EPISODE · Mar 19, 2026 · 24 MIN
ボイスドラマ「こども雛の奇跡」
from 推しタカボイスドラマ「空と海の彼方に〜ちいさなちいさな海辺のまちのエモエモ物語」 · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、空と海の彼方に
小さな女雛が起こした、やさしい奇跡。引っ越し、すれ違い、寂しさ。でも、人形たちは見守っている。人形の町・高浜市吉浜が舞台のあたたかい再生の物語です。【ペルソナ】・陽咲(ひなた=5歳)=陽毬に連れられて東京から高浜へ引っ越してきた小学校修学前の幼女・陽毬(ひまり=陽菜の母/28歳)=M&Aコンサル会社で働くFA。母・陽子が老人ホームへ入ったことを知り、陽菜を連れて高浜へ・陽子(ようこ=陽菜の母/60歳)=元菊人形師の妻。自らも夫を手伝い細工人形を制作していた。吉浜で生まれ育った・ヒメ(細工人形)=陽咲の頭の中に存在するイマジナリーフレンド【プロローグ:引越し(高輪のアパート)】◾️SE:朝のイメージ「陽咲、急ぎなさい。電車の時間があるんだからね」「待って。ヒメちゃんがどこにもいないの」「ああ、あのお人形?もう、あきらめなさい。新幹線に遅れちゃう」「やだ。ヒメちゃんと一緒じゃなきゃ行けない」「お部屋のどこにもないんでしょ」「いないの」「じゃきっとお引越しの荷物の中にまぎれこんでんのよ」「ちがうもん」「ちがわないって」「だって・・」「しょうがないわねえ。あとで大家さんに連絡しとくから。もしここにあったら送ってもらいましょ」ママはあたしの手をぎゅっと握って、アパートを出た。急に決まったお引越し。でも、あたしはそれどころじゃなかった。ヒメちゃんはあたしの大切なお友だち。おばあちゃんが作ってくれたかわいいお人形。貝殻と木の実で作ったって。ちっちゃいけど、これもサイク人形だよって、言ってた。 ヒメちゃんがいないのにお引っ越しなんて、無理・・・【シーン1:名鉄吉浜駅】◾️SE:車内アナウンス〜吉浜駅の雑踏「やっと着いたわ。やっぱ遠いなあ、高浜って」のぞみさんから、赤い電車に乗り換えておばあちゃんちへ。ママはずっとひとりでブツブツ言ってる。あたしは、ヒメちゃんが心配でそれどころじゃない。「陽咲、疲れてない?」「うん、大丈夫。おばあちゃんはどこ?」「おばあちゃんはいないわよ」「え?どして?」「老人ホームにお引っ越ししたから」「ロウジン・ホーム?」「そう。母さんったら、勝手だわねえ。私にひとことの相談もなくホームへ入るなんて。まだ六十なのに・・」またブツブツ言い始めた。あたしに怒ってる、んじゃないよね・・「急いで異動願い出して・・名古屋支社勤務にしてもらって・・って、も、大変だったんだから」よくわかんないけど、怖い顔であたしの手を引いて、吉浜駅の外へ。「さ、ここからは歩きよ」「ねえママ、あれなあに?」「どれ?」あたしは駅前に立てられた看板を指差す。子どもたちがお雛様の格好をして歩いてる。ママは少し笑って、「あ〜。こども雛行列ね」「コドモ・ヒナ・ギョウレツ?」「そう。子どもたちがお雛様の格好をして町を練り歩くの」「おもしろ〜い」「陽咲も出てみたら?」「いいの?」「たぶんね。きっと・・いや?どうかな・・引っ越してきたばかりの子でも参加できるのかしら・・」そう言いながら、ママはあたしの手をひいてどんどん歩いていく。「人形小路(こみち)は上り坂だからね」「ニンギョウ・コミチ?」「うん。面白い名前でしょ。道のあちこちに人形が飾ってあるのよ」「お人形・・・」「おばあちゃんち着いたら、引っ越しの荷物片付けないとね」「ヒメちゃん、いるよね?」「さあ、どうかな・・・いるといいけど」いるって言ったのに。早く会いたいな。待っててね・・・ヒメちゃん。【シーン2:おばあちゃんの家】◾️SE:小鳥のさえずり結局・・どこにもヒメちゃんはいなかった。お引っ越しの荷物。ぜ〜んぶのぞいたけど、ヒメちゃんは見つからない。泣きそうになって、「ママ・・」と言ったとき。◾️SE:スマホの着信音「はい。陽毬です・・明日からよろしくお願いします。え・・・いまからですか?あ、はい・・高浜に着いてますけど・・私の顧客?わっかりました・・準備できたら出社します」いやな予感・・・「陽咲。ごめん。ホント、悪いんだけど、ママいまからお仕事いかなきゃいけないの」「え・・」「引っ越し初日から、ごめんね」「そんなぁ・・」「これ、ママの古いスマホ、陽咲にあげる。wifiもつないであるから。なにかあったら電話して。ほら。ここ、押すのよ。こうやって・・そうすれば・・」◾️SE:スマホの着信音「ママにつながるから」「え〜」「ホント、ごめんね!誰か来ても玄関あけちゃだめよ。お引っ越し祝いでケーキ買ってきてあげるから。苺のショートケーキ。陽咲、大好物でしょ。じゃ、行ってきます!」◾️SE:扉を締めて鍵をかける音だぁれもいない、おばあちゃんの家。広くて、土の匂いがして・・ときどき小鳥が鳴いてる。東京よりも、ずっとずっと、静かすぎて・・耳がいたい。あたしはスマホをじっと見つめる。電話のマークを押して・・ママのお顔を押すと・・あ、だめ。ママいまお仕事中だから。じゃあお隣のおひなさまのマークは・・・?押してみる。すると・・・「もしもし?」「だぁれ?」「え?」「なに?聴こえない」「もしかして・・」「そっか、よかったぁ」「え、いま?」「いまおばあちゃんちにいるの」「ねえねえ、おしえて」「こどもひなぎょうれつ、ってなあに?」「ひなたもでられるかなあ」「ほんと?」「うん、わかった」「ママに話してみる」「え?ママ?」「ママはお仕事だよ」「うん、ひとり」「寂しくないよ」「だって・・だって・・・」「ヒメちゃんとお話できたんだもん!」【シーン3:陽咲とヒメ】◾️SE:小鳥のさえずり「陽咲、最近よくスマホでお電話してるけど、誰と話してるの?」「う〜ん・・・ナイショ」「そう。ま、いいけど・・間違ってヘンなとこにかけちゃだめよ」「わかってる」「そういえば、陽咲が出たいって言ってたこども雛行列。申し込んでおいたわよ」「ほんと?」「うん。引っ越したばかりでも全然構わないって」「なんかドキドキしてきた」「なあに言ってんの。がんばりなさい」ママは、ああ言ったけど、やっぱり心臓バクバクする。◾️SE:スマホのボタンを押す音「♪ピポパ」〜受話器の中の着信音「こども雛行列、でるんだね?」「うん。でも大丈夫かなあ」「大丈夫大丈夫。みんな、楽しみにしてたから」「みんな?」「人形小路の細工人形たちだよ」「そうなんだ」「陽咲のこと、応援してるからがんばって」「ありがと」「アタシも見に行くから」「ホント?」「もちろん。だって、陽咲のかっこいいとこ、見たいもん」「やったぁ」「早く陽咲に会いたいな」「あたしもヒメちゃんに会いたい」「楽しみだね」「うん。約束だよ」「うん約束」「早く、こども雛行列の日にならないかな!」【シーン4:こども雛行列】◾️SE:小鳥のさえずり「陽咲、なぁに緊張してんの。もうちょっとしたら始まるわよ、こども雛行列」「だって・・・やっぱりドキドキする」「ママ、今から名古屋支社行かなきゃいけないけど、応援してるからね」「知ってるひと、誰もいないんだもん」「大丈夫だって。お隣のナイトウさんに頼んでおいたから」「どうしよう・・・」「ナイトウさんの推薦でね、陽咲、女雛に選ばれたのよ〜。すごいじゃない。よかったわね〜」「だからドキドキするんだってば」「おばあちゃんも見たがってたわよ、陽咲の女雛」「おばあちゃん・・・」「でも来れないらしいわ。老人ホーム入るんじゃなかったって」「じゃだあれもいないの?」「ごめんね陽咲、ママなるべく早く戻ってくるから」「うん・・・はやく帰ってきて」「おっけ。じゃあ行ってくるね。がんばって、陽咲」そう言って、バタバタとママは玄関から飛び出していった。◾️SE:スマホのボタンを押す音「♪ピポパ」「もしもし、もしも〜し」だめだ。今日に限って、電話つながらない。ヒメちゃんとお話したかったのに。どうしよう・・・◾️SE:玄関の扉が開く音スマホを耳にあてたまま玄関に立っていると、ナイトウのおじちゃんが入ってきた。さあ、行こうか、と言いながらわたしの手をひいて行く。お化粧して、ジュウニヒトエ、っていう着物を着る。綺麗な女の人がお話しながらお化粧してくれる。わ、ジュウニヒトエ、ってこんなに重いんだ。鏡の中のあたしは、ホントのお雛様みたいになっていく。やだ。鏡みてたら、心臓バクバクして目が回りそう。お化粧と着物着るのに1時間くらい。お外に出ると、みんな勢ぞろいしてた。男雛に三人官女、五人囃子、右大臣左大臣。ひなた知ってるもん。前におばあちゃんに教えてもらったから。みんな、ホントのおひなさまみたい。ナイトウさんがいまから出発します、と言った。まわりを見回しても、知ってる子はだれもいない。あたし、ちゃんとできるかな・・・なんか、足がガクガクしてきちゃった・・・どうしよう・・・すると・・・「だいじょうぶだよ」え?だれ?あたりをきょろきょろ見回す。「陽咲、がんばって」※続きは音声でお楽しみください。
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