EPISODE · May 7, 2025 · 18 MIN
ボイスドラマ「赤い記憶〜心を映す鏡」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
今回お届けするボイスドラマは、高山レッドこと「アカナ」が主人公。祭と屋台を誰よりも愛する、ひたむきな少年が歩む成長の物語です。失われた祭屋台『浦島台』。そして、存在すら知らなかった双子の姉『アカネ』。赤かぶの町、宮川朝市。さるぼぼに宿る祈り。時を超えて紡がれる家族の絆。心の奥に秘めた想いが、静かに、しかし確かに、未来へと動き出します。どうぞ、アカナとアカネの物語を、あなたの胸に刻んでください。本作は、公式サイト「ヒダテン!」をはじめ、各種Podcastプラットフォーム、「小説家になろう」サイトでもお楽しみいただけます。【ペルソナ】・アカナ(16歳)=高山生まれ高山育ち=生粋の高山っ子/祭と屋台が何よりも好き(CV:米山伸伍)・アカネ=アカナの双子の姉(享年1歳)(CV:小椋美織)・朝市の野菜売り(38歳)=宮川朝市で赤かぶを売る/アカネをよく知る朝市の野菜売り(CV:小椋美織)【資料/さるぼぼに顔がない理由】https://column.enakawakamiya.co.jp/gifu/derived-from-hida-sarubobo.html【資料/失われた屋台/浦島台】https://www.takayama-yatai.jp/yatai/lostfloat/urashimatai.html【資料/萬屋仁兵衛工房】https://yorozuya2.jp/the-first-generation-nihei-yorozuya/【資料/白線流し】https://school.gifu-net.ed.jp/wordpress/hida-hs/school_info/hakusen-nagashi/[シーン1:八幡祭】◾️SE:高山祭の喧騒「そうれっ!」(※男衆たちの声)櫻山八幡宮の表参道。絢爛豪華な11台の祭屋台が曳き揃えられる。10月の9日・10日は秋の高山祭。櫻山八幡宮の境内では、布袋台(ほていたい)が見事なからくりを奉納していた。祭と屋台は高山の華!これほど美しくて、荘厳で、人を惹きつける祭などほかにはないだろう。オレの名は、アカナ。高山で生まれ、高山で育った、生粋の高山っ子。飛騨人(ひだびと)だ。生まれたのは、一之新町(いちのしんまち)。(※あえて旧町名にしてあります)桜山八幡宮の参道と江名子川(えなこがわ)に挟まれたエリア。小さいころから桜橋で遊び、秋葉様へは毎日お参りした。いま、オレの視線の先にあるのは、華やかな祭屋台たちの横でひっそりと佇む、1台の志良車(しゅらぐるま)。志良車というのは、台車部分だけが残った屋台のこと。明治8年の大火で焼け残った『浦島台』の志良車である。失われた屋台『浦島台』。記録によると、浦島台はからくりも備えていたらしい。演目は誰もが知る浦島太郎伝説。玉手箱を持つ浦島の人形が屋台のステージをゆっくりと進む。やがて白い鳩が飛び出すと、浦島の顔は一瞬にして白髪の翁に変わる。山王祭(さんのうまつり)で言えば、三番叟(さんばそう)か。『浦島台』の志良車を見ながら、胸の奥に、遣る瀬無い思いが募っていった。[シーン2:宮川朝市】◾️SE:宮川朝市の雑踏「おはよう」「おはよう、アカナ。祭の朝に、朝市なんかうろうろしとってええんか?」「ええんやよ。うちの組は」「ほんなもんかね」祭の2日目。宮川朝市をうろつく。顔見知りのおばちゃんと無駄話。生まれたときから野菜を売ってる隣組のおばちゃんだ。そろそろ今年採れた赤かぶが並ぶ頃だな。「お前いくつになった?」「16歳」「ほうか。も16年か。時が経つのは早えもんやなあ」「年寄りみてえなこと言うなや」「ははは。あ、おいアカナ。腰のさるぼぼとれそうやぞ」「ああ、これな。わかっとる。直さならん。母さん、このさるぼぼ見るといっつも捨てろって言うんや。早よ国分寺でお焚き上げしてもらいやあって」「そりゃ、しゃーないわな。あんま見とうねえやろし」「え?どういうこと?」「あ、いや。なんもねえ」ヘンなこと言うなあ。おばちゃん。それからは、どうでもいい話になったけど、どうにも気になった。腰につけたさるぼぼの人形をはずす。顔のないさるぼぼが何か言いたげにオレを見つめていた。[シーン3:祭の夜/アカナの夢】◾️SE:夢の中のイメージ祭りが終わったその晩。不思議な夢を見た。淡いピンクの霧がただよう世界。その中にぼんやり人影が浮かぶ。赤い顔をした・・・さるぼぼ・・・?「久しぶりだね、アカナ」「え?」「わかんない?」「ええっ?」「そっか、わかんないかぁ」「だってお前、さ、さるぼぼだろ」「そうだよ、さるぼぼ。だけど、名前はアカネ」「アカネ?なんか、聞いたことあるような・・・」「やだなあ、私たちずうっと一緒だったじゃない」「そりゃそうだろ。このさるぼぼ、生まれたときから持ってるんだから・・・」「アカナとずっと一緒にいられて、楽しかったよ」「なんか、過去形みたいに言うな」「そろそろ、国分寺でお焚き上げしてもらわないと」「なに言ってんだよ、そんなオフクロみたいなこと」「ねえアカナ、最後に願いをきいてくれる?」「まだお焚き上げするなんて言ってないぞ」「いいから。とにかく聞いて」「なんだ?」「私・・・浦島台をもう一度見てみたい」「え?」「アカナだって考えてたじゃない。失われた屋台の復活」「あ・・」「完全体作ってよ、浦島台の」「そんな・・無理だよ」「そうは思わない」「なんで?」「だってアカナ、飛騨の匠になりたいんでしょ」「え・・」「卒業したら、木工やりたいんでしょ」「なんでそれを・・・」「なってよ、飛騨の匠に」「なれる・・・わけない」 「なれるわよ、アカナなら」「無責任なこと言うなよ。だいたい、祭屋台1台作るのに、どんだけ費用がかかるかわかってんのか」「お金の問題じゃないと思う」「問題だよ。何億ってかかるんだぜ」「そんなん、クラウドファンディングでもなんでもやればいいじゃない」「ク、クラウド・・・?」「要は、やる気の問題よ」「やる気があっても、そもそも飛騨の匠になるのに何年かかるか、何十年かかるか、わからない」「それがどうしたの。時間なんてどんだけかかったって関係ないわ」「時間だけじゃない。匠になっても、からくり人形なんて作れない!」「作れなきゃ、作れるようになりなさい」「なんだ、それ」「からくり人形師に、頭下げて弟子入りしなさいよ」「からくり人形師・・」「名古屋の工房へ行って土下座でもなんでもすれば?」「あ・・」(※言われてみればという感じ)「お願い、何年かかってもいいから、浦島台を復活させて!」言ってることは無茶苦茶だったけど、アカネの言葉。その威圧感に圧倒された。夢だとはわかっていたのに、現実を凌駕する感覚。結局、朝の光が差し込むまで、意識は覚醒したままだった。[シーン4:翌朝/朝食風景】◾️SE:朝の小鳥のイメージ翌朝。朝食のとき、オレは両親に尋ねた。「”アカネ”って知ってる?」たちまち、両親の顔が曇る。それどころか、母親は手で顔を覆って泣き出した。『おまえ、どこでそれを?』(※父親)「どこだっていいだろ」夢の話だ、なんて言えるはずもない。しばらくの沈黙のあと、父が語り始めた。それは、あまりにも衝撃的な話。オレの頭で理解するのは難しいほど、悲しくてやりきれない話だった。アカネ、というのは、オレの双子の姉。一卵性双生児だった。家族4人の幸せな時間。悲劇が襲ったのは、オレたちが1歳になった日の明け方。隣からの貰い火で家が火事になった。ハイハイして玄関にいたオレは助かったが、ベビーベッドのアカネは、逃げ遅れた。火の中に飛び込もうとする父を、消防士が懸命に止める。母はオレを抱きながら、いつまでも泣き叫んでいたそうだ。「じゃあ、このさるぼぼは・・・?」生まれたその日。アカナとアカネにひとつずつ、さるぼぼの小さな人形を持たせたという。オレたちはいつも手で握って放そうとしなかった。家が全焼したとき、アカネの手に握られていたのは、焼け焦げたさるぼぼ。それを見た母は、天に向かってこう叫んだ。”さるぼぼは子どもの守り神じゃないのか””どうしてアカネを守ってくれなかったのか”(※ここはレッドの声で伝聞的に)怒り狂って、オレの手からもさるぼぼをもぎ取ろうとした。ところがオレは、赤ちゃんとは思えない力でさるぼぼを握り、絶対に離さなかったそうだ。そうか・・・だから母は、お焚き上げしろって、うるさく言ってたのか。オレは立ち上がり、母の目を見て話しかけた。「わかったよ、母さん」「つらかったろ」「だけど、このさるぼぼはまだお焚き上げしないよ」「オレたちの夢が叶うまで」母は涙を拭おうともせず、小さくうなづいた。[シーン5:誓い/充実した高校生活】◾️SE:からくり工房のガヤそれからのオレは、自分でも驚くほどの行動力だった。まず最初に、父と母に宣言する。「オレは飛騨の匠になる!」「うちの組の浦島台を復活させたい!」そのあと訪ねたのは、名古屋のからくり工房。屋台のからくり人形を数多く作っている人形師に土下座をする。「弟子入りさせてください!」最初はあきれていたからくり人形師も、オレの気合いに気圧された。弟子入りを認める。※続きは音声でお楽しみください。
Embed this episode
NOW PLAYING
ボイスドラマ「赤い記憶〜心を映す鏡」
No transcript for this episode yet
Similar Episodes
No similar episodes found.