EPISODE · Mar 22, 2025 · 10 MIN
ボイスドラマ「恋は借り物」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
ようこそ、『恋は借り物』の世界へ。この物語は、飛騨高山を舞台にした"ちょっと嘘から始まる、本気の恋"のお話です。仕事に追われる日々の中で、ふと舞い込んできた実家からの連絡。「見合いをしろ」──というじいちゃんの遺言をきっかけに、主人公・タツヤは“彼女代行サービス”で出会ったエミリと共に、ふるさと・高山へ帰ることになります。嘘から始まった関係が、果たして「本物」になるのか?そして、“恋は借り物”なのか、それとも“借り物が恋になる”のか──Podcastで聴いてくださる方も、「小説家になろう」で読んでくださる方も、どうぞ、ちょっぴり笑えて、ちょっぴり切なくて、ちょっぴりあったかい、そんな冬のラブストーリーを、お楽しみください(CV:桑木栄美里)【ストーリー】[シーン1:東京のデザインオフィスにて】■SE/オフィスの環境音〜電話の着信音「もしもし、あ、父さん?」冬の足音が近づく頃、いきなり実家から電話があった。しかも、その内容は・・・「え?じいちゃんが!?・・」じいちゃんの訃報。かなりの高齢でずうっと寝たきりだったから、そんなに驚かなかったけど・・「お葬式はいつ?」「明後日?明後日はデザイン入稿があるから無理だなあ」父の悲しそうな表情が伝わってくる。オレの実家は高山。町中(まちなか)で老舗旅館を営んでいる。18のとき、家出同然に飛び出してはや10年。今は、渋谷のデザイン事務所で働く、売れっ子のデザイナーだ。締め切りにしばられてじいちゃんの葬式も出られないなんて。あゝ、罪悪感ハンパねえ。『そうか。まあ、仕方ないな。そのかわり、近いうちに必ず帰ってこい』「なんで?」『見合いしてもらう』「見合い〜〜〜〜!?なんだそれ」『お前にもそろそろ将来を考えてもらわんと。うちの旅館の後継者なんだからな』「オレまだ28だぜ」『もう28だ』「冗談じゃない。じいちゃんが亡くなったっていうのに不謹慎だろ」『ばかもの。これ、じいちゃんの遺言だぞ。息をひきとるまでお前のことずうっと気にしとったわ』「そんなぁ」『それとも、ちゃんとした相手がいるのか?』「そ、それは・・・」『いいか、来週には見合いの席をもうけるからな。文句があるならそれまでに相手を連れてこい!』く、くっそう・・ようし、わかった。相手を連れていけばいいんだろ、相手を。相手なんて・・どうすれば・・マッチングサービス?いや、だめだ。お見合いはもう来週だぞ。落ち着け、なにか道はあるはずだ。とにかく、ネットで探してみよう・・[シーン2:東京駅】■SE/東京駅の雑踏「恋人代行サービスをご利用いただきまして、ありがとうございます。エミリと申します。今日はよろしくお願いします!」「あ、タ、タツヤです。よろしく・・お願いします」先週、勢いでレンタル彼女を頼んじゃったけど・・こ、こんな可愛い子が来てくれるなんて・・「タツヤさん、今日はどこへ連れってってくれるの」「た、高山へ」『高山って?八王子の方?』「いや、実は、その、折り入って相談が・・・」[シーン3:新幹線の車】■SE/新幹線の車内アナ「今日も新幹線をご利用いただき・・」「ホントに大丈夫なの?出張費とか延長料金とか、すごいかかっちゃうと思うけど」「背に腹は代えられないんで」「まあ、家族に会ってほしいって人は多いからねー」『で、着くのは何時くらい?』「名古屋まで1時間30分だろ。名古屋から高山までが2時間30分だから・・・乗り換え入れて4時間半くらいかな」『え〜っ!私、ちゃんと帰れるの!?』「着くまでにいろいろ打合せしておかないと」『ちょっと!きちんと答えてよ』「うちの実家、老舗の旅館だからもしもの時は無料でお部屋用意するから」『そういう問題じゃない。ってか、うちの事務所、泊まりとか禁止だからね、当然』「大丈夫大丈夫」『大丈夫じゃない!』[シーン3:高山の実家】■SE/旅館の環境音「初めまして。エミリと申します。タツヤさんとお付き合いさせていただいています」おお!さすがプロ。完璧な対応。オレたち、長い道中で、なんだかんだって盛り上がったもんなあ。東北出身で声優目指してがんばってる、ってとこも共感できたし。たま〜に演技とは思えない瞬間もあった。あ、それがプロってことか・・でも、なんか、”借り物の恋”って感覚はまったくないんだよなあ。術中にうまくハマったってこと?うちの親・・開いた口がふさがってない・・・ってそれ、オレに失礼じゃね?『まさか、ホントに連れてくるなんて・・・』え?そっち?『タツヤ、ちょっとこい』「なんだよ。あ、エミリ、ごめん」『今日見合いだと言ったの覚えてるか』「えええええ?見合いがいやなら相手を連れてこいって言ったじゃねえか」『連れてくるわけないと思ったんだよ』「どうすんだよ、彼女・・ってか、エミリ。結構な出費だったのに」『出費?』「いや、旅費だって旅費。東京〜高山っていくらかかるか知ってんだろ」『そんなものは払ってやるから、見合いをしろ』「無理だって。エミリにどうやって説明するんだよ」■SE/旅館の扉が開く音「こんにちは〜」「ミ、ミサト!?」「あ、タツヤさん、お久しぶり〜」「な、なんでお前がいるんだよ!?」『ばか、タツヤ、ミサトさんがお前のお見合い相手だ』「なんだってえ〜!?」「タツヤさん、どなた?」「あ、はじめまして〜。タツヤさんのお見合い相手、ミサトで〜す」「あっ、そうなんですね・・どうもはじめまして。エミリです」「あの、失礼ですけど・・タツヤさんとはどういうご関係?」「ちょっと、エミリ。こっちへ来てくれ」「あ、はい」少しだけ眉間にしわを寄せてとまどうエミリ。オレは自分の部屋へエミリを連れていく。家を出たときのままになっている部屋。見合いのこと、ミサトのこと、すべて正直にエミリに話した。「よかったじゃない」「え・・」「だって、これで私は不要でしょ」「なに言ってんだ、オレは見合いが嫌でレンタル彼女、頼んだんだぞ」「でも、幼馴染だとは思ってなかった・・」「そりゃそうだけど・・」「彼女、ミサトさんのあなたを見る目、あれ、本気よ」「興味ねえし・・」「うそばっかり。顔に書いてあるわよ。オレもミサトが好きだって」「やめてくれ!オレが好きなのは・・・」「え・・」「あ、いや・・とにかく、見合いなんてクソくらえだ」「しょうがないわねえ。いい?私たちはこの部屋で喧嘩して別れたってことにするの。理由もわかりやすいし、ちょうどいいじゃない」「よくねえよ・・」■SE/ドアをノックする音「タツヤさん?」「なんだ、ミサト?取り込み中だ」「ミサトさん、大丈夫よ」「やめろ、勝手に・・」「お父さんから聞いたわ。エミリさんはタツヤさんの彼女・・」「そうだ」「だったんだけど。つい10分前まではね」「どういうこと?」「別れたのよ」「えっ!それって・・私のせい?」「ううん、私たち、少し前から別れ話をしていたの」「ホント?」「だから、ミサトさんは、心置きなく見合いを楽しんで」「エミリ!」「タツヤさん、いままでありがとうね。私、次の特急ひだで帰るわ、東京へ」「そんな・・」「エミリ!」「楽しかったわ。いいところね、高山って」「行くな!」「え?」「行くな、エミリ!オレはオマエが好きだ!本当に好きなんだ!」「だって私たち・・」「出会ってからの時間なんて関係ない!たった6時間だって、オレの気持ちは本物だ」ミサトは不思議な顔をして、オレたちを見る。そりゃそうだろう。オレだって、自分が信じられない。それに、きっと、確実に、間違いなく、フラれるし。エミリの手をとり、家を飛び出す。行き先はもちろん、高山駅。オレは怖くて、もうエミリの顔を見られない。中橋を渡ったあたりで、エミリが手を握り返してきた。振り向くと、複雑な表情をして苦笑いしている。「あ〜あ、事務所になんて報告しよう。正直に言えば規約違反でクビだし」「スマン!オレから事務所に連絡するよ」「いいわよ、どうせ、そろそろ辞めどきだって思ってたし」「え?」「さっきのセリフ、上手だったけど、まさか、本気じゃないよね」「ほ、本気だったらどうする?」「そうね・・・今日はもう、東京へ帰るのやめようかな」今度は、いたずらっぽく、口の端を少しゆがめて笑う。今日は帰らないって・・・?予報にはなかった初雪が、2人の景色を白く染めていった・・・
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