EPISODE · Oct 11, 2021 · 1H 9M
概念の脈動性を活写する
from 哲楽 · host 哲楽編集部
入不二基義さんは、青山学院大学で哲学を教えている。自身の思考は日々、ワープロソフトから描画ソフトまで様々なアプリケーションを駆使して記録する。論文執筆時には、集中して、一挙に書き上げる。そうして蓄積された入不二哲学は、複数の概念の動きを捉え、それらが現れたり潜んだり、伸びたり縮んだり、時には螺旋状に流れたりする様子を活写し、独特な言葉遣いで読者の思考を照らす。 The post 概念の脈動性を活写する first appeared on 哲楽.
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(インタビュー◎2021年10月4日テレビ会議にて Music: Korehiko Kazama ) 入不二基義さんは、青山学院大学で哲学を教えている。自身の思考は日々、ワープロソフトから描画ソフトまで様々なアプリケーションを駆使して記録する。論文執筆時には、集中して、一挙に書き上げる。そうして蓄積された入不二哲学は、複数の概念の動きを捉え、それらが現れたり潜んだり、伸びたり縮んだり、時には螺旋状に流れたりする様子を活写し、独特な言葉遣いで読者の思考を照らす。 入不二さんは、11月11日という誕生日と、神奈川県立湘南高等学校出身であることに誇りをもっている。そもそも書く、という習慣がいつ始まったのか、その記憶を辿ると、幼稚園時代にまで遡る。小さな黒い能率手帳を持ち歩き、近所を探検して、お化けについて記録していたという。概念が動く形で現れ始めたのは、中学時代。数学の授業で習った2進法で、0と1だけで構成される数字の中に、2そのものがどこにも見出せないという衝撃を覚え、頭の中に視覚的なイメージが浮かんだ。これを「2進法の亀裂」だと感じたという。 そういえば、入不二さんの誕生日の1111は、2進法から10進法に書き換えると15になる。誕生日に暗号が隠されているようでもある。高校は神奈川県でも有数の進学校。試験前には、普段感じる疑問を全て封じて勉強に打ち込む一方、文芸部の活動で小説を執筆し、小さな疑問の断片が書き留められた。 幼少期に入不二少年が見ていたお化けは、幻覚なのか、空想なのか、それとも実在する何者なのか、それはわからない。ただ、お化けたちは「現に」そのような在り方で存在していた。哲学者になった入不二さんが書き下ろした『現実性の問題』という一冊の本があるが、お化けたちの在り方は、この本で描かれる現実の力ともどこかで通じているようでもある。 『現実性の問題』は、一年程前に刊行され、歴史に残ることを予期させる哲学書として話題になった。ただし、読解は容易ではない。現実の存在という形而上学を扱う哲学書であり、書かれてあることの先に詩や文学との接合を想像させる芸術的な書でもある。その一方で、読み手が正確に理解しようと読み込むうちに、不思議な魅力に取り憑かれる。入不二さんの著作の愛読者たちは、この魅力をエッシャーの騙し絵に喩えたり、精神的な力として感じたりもしている。 さて、入不二さんとのインタビューが終わって、音声を編集しようとしたところ、声と声の間の無音であるはずの区間に、微かな背景音が残されていた。入不二さんの自宅近くの学校では、運動会の予行演習が開催されていて、遠くで響く「今、最後の追い上げです」という放送部の実況のようだった。ここ数年来、私たちの日常は、季節感も時間感覚もぼんやりしたままだ。そんな中でも地球は回って、季節はめぐっている。 秋空を見上げれば、高く見える。地球に接近する隕石の軌道は、天文学者が観測してくれている。そして哲学者入不二は、人間の概念の動きを見つめて、哲学している。こうして、私たちの暮らしと自由は安全に保たれ、また明日からの生活を前に、安心して眠ることができるのだ。 インタビュー ※音声の書き起こしを読みやすくするため、加筆修正をしております。 誕生日の問題 田中:改めまして田中です。本日はビッグ・ゲストです。入不二基義先生に来て頂いております。よろしくお願い致します。 入不二:よろしくお願いします。 田中:お時間頂いて本当にありがとうございます。 入不二:こちらこそ、よろしくお願いします。 田中:入不二先生は色々な書籍をお出しになっていらっしゃるのでご存知の方は多いと思うのですが、最初にご経歴を簡単にご紹介させて頂きます。 1958年11月11日、神奈川県のお生まれです。東京大学大学院人文科学研究科博士課程を単位取得満期退学された後、山口大学助教授を経て、現在、青山学院大学教育人間科学部心理学科教授をされていらっしゃいます。主に「私」論・相対主義論・時間論・運命論等を題材に哲学をしていらっしゃいます。珍しい趣味としては、51歳でレスリングを始められて、一年後の52歳で試合デビューも果たしておられます。2020年に筑摩書房より『現実性の問題』という哲学書を上梓されていらっしゃいます。 まず、11月11日生まれということの大事なポイントですね。ここを外さないで下さいと言われて、今、緊張しながら読み上げました。11月11日生まれというのは何かポイントがあるのでしょうか。 入不二:見たまんまなんですけど、1111ですから、ゾロ目になっていて。誕生日って自分のものすごく小さい頃からついて回っていて、自己紹介も含めて。1の並びだっていうのをすごく意識して育ってきたので。蠍座好きですし、しかも蠍座の中でも1のゾロ目だっていうので、何か自分の出自がそこにあるかのような幻想を小さい頃からもっている。それがこだわりということです。 田中:省かれると「入れて欲しい」と仰ると(笑)。 入不二:「入れて欲しい」つながりですが、11月11日への拘りは、幼児の頃からということですけど、普通プロフィールでは出身大学を書くことになっていて、出身高校って字数のこともあって、省略することも多いですよね。でも、この歳になると卒業した大学より高校の方に愛着が出てくるんですよ。遡って、中学校とか小学校も含めて。大学どこどこ卒よりも、高校を入れておきたい、みたいな。私、神奈川県の湘南高校というところの卒業なのですけど、まあ、歳を取ったせいだと思うのですけどね。高校以前にプロフィール的な意識が向かうっていうのは。 田中:私は九州出身ですけど、神奈川県と東京都は近い感じがあって、住んでいる人はどちらにも愛着があって、神奈川県をフォーカスするのはあまり違いがないように思ってしまったのですが、そこは全然違うのですね。 入不二:高校の雰囲気という点では、全然違うでしょうね。神奈川県の県立高校で、藤沢の方にあるわけですけど、やっぱり田舎の高校なのですよ。東京都内の高校と比べれば。隣ではあっても、地方の公立高校という色彩が強いのだと思います。 田中:どんな高校だったのですか? 入不二:当時は、東大に70名ほど合格するくらいの進学校だったのですが、公立高校だということもあって、大学受験という縛りを忘れているような素振りをしているところがある。自分たちは勉強だけの優等生じゃないよ、と誇示したいかのような。運動だとか部活も十分やっているし、体育祭も物凄く時間をかけてやって、青春を謳歌していますと言いたげな高校でした。それってある種の自己欺瞞でもあるわけですが、優等生特有の微笑ましいものです。私は残念ながらその仲間に入れなかったのですが、でも高校生としては、そういう振りは健全なものだと思います。そういう、「文武両道」の高校でした。 田中:何か部活とかされていらっしゃったのですか? 入不二:私、文芸部の部長をやっていて。さっきのレスリングの紹介とは対極で、高校時代に運動部の経験は全...
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