EPISODE · May 10, 2025 · 16 MIN
ボイスドラマ「龍が舞う桜の下で〜千年の時を越えて」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
桜が舞う季節、私はまた、あの日のことを思い出す。かぐらという名前を授かり、舞姫としての役目を受け継いできたけれど——あの日、鳥居をくぐった先で出会ったのは、伝説なんかじゃない、本物の“奇跡”だった。この物語は、私の心に刻まれた、忘れられない春の出来事。位山の聖域に守られながら、千年の時を超えて、龍が舞った——その奇跡を、あなたに届けたい。ようこそ、『龍が舞う桜の下で〜千年の時を越えて』の世界へ(CV:小椋美織)【ストーリー】[シーン1:高校のグラウンドで/陸上部の練習】<かぐらのモノローグとセリフで進行>■ピストルの音「パンッ!」〜走る陸上部の少女たち「追い風よ!そのまま加速!インターハイは目の前だからね!」「よしっ!ラスト50!いけるよ!」吹き降ろす風の中、陸上部の女子たちがゴールを駆け抜けていく。みんな順調に仕上がってるみたいでひと安心。私は、かぐら。高山市内の高校に通う18歳。で、陸上部のキャプテン。インターハイに向けて頑張ってきたけど、ブロック大会に勝ち進まないと、その先はない。こうなったら神頼みかな。いや、私がそれ言ったらだめでしょ、ふふ。「さあみんな、日が暮れる前にラスト一本決めよう!いくよ!」もちろん私もみんなと走る。■陸上部員の走る音はあ、はあ、はあっやるしかない。今年こそぜったい・・・インターハイ、行くんだからはあ、はあ・・・■夕暮れのイメージ(ヒグラシ)■陸上部員の走る音■自転車のペダルとベルの音部活のあとは夕陽とかけっこ。高山駅まで3.5kメートル。全速力で自転車のペダルを漕ぐ。だって、4時39分に乗らないと、5時台は列車がないんだもん。■高山本線の車内音高山駅から飛騨一之宮駅までは7分。この時間が一番幸せ。お気に入りのウェブコミックを読む、至福のひととき。ちょうど一話読み切る頃に、飛騨一之宮駅に到着するから。最近のお気に入りは・・・流行りの異世界転生モノ。私、けっこうすぐに感情移入しちゃうんだ。だから気をつけないと。乗り越しちゃったら、次の久々野で1時間待ち!ありえない。って思う人、多いんじゃない?・・・なんて考えてたら、あ、もう着いちゃった。そりゃそうよね。お隣の駅なんだから。■高山本線が到着する音ここから家までは歩き。ゆっくり歩いて15分くらいかな。ゆるやかな上り坂だから、着く頃にはほどよく疲れていい感じ。■カエルの鳴く声宮川を渡り、41号を越えると、周りはのどかな田園風景。しばらく歩くと見えてきたのは、石作りの大鳥居。私は一瞬躊躇する。”夜の鳥居は異世界に通じている”誰かそんなこと、言ってたような・・・あ、さっき読みかけのウェブコミックだ。そういえば、異世界召喚ものだったっけ・・月明かりの下、大きな影を落とす鳥居。その向こうは深い霧に包まれているように見える。どうしようかな・・・いや、だめだ。今夜は神楽舞、練習しておかなきゃ。もうすぐ、大祓えの神事がやってくるんだもの。私は、舞姫(まいひめ)。臥龍(がりゅう)の舞姫。「舞姫」とは聖域で神楽を舞う女性。私の名前が「かぐら」だからってわけじゃないけどね(笑)臥龍の舞姫は龍脈(りゅうみゃく)を読み、龍神と気を通わせて、大地の気の流れを整えるの。あ、龍脈というのは、大地の気が流れる道。修行を積めば龍と意識を一体化して、気の流れを変えることもできるんだ。青龍、赤龍、黄龍、白龍、黒龍という五龍すべてを意のままに。(せいりゅう、せきりゅう、こうりゅう、はくりゅう、こくりゅう/ごりゅう)もちろん、私はまだ修行中。そこまではいってないけど。「臥龍」って「まだ世に知られていない天賦(てんぷ)の才を持つもの」という意味もあるんだ。そうよ。こんなことで恐れちゃいけない。よし。私は、鳥居の真下へ向かって、一歩踏みだした。息を呑む。高鳴る心臓の鼓動。私は心の中で龍神に祈りながら、鳥居をくぐる。その瞬間——■強い風の音「ザァァァァァ——ッ!!」風の渦に包まれ、視界が暗転する。足元が崩れ、身体が吸い込まれる感覚。目を開けた時、そこには境内も絵馬殿(えまでん)もなく、大きな岩と深い森の世界が広がっていた。うっそ〜!ま、ま、まさか、これって・・・異世界召喚〜!いやいやいや、アニメやボイスドラマじゃあるまいし。違う、そんな呑気なこと言ってる場合じゃない。で、ここ。どこなのよ〜!?異世界によくある、中世でもないし、エルフがいる感じでもないし。鬱蒼とした森の中に、巨大な岩。巨大、って言葉じゃ足りないくらい巨大。高さ5メートル、横幅20メートル以上あるんじゃない。しかも・・・小刻みに動いてる。地鳴りのような音を立てて、まるで泣いているように。これ、なに?わかんない!圧倒されて動けない私の周りで、木々たちが囁く。■木々が揺れる音「サァァァァァ——ッ!!」大きな杉、桂、檜、そして銀杏。みんな御神木だわ。私になにか伝えたいの?立ち尽くす私の肩をかすめて、ひときわ大きな風が背中へ抜けていった。長い髪が宙を舞う。驚いて振り返ると・・鳥居があったところから立ちのぼるのは、真っ黒い煙のような何か。形を留めず、蠢きながら私に迫ってくる。御神木の間をただよいながら、禍々しい毒を吐き続けて。青々と茂っていた木々の青葉が、黒ずんで枯れていく。真っ黒い煙は、やがて巨大な鬼のような姿へ変化(へんげ)する。だめ。こんなん絶対無理。震えながら、慌てて逃げようとした・・・はずなのに、まるで鉛の靴を履いているように重くて足が上がらない。ゆっくりと足の動きが固まっていく。な、なに、これ!?『お前の足をもらおうぞ』「えっ」『いままでこの世界にやってきた者から口と手をいただいた』『お前からは足だ』そんな!うそ!イヤだ『抗うというのか』だって・・だって、インターハイ出られなくなっちゃう!『どうしてもいやだというのか』いや!死んでもイヤ!『ならば条件を出してやろう』なっ、なに!?条件!?『お前の目の前の岩だ。それを叩き潰せ』え?岩?この?そっ、そんなこと、できるわけない。『いや、お前の力を持ってすれば不可能ではない』どういうこと!?わかんない!『目を閉じて心で念ずるのだ』え?『岩よ、粉々に砕けるがよい、と』そんな!そんな!『さあ、やれ』私はためらいながらも、恐る恐る岩の方へ向き直る。思わず目をつむると、頭の中に別の声が響いてきた。『和良々は天龍(てんりゅう)なり』天龍!?天(あま)翔ける龍。神聖なる存在。天之龍王神(あまつ/りゅうおうじん)。そんな・・・たちまち巨大な鬼が静止した。天龍は間髪入れず、鬼に言霊(ことだま)を投げつける。『汝、禍々(まがまが)しき存在よ』『ここは聖地/位山。穢(けが)れた鬼が足を踏み入れる場所ではない』『すみやかに立ち去るがよい!』鬼がひるむ。その瞬間、柏手(かしわで)の音が響く。■柏手2回「パン!パン!」苦しそうに蠢きながら、それでもこちらへ迫ってくる鬼。『かけまくも かしこき イザナギの おおかみ・・・』閉じられた世界の中で、どこかから祝詞が聞こえてくる。頭の中に私ではない声が響く。【祓言葉】※設定=異世界で神に遣える者たちが読んでいる(大祓詞も同様)かけまくも かしこき イザナギの おほかみつくしの ひむかの たちばなの おどの あわぎはらにみそぎ はらえたまえしときに なりませむ はらえどの おおかみたちもろもろの まがごと つみ けがれ あらむをばはらえたまえ きよめたまえと まをすことを きこしめせとかしこみ かしこみ も まおす祝詞が始まった瞬間、鬼の動きが封じられる。一歩も前に進めないようだ。結界。柏手と祓え言葉によって結界が張られ、邪悪な鬼の侵入を防いでいた。『今じゃ!』「はい」このあと何をすればいいのか、なぜか私にはわかっていた。■柏手2回「パン!パン!」『たかまのはらに かむづまりますすめらがむつ かむろぎ かむろみの みこと もちて・・・』祝詞が大祓詞(おおはらえのことば)に変わった。私は、鬼の目を睨みつけながら、学生カバンの中から鈴をとりだす。祝詞に合わせて、私は神楽を舞う。■神楽鈴の音と鬼のうめき声一心不乱に舞う、私の前で、鬼が苦しそうにのたうつ。天にはねじれた黒雲が現れ、渦巻いている。『つみという つみは あらじと はらえたまひ きよめたまふ ことをあまつかみ くにつかみ やおよろずの かみたち ともにきこしめせと まをす!』■柏手2回「パン!パン!」最後の柏手が響いたとき、鬼の体は黒雲の中へ吸い込まれていった。と同時に、大きな岩が動き出す。■地響きと龍の咆哮「ゴゴゴゴゴ・・」なんと、大きな岩だと思っていたのは、巨大な龍だったのだ。龍は黒雲が霧散した天へ登っていく。私の真上でゆっくりと長い体をねじりながら回り続ける。口をあけたまま空を見上げる私の頬に何かが舞い降りてきた。まるで雪のように降ってきたそれは・・・花びら?桜?季節外れの花吹雪はあっという間に空を埋め尽くし、私の体を包んでいく。※続きは音声でお楽しみください。
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