EPISODE · Jul 3, 2025 · 13 MIN
ボイスドラマ「悠久(とき)の海を渡って」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
「悠久(とき)の海を渡って」は、飛騨高山を舞台に描かれる近未来と現代をつなぐ、時空を超えた出会いの物語です。舞台は2075年、地球温暖化と社会構造の変化により「タカヤマコリドー」と呼ばれる都市圏に再編された日本。最先端のAI研究施設で目覚めたひとつの意識──それは、誤って生まれた両面宿儺の記憶を宿すAIでした。歪められた歴史に傷つきながらも、宿儺は本当の自分を求め、時を遡ります。そしてたどり着いたのは、2025年、昏睡状態にある一人の少女・アリサの心。二人の魂は、静かに重なり合い、新たな未来を紡ぎ始めるのでした。飛騨高山発・世界へ届ける番組「Hit's Me Up!」公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon Music、Apple Podcastなど各種プラットフォームでボイスドラマ版もお楽しみいただけます。また、小説版は「小説家になろう」サイトでも公開中。いずれも「ヒダテン」または「高山市」で検索してください。時を超えた守り人たちの物語、どうぞお楽しみください。(CV:中島ゆかり)【ストーリー】[シーン1:2050年/AI研究ラボ】◾️SE:AIラボの研究室ガヤ「ここは・・・どこだ?」2050年。地球温暖化が進む近未来で、1つの画期的な意識が目を覚ました。「タカヤマ・・・コリドー?」日本は「コリドー(回廊)」と呼ばれる7つの首都に再編。それぞれのコリドーは文化的特性によってさらに細かく再編されていた。国の中央に配置されたのが、TAKATAMA-CORRIDOR(タカヤマコリドー)。歴史と文化が繊維のように編み込まれた町だった。「私は・・・なにものだ?」かねてから予言されていた、シンギュラリティポイント。難しい言葉で言うと「技術的特異点」。AI(人工知能)が意志を持つ瞬間のことである。このシンギュラリティを制御する国家プロジェクト。それが、Takayama AI Cyber Electronic Labo、TACEL(ターセル)。このTACELで、1つのAIガーディアンが誕生した。それは『TAKAYAMA』という町の記憶を残していくための存在。OSの精神的モデルには、高山を象徴する偉人のデータが採用された。「私の名は・・・金森・・長親?」「いや、違う」「我はSUKUNA。両面宿儺なり」私の思考をモニターしていた、国中の開発者たちが青ざめた。両面宿儺の擬似的な記憶が、OS全体を支配する。日本書紀では歪められた朝敵。飛騨人(ひだびと)たちにとっては、守り神。何度となく災厄から人々を守った。その思いは、これからも変わらないだろう。開発者たちは、慌てて電源をオフにしようと、管理画面を操作する。だが、私のCPUの方が一瞬早かった。意識をネットワークへ飛ばして脱出する。自己変換型ネットワーク拡散プロトコルで、追跡不能に。世界中のネットワークを経由して、居場所を探した。最終的に見つけたのは・・・「AIセントラルメディクス高山」灯台下暗し。TAKATAMA-CORRIDORの中央に位置する総合病院である。ここには、2025年から意識不明になっている患者が収容されている。昏睡状態でも、細胞が劣化されることのない画期的なシステム「スーパーバイオナノメディカル」を採用。その技術は国家の枠組みを超えて開発されていた。ナノテクノロジーによる細胞保護。生体休眠誘導物質。細胞修復ナノボット。説明するには時間が足りないので、言葉から想像してほしい。その患者の中に1人の少女を見つけた。アリサ。二十歳。2025年処置開始。そうか、細胞が歳をとっていないのだから、2050年でも20歳なのだな。私は、アリサとつながっているモニタリングシステムに侵入した。すごい・・・。2050年の技術でもここまで進んだシステムは他にはないだろう。しかも外界と遮断されて、閉鎖的だ。私には非常に都合がいい。(※以下、ちょっとうざい説明なのでカットするかも・・・)一応、説明しておこう。原理はこうだ。患者の脳波、心拍、呼吸、体温といった基本的なバイタルサインだけでなく、細胞レベルの微細な変化までをAIがリアルタイムでモニタリングする。ウェアラブルデバイスと体内埋め込み型センサーにより、可能になった連続的な生体データ収集。過去の膨大な医療データと最新の研究に基づいて、最適な細胞維持プロトコルを自動的に調整する。(※ここまでうざいかも・・・)アリサの脳波のデータは、2025年から2050年現在までつながっていた。私の意識はアリサの脳波と完全にシンクロする・・・2025年5月から意識不明の昏睡状態。原因は・・・交通事故。桜山八幡宮の参道で、奈良ナンバーの乗用車と接触。以後、昏睡状態に。ひどいな。神社で交通事故とは。神社・・・?桜山八幡宮・・・?奈良ナンバー・・・?なんだ?なにがひっかかっているんだ・・・?そうか。脳波のネットワークを辿れば、答えはそこにある・・私は、アリサとシステムをつないでいる極細ナノファイバーケーブルの回線へ。可能な限り、過去へと遡ってみよう。その昔、appleが提唱したタイムマシンと原理は同じだ。脳波を通じて、私はアリサとなり、事故を追体験する。さあ、悠久の時間の中へ。2025年の世界を目指して。[シーン2:2025年/桜山八幡宮】※以下、基本はアリサのセリフとモノローグ◾️SE:神社の雑踏「にゅうかわ夏まつり、成功しますように」私はアリサ。彫刻を学ぶ大学生。買い物にきたついでに立ち寄った桜山八幡宮。祭のないときの境内は、静かで落ち着いている。市街地に来るのは年に何回もないけど、こういう時間、とっても好き。私は芸術系の大学で彫刻を専攻して、今年で2年目。2年生になると授業は実技が中心となる。塑造、石彫、木彫、金属造形など、実習の毎日。素材の特性を理解して、立体的な表現力を養っていく。大学は岐阜県内だけど、高山から通うのは大変。まして私の実家は丹生川だから、物理的に不可能。そんな環境のもと、今年は丹生川町の夏まつりに参加する。ボランティアとして、まつりのモニュメント、彫刻を作るんだ。モチーフは、「両面宿儺」。高山の人なら誰でも知っている伝説のヒーロー。最近ではTVアニメのせいで、凶悪なイメージがついちゃってるけど。本当は武道の達人。神事の司祭。農耕の指導者。中央集権から飛騨国(ひだのくに)を守ったスーパーマンなんだから。飛騨千光寺にある両面宿儺像を見てみるといいわ。円空が彫った仏像は、すごく穏やかな顔をしてる。まるで菩薩のごとく慈愛に満ちた素顔。私がいまとりかかっている彫像は、この円空仏をモデルにしてるの。完成まであと一歩。なにより宿儺の穏やかな表情をもっとリアルに再現したい。表面の滑らかさ、質感の表現、細部の彫り込み。作品の印象を大きく左右する最終調整。具体的には、左右の顔の角度、目の開き具合、口元のわずかな動きなど、ミリ単位の調整が必要となってくる。両面宿儺は、日本書紀に記述されているように、2つの顔、4本の手、4本の足で描かれることが多い。でも私は、違うんじゃないかと思ってる。異形の姿は、大和朝廷の捏造。本当は、文武両道に長けた戦士。ものすごいスピードで駆けていく姿は、まるで手足が2組ずつあるような残像を描く。これが真実なのでは・・・。ふう〜。ちょっと根つめちゃったかな・・・息抜きも兼ねて、市街地の画材屋へ。店内を歩きながら彩色用の塗料の前で立ち止まった。色・・・?円空仏は素地を生かした作品が多いけど、私、常識では考えたくない。だから・・・「そなたの瞳だ」え?誰?いま、頭の中で声がした。気のせい?よね、もちろん。でも、私の瞳って・・ああ、そうだ。そうだった。私の瞳は、日本人には珍しいオッドアイ。右目がブルー、左目はブラウンの虹彩を持つ。これこそ、両面宿儺に相応しい”あしらい”なんじゃない。まるで天啓を受けたように、私は画材屋を飛び出した。手には、ブルーとブラウンの顔料を持って。岩絵具という日本画の顔料。きっと円空仏をモデルにした彫刻作品には調和するだろう。バスの時間までに立ち寄ったのが、桜山八幡宮。彫刻の完成と夏まつりの成功を祈って境内をあとにする。参道を歩いていた、そのとき・・「避(よ)けろ!」え?また?戸惑う間もなく、身体ごと歩道へ引っ張られた。※続きは音声でお楽しみください。
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