EPISODE · Mar 18, 2025 · 10 MIN
ボイスドラマ「転校生はヴァンパイア」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
飛騨高山の幻想的な風景の中で繰り広げられる、ちょっぴり不思議でスリリングな青春ストーリーです。主人公・大神エミリは、見た目は普通の女子高生。しかし、彼女には隠された秘密がありました――そう、満月の夜に目覚める「ヴァンパイア」の血。新たな学校、新たな出会い、そして新たな運命。転校生のエミリが迎えるのは、いつもの学園生活……のはずが、もう一人の転校生・月読マコトの登場によって、思いもよらぬ展開へと導かれていきます。果たして彼女は、運命に抗い、自分自身を取り戻すことができるのでしょうか?本作は、飛騨高山を舞台にした番組「Hit’s Me Up!」の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでもお楽しみいただけます。さらに、「小説家になろう」でもお読みいただけますので、ぜひチェックしてみてください!(CV:桑木栄美里)【ストーリー】[シーン1:プロローグ】■SE/狼の遠吠え2024年8月20日。十五夜。高山市街は幻想的な月の光に包まれていた。こんな夜には数多くの伝説が語り継がれる。誰もが知らないのは、その伝説が現実に存在していること。悪夢は、夏休み明けの9月に始まる。それは高山市内にある高校の教室だった。[シーン2:転校生エミリ】■SE/学校のチャイム〜教室の雑踏/蝉の声「今日からこの学校に転校してきました、大神エミリです」お、なんか、美味しそうなJKがいっぱい・・・・・・とっとっと。私もJKだったわ。でも、実は私、フツーのJKじゃないんだよねー。ま、普段はいたってフツー。っていうか、口数の少ない、目立たないタイプのフツー。フツーじゃないのは、月に一度だけ。心も。身体も。食べ物の好みも。フツーじゃなくなる。驚かないでほしいんだけど、私、ヴァンパイアなんだ。あ、ヴァンパイアって言っても吸血鬼じゃない。人の血を吸うんじゃなくて、食べる方。そう。狼男。いや、正確にいうと、狼女?Wikiには、狼人間とか人狼(じんろう)とか書いてあるわ。私、満月の夜になると、どうしようもなく狩をしたい衝動に駆られるの。前の学校でも、それでちょっと食べ散らかしちゃって、パパとママがあわてて転校手続きしてくれたんだ。ほら、ニュースになったでしょ。どこかの街で、クマが出没して、何人もの被害が出たって。あれはクマじゃなくて私。てへ。って笑い事じゃないな。パパとママはいたってフツーの一般ピープルなのに私だけがヴァンパイアの血を引く。どうもおじいちゃんがヴァンパイアで、隔世遺伝みたい。満月の夜、パパとママは特別にしつらえた座敷牢に私を閉じこめる。「エミリ、ごめんね」と言いながら私の手足をしばって。あと2週間もすれば・・・中秋の名月。ヴァンパイアにとって一年で一番、テンションの上がる夜。去年は座敷牢の太い柱を、小枝のように捻り潰して街に飛び出していった。今年は、大丈夫だろうか・・・不安にかられて眠れぬ夜を過ごした翌日。■SE/学校のチャイム〜教室の扉が開く音「今日から転校してきました、月読マコトです」え?転校生?・・・2日連続で?■SE/〜教室の雑踏教室がざわつく。だって彼は色白で端正な顔立ちのイケメン。まるで月の光を背負っているかのようにクールだ。クラス中の女子のハートが射抜かれてるみたい。先生がみんなを静めてあらためて彼を紹介をする。鹿児島県の桜島町というところからやってきたそうだ。月読は、私の横を通るとき、なにか言いたげな視線を送って席についた。ん?なに?なんか言いたいことでもあるの?[シーン3:1週間後/教室の噂話】■SE/学校のチャイム〜教室の雑踏転校してきてから1週間。高山市内のクマ出没情報と合わせて、クラス中が私の住んでた町の噂をしてる。”あの町に出たのは、なんかクマよりでっかい化け物だって””高山にも来るんじゃない””大神さんのいたとこだよね”あ、ハナシがこっちきそう。と思ったとき、『あれは、ヒグマだよ』彼、月読が割って入った。『本州にはいないけど、飼われていたのが逃げ出したんじゃないかな』『大丈夫。さすがに高山までは距離があるって』『大神さんの住んでたところからも離れてるみたいだよ』え?どういうこと?私を庇ってる?まさか、ね。でもみんな私のことなんて、頭の中から飛んじゃってる。月読を見て、全員キュンってなっちゃってるから。ん?ちょっとちょっと、なに?月読、なんで私のこと見てるの?あんた、なにもの?[シーン4:中秋の名月】■SE/虫の声いよいよ、中秋の名月がやってきた。「パパ、ママ。いつもより思いっきりきつくしばって。今夜の衝動は尋常じゃないの」パパとママが悲しそうな顔で私を見る。だって、先月、あんなに爆食いしちゃったんだもん。ダイエットもしなきゃいけないのに。私たち一家が引越してきたのは日枝神社の近くの古民家。そもそも日枝神社に祀られている山王=山の神は狼にゆかりがある。日枝神社の由来書を見ればその神使(じんし)=使いは狼だ。大昔、山王が狼を救った伝説のように、私を救ってほしいという両親の思いが伝わってきた。今夜、私は血に飢えたヴァンパイアに変身する。それも多分、過去最強の狼に。鉄格子で囲まれた座敷牢は持ち堪えられるだろうか。■SE/鉄の檻を捻じ曲げる音〜狼の唸り声はぁはぁはぁ。ここはどこだ・・・座敷牢じゃない。外だ。まさか、鉄格子を破ったのか・・・狼に変身すると、私の記憶はまだらとなり、抜け落ちていく。パパ、ママは!?いや大丈夫。鉄格子の寝室に隠れててもらってるはず。ホッとすると同時に、また意識が遠のいていく。ダメだ。やばい・・・とそのとき、『ひふみ よいむなや こともちろらね』私の耳にハッキリと祝詞が聞こえてきた。『エミリ、助けてあげるよ』月・・読?『いまから結界をつくって、魔物を分離させるから』なん・・だと?『臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!』うぉぉぉぉ〜!『これで魔物は動けない。いいか、このまま位山へ行くから、気をしっかり持つんだ』位山・・?『山王祭は春だ。大山咋神はそれまで動けない。だが、ここ高山には位山がある。あそこに鎮座するのは天岩戸。僕の守護神、月読命にもゆかりの聖域なんだ』月読命って、あんた・・・なに・・もの?『みちみち話すよ。僕の故郷には、月読命を祀る神社があるんだ。僕はそこの氏子。先月、神託で魔物の動きをとらえ、ここ高山まで転校してきた。月読命は、月を司り、夜を統べる神。月の神にとって、中秋の名月は年に一度の大祭なんだ。祭を汚す魔物は祓わなければいけない。僕はそのためにきたんだ』「私、殺されるの?」『違う。救ってあげるんだよ。エミリの悲しみが伝わってきたから』悲しみ・・?そうだ、私、喜んで人をあやめてたんじゃない。こんなこと、もうやめたかった。『いいかい。いまから大祓祝詞をあげるから!もう、魔物とは縁を切るんだ』うん・・そうしたい・・・『高天原にかむづまります すめらがむつ かむろぎ・かむろみのみこともちて・・・』月読は、まるで魔法の呪文のように祝詞をとなえた。私の体から邪悪な魂が抜けていくのを感じる。『はらえたまえ きよめたもうことを あまつかみ くにつかみやおよろずのかみたちともに きこしめせと まおす・・・』■SE/二拍手(柏手)位山に朝日がのぼる。目覚めた私を見て月読が微笑む。黄金色に輝く笑顔が、夜の終わりを告げていた。私、フツーの女の子になれるかな。これからは私も、月の神様を信じてみよう・・
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