EPISODE · Aug 10, 2025 · 13 MIN
【産科麻酔#11】多発性硬化症妊婦に脊髄幹麻酔、ほんとに大丈夫?
from #ワンますラジオ · host 松田祐典|産科麻酔科医
Ioannopoulos D, Manika K, Lykoudis PM, et al. Effect of neuraxial anaesthesia or analgesia on postpartum relapse rates in multiple sclerosis: A systematic review. Eur J Anaesthesiol. 2025;42:508–517.The EJA Podcast collection注釈;論文の結果をザクっとまとめて計算すると、OR 0.72 [95%CI 0.54-0.96]でした。あくまでも私の手計算によるものですし、査読を受けたデータではないので、ご注意を。🧠 背景:多発性硬化症(MS)は若年女性に多く、妊娠・出産と重なる時期に発症することが多い。妊娠はMSの再発率を下げる一方で、産後は再発リスクが上昇する傾向がある。脊髄幹麻酔が神経症状を悪化させるとの懸念から、麻酔選択に迷いが生じる場面も多い。🔬 方法:MS患者の産後再発率に関する8つの比較研究(計1315人)を対象としたシステマティックレビュー。脊髄幹麻酔や鎮痛の有無で再発率を比較。データベースはMEDLINE, Library of Congress, LiSTAを使用し、2024年10月までの文献を抽出。📊 結果:8つの研究(計1,315人)の産婦のうち、脊髄幹麻酔(または鎮痛)を受けたグループと受けなかったグループで、産後1年以内のMS再発率に有意差はなかった(例:Bouvetらの研究では、再発率 27% vs 23%、P>0.05)。一方で、以下の要因と産後再発のあいだに有意な関連が確認された:• 妊娠前1年以内に再発歴あり:再発率 29〜44%(再発なし群では14〜27%)• 妊娠中に再発あり:再発率 34〜50%(再発なし群では20〜25%)• MS罹患期間が短い人:再発率が高い傾向あり(平均罹患年数 5.4年 vs 7.4年, P<0.05)• 最後の再発から出産までの期間が短い人:中位値0.8年 vs 2.0年(P<0.05)つまり、麻酔の有無よりも、「出産前の病勢活動性」が強く再発率に影響していることが示された。💡 考察:脊髄幹麻酔はMS再発率を高める要因ではない可能性が示された。むしろ、産前の病状活動性が再発リスクを左右する。再発歴のある産婦には産後の注意深いモニタリングと治療の早期再開が推奨される。✅ まとめ:MS産婦に対する脊髄幹麻酔は安全と考えられ、出産時の麻酔選択肢として否定する必要はない。今後はより質の高い前向き研究が望まれる。
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