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EPISODE · Jan 23, 2016 · 1H

不随意な身体のリアリティ

from 哲楽 · host 哲楽編集部

森岡正博さんは、早稲田大学で哲学を教えている。2015年の春、27年ぶりに関西から関東に戻ってきたばかりだ。7月最後の土曜、首都高速が頭上を走る通りに面した都内のホテルで開催された「現代哲学ラボ」で、話を伺った。 The post 不随意な身体のリアリティ first appeared on 哲楽.

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(インタビュー◎2015年7月25日 ホテル&レジデンス六本木にて Music: Korehiko Kazama ) 森岡正博さんは、早稲田大学で哲学を教えている。2015年の春、27年ぶりに関西から関東に戻ってきたばかりだ。7月最後の土曜、首都高速が頭上を走る通りに面した都内のホテルで開催された「 現代哲学ラボ 」で、話を伺った。 森岡さんの生まれ故郷は高知県。小学生のときに「死んだらどうなるんだろう」という問いに取り憑かれて以来、「強制的に哲学者にならされてしまった」という。その問いを抱えたまま、東京大学に進学。物理学や数学でこの問いの答えを見つけようとしたものの、期待していたものは得られず、哲学に転向した。大学院でヴィトゲンシュタインの分析哲学に出会ったときに「まさにこれだ」と感じてのめり込んだ。一方で、理系と文系の間を行き来したことから、科学技術の問題についても考えるようになり、「自分を棚上げしない」パラダイムを立ち上げようと奔走した。 時は1980年代。その頃に登場した生命倫理学という学問分野では、脳死の問題が扱われていたものの、自分たちが倫理の問題を生み出しているという意識が欠落していることに疑問を感じ、何か別の形が必要なのではないかと森岡さんは感じたのだ。1988年、その思いが最初の本『生命学への招待―バイオエシックスを超えて』に結実する。さらに京都で就職してから数年後の1994年、当時飛ぶ鳥を落とす勢いの論客たちとの対談本『電脳福祉論』を出版する。 あらゆる技術が身体障害者や高齢者と接続するに従って、そうした人々が文明の最先端に立つことになるのではないか。そんな見通しを、5人の論客たちにぶつけたのだ。最後に橋爪大三郎氏と対談したとき、森岡さんはある素朴な未来予想をぶつける。「これから先、人間と機械が接続されるようになると、複数の人々がひとつの大きな身体を共有するようになるのではないか」と。複数の人々が大きなクレーンを同時に操縦する思考実験で、この直観を表現してみたものの、橋爪氏は否定する。それは「随意運動」に対する「麻痺」が起こっている状況であり、「身体の共有」ではありえないと。 森岡さんはここでもまだ自分の直観を捨てきれず、複数の人々の身体が一台の車に接続され、エネルギーを供給しながら走る思考実験を出してみる。それに対しても橋爪氏は、それは「我々が太陽に依存しているのと同じで、身体の共有化ではない」と否定する。 森岡さんは、ある程度は自分の意志に従って動くクレーンを使っているうちに自分の脳に条件づけがほどこされるようになり、そうして複数の人間の身体像が形成されれば、身体が共有されたことになるはずだ、と最後まで粘った。 再び2015年7月。20年が経って改めて振り返ってみると、「随意運動―麻痺」という考え方は、身体のある一面しか捉えきれていないのではないかと思えた。身体の不随意な部分であっても、内臓感覚や、五感で感じる知覚なども、身体の別の側面として浮かび上がってくることに、当時から興味があった。しかしそれは個人的な興味を超えて、次の予測につながる。そうした不随意の側面をもった身体が機械を通して複数の人々と接続されると、自分の身体が拡張されるだけでなく、心も拡張され、ひいては他人の心が自分の心に入ってくるように感じられるのではないか。 森岡さんにはさらに、もう一つ気になることがある。ブレイン・マシン・インターフェースで他人の脳と自分の脳が接続されたら、「他人という存在が本当に存在するのか」という懐疑が生まれるはず。一方で100%他人のことがわかるようになったら、そのとき私は、私自身のことを誰だと思うのだろう。 私と他者をめぐる逆向きの懐疑がこれから生じるのではないか。そんなさらなる予測が、「身体の共有化」という予測を打ち出した延長線上の森岡さんの心に生じている。哲学者の思考実験というものは、妄想でもあり、未来予想でもあり、さらには予言でもありうる。森岡さんのこれらの「予測」がこのうちのどれに当たるのかは、まだわからない。しかし、一つだけ言えることがある。 死を想起し続けた自身の問題と、我々が生み出す社会の問題という二つの問題に対して、同時にリアリティを感じてしまう。森岡正博さんはそんな希有な哲学者だということだ。その境地で、読者の直感を執拗に揺さぶり続けてきたことで、未来を見通すための目を鋭くした。そんな気がしてならない。 インタビュー 「現代哲学ラボ」という試み 森岡:私、大学は東京だったんですが、30歳の時に就職で関西に行って、それから27年ずっと関西にいたんですよね。関西は非常に濃いところで、色々な仲間もできて面白かったですね。非常に久しぶりに東京に戻って来て、何かやりたいと思いました。東京は人口も多いし、自分の頭で哲学をしている人たちが自由に集まれる場所を作りたいと思いまして、それで田中さをりさんに「何かやろうよ」というふうに声をかけました。それで意気投合して。ちょうど田中さんと私の共通の知り合いに永井均さんと、入不二基義さんというオリジナルな哲学者が東京におられますので、彼らに「一緒にやろう」と声をかけて、それでを立ち上げたと、そんな感じですね。 ——「自分の頭で考える哲学」に何か思い入れがおありなんでしょうか。 森岡:そうですね。私、若い時から、ずっとそう思っていたんですけど。哲学って自分で自分の問題を考えるんでしょうと。私が東大の文学部に入った時は、大学ではむしろそういうことはやっちゃいけない雰囲気があって、「まずカントやハイデガーを読みなさい」みたいなのがあって。私はすごく反発して大学時代を過ごしていたというのがあって。今となっては、先生がそういうことを言う理由は、自分が先生になるとわかりますけど。わかるけど、何だろうな。哲学に中心的なやり方というのは車に右と左の両輪があるのと同じで、左は過去の物から学ぶ、右は自分の頭で考える。その二つがそろって初めてちゃんとした哲学だろうと思うんです。やっぱり、日本の今のアカデミズムや大学の哲学教育はまだまだ過去のものに中心を置きすぎているような気がやっぱりするんで。 ——そこはバランスの問題だと思われますか。 森岡:今はそう思っていますね。バランスの問題で、それが一番良いんじゃないでしょうかね。 ——例えば高校生で、自己の問題に興味を持っていますという方が、相談に来たとしたら、どうアドバイスされますか? 森岡:それはまず「どういう問題ですか」と。「あなたが今、心にある問題は?」って。そこから始めるでしょうね。 ——それで関連する文献も紹介されますか? 森岡:それはそうなりますけれど。「最初は自分で全部考えたら」って言うと思います。自分で考えたらどうなるかっていうと、ぜったい行き詰まるんですよ。行き詰まったときに私のような先輩に聞くか、あるいは本に聞く。というのがいいじゃないかと思うんですよ。本を読んだり話を聞いていたりするとまた考えたくなるから、また自分の考えに戻っていって、また行き詰まるから。そういう右に行ったり左に行ったりというのが一番いいんじゃないかと思いますけどね。なので現代哲学ラボも、どっちかというと車の両輪の、自分の頭で考えて表現している人達と、交流したい。それはすでにやっている人もそうだし、これからやりたいと思っている人達が交流できる場が東京にあるべきだと思いますし、すでにあると思います、あちこちにね。それを総まとめするような場所を作りたいなと思います。あとは、最近海外の人とも、英語を使うと交流できるので、そっちも広げていきたいなと将来的には思っています。 ——「草食系男子」を世に出されたときも海外からのインタビューがあったとか。 森岡:かなりありましたね。あれが哲学かどうか知らないけど。やっぱり面白いこと言うと、世界の人達って興味持ちますよ。私も各国の人達からインタビューを受けてますけど、受けている話題というのは、ひとつは「脳死問題」ですね。これはかなり受けました。あとは「草食系男子」。この二つですね。やっぱり珍しいんですよ。こういう話で盛り上がっているのはなぜ?みたいなね。文化的な差異もあるけど、広い意味で——今日は入不二さんもおられますが——哲学についての面白い提言をしていくとそれはやっぱり興味を持たれると思いますよ。 ——まず場を作って、自分の頭で考える人達が若い人を中心に集まって。 森岡:あとベテランとね。ゆくゆくは高校生まで広げたいと思っていて。だってさ、高校生ぐらいのときって哲学的なことを考えたりする...

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不随意な身体のリアリティ

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