EPISODE · Jan 16, 2026 · 14 MIN
ボイスドラマ「汀にて〜飛騨の方舟」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
西暦2500年。沈みゆく日本で唯一残った「飛騨JI」を舞台に、6歳の少女・汀とMAMAが紡ぐ、切なくも希望に満ちた物語。海に棲む熊「ミカゲ」、暴走するエネルギー塔、そして明かされる“人類最後の血統”の秘密──これは、未来へ託された“方舟”の物語。【ペルソナ】・汀(なぎさ:6歳/CV:坂田月菜)=飛騨JIの久々野エリアで生まれた純粋な飛騨人の血統保持者・MAMA(ママ/CV:小椋美織)=300年前に製造され代々汀の家族に仕えるAIヒューマノイド【シーン1/久々野の入江にて】 ◾️SE/さざ波の音「ママ!見て!きれいな貝殻!」「ナギサ。それは貝殻じゃないわ。昔の人が使ってた『DVD』っていう遺物」「アタシの首の痣、海で洗ったらとれるかなあ」「どうかな。痣ってあまりさわっちゃだめなのよ」「ふうん」「沖の方まで行かないでね。ミカゲが来るから」「はあい」そう答えた次の瞬間。 ◾️SE/大きな波が砕ける音「ザッパ〜ン!」◾️SE/くぐもったクマのような咆哮「きゃあ〜っ!」「ナギサ!危ない!」「ミカゲだぁ!」「早く、私の後ろへ!ミカゲ、少し痛い思いしてもらうわよ」ママはそう言って、ミカゲの体当たりを両手で受け止める。黒光りする体躯をぎゅっと抱えて投げ飛ばした。 ◾️SE/クマの悲鳴手負いのミカゲはあっという間に、波の彼方へ消えていった。「ありがとう、ママ」「もっと気をつけなきゃだめよ」「うん、わかった。でも、どうしてミカゲを逃しちゃうの?」「ああ見えて、貴重な保護動物だからね」【俯瞰モノローグ】そう言ってママは苦笑いする。ミカゲ(海熊)とは、水陸両生のツキノワグマ。手足がヒレ状に進化して、ここ久々野の入江を泳いでいる。今は西暦2,500年。地球温暖化の影響で、日本列島は、国土の半分以上が海没。沈まずに残ったのは、4つの島=ジャパンアイランド=JI(ジェイアイ)だった。大雪山を中心に、小さな島が点在する「北海道JI(ジェイアイ)」。細長い奥羽山脈が南北に残る「東北JI」。阿蘇山や四国の山地が残る「九州・四国JI」.そして・・・北アルプス、中央アルプス、南アルプスを要する「飛騨JI」!今や日本の首都である!ここ久々野は、飛騨JIの南の端にある要所。かつての飛騨川に沿って広がる、フィヨルドの町。跡地が残る久々野駅の周辺は、断崖に囲まれた美しい港。巡回する帆船や飛行艇が、下呂方面からやってくる。みんなが最初に立ち寄る「飛騨の正門」。【独白モノローグ】で、遅くなったけど、アタシの名前は汀(なぎさ)。6歳。港町・久々野で生まれ、久々野で育った久々野っ子よ。いつもママと一緒に浜辺に来て、昔の『遺物』を拾ってるんだ。さっきの虹色に光る円盤とか・・・ママは『DVD』って言ってたっけ・・あと、透明でキレイな容れ物とか・・・確か・・・ペットボトル、って言うんでしょ。海岸はね、宝の山なんだよ。アタシにとって。「さ、汀、そろそろ帰りましょ」「うん!ママ、夕ご飯はなぁに?」「今日はハンバーグの日よ」「やったぁ!」「汀はもっと動物性タンパク質をとらなきゃ」「またコオロギ見つけたんだ?」「そうよ。いまは冬でも昆虫が活動してるから」「へえ〜。ねえママ。今度アタシにもハンバーグの作り方教えて」「いいわ。そろそろお料理も覚えた方がいいでしょ」「はい!」「ハンバーグの材料は汀も知ってるように昆虫よ。コオロギに蜂の子も混ぜて、アミノ酸を抽出。それを3Dプリンタでハンバーグに成形するのよ」「おもしろそう!」【独白モノローグ】ママとお話しながら歩いていると、いつも時間を忘れちゃう。今日もあっという間にお家に着いちゃった。【シーン2/MAMAと汀の家】 ◾️SE/虫の声【俯瞰モノローグ】MAMAとアタシの家は、海岸から東の丘を上っていったところ。『堂之上遺跡』の横にある『バイオウッド建築』。周りに自生するブナの木と一体化している。傷ついても自己修復する壁。潮風を吸って淡く発光するナノアンテナの蔦。ママとの二人暮らしには広すぎるくらいの室内。昔は『久々野中学校』っていう学び舎だったらしい。「はい、デザート」「飛騨林檎だ!」「今朝収穫した採れたてよ」「ハンバーグに林檎って!すごいごちそう!」「さあ、食べて」「いっただきます!(※一口食べて)う〜ん!甘〜い!おいしい!」「飛騨林檎も飛騨桃も、500年前の倍以上甘くなってるのよ」「どうして?」「RCP 8.5で、気温が10度も高くなったから」「RCP 8.5って?」「500年前に発表された、地球温暖化最悪のシナリオ」「ふうん」「久々野って、昼間は暑いけど、夜は冷えるでしょ」「うん」「寒暖差は500年前の倍」「そうなんだぁ」「それに加えて、林檎は、バイオラボでAI管理もしているから」「バイオラボ?」「そう。昔は林檎を加工してた選果場の跡地。そこに建てられたナノバリア完備のバイオ施設よ」「だからこんなに甘いんだぁ」「汀一人じゃ食べきれないほどあるから、いっぱい食べて大きくなりなさい」「はぁい!・・でも・・ママは?」「ママはあとからいただくわ」「わかった」【独白モノローグ】ママのお話はいつも面白い。・・だけじゃなくて、とってもためになる。アタシも将来はバイオラボで働くんだ。ママは一生懸命、身体をナノ繊維のタオルで拭いている。海でミカゲと戦ったとき、いっぱい濡れちゃったからなあ。ごめんなさい、ママ。【俯瞰モノローグ】こんな贅沢ができるのは、日本でも飛騨JIだけ。その中でも久々野は特別な場所。近くに宮川と飛騨川の『分水嶺』があるから。水の管理がこの時代の覇権を握る。宮峠にある『水門=ゲート』。久々野から一之宮へ抜ける宮峠は、北と南の水を分ける聖地。見上げれば、巨大な『エネルギー抽出塔』がそびえる。水流のわずかな差から電力を生み出し、飛騨JI全域のAIへワイヤレス給電を行う。AIヒューマノイド、バイオウッド建築、バイオ・ラボ。そのすべての『心臓』がここにあるということ。『エネルギー抽出塔』が飛騨JIの文明を支えている。【シーン3/台風の夜】 ◾️SE/すさまじい暴風雨の音「ママこわい!台風きらい!」「本州に上陸するまでは勢力が弱まってたのに・・勢力を維持したまま、飛騨JIの山脈へ激突するつもりね」「おうち大丈夫?」「大丈夫よ。バイオウッドが支えてくれるから心配ない」 ◾️SE/風で家がバキバキいう音「きゃあ〜!」「暴風域に入ったわね。それにしても、こんな時期に台風なんて・・」 ◾️SE/落雷の音「いやあ〜!!」「落雷!?あっちの方角は・・・まさか!?」 ◾️SE/扉を開けて外へ出る音「ママ!!どこ行くの!?」「汀!絶対に外へ出ちゃだめよ。中で待ってて」「ママ!」 ◾️SE/扉を強く閉める音「ああ!やっぱり・・・エネルギー抽出塔に落雷したんだわ!このままだと・・・」「ママ!」「汀!出てきちゃだめだってば!」 【俯瞰モノローグ】宮峠の「エネルギー抽出塔」が落雷により暴走した。凄まじい電磁嵐が発生。空は青白く発光して、雷が次々と地面に突き刺さっていく。強烈な磁場により、あらゆる電子機器の回路が焼き切れる。金属同士が火花を散らす。周りの空気は急激に加熱して膨張する。衝撃波が発生し、プラズマの火球が襲ってきた。 ◾️SE/空気を切り裂くようなプラズマの爆鳴音「汀!あぶない!!」「ママ!!」 【俯瞰モノローグ】ママは私を庇って、巨大な火球の中へ飛び込んだ。凄まじい光と熱が、ママの周りを包んでいく。と同時に山の方から大きな地鳴りのような音が近づいてくる。「汀!時間がないからよく聞きなさい」ママは山の方からアタシへ振り返って声をあげる。「あの音・・・もうすぐここに土石流がやってくるわ。ママはもう動けないから・・その前に・・」ママの背中に垂れ下がった基盤が燃えている。皮膚の下には、青白く光るナノマシン・エッセンスが見えていた。「あなたは人類の最後の希望」「え?なに?わかんないよ!」「飛騨JIの久々野エリアで生まれた、純粋な『血統保持者』。いまじゃ、たった一人の人類なのよ」「え!?」「汀の首に、縄文紋様の痣があるでしょ」「痣・・・」「縄文土器にある『螺旋模様』はDNAの二重螺旋構造を表しているの」「あなたが二十歳になったら、堂之上遺跡の竪穴式住居にいきなさい」「その中に人類を救う起動システムがあるから・・」 【俯瞰モノローグ】そこまで口にしたあと、ママはアタシをバイオウッドの家の中へ突き飛ばした。「ママ!待って!まだ!まだだめ!」言うよりも早く土石流がママを飲み込んでいく。土石流は濁流となり、ママは久々野の海へと消えていった・・・※続きは音声でお楽しみください。
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