EPISODE · Apr 10, 2026 · 20 MIN
ボイスドラマ「水原勇気になりたくて」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
アンダースローのサウスポー、そして・・・ピッチャーは女性!背番号のないエースが、仲間とともにマウンドへ・・・【ペルソナ】・結葵(ゆうき=16歳/CV:未定)=高山市街地の高校1年生。リトルリーグではピッチャーで4番。内気で他人からあまり良い印象はなくいつも仲間はずれ。幼い頃に見た漫画の水原勇気が憧れ・珠望(たまみ=16歳/CV:未定)=高山市街地の高校1年生。マネージャーとして入部。リトルリーグではキャッチャー。結月の実力をみんなに知ってほしいと思っている・さくら(教師=24歳/CV:岩波あこ)=高山市内の小学校教師・稀武(けん=16歳/CV:日比野正裕)=城山高校野球部のキャプテンでキャッチャー【プロローグ:小学校1年生】◾️SE:始業チャイムの音〜教室のざわめき『みなさ〜ん。大人になったらなりたいコトやヒトについて教えてくださ〜い』小学校に入学した春。最初の授業で先生が私たち一年生に尋ねた。『ショウタくんはメジャーリーグの野球選手?』『モモちゃんはユーチューバー?・・じゃなくてVチューバー?』『ユウキちゃんは・・・?』私は、消え入りそうな小さな声で呟く。「水原・・勇気・・」『え?だれ・・・?ミズハラ・・ユウキ?だあれ、それ?・・野球選手?先生ちょっとしらないなあ』わかってもらえなくていいんだ。誰も知らなくなっていい。だけど私には最高のヒーロー・・ううん、ヒロインなんだもん。水原勇気!最高にかっこいいんだから![シーン1:城山高校1年生】◾️SE:入学式のイメージあれから9年。私は高校へ入学した。「城山高校野球部へようこそ!いやあ嬉しいなあ!マネージャーが2人も入ってくれて!」「ちょっとぉ!マネージャーになんてなる気はありません。この子、ユウキはピッチャーで4番。アタシはキャッチャー!」親友の珠望がバッグからキャッチャーミットを取り出して目の前に差し出す。私のバッグもひったくり、ソリッドタイプのグラブを見せる。「うそ!?なんで?おまえらオンナだろ?」「それがどうしたのぉ!この時代にその言葉口にする?」「いや、いくら新設校で全員一年生だからって、野球部にオンナは・・」「なに?女性をばかにしてるの?」「珠望、もうやめようよ。やっぱ無理だって」「ダメよ!あきらめちゃ!あんたの居場所はマウンドでしょ」「でも・・・」「別に喧嘩する気はないけどさ・・学生野球連盟・・学野連のルールでも男子しか認められてないんだよ」「言われなくてもわかってる」「ソフトボールに転向すればいいじゃねえか」「野球とソフトボールじゃ、ラグビーとアメラグくらい違うわ」「それに高校野球は軟球とちゃうぞ。硬球だぞ」「クラブチームで硬球投げてきてんだよ」「なら女子高校野球だってあるだろう。高山にはないけど、越境すれば県内にはあるはずだ。うまくいけば、マドンナジャパンだって目指せるんじゃないか。まだ一年生なんだから」「そんなんアタシたちが目指してるゴールじゃない」「なんだよ、それって」「甲子園で優勝して、プロからドラフト一位で指名される」「あ〜はっはっはっ!なに言ってんだか。学野連でさえ、男子生徒に限る、って言ってるのに、プロ野球なんて・・」「”医学上男子でないものを認めない”ってこと?そんな条項は1991年に撤廃されてんだよ。もっと勉強しろよ」「なんだと!」「珠望、もうやめて・・・」「よし。じゃあ、実力で勝負するか?」「なに?」「一打席勝負。もしバットが結葵の球に当たったら入部はあきらめる」「頭おかしいんじゃねえか。当たったら・・・って」「事実だからしょうがないだろ」「大した自信だな。じゃあ、もしもオレがヒットかホームランなら2人ともマネージャーになってもらうからな」「わかった」「珠望・・・」「心配ないよ、結葵。いつも通り投げればいいだけ」珠望はにっこり笑ってウィンクした。わかってる。珠望は私の投手としての才能を信じ切ってるんだ。それに、私の夢も・・・結局、私はマウンドに立つことになった。勧誘活動が終わる夕方。誰もいないグラウンドに野球部の入部希望者が集まってきた。珠望と言い合っていたのは、キャッチャーの稀武。入学したときから新設野球部のキャプテンに決まっているらしい・・なぜなら・・・稀武は中学時代、軟式でも硬式でも打ちまくっていた強打者だった。野球推薦入学だから、誰もが認める野球部主将。高身長で、飛距離もありそうだ。[シーン2:城山高校グラウンド】◾️SE:夕方のイメージグラウンドの使用については・・”毎日練習しないと感覚がなまる”そう言って、稀武が顧問に直訴したらしい。珠望がレガースをつけて、ホームベースの後ろに立った。稀武は笑いながらマウンドの私を見ている。野球部の入部希望者は初日でまだ6人。内外野に散らばっていく彼らに向かって、「内野はいらねえよ。どうせ、フェンス越えるんだからな。どっちか審判やってくれ」とまた笑う。それを見ながら、ニヤリと笑って珠望はマスクをはめた。◾️SE:投球をミットで受ける音私が投球練習を始めると、少しだけ周りがざわつく。「アンダースローのサウスポーか。面白いけど、まあおっせえな。ハエがとまりそうだぜ」内外野のポジションもすっかりリラックスムード。スマホ撮ってるメンバーもいる。だけど、私の球を受ける珠望は自信満々だ。キャッチャーマスク越しに上がった口角が見える。あの表情を見ると私も落ち着く。稀武が打席に入る。左打者なんだ。主審役の内野手が右手を上げた。「プレイボール!」打席で構える稀武。珠望がサインを出す。外角低めのシュート。小さくうなづいてセットポジションに。低いフォームから地面を擦るように腕を振って・・第1球。◾️SE:投球音見送り。「ストライーイク!」「シュートか。なるほどね。いいコースには決められるんだな。だけどこの球速じゃあなあ・・・」第2球目。珠望のサイン通りに。セットポジションから・・・左打者の内角をえぐるスライダー!◾️SE:投球音思わずのけぞり、尻餅をつく稀武。「ストライーイク!」審判の右手が上がる。「うそだろ!当たりそうだったぜ」と言いながら、体の泥をはらって、打席に入り直した。「まあいい。しょうがねえな。本気出すか」そう言って、バッターボックスの一番後ろに立つ。珠望は”うん””うん”と首を縦に振る。”次で決める”という合図だ。3球目。全力投球。思いっきり腕を振って・・・内角高めのストレート。◾️SE:投球音と風切音空振り。マウンドまで聞こえてくる風切音。「え?な、なんだいまの・・」珠望は立ち上がって、審判に球を渡す。「あれ、ストレートか!?」マスクをはずした珠望に向かって、稀武が詰め寄った。「そうよ。見てわかんない?」「・・ホップしたぜ!浮き上がったじゃねえか!」「これが結葵の球よ。簡単に打てる球じゃないでしょ」「簡単に、どころかこんなん、打てるやついるんかよ!」外野にいた野手がマウンドに駆け寄ってきた。みんな、私に向かって手をさしだす。「よろしくな」「よろしく」呆然としていた稀武もそれを見て、ゆっくりとマウンドへ。「わかったよ。おまえのすごさ。このオレが打てねえってことは、他に誰が打てるんだ・・・」「ありがとう」「認めるよ。おれの負けだ」「じゃあ、私、約束通りマネージャーになってあげるから」「え?そんな約束してなかったじゃん・・」「女子の選手は2人もいらないでしょ。それにキャッチャーはあんただし」「おまえ、最初から・・」「マネージャーって大事な仕事なのよ。たった一人の女子野球部員の面倒はアタシが責任持ってみるから」珠望・・・確かにこれって珠望のプランだけど・・珠望だって、ホントはキャッチャーやりたいはずなのに・・「結葵、大変なのはこれからだからね。私たちの目標は、もっともっと大きいんだから!」対戦のあと、みんなでグラウンドを整備して、家路につく。バックネットに落ちる夕陽がまぶしかった。[シーン3:背番号のないエース】◾️SE:夕方のイメージ新設校城山高校の野球部は私を入れて9人となった。もちろん全員一年生。顧問の先生は、女子部員の入部に対して何も言わなかった。監督も稀武から私のことを聞いたとき、”そうか”とひとこと言っただけ。男とか女とかまったく関係ない。そういう雰囲気を醸し出していた。だけど現状のルールではもちろん、女子は公式戦での選手登録ができない。背番号もない。部員の足りない高校と連合チームを組まないと大会にも出られない、ということだ。あの日以来、私の球を受けるのは珠望から稀武へ・・・※続きは音声でお楽しみください。
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