EPISODE · Feb 3, 2025 · 10 MIN
ボイスドラマ「飛騨の菩薩」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
飛騨の山々に語り継がれる伝説。その中でも、最も謎に包まれた存在が「両面宿儺(りょうめんすくな)」である。『日本書紀』には、飛驛(ひだ)の国に住み、二つの顔と四本の腕を持つ異形の鬼神として記されている。天皇に背き、民を苦しめた逆賊—— そう伝えられてきたが、果たしてそれは真実なのか?長い歴史の影に埋もれた“宿儺”の真実に迫るとき、そこには強き意志を持ち、飛騨の地を守ろうとした二人の兄妹の姿があった。彼らは本当に“逆賊”だったのか?それとも、愛する地を守ろうとした“英雄”だったのか?この物語は、飛騨に生きた“宿儺”と呼ばれた者たちの真実を描く。今、伝説の扉が開かれる——(CV:桑木栄美里)【ストーリー】<プロローグ/日本書紀>飛驛の国に宿儺という人あり。体は一つで二つの顔があった天皇に従わず、人民を略奪するのを楽しみとした難波根子武振熊難波根子武振熊(ナニワノネコ/タケフルクマ)を遣わして殺させた-日本書紀-<シーン1/出羽ヶ平(でわがひら)にて>■SE〜森の音+村人のざわめき「なに!?武振熊(タケフルクマ)が攻めてくるだと!?」大和朝廷から伝令を受け取った家臣の顔は青ざめている。あの神功皇后の軍を率いた武振熊が、飛騨に宣戦布告をしてきたのだ。私の名は「句儺=クナ」。双子の兄は「宿=スク」という。クナの「儺」という文字は、邪鬼を追い払うという意味。私はこの飛騨で、神事を司る祭司である。兄の「宿」という文字は、前世から受け継ぐ力という意味を持つ。巫女でもあり、弓の名手と言われる私と、超人的な怪力を持つ兄。私たちは一心同体となり、飛騨の国を護ってきた。村人たちからは、救世観音(くせかんのん)の化身として敬われている。ここ飛騨は古くから農耕が盛んで、独自の文化を持ち、栄えてきたところ。森林資源だけでなく、鉄鉱石などの鉱物資源にも恵まれている。当然、中央集権をすすめる大和朝廷が黙っているはずはない。今まで、何度も飛騨に軍勢を送り、攻めてきたが、山岳地方の地形を生かした戦略で、ことごとく打ち負かした。だが、いよいよあの名将・タケフルクマが参戦する。今までのようには簡単にいくまい。強者の兄・スクも私を呼び、2人で戦略を考えなければならない。■SE〜夜の森/虫たちの鳴き声いつものように出羽ヶ平の洞窟で思案しているとき、一人の少女が入口からのぞきこんだ。「どうしたんだい?」私の問いかけに無邪気な笑顔で答える少女は、”食べてください”と言って握り飯を私たちに手渡す。つやつやと輝く米粒を口に運んでから兄と私は顔を見合わせ、大きくうなづいた。この子たちを守らなければ・・・■SE〜朝/小鳥のさえずり翌朝、村人たちを集めて、私が宣告する。「私と兄はこの村を出て、大和朝廷を迎え撃つ。ともの兵士も最小限にする。万が一、我々が破れてもみなは決してヤマトに抗ってはいけない」どよめきがおこる。兄はすかさず、巨大な鉄剣を地面の岩にうちつけ、村人の注目をひく。米づくりの長、最古参の女性は、”せめて最後の食事でもてなし、二人のご武運を祈願したい”と懇願した。仕方なく同意するが、今晩から位山(くらいやま)に向けて出発するので食事は道中でとると伝えた。昨夜の少女は、状況を知ってか知らずか、瞳いっぱいに涙をためている。「大丈夫。ただ討ち死にはしない。みなを護ることをここに約束する」今度は歓声に包まれる。兄に目配せをして、我々は洞窟に戻った。■SE〜夜の森/フクロウの声大和朝廷の軍勢は、我々の10倍はくだらない。その条件で戦うには、戦略しかないだろう。村人たちに惜しまれつつ出発した我々は、夜が明ける前に位山へ登った。地の利を生かす戦術と、霊峰・位山のご加護を信じて。<シーン2/位山にて>夜明けを待たずにタケフルクマの軍は迫ってきた。そしてついに開戦。我々は山の上からの奇襲で先手をとる。■SE〜合戦の音戦いは一昼夜に及んだ。歴戦の勇者たちの活躍。森の大木を流星刀で薙ぎ倒し、敵目掛けて投げつける兄。正確に迅速に弓矢を射る私。物量では劣るものの、超人的な我々の兵力に、タケフルクマは苦戦しているようだ。だが、戦いに時間がかかるほど、兵士たちには疲れが見えてくる。仕方なく、いったん頂上付近の我々の本陣、洞窟へとひくことになった。洞窟へ戻ったとき、我々は信じられないものを目にする。”食べてください”なんと、あの日の少女が、握り飯を持ち、洞窟で待っていたのだ。満面の笑顔で。”武器を運ぶ籠の中に隠れていたようです”またしても、兄と顔を見合わせる。すぐに二人で少女の方へ向き直り、”ありがとう。えらかったね”と労を労う。そのまま、友軍の方へ振り向き、戦略を伝える。「おまえたちは、この子を連れて出羽ヶ平に帰りなさい」”そんな、いくらなんでもお二人だけでは無理です”悲壮な声が洞窟内に響き渡る。「大丈夫だ。位山のご加護がある。それよりも急げ!やつらがくる。分水嶺まで上って、反対側から大回りしていけ」勇壮な兵士たちだが、目に涙を浮かべて、少女と洞窟を出ていった。やがて、下の方からヤマトの声が近づいてくる。私と兄は、洞窟の前にたちはだかって背中合わせになり、敵を迎えた。朝日を背にしたその姿は、1つのシルエットに、2つの顔、4本の手に弓と剣を持ち身構える神の化身に見えたことだろう。降伏をせまるタケフルクマに、私たちは最後まで応戦した。やがて、いくら軍勢が多くとも、一兵士ではまったく歯が立たない我らにタケフルクマは提案をつきつける。”このままでは埒が開かない。もし、一対一、いやお前たち2人が二対一で私と戦うのなら村の者には手出ししない”我々は提案をのんだ。だが、私も兄も知っている。もし我々がここで勝利したら、大和朝廷は黙っていないだろう。そして、私たちは、あえて仏になる道を選んだ。<エピローグ/日本書紀>飛驛の国に宿儺あり。体は一つで二つの顔があった天皇に従わず、人民を略奪するのを楽しみとした難波根子武振熊(ナニワノネコタケフルクマ)を遣わして殺させた-日本書紀-娘: 「ひどぉい!」母: 「そうね。宿儺は殺されて、飛騨の国も侵略されちゃった」娘: 「うそつき!」母: 「でもね、宿儺は飛騨の国を守ったのよ」娘: 「両面宿儺は?」母: 「滅ぼされたけど、菩薩になりました」
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