EPISODE · Oct 30, 2025 · 18 MIN
ボイスドラマ「トライアングル・ラプソディ/後編」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
朝日町から高山へ――“よもぎ”の心がさくらの身体に宿り、八幡祭の中で彼女が見たのは、祭よりもまぶしい恋の光景。一方、さくら(よもぎの体)は、カフェの温もりの中で“他人の生き方”を知っていく。やがて二人の道が再び交差したとき、運命は静かに“元の形”へと還っていく。──心が入れ替わっても、想いは消えない。ヒダテン!ボイスドラマ第29話『トライアングル・ラプソディ/後編』は、朝日町の薬膳カフェと桜山八幡宮を結ぶ“よもぎの視点”の物語です。【ペルソナ】・さくら(24歳)=荘川そばの栽培農家。収穫が終わった休みの日に八幡祭へ(CV=岩波あこ)・よもぎ(29歳)=朝日町の漢方薬剤師。東京の友達と約束して八幡祭へ(CV=蓬坂えりか)・ショウ(35歳)=さくらのパートナー。八幡祭で待ち合わせした(CV=日比野正裕)・観光客(22歳)=二日酔いで薬膳カフェ「よもぎ」へきた旅行客(CV=小椋美織)<シーン1B:朝日町の薬膳カフェ「よもぎ」>◾️カフェの雑踏「なんかこのお茶、苦いんですけど」「ああ、ごめんなさい。さっき、昨夜飲みすぎちゃった、って言ってたから五行茶をお出ししたんですよ」「ゴ・・ギョウチャ?」「はい。五種類の薬草をブレンドしたお茶です」「で?」「焙煎した生薬は苦味があるんです。でも、甘草とかナツメの甘みが、苦さを和らげてると思うけどなあ」「だから?」「苦いだけじゃなくて、飲んだあとほんのり甘さが残りませんか」「そんなんどうでもいいから、なんとかしてよ。砂糖でもなんでもいれればいいじゃない」「そんな・・・砂糖なんて入れたら、血糖値も変化しちゃうし。体も冷やしちゃいますよ」「関係ない。苦くないようにして」お客さんの声がだんだん荒くなる。あ、だめ。久々に・・・これ・・過呼吸かも・・「ちょっと、聞いてる?」意識が遠のく・・・お客さんの声が遠ざかっていく・・・<シーン2B:古い町並/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「あ・・・れ・・?えっと・・えっ!?ここどこ?」気がつくと、薬膳カフェ「よもぎ」とはまったく違う場所に、私は倒れていた。ここは・・・?あたりを見回す。高山市街地の・・・古い町並だ。しかも私、側溝に左足を突っ込んで倒れている。体が重い、って思ったら、首にブラ下がっているのは、大きなカメラ。そうだ。持ち物。肩かけの小さなポーチを手で探る。ポーチの中に見つけたのは、かわいい手鏡。そこに映っていたのは・・・誰?この人誰!?桜色のロングヘアー。桜の髪飾り。そして・・・凛とした美しい顔立ち。誰なの〜!?なんで?なんで?どういうこと、これ?鏡の中で整った顔が困惑した表情を見せる。鏡を遠ざけて体全体を映すと・・・淡い桜色のロングTシャツ。透け感のある軽やかなパーカー。ボトムスはデニムのスリムパンツ。女性カメラマン?気がつくと、私の周りには人だかりができていた。その中から現れたのは・・・「大丈夫?怪我はない?」いかにも爽やかな、長髪の男性。「いや、だ、大丈夫です。おかまいなく」という私の言葉など関係なく、片手を差し出してくる。「さあ、つかまって」「いや、そ、そんな・・」口では断っているのに、なぜかその手をとってしまった。「歩ける?」「た、たぶん」「ここ、酒蔵の入口だから。ほら、そこのカフェのベンチ。あそこをお借りしよう」彼はカフェの人に断りを入れて、私をベンチへ座らせた。「さ、お水もらってきたから。はいどうぞ」「あ、ありがとうございます・・」「なんだよ、その喋り方。頭うったの?」「し、失礼ね。あなた・・・誰ですか?」「え?どういうこと?待合せに遅れたこと、怒ってるの?」「え・・だから・・名前は?」「もう〜。ショウに決まってるだろ」冷静に、冷静に。えっと、これからどうしよう・・・とにかく朝日町へ帰らなきゃ。いまごろどうなってるんだろう。怒ってたあのお客さん・・・そうこうするうちにコーヒーが運ばれてきた。そっか。カフェだもん。コーヒーくらい飲むのが礼儀だよね。「良いショットは撮れたかい?」「え・・・あ、はい・・まあ」「まあ、君の腕とそのカメラなら当然か」ああ、そうか。この一眼レフカメラ。高級そうだな。私は、カメラの履歴を遡る。老舗の酒蔵。軒先の杉玉。すうっと続いている人波。和菓子屋の前。お団子をほおばるカップル。こっち見てピースサインしてる。中橋のにぎわい。欄干の赤色が鮮やか〜。「いい写真ばかりだ」「そうですね・・・」「そんな、他人事みたいに。君が撮ったんだろ?」「多分・・」「次の被写体はきっと桜山八幡宮かな」「そう・・かな」「よし、じゃあ行こう。もう歩いて大丈夫?」「はあ・・まあ、いいですけど・・」「また、そういう喋り方。悪かったって言ってるだろ、遅刻したこと」「そういうことじゃないけど・・」「もう少ししたら屋台の曳き揃えだぞ」そう言って、ゆっくりと彼、ショウは立ち上がる。私も彼に続いて静かに起き上がる。なんか、ぎごちない。まるで自分の体じゃないみたいに。ってか、自分の体じゃないし。桜山八幡宮まで行ったら、すぐに朝日に帰ろう。<シーン3B:桜山八幡宮/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「やっぱり、すごい迫力だなあ。屋台の曳揃え」「そりゃ、11台もの絢爛豪華な屋台が、一堂に揃うんだから」「この美しさ・・・言葉にできない」「写真、撮らなくていいの?」「あ・・」「もうすぐ、布袋台のからくり奉納だよ」一眼レフカメラなんて使ったことないけど・・・ファインダーを覗いて、なんとなくシャッターを切る。「ユネスコの無形文化遺産登録。当然って感じだな」「金箔の飾りも、彫り物も全部職人の手仕事かあ・・・」「秋の空気によく似合う、美しい景色。もう少し近づいてみて。木の温もりと優しい香りが伝わってくるよ」「まるで詩人みたい」「はは・・よく言われる」「桜吹雪の山王祭もいいけど、秋風の八幡祭も素敵」「初夏を迎える山王祭と冬を迎える八幡祭。こんな美しい祭りを四季の中で二度も見られるなんて飛騨人(ひだびと)は幸せだよね」「確かに。だけど私、八幡祭は久しぶりなの」「え?去年も一緒に来たじゃないか」「え・・・あ、そうか・・・ごめんなさい」「さくら、やっぱり今日はちょっとおかしいぞ。秋そばの収穫で疲れちゃったのかい?」秋そば・・・ってどこのこと?そばといえば・・・荘川?この爽やかな青年は?待合せって言ってたけど、市街地に住んでいるのかしら。ブルーの瞳がとってもきれい・・・「ちょっと風が出てきたかな・・寒くない?」「うん、大丈夫。あの・・・少しだけ向こうで、電話してきてもいい?」「あ・・ああ。もちろん」「朝日のお店に電話しなくちゃ」「お店?」「ううん。なんでもない」◾️電話の呼び出し音(受話器内部音)思ったとおり、カフェは誰も出ない。私は、おばあちゃんに電話をかけた。「もしもし。あ、おばあちゃん?よもぎ」「うん。ちょっと市街地まで来てるの。そう、今日高山祭」「え?声がおかしい?」「あ、そ、そうかな。ちょっと風邪気味だから」「お店あけてきちゃったから、お留守番お願いできる?」「ありがとう」「うん。遅くなる前には帰るから」「宵祭(よいまつり)?見ないよ。遅くなっちゃうもん」「お迎え?悪いからいい、いい。帰る方法あるから」「うん。じゃあ、お店お願いします」はぁ〜。そうだった。こんな姿じゃ、おばあちゃん私だってわかんないよ〜。どうしよう〜。それに、朝日にいた私はどうなってるの?お店から消えてどこ行っちゃったの?もう頭の中が真っ白。お願い!だれかなんとかして〜!<シーン4B:桜山八幡宮/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(からくり奉納/布袋台)〜観客の拍手男女の唐子(からこ)がブランコに乗る「綾渡り」(あやわたり)。まるで体操の大車輪のように回転しながら、布袋和尚の背と右手に飛び移る。こんなにも大胆で、ここまで繊細な動き。久しぶりに目にしたからくりに圧倒される。隣で見ている彼。ショウも感動して目が離せなくなってる。あれ?ちょっぴり瞳がうるんでいるじゃない?「この美しさは、言葉にできるようなレベルじゃない」「ほんと」私もそれ以上、声をかけられなかった。ショウの距離は、さっきより少しだけ近づいたようだ。気づかれないように、彼のジャケットの裾をつまむ。だって、この人混みではぐれたらいけないから。それに気づいた彼は、そっと私の肩を抱く。そのとき、私のことをじっと見ている視線に気がついた。ゆっくりその方向へ目を向けると・・・「あっ!」思わず声を出してしまった。私たちの斜め後ろに立っていたのは・・・”私=よもぎ”だった。お互いに目が合った瞬間、私は反射的に、ジャケットから手を離し、彼の手もふりほどく。泣きそうな顔で踵を返し、大鳥居の方へ走り出す”よもぎ”。「待って!」人波をかき分けて追いかける。「お願い、止まって!」「あなた、さくらさんでしょ!」「行かないで〜!」※続きは音声でお楽しみください。
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