EPISODE · Apr 3, 2026 · 21 MIN
ボイスドラマ「最初の弁当」
from ヒダテン!ボイスドラマ · host Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会
突然すべてを失い、高山へやってきた少女・彩羽。不器用な祖父が作る“ちょっと変なお弁当”に戸惑いながらも、少しずつ気づいていく「本当の気持ち」。そして迎えた卒業の日。彼女が祖父に贈ったのは――“最初の弁当”。『最後の弁当』のアンサーとなる、もうひとつの物語・・・【ペルソナ】・彩羽(いろは=16歳〜18歳/CV:坂田月菜)=東京から高山市街地へ引っ越してきた高校1年生。・静(しずか=58歳〜61歳/CV:日比野正裕)=大学新卒以来高山市役所市民課で働く生え抜きの市職員・さくら(CV:岩波あこ)=静と同じ市民課に務める市職員。マイペースで仕事をするさくらを静はいつも厳しく叱責していた。彩羽にとっては相談できる唯一の女性【プロローグ:総合病院/ER病棟】◾️SE:廊下を走ってくる足音「はぁっ」「はぁっ」「はぁっ」◾️SE:病室の音「ママ!パパ!」「返事してよ!」私の世界の中心。大切な二人が、ある日突然、いなくなった。高校入学前の春休み。涙を流す暇さえないまま、慌ただしいお別れ。誰もいなくなった家の中に、親族が集まった。『かわいそうに』『力になるからね』みんなそう言って憐れみの表情を向けてくる。私はうなづくことさえできない。そのあとは声をひそめて話し合い。どこかで誰かがささやく。『誰がひきとるの』『うちは無理だから』『うちだって』最初小さかった声はだんだん大きくなって、頭の中に響いてくる。私はイヤホンをして、LINEを開く。ママと私のトークルーム。最後のメッセージは、『彩羽、卒業おめでとう』・・とハートマーク。私の名前は彩羽。中学を卒業して高校に入学する直前だった。おじちゃんたちはベランダに出てタバコを吸ってる。パパもママも吸わなかったから、灰皿ないんだけどなぁ。家の中ではおばちゃんたちが、身振り手振りを交えて話し合ってる。イヤホンをしてても聞こえるくらい、声のボリュームが上がっていく。『養護施設しかないんじゃない』え・・それって・・・知らない子たちと一緒に暮らすんだよね。高校はどうなるの・・・おうちは・・・?不安で胸が押しつぶされそうになる。そのとき・・・「この子は私が、高山へ連れて帰る!」大きな声がリビングに響き渡った。ざわざわしてた室内がシ〜ンとなる。私は左耳のイヤホンをはずし、横目で声の方を見る。高山のおじいちゃんだ・・・なんか目をウルウルさせて、親戚のおじちゃんたちを睨んでる。おじいちゃんは、ゆっくりと私の方へ歩いてきて・・「もちろん、無理にとは言わないが」「彩羽、私と一緒にくるか?高山へ」と、小さな声で話しかけてきた。後ろでは、親戚のおじちゃんおばちゃんたちが睨んでいる。私は怖くて、下を向いたままうなづいた。すると、”無理する必要はないんだぞ””おじいちゃんに気を遣うことない””1回しか里帰りしたことないんじゃ、まったく知らないとこと同じだ”いろんな声が飛んでくる。私はまたイヤホンをして、「荷造りしてくる」自分の部屋へ戻っていった。【シーン1:古い町並にて】◾️SE:古い街角の雑踏「さあ、ここが古い町並だよ。小さい頃、夏休みに一緒に歩いただろう。覚えてる?」おじいちゃんが優しい声で話しかけてくる。私は親族会議のあと、そのまま高山へ。古い町並は、10年ぶりくらいかな。 あのときは、パパとママに両手を引かれてた。3人でおじいちゃんおばあちゃんについてったっけ。私は小さくうなづく。ちゃんと覚えてるよ。10年前と変わってないよね。「疲れてないかい?彩羽」おじいちゃんは心配そうに尋ねてきた。少し距離をとって歩き、話すときだけちょっと近づく。全然疲れてはないけど、お腹がすいてマジやばいかも・・・コンビニってさっき通ったっけ。「おじいちゃん・・」「ん?どうしたんだい?」「お腹すいちゃったから・・コンビニ行っていい?」「おお、ごめんごめん!そういや、おじいちゃんもお腹すいてきたわ。コンビニより、ラーメンでも食べにいこか?」「高山ラーメン?」「ああ、そうだ」「やった・・」のぞみの中でTikTok流し見した。高山グルメは全部保存済み。そのなかで高山ラーメンが一番、推しだったんだ。インスタでスイーツ界隈も把握しよう。でも、これからは、ご飯って、どうするんだろう・・・【シーン2:高校生活】◾️SE:扉を閉める音「おじいちゃん、行ってきます」朝7時半。私は自転車で家を出る。ピンクのフレーム。前からほしかった、すっごく可愛いEバイク。引っ越しした次の日におじいちゃんがプレゼントしてくれた。そういえば、おじいちゃん、市役所に勤めてるんだって。私は部活が終わるとそのまま市役所へ。おじいちゃんと待ち合わせて、一緒に外食を食べてから家へ帰る。東京では毎日コンビニの夕食だったからフツーに嬉しいかも・・高山って観光地だから、おいしいものいっぱいなんだもん。みたらし団子。漬物ステーキ。飛騨牛バーガー。鶏ちゃん丼(どんぶり)。夕ご飯のあとは、スイーツのお店へ。プリン専門店とか、和菓子屋さんとか、ジェラートのお店とか。どれも美味しすぎて、決められない。だけど、あ〜、体重計に乗るのが怖い。こ〜んなに、グルメ満載の生活だけど、ひとつだけ食の悩みがあるんだ。それが・・お弁当。おじいちゃんが作ってくれるお弁当は、こう・・なんていうか・・・すごくシュール。基本は、白いご飯の上におっきな梅干し。おかずはゆで卵のことが多いけど・・・たまに生卵がかけてあって・・半熟のTKG?っぽくなってる。この前はちょっと驚いた。午前最後の授業中に、後ろの席の子が「なんかヘンな匂いがする」って。匂いの元をたどったら、なんと私のお弁当。白いご飯の上に、お刺身がのってて、お醤油が垂らしてあった。多分これ、海鮮丼?・・・だったやつ。友だちは「ひどいね〜」とか言うんだけど、私は、おじいちゃんの顔が浮かんできて・・おかしくっておかしくって、笑いが止まんなくなっちゃった。みんなは「お腹こわすよ〜」とか言うし。仕方なく、用務員さんにお願いして、焼却炉に捨てさせてもらった。とはいえ、友だちからおかずを分けてもらうのはちょっと・・・だから購買でパンを買ってる。人気の飛騨牛カレーパンは毎日争奪戦。引っ越した日、おじいちゃん私に言ったんだよね。『私は典型的な昭和男子だから。家事はあまりしたことがないんだ』だけど、彩羽の弁当だけは私が作るから』・・・って。感謝感謝。でも・・・いつか言わなきゃね。これ以上は無理しなくてもいいよ・・【シーン3:文芸部の朝バフ】◾️SE:小鳥のさえずり〜トーストの焼ける音〜ドリップコーヒーを煎れる音「彩羽〜、朝ごはんだよ〜」朝5時。おじいちゃんがトーストを焼き、コーヒーを煎れる。文芸部が朝活をスタートさせてから毎日この時間。おじいちゃんはそれに付き合って朝4時起き。朝食を用意してくれる。年をとると朝早く目が覚めちゃうんだよ・・・って言ってたけど、本当かなぁ。少し焦げたトーストにバターをたっぷり塗って口に入れる。急いでるときは、コーヒーで流し込んじゃう。私、本当はご飯と味噌汁派なんだけど・・・おじいちゃんが眠そうな目をこすりながら焼いてくれる、焦げ気味のトースト。美味しいんだよなぁ。そういえば昨日、先生に、おじいちゃんのスマホの番号聞かれたけど、なんだろう・・・ちょっとだけ不安かも。【シーン4:アプデした弁当】◾️SE:教室の雑踏〜おおっという小さな感嘆の声お弁当箱の蓋を開けた瞬間、教室中がざわめいた。みんな私の”お弁当ガチャ”に期待してたんだけど中身は初めての”アタリ”。なんと『あずき菜の”混ぜごはん”と タラの芽の”ごま和え”』。あずき菜の塩気と滋味(じみ)がじっくりと染み込んだお米。タラの芽の水分を吸い込んで、ようく馴染んだごま和え。まるで、食べる時間を考えて作ったような・・・え・・・?これ・・・ホントにおじいちゃんが作ったの・・・?それからのお弁当は、アプデがもう半端ない。おかずも一品でなく、どんどん増えていく。朴葉味噌を具にしたおにぎり。赤かぶを細かく刻んで入れた卵焼き。こもどうふの煮物。あまりに美味しくて、嬉しくて、私はノートの切れ端にお手紙を書くようになった。『お弁当、ガチで沼る美味しさ!』次の日は、白米の上に飛騨牛しぐれ煮。『しぐれ煮冷めても柔らかくて神!」その次の日は、飛騨一本太ネギの肉巻き。『ネギ太すぎ甘すぎおいしすぎ!』そのまた次の日は、宿儺かぼちゃのクリームチーズ和え。『東京のカフェよりガチうま!』嘘偽りはまったくない。おじいちゃん、すごい。料理教室にでも行ってるのかなあ。【シーン5:対面】◾️SE:扉を開く音「ただいま〜」ある晴れた日。部活が急に中止になって、家に帰ると・・・「え・・・」キッチンに立って料理しているおじいちゃん。その横には・・・わ、きれいなお姉さん・・・落ち着いたグレージュのニット。清潔感のある細身のパンツ。大人だ・・・※続きは音声でお楽しみください
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