EPISODE · Apr 24, 2026 · 19 MIN
ボイスドラマ「八百比丘尼の初恋」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
漢方薬剤師・よもぎと医学生・楸、そして離島出身の医大生・沙羅。美しい風景の中で紡がれる、切なくも温かな物語・・・・よもぎ(29歳/CV:蓬坂えりか)=カフェ「よもぎ」オーナー。漢方薬剤師。楸と出会う・楸=シュウ(22歳/CV:日比野正裕)=歴史好きな医学生。御岳町の旧家出身。医学を学び、医者を目指す。歴史・伝承・伝説が好きなのは母の影響・沙羅(22歳/CV:小椋美織)=楸と同じ大学に通う医大生。友達以上恋人未満。医師のいない九州の離島の出身。卒業後は楸と一緒に離島に戻りたいと思っている【シーン1:美女峠の展望広場】◾️SE:美女峠の野鳥のさえずり「むか〜し、むかし。南に見える山々のずっと奥、秋神川が深く淀む『龍宮淵』のお話。川のほとりに住む長者には、1人の娘がいました。ある晩、長者がどこかから土産をもらってきます。それは龍宮淵から持ち帰った『人魚の肉』。娘にはこう言い聞かせます。『これは禁断の肉。絶対に口にしてはならん』そう言われれば、よけい気になるのが人情というもの。娘は、いたずら心でひとかけら、口に入れてしまいました。最初ほんの一口のつもりだったのが、あまりの美味さについつい食が進みます。気がつくと、全部食べてしまっていました。すると・・・」「不老不死になったんだよね」ttt「そ。これが八百比丘尼伝説のさわり。あとは、楸も知ってるでしょ」「うん。八百比丘尼伝説は日本全国にあるから。不老不死になった八百比丘尼は全国へ旅に出た」「ご名答。娘は尼さんになって、諸国を行脚」「で、ここ美女峠にも立ち寄った」「うん。行く先々で病人の世話をして、癒していたらしいわ」「なんか、よもぎさんとかぶるなあ」「冗談。知ってる?八百比丘尼って、息を呑むほど美しかったそうよ」「それもかぶる」「からかわないで」「ほんとにそう思うんだけどな・・・」「八百比丘尼は行く先々に椿を植えた。ここにもあるでしょ。彼女が杖で突いたところから生えてきた・・・」「ああ、さっきの・・」「厳しい冬を越えても青々とした葉を保ち、真っ白な花を咲かせる椿。不老不死の象徴ね」「椿も薬草なのかな」「とっても優れた薬草よ。椿の花を乾燥させた『山茶花(さんさか)』。止血とか消炎の作用があるの。八百比丘尼は、そうやって人々を癒してたんじゃないかしら」「ますますよもぎさんだ」「私、そんなに年はとってないわよ」「はは・・ねえ、よもぎさん」「なあに?」「もう一度『龍宮淵』へ行ってみませんか?」「もう一度?」「うん。八百比丘尼の話、思い浮かべながら、覗いてみたい」「ひかれちゃうわよ」「竜宮城へ?できるもんなら、行ってみたいよ」ほんの少し距離をとりながら、こちらを見て楸が笑う。あらためて紹介するけど、楸は東京の医大へ通う大学生。春休みを利用して御嵩の実家からバイクで高山へ。もう4月になっちゃったけど、戻らなくていいのかな・・なんとなく、聞きそびれてしまった。楸は毎日のように、夕方薬膳カフェまで迎えにくる。そのままバイクにタンデムしてツーリング。今日は美女峠。・・の展望広場。龍宮橋へ行くならあたりが暗くなる前に出なきゃ。◾️SE:バイクのエキゾースト〜遠ざかっていく【シーン2:山王祭】◾️SE:山王祭の賑わい「すごいな・・・言葉にならない」春の高山祭。山王祭。楸は今まで一度も見たことがないそうだ。御嵩に住んでるのに。最終的に、祭を見てから東京へ帰る、ということになった。楸はバイクを宿泊しているホテルへ停め、2人で歩いて古い町並へ。温暖化の影響で、桜は落下盛ん。春風が吹くたびに舞い上がる、淡い花びら。そのなかを、絢爛豪華な屋台が曳かれていく。金箔と漆黒、そして深紅の幕を纏った屋台。「まるで・・・異世界に迷い込んだようだ」「もしかしたら、エルフにも会えるかも」「え?」嬉しそうに、楸が私を見つめる。やがて始まったのは、からくりの奉納。童子が一瞬にして翁へ変わる『三番叟(さんばそう)』。美女の打掛が荒ぶる獅子に変わる『石橋台(しゃっきょうたい)』。そして、壺の中から龍神が飛び出す『龍神台(りゅうじんたい)』楸は呆然と屋台を見上げる。「この世のものとは思えない・・・」「 のからくりは一時上演禁止になったのよ」「え・・どうして?」「あの美女の人形、見たでしょ」「うん・・」「あまりにも妖艶で、なまめかしくて、風紀を乱すからって」「そんな・・」「100年くらい屋台蔵に安置されて、復活したのは昭和59年」「じゃあ、この時代の僕たちはラッキーだったんだ」「あら。あなたも魅入られちゃった?」「いや・・そうじゃなくて・・・」「別に否定しなくてもいいじゃない」「ただ、すごいなあって・・・」楸って、感受性が高いのね。でも高山祭は屋台だけじゃないのよ。総勢数百人!という祭行列・御巡幸(ごじゅんこう)。日枝神社を出発して祭礼区域を巡っていく。獅子舞に雅楽、闘鶏楽(とうけいらく)に裃姿(かみしもすがた)の警固。誰かが言ってたけど、見るも鮮やか、聞くも雅。楸が言う通り、祭の2日間、高山は異世界になる。「こんなにすごいなんて・・・どうして今まで来なかったんだろう」「でしょ。だから私だって、もっともっといろんな人に知ってほしい」「ようし・・毎年来るぞ」「ってか、春だけじゃなくて、秋もあるからね」「もちろん来ます!」「じゃあ、その前に夜祭り(よまつり)ね」「夜祭り・・?」「灯りがともった屋台は、昼間と全然違うから」「ああ・・そうなんだ」結局、私たちは、夜祭りが終わるまで、高山を楽しんだ。屋台から曳き別れの歌「高い山」が流れる。「ねえ、よもぎさん、このあと・・・」「あ、よかったら、行ってみたいとこがあるんだけど・・・」「え・・どこ・・・?」「内緒」「え〜」少し、いじわるだったかな。不安そうな表情の楸を横目に、安川通りから宮川沿いを歩く。「初めてよもぎさんと会ったのもこのあたりだよね?」「そうね」「なんだか、お腹すいちゃったな・・」「でしょ」「え?」不思議そうな顔をする楸に笑顔を返して、歩き続ける。楸は私のあと、少しだけ距離をおいて歩く。あ・・さっきより、距離、縮まったかも。私たちは、行人橋(ぎょうじんはし)を渡る。祭の喧騒がだんだん小さくなっていった。【シーン3:熊の涙】◾️SE:居酒屋の雑踏「乾杯」「乾杯」市街地の居酒屋。実はこっそり、予約しておいたんだ。席だけでなく、お酒も・・・「熊の涙?変わった名前のお酒だね」「まずは飲んでみて」「うん・・」(※日本酒を呑む)「どう?」「わ・・すごい・・・なんていうか・・・まろやか・・・?優しい味」「朝日町のお酒なの」「え・・」「氷中貯蔵(ひょうちゅうちょぞう)。冬の間にお酒を搾って、氷の中で熟成させるの。標高1,300メートル、秋神温泉の氷。熊も涙を流すほどの冷たさ。そんな厳しい寒さに耐えて、じっくり蓄えた旨味よ」「だから”熊の涙”・・」「ホントにホントに限定酒だから。貴重なお酒。市街地で飲めるところは限られてるの」「そうなんだ・・」「ふふ、驚いた? 実は私、日本酒には目がないんだ」「意外・・・漢方薬剤師さんだから、お酒なんて飲まないのかと思ってた」「なに言ってるの。お酒は『百薬の長』って言うじゃない?適度なアルコールは血行を良くして、緊張を緩和してくれるのよ。立派な養生なんだから」「確かに・・」「いつか自分の名前が入ったラベルを出すのが夢なの。飲むだけで心も体も整うような、とっておきの日本酒・・・」「楽しみだなあ。大吟醸『よもぎ』ってか・・一番最初に飲ませてよ」初めて2人で飲むお酒。『熊の涙』予約してよかった。グラス越しに楸の顔を見る。さっきよりさらに、距離が縮まったかな・・・【シーン4:駅前のホテル】◾️SE:高山駅前の雑踏「今日はありがとう」「こちらこそ」「泊まるとこ、ホントに大丈夫?」「うん。市街地の友達のとこ、泊めてもらうことになってるから」「気をつけてね」楸が宿泊している駅前のホテル。居酒屋からでも、2人で歩いたらあっという間だ。ホテルの入口が見えてきたとき。冷たい春風が頬を通り抜けた。扉の前。誰かが立っている。「遅かったわね」「・・・沙羅?」彼女が灯りの下へ踏み出すと表情が浮かび上がった。ミディアムヘアの女性。シャギーを入れた毛先が揺れている。「よもぎさん、紹介するよ。一緒に医学を学んでいる、沙羅だ」「それだけ?」「それ以上でも以下でもないだろう」「つまんない」「なんでお前がここにいるんだ?」「だって、春休みはもう終わってるのよ。医大の講義が始まってもう一週間。教授だって心配してたわ」「よく宿泊先がわかったな」「自分で緊急連絡先とGPS、共有してったじゃない」「そっか・・」「それより、その人ほっといていいの?」「あ・・・」「大丈夫よ。私、ここでお暇(いとま)しますから」「そんなあ、もう少しお話しましょうよ」「沙羅!」「はじめまして。楸と同じ大学で医学を学んでいる、沙羅です。関係はさっき楸が言った通り・・・かなぁ?」「あ・・はじめまして。よもぎと申します。漢方薬剤師です」「漢方薬剤師・・・?は、は〜ん」※続きは音声でお楽しみください。
Embed this episode
NOW PLAYING
ボイスドラマ「八百比丘尼の初恋」
No transcript for this episode yet
Similar Episodes
No similar episodes found.