぶEMIRIシーズングリーティングのアイテムじゃない。EMIRIってこんなに人気あるんだ。ファンは大事にしなきゃ、ってマネージャー兼保護者のママは言うけれど。実は私がいつも気になっていたのは、一番後ろの席の男子。誰ともしゃべらず、いつも独り。私以上に目立たず、下を向いて本を読んでいる。彼も丸メガネをかけていた。同じようにコミュ症なのかしら。<シーン3/翌日の学校の教室から音楽祭まで>翌日。教室に行って驚いた。黒板に、『城山高校音楽祭実行委員』という文字に、私の名前と一番後ろの彼の名前が大きく書かれていた。そんな。アイドル活動があるから無理だって。そんな事情などおかまいなく、有無を言わさぬ圧力で、すべての雑務が私たち2人だけに押し付けられた。仕方なく、リモートMTGを駆使して委員の役目をこなしていく。準備期間の2か月はあっという間。出演者とのやりとり。ポスター・看板の作成。ステージの設計・施工準備。音響オペレーター、照明オペレーターの手配。そのすべてを2人でこなす。そういえばもうひとりの彼もリモートが多いなあ。こんな2人で本当に音楽祭、大丈夫なの?大丈夫、じゃなかった。音楽祭当日。メインステージのトリで出演するはずだった軽音の子たちがいなくなった。しかも、本番30分前に!?どうするの?こんな大きなステージ作っちゃって。もうひとりの実行委員、彼と顔を見合わせる。『仕方ないから、カラオケで私、うたおうかな』冗談で言ったつもりが、『そうだね。そうしよう』とマジで決まっちゃった。なんか、ポスターをよく見たら、トリの軽音部の出演者名に「Surprise」とだけ書かれてある。ハメられた。そうか。よし、覚悟を決めよう。もう退学になってもいいや。こんなとこ。私は急いでママに電話した。<シーン4/音楽祭のステージ>■SE/会場内のざわめきラストのトリまですべての演奏が終わり、いったん緞帳が下がる。やがて休憩時間が終わり、会場が暗転した。『え?こんな演出あり?』会場内がどよめく。暗転している間に緞帳が上がる。■J-POP SONG/japanese-vocals-300539110.wavボーカルの入りと同時にトップサスがステージを貫く。光の中には真紅の衣装でEMIRIが立っていた。ママの手配で、バックバンドも照明と音響のオペレーターも全面協力。次回のライブのリハに、ちょうどいい準備運動だ、だって。最初、騒然となっていた客席から大歓声が沸き起こる。みんな総立ちになって、ものすごい声援。1コーラスを歌い終えたとき。曲途中のブレイクで照明がまた暗転した。”すごい演出。どんだけ凝ってるの?”次にトップサスが当たったのは、私と、私の横に立つもうひとり男の子。なんと。実行委員の彼は、超人気K-POPグループのメンバーだった。グループに1人だけ参加している日本人アーティスト。このものすごいサプライズで会場の熱気は最高潮に達した。”ああ、気持ちいい。まさに高校生活最後のライブね”合計3曲歌って、ライブは幕をおろした。終了後、私たちは早変わりのように着替えながら、軽音部用に準備しておいた抜け道でステージをあとにする。校庭に出たところで、私たちを同じクラスの男女たちが取り囲んだ。『EMIRIたちはどこなの?』『教えなさい』彼が毅然として答える。『裏門の方へ出ていったよ』クラスメイトたちは、慌てて裏門へ走っていく。彼が私に振り返ってウィンクした。『おつかれさま。打ち上げでカラオケでもいかない?』私も笑顔で答える。「賛成。あなたの歌を歌ってみたい」陽の落ちかけたグラウンドに2人の影が伸びていった。
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