EPISODE · Mar 18, 2025 · 9 MIN
ボイスドラマ「マルチバース/人生ガチャ」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
人生は、選択の連続。「もしあのとき、違う選択をしていたら?」そんなことを考えたことはないだろうか。この物語は、さるぼぼの不思議な力によって、"別の選択をした人生"を歩むことができる少女の物語だ。父と母、どちらと暮らすか。仕事、恋愛、結婚――どの道を選べば、本当の幸せを掴めるのか。誰もが一度は思う「人生のガチャ」。しかし、本当に求める未来は、"結果"ではなく、"自分自身の気持ち"の中にあるのかもしれない。飛騨高山の風景とともに描かれる、心揺さぶるマルチバースの旅。さあ、あなたも一緒に、"別の人生"を覗いてみませんか?(CV:桑木栄美里)【ストーリー】[シーン1:お別れのとき】■SE/高山駅・発車のベル「パパ!いっちゃいや!」パパはこっちを向いて思いっきり手を振った。笑ってるのに、目は潤んでいる。私も泣きながら手を振る。ママは私の後で怖い顔をしてパパを睨んでる。10歳の誕生日を迎えた日、両親が離婚した。まだ汗ばむような残暑の午後。パパを乗せた特急ひだが高山駅を遠ざかっていく。[シーン1:エミリの部屋】ここは、ママと暮らすことを選んだ世界。ママは私の勉強や習い事をしっかりサポートしてくれる。今までより友達と遊ぶ時間も増え、充実した学校生活。でもときどき、パパの笑顔が恋しくなる。私はポケットから小さなさるぼぼをとりだした。ぎゅっと握って、目をつむる。『さるぼぼ、お願い』そしてゆっくり目を開けた。[シーン3:パパとレストラン】■SE/高山駅・発車のベル『どうした、食べないのかい?』(※宮ノ下さん)パパが心配そうに私の顔を覗き込む。ここは、高山市内のレストラン。うわ、目の前に飛騨牛!今日はなんかのお祝い?『なに言ってんだい、今日はママに会う日だろ。だから奮発したんだよ。いつも美味しいもの食べさせてもらってないんじゃないかって、思われたくないからさ(笑)』(※宮ノ下さん)パパが心配そうに私の顔を覗き込む。ここは、パパと暮らすことを選んだ世界。パパはいろんなところに連れて行ってくれる。キャンプに海水浴、テーマパーク。だけど、ママのいない世界では、勉強や習い事の時間は減っていく。私は、手のひらのさるぼぼを見ながら考える。パパもママも離婚していない世界を探さなくっちゃ。そう。私はこのさるぼぼでマルチバースを行き来する。今年3月の誕生日。ママからプレゼントされたさるぼぼには不思議な力があったんだ。ただ10歳の女の子がその力を理解するには時間がかかったけど。3か月かけて、やっと使いこなせるようになった。ネットで調べたら、どうやら次元転移装置というらしい。マルチバースという多元宇宙を移動できるんだって。よくわかんないけど。[シーン4:高山市内の高級レストラン】■SE/高山市内の高級レストランそれから15年。私は、さるぼぼの力を使って自分にとって都合のいい人生を歩んできた。まるでガチャのように。いい人生が出るまで、次元移動を何度も繰り返した。今日は、いま付き合ってる彼との食事。・・・のはずが、フラッシュモブでプロポーズされちゃった。返事はもちろんイエス。彼は弁護士。ちょっと強引なところはあるけれど、誠実な人柄に惹かれてお付き合いしている。考えることなんて1ミリもない。とも言えないか・・・実は今朝、仕事を一緒にしている人からも「つきあってほしい」ってコクられちゃったんだ。こっちの彼は私が所属する劇団のプロデューサー。プロデューサーだけど脚本家でもあって、密かに小説家志望でもあるんだって。弁護士の彼と比べると、すこ〜し安定性に欠けるかなあ。いや、そんな・・私、2人のオトコを天秤にかけてるわけじゃないの。ただ、幸せな未来へ続く道を選んで歩きたいんだ。[シーン5:高山市内の結婚式場】■SE/結婚式のガヤそして私は弁護士の彼と結婚した。新婚生活は幸せそのもの。でも、時が経ち2人とも仕事が忙しくなると、すれ違うようになってきた。夫は何日も帰ってこない日が続く。私は劇団の芝居が人気となり、ロングランで全国を回る。以前私にコクったプロデューサーの彼は、私が結婚してからは何も言ってこない。それでも、変わらず真摯な態度で接してくれる。器が大きいのね。夫が家をあけるときも私が弁当を準備する。夫は自分で料理ができないから、どんなに疲れていても私が作る。手料理しか食べれない、って言うし。ま、しようがない。いつものように一人きりの夜。久しぶりに手のひらに、あのさるぼぼをのせてみた。結婚してからは箪笥の奥にしまいこんでいた次元転移装置。タイムマシンではないから過去に戻ることはできない。マルチバースとは多元宇宙。無限に存在する別次元のこと。過去、私が違う選択をした世界に移動できる。元には戻れないけど。弁護士の彼と結婚しなかったら人生ってどうなっていたんだろう。考えては止め、止めては考え、を繰り返した末に、さるぼぼをぎゅっと握って、目をつむった。『さるぼぼ、お願い』そしてゆっくり目を開けると・・・[シーン6:ミュージカル劇場】■SE/劇場の拍手と大歓声劇団オリジナルのミュージカルが千秋楽を迎えていた。『おつかれ!』プロデューサーや他の役者たちと肩を抱き合う。『さあ、みんなは打上げだ!』歓声があがった。あれ、私たち・・ってプロデューサーと私は行かないんだ?「ねえ、打上げ・・・」『ああ、みんなきっと今夜はエンドレスだな』「私たちは?」『うん、早く帰ってごはん食べよう』「え?」『まさか、お酒飲みたくなっちゃった?ってことはないよね』「一緒に帰るの?」『おいおい、なんか今日ヘンだぞ。芝居でアドレナリン出し過ぎたか?』「け、結婚してる?」『ちょっと、やめてくれよ。ストレスかい?』「そうなんだ・・」『大事にしないと、その身体。1人じゃないんだからな』「え・・・」そこまで聞いてやっと状況を理解した。この世界では、私の夫はプロデューサー。家に帰って驚いたけど、新居はタワーマンション。なんでも小説の投稿サイトへ送った作品が賞を獲り、アニメ化・コミック化もされてバズっちゃったらしい。そういえば前いた世界でも、その作品名と作者名は知ってた。あれって、彼だったの!?夫はいまでも定期的に投稿していてその1つが大きい賞にノミネートされてるんだって。私、前の世界でこの人を選ばなかった・・・■SE/料理をするリズミカルな音リズミナルな包丁の音。プロデューサーの夫が、エプロンをして料理をする。こんな姿、劇団の誰も知らないよ。私は思わず、笑いが声に出る。『なに思い出し笑いしてるの?』「別に。エプロン姿がサマになってるなって」『だろ、その子が産まれたあとも、ずうっと作ってあげるから』私のお腹を指差して満面の笑顔で答える。よかった。この世界にきて。でも、もう私、この幸せを変えたくない。いまのままで十分。さるぼぼは明日神社へ納めてこよう。これまでの人生ガチャを激しく反省。どんな人生も幸せを感じるか、そうでないかは、自分自身。料理する夫の後ろ姿に、静かにそっと寄り添う。斜め上から振り返る夫の笑顔に、未来の幸せを感じながら。
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