EPISODE · May 11, 2026 · 21 MIN
ボイスドラマ「夕陽のジンクス」
from ボイスドラマ「御前崎アンサンブル」 · host Ks
夕陽のジンクス、潮の香り|御前崎アンサンブル #1説明文:「一度住んだら、二度と離れたくなくなる──。」静岡県御前崎市の茶園で働く「みさき」と、埼玉・熊谷の老舗和菓子屋の跡継ぎ「つむぎ」。お茶がつないだ二人の運命は、遠距離恋愛を経て、あるクリスマスの夜に大きく動き出す。御前崎の美しい夕陽と灯台を舞台に描く、切なくも温かい愛の物語。特産茶「つゆひかり」の甘みと、狭山茶の深い味わいが織りなす「アンサンブル」をお楽しみください。【ペルソナ】・みさき(25歳)=家は茶畑と住宅が混在する白羽地区で茶園を営む。ECサイトでさまざまな販路を探している。東京で開催されたお茶のマルシェでつむぎと知り合い、付き合うようになる・つむぎ(27歳)=熊谷の老舗和菓子店の店主。父が亡くなり二代目として奮闘している。熊谷では数少ない狭山茶のスイーツを扱うお店として人気が出てきた【プロローグ:2025年12月24日/御前埼灯台前の広場「ウミエール」】◾️SE:クリスマスの雑踏『みさき、結婚しよう』クリスマスイブのウミエール。御前埼灯台前広場。ライトアップされた白亜の灯台が、幻想的に浮かび上がる。私の名前は、みさき。25歳。独身。ここ御前崎の白羽(しろわ)で、茶園の一人娘として生まれた。茶畑は、茶摘みから出荷まで、父と母が、2人で切り盛りしている。私は、もっぱら通販担当。SNSでハッシュタグ「パパのこだわり新茶」として展開中。鮮やかな緑色と天然の甘みに、結構人気があるんだ。ということで、人気商品は、希少品種『つゆひかり』。”一番良い状態の芽”だけを、摘み取っているんだもん。『深蒸し製法』で、コクと甘みを最大限に引き出すの。って、あ、これ、企業秘密だった・・で、つむぎと出会ったのは、青山のマルシェ。ファーマーズマーケット。【シーン1:2025年4月/東京・青山ファーマーズマーケット】◾️SE:青山ファーマーズマーケットの雑踏「よかったらおひとつどうぞ」そう言って、彼が手渡したのは和菓子?「狭山茶(さやまちゃ)の”火入れ琥珀糖(こはくとう)”です」「へえ〜、美味しそうですね」「ぜひ食べてみてください」「ありがとうございます。いただきます・・・・・・うん・・大人の味。外はシャリッ、中はプルッとした食感・・」「でしょう。狭山茶といったら『味の濃さ』。それを極限まで引き出したんです。一口でお茶を一杯飲んだような満足感・・それを目指しました」「なるほど・・」「昔から、色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす、って言うでしょ」「はい・・・」「今日はどちらから?」「静岡です」「え・・」「ごめんなさい。実は私も出店してるんです、向こうの端っこで。いまは休憩中」「何を出店してるんですか?」「お茶。つゆひかり、って言うお茶よ。一番茶を持ってきてるの」「おっと・・」「うちのお茶は、渋みが少なくて、甘くてまろやかで旨味があるんです。狭山茶とは対極ですね(笑)」「詰んだぁ〜。ホントに失礼しました」「いいえ〜。とっても美味しかったです。じゃまた・・・」「あ、待って」「え」「あとで、あなたのお店に寄ります!ぜひ、つゆひかりを味わわせてください」「ふふふ・・よろこんで」「あの、ボクは『つむぎ』といいます。あなたは?」これが、つむぎと私との出会いだった。つむぎは27歳。独身。埼玉県の熊谷市で、お父さんと妹の3人暮らし。実家の和菓子屋を継ぐために修行中だった。「狭山茶が好きすぎて、和菓子屋なのに茶葉の選定からこだわっちゃうんです」そう言って笑った。実際に、熊谷では珍しく、狭山茶を使ったデザートを次々と開発。『お茶の味が濃すぎる和菓子」ってSNSで話題になると 遠方からもお客さんが詰めかけるようになった。で、あの日、初めてファーマーズマーケットに出店したんだって。”味の狭山”に誇りを持つ彼と、”つゆひかり”の甘みを信じる私。正反対のお茶に惹かれるように、私たちの距離は近づいていった。気がつくと、新幹線を乗り継ぐ遠距離恋愛。4時間30分の距離なんてハードルは、手を繋いで軽々と飛び越えていった。【シーン2:2025年夏/熊谷から御前崎へ】◾️SE:熊谷うちわ祭りの雑踏「わあ〜、すごい人!」「人より山車と屋台だろ、すごいのは」「雪くま、おいしい!」「そっちかぁ」日本一暑い街の、日本一熱いお祭り。『熊谷うちわ祭り』に感動した次の週は・・・◾️SE:御前崎みなと夏祭の音と波の音「すごいな、何発あがるんだろ、打ち上げ花火」「3,000発とか5,000発だって」「ねえ、お腹減らない?あっちの出店でなんか食べようよ」『御前崎みなと夏祭』で花火と食べ歩きを楽しむ。海のないまちから来たつむぎ。つむぎの瞳は、どんどん輝いていった。◾️SE:御前崎の波の音「サーフィンって見てるだけで楽しいんだな」「あれはウィンドサーフィン。色とりどりのセールがオシャレでしょ」「若いうちにやっておけばよかった」「おぢさんみたいに言わないで。今からだって遅くはないよ」「ああ。もし、ここに住んだら、やってみたいかも」なんか、遠回しな言い方にちょっとひっかかった。海のない埼玉の熊谷と、灯台のまち御前崎。お互いにない色彩を補い合いながら2人でスイーツ作りにも関わった。二層になった緑のテリーヌ。その名も『茶園の夜明け』。上層には『つゆひかり』を贅沢に使用。目の覚めるようなエメラルドグリーンと、ホワイトチョコの甘みに”新茶の青い香り”が溶け込んでいる。下層には、強く火入れした『狭山茶』を使用。カカオ分を高めにしたビターチョコと合わせて、ほうじ茶にも似た香ばしさと、芯のある苦味を表現した。次の日、マリンパーク御前崎の海沿いをドライブ。夕暮れのケープパークに車を停める。うみねこの声。潮騒の音色。この世のものとは思えないほど美しい夕陽が水平線にこぼれ落ちる。オレンジ色に染まる水平線を、いつまでも二人で眺めていた。 【シーン3:2025年晩秋/つむぎの変化】◾️SE:携帯電話の着信音/電話をとる音「みさき、ごめん。週末そっちへ行く約束・・守れなくなった。親父が入院しちゃったんだ」秋も深まったある日。つむぎからの電話で、運命の歯車が少しずつ狂い始めた。「せっかく、秋冬番茶(しゅうとうばんちゃ)の収穫に立ち会えると思ったのに・・」「そんなこと、どーでもいいから。お父さんの具合は?」「検査の結果次第かな。夏すぎから働きっぱなしだったろう。オレも親父も・・妹も」「うん。みなとの夏祭以来、ほとんど話さえできなかったもんね」「それで体壊しちゃって・・今は妹とオレの2人で店回してるんだけど、もう休むヒマもなくって」「それより、あなたの体が心配。会えなくたっていいけど、これ以上無理しないで」「うん・・ありがとう」電話を切ったあと、部屋には重苦しい空気が漂っていた。 窓の外では、遠州の秋風が茶葉を揺らしている。心に吹く風は行き場を失い、深い溜息へと変わっていった・・・【シーン4:2025年12月24日/御前埼灯台前の広場「ウミエール」】◾️SE:スマホの着信音〜クリスマスの雑踏「もしもし、あ、みさき?」ひさしぶりにつむぎから電話があったのは、12月のクリスマス直前。彼のお父さんの四十九日が過ぎた時分だった。「急で悪いけど、どうしても会いたい」「どうしたの?」「会ってから話すよ」「そっちへ行けばいい?」「ううん、御前崎まで行く」「そんな・・クリスマスシーズンなんて、超忙しいんでしょ。和菓子屋さんも」「大丈夫。それより、どうしても話しておきたいことがあって」なんだか、胸騒ぎがした。しかも、彼が来る日は、クリスマスイブ。私たちは以前も行った灯台前の広場へ。イルミネーションが幻想的な風景を作り出している。彼は、待ちきれないように口を開いた。「みさき・・結婚しよう」「え・・」「わかってると思うけど。先月、親父が亡くなって、店はオレが継いだ。妹と2人、いまも必死でがんばってる。こんなときにって・・・そう思うかもしれないけど・・」「つむぎ・・」「結婚して、熊谷で一緒に暮らしてほしい」「そんな・・」「みさきが通販やってくれたら、きっと全部うまくいくよ」「ごめん・・」「えっ?」「わたし・・・熊谷へは行けない」「そんな・・」「あなたがいま、大事なときってのはわかってる。私なんかにこんなこと言ってくれるのも、ホントに嬉しい・・」「じゃあ、なんで・・」「私、このまちを・・・御前崎を離れるのは・・いやだ」「あ・・・・・そうか・・」指輪を持ったまま、みさきの顔がみるみるこわばっていく。私は彼の顔がまともに見られなくて、目を逸らした。そのあとはお互い、何を話したのか、よく覚えていない。結局、つむぎは、最終のこだまで掛川駅から熊谷へ戻っていった。【シーン5:2026年12月24日/御前崎ケープパーク/展望台】◾️SE:クリスマスの雑踏あの日から1年。今年も、クリスマスイブがやってきた・・・※続きは音声でお楽しみください。
Embed this episode
Ready to play
ボイスドラマ「夕陽のジンクス」
No transcript for this episode yet
Similar Episodes
No similar episodes found.
Similar Podcasts
No similar podcasts found.