【ライブレポート】キズ、「お前らのために来た」 episode artwork

EPISODE · Apr 30, 2026 · 8 MIN

【ライブレポート】キズ、「お前らのために来た」

from Music News Japan · host keisuke horota

https://barks.jp/news/1064282 キズといえば、昨今のロックバンドの中でも、きわめて“我道”を貫いているバンドである。ファンの顔色を窺わず、その要望に応えようと心を砕くこともせず、ただ、ひたすらに己が欲するものを表現し、己が道を突き進む。自分たちの生み出すものはエンタメではなく芸術だと明言し、作り出す音楽やパフォーマンスの熱量はもちろん、その媚びない姿勢こそが、ジャンルを超えた支持を獲得してきた大きな要因だと言っても過言ではない。 しかし、1月より全国9都市を回ってきたツアー<鳳凰焔巡>の最終日となった4月19日、KT Zepp Yokohamaのステージに立った来夢(Vo)は、アンコールでこう告げたのである。 「今日はですね、自分は何のためにこのステージに立ったかというと……お前らのために来たんですよ。9年も走ってると、自分の意志だとか、金のためだとか、そんな理由じゃ立てないんですよ、ステージに。で、今日なんでここに来たんだろう?って考えたら……お前らのためでした。いや、それでしかないです。いつもはいろんなもの持ってくるんだけど、今日はもうお前らのためだけでいいなと思いました」 “1st LAST ALBUM”の名のもと、 8月5日にリリースされる『極楽より極上の雨』を控えての本ツアーでは、確かに従来の彼らのライブとは違うものが感じられた。ヒリヒリと突き刺さるような痛みだけでなく、言うなれば、もっと温かい包容力のようなものとでも言うべきか。2017年の結成から9年を経て、キズは明らかに新たなフェーズへと踏み出していることを、この夜、彼らは証明したのだ。 開演1分前を切ると、残り秒数が紗幕上でカウントダウン。0になった瞬間、地鳴りのようにヘヴィ極まるBGMの上で“極楽より極上の雨が”と繰り返す来夢の声が流れ、「さぁ行くぞ、お前ら!」という彼の号令から、新曲「鳳凰」でツアーファイナルの幕は開いた。だが、ステージを覆ったままの紗幕には“鳳凰”の2文字や輪廻を思わせる輪の表象が映し出され、凄まじい爆音を放ちながら蠢く4人の姿に重なり、その想いを視覚でも訴えていく。 ツアーに伴い、アルバムから先行販売された本作は、何度燃え尽きても灰の中から甦る伝説上の生き物の名を掲げたタイトルの通り、どれだけ奪われても生き続ける奇跡を歌う生命力にあふれたナンバー。お立ち台の上で“君といたい 生きていたい”と、鼓膜を突き破るような勢いで歌い上げる来夢の背から鳳凰の羽根が生え、今にも羽ばたかんとする圧倒的な映像効果にも、強く胸を揺さぶられる。 曲終わりに熾烈なシャウトを放ち、来夢が「鳳凰焔巡! 行くぞ、てめぇら! 命燃やせるか!?」と客席を煽り立てると、すかさずreiki(G)のギターリフが唸ってキズのライブ鉄板曲「地獄」を投下。ヘッドバンギングと拳の嵐が吹き荒れるフロアに「救われたいやつだけ……救われたいやつだけついてこい!」と放って狂乱のクラップを湧かせながら、来夢は「聞こえねぇ! もっと!」「俺の声に応えてくれ!」と、ひたすらにオーディエンスの“声”を、すなわち“生”の証を求めていく。 ステージに掲げられた色の褪せた日の丸を背に、続く「リトルガールは病んでいる。」でも容赦なく歌い叫んで声を枯らしていくのだから、「さぁ、俺と燃え尽きようぜ」という言葉のリアリティも満点。reikiとユエ(B)の弦楽器隊もフロアに噛みつくように前方へとせり出して、序盤から手加減なしのフルスロットルぶりには背筋が震えるばかりだ。 はたして、何が彼らをここまで駆り立てるのか? そんな想いを頭に巡らしていると、雷の音から「ストロベリー・ブルー」が始まり、レーザー光線が飛び交うなか、ステージには螺旋模様が投影される。そして叙情を香らせるクリアなギターが、ゴリゴリのベースプレイが、エモーショナルに打ち鳴らされるドラムが交ざり合い、光に照らされて“さぁ、行こうあの場所へ”と来夢が導くのは楽園。何度命を廻っても、そこに辿り着こうと再会の約束を交わし、歓喜の余韻をきょうのすけ(Dr)のドラムフィルが打ち破った「傷痕」では、オーディエンスと共に頭を振り、飛び跳ねて、身も心も一つになっていく。 さらに「もっと熱くなろうぜ!」(来夢)と続いて、満場のクラップを巻き起こした「豚」では、バキバキのスラップを鳴らして何度も脚を蹴り上げるユエといい、お立ち台に上がってバッハ由来のギターソロをブッ放すreikiといい、パッションの迸るパフォーマンスでアイロニーに満ちた曲世界を怒から楽へと転換。しかし、それはreikiのメロウなクリーンギターと来夢の朗々たるボーカルで始まった「0」で哀へと移り変わる。重苦しいアグレッションに満ちた演奏に乗る詞は生への否定とも捉えられかねないほど危ういが、それでも来夢は「さぁ、お前ら、今日は何をここに持ってきた? お前らのすべてに俺が答えてやる!」と宣言。さらに「さぁ、全力で生きろ!」と訴えて、虚無と孤独にまみれた命だからこそ自由なのだと教えてくれる。 続いて、お立ち台上でギターをかき鳴らす来夢にスポットライトが当たって始まった「平成」でも、彼が歌う“一緒に死のうよ”という壮大なる反語に客席から拳と声があがり、きょうのすけもスティックを振るいながら追随。キズ流の喜怒哀楽を廻り、絶望も垣間見せながら、最後は何よりも力強く“生”へと帰結する流れは見事と言うほかなく、曲終わりに「俺と一緒に……死んでくれるか?」と懇願する来夢の言葉には愛しか見当たらない。 また、スパークラーの火花が噴き出すステージを縦横無尽に動き回り、ロックを鳴らした「Mr. BiG MONSTER」から、全員ジッと音を刻むことに専念した「銃声」のコントラストも爽快。楽器陣が静かなぶん、一人「歌え! 俺の耳に届けてくれ!」と吐き出す来夢のエモーションが際立っていた。そしてライブも終盤に差しかかり、ここからはキズ特有の壮大な世界観が展開。荘厳なイントロから始まった「JP:PARASITE」では、ラテンの匂いのするリズムに客席からタオルが振られるが、いわゆる“タオル曲”と呼ばれるものにありがちな陽の要素は皆無だ。 此の世の不条理を宇宙規模に昇華して、癇性なギターがかき鳴らされると、今度はピアノと雷鳴の音から「鬼」へ。お立ち台の上でスポットライトを浴び、確信の籠もった声で歌い始めた来夢は“今更 許してくれ”と座り込み、“死にたくないな”とうずくまる。渾身の思いで書き上げた楽曲だけあって、一昨年のリリース以来「鬼」をパフォーマンスする来夢は常に圧倒的な存在感を放ち、悲愴な想いを叩きつけて聴く者の胸を切っ先鋭いナイフで抉り取っていくのが常だったが、この日の印象は少し異なっていた。叩きのめすのではなく、まるでオーディエンスの中に入り込んでいこうとするかのような、一種の優しさにも似たものを感じていると、彼は「これが今を生きるビジュアルロックだ、この野郎!」と咆哮。そして気づく。今の彼は「鬼」という楽曲を受け止め、潰されなかった不屈のファンの存在を知っているからこそ、強く、そして優しいのだと。 「届いてるか? 俺の声が!」と来夢が呼びかけ、本編を締めくくったのは昨年の日本武道館ワンマンで突如披露された「R/E/D/」。緑のレーザーと赤いライトが場内を染めるなか、先達へのリスペクトと同時に野心を込めたナンバーで、来夢は“この手じゃまた掴み切れない”と腕を伸ばし、「歌え!」と場内に合唱を巻き起こした。そして響きわたる歌声に、彼は「ありがとう! お前ら、全員、愛してるぞ!」と絶叫。そんな姿を目にして、掴み切れずにこぼれ落ちる“呪いよりの夢”を掬い上げるのは、ファンの手であり声なのかもしれないと感じざるを得なかった。 やまぬ声と手拍子に応えて「アンコールやるぞ、てめぇら!」と登場すると、「おしまい」に「ミルク」とアッパーソングでオーディエンスと共に躍動し、来夢は「もっと呼んでくれよ!」とメンバーコールをリクエスト。湧き上がる声に「みんなの声聞いてスタッフさんが“格闘技のイベントみたいですね”って言ってた」と笑わせてから、「9周年ですね。おめでとう!」と、自分たちのみならずキズを愛し続けてきたファンをも祝福する。 そして「今日はお前らのためだけにここに来た」と本稿冒頭のMCを述べてから、「楽しかった! ありがとう! 最後にね、お前らの為だけの歌を、歌って終わりたいと思います」とアカペラで歌い始めたのは「黒い雨」。来夢の「歌え!」という求めに応じ、“愛してる”とサビを合唱するオーディエンスに、さらに来夢は「愛してるぞ!」と繰り返す。本来は世界よりも“君”を選ぶ、ある意味残酷で究極の愛の歌だが、ただ、今は純粋に“愛してる”という言葉に温かさに浸っていいと、そう思える時間だった。 ひたすらに自身の思いを楽曲に乗せて叩きつけてきたキズだが、9年の活動の中でオーディエンスとのコミュニケーションは双方向のものとなり、曲に対するフィードバックを得て、ファンの存在は彼らの中でより大きなものとなった。結果、なんとこの日はダブルアンコールが実現。 「お前らのためにやるよ、今日は。やっちゃうよ!」(来夢)と人気曲「蛙-Kawazu-」を最後にドロップして、クラップを贈る客席を大きく揺らしていく。来夢はスマホでステージ上のメンバーや客席を撮影し、ユエがベースを掲げて豪快にターンすれば、reikiはジャケットを客席に投げ込み、きょうのすけは恒例の“きょのす!”コールを呼んで、足かけ3ヶ月にわたるツアー<鳳凰焔巡>は喝采のなか終幕した。鳳凰は焔の中で甦り、命を巡る──それは、どれだけ踏みつけられても絶えることのない逞しさの象徴であり、キズが目指す命のカタチでもあるだろう。 そんな彼らがキャリア9年を経て、バンド史上初めてリリースするアルバム『極楽より極上の雨』。名曲「ストロベリー・ブルー」の一節からタイトルを取り、“1st LAST ALBUM”として発表される本作が降らせるだろう極上の音と言葉の雨は、燃え尽きた我々を蘇らせる恵みの雨になるはずだ。 ライター◎清水素子カメラマン◎浜野カズシ SETLIST1.鳳凰2.地獄3.リトルガールは病んでいる。4.ストロベリー・ブルー5.傷痕6.豚7.08.平成9.Mr. BiG MONSTER10.銃声11.JP:PARASITE12.鬼13.R/E/D/ 〈ENCORE.1〉EN1.おしまいEN2.ミルクEN3.黒い雨 〈ENCORE.2〉EN4.蛙-Kawazu- 【リリース情報】■2026.4.8 DIGITAL RELEASE「JP:PARASITE」「鳳凰」※1st LAST ALBUM『極楽より極上の雨』より先行配信 ■2026.8.5 RELEASE1st LAST ALBUM 「極楽より極上の雨」【完全生産限定盤A】DMGD-046/047 [CD+DVD] ¥22,000 (tax in)映像特典 Music Video Collection (新作&旧作)仕様 特殊パッケージ仕様 【完全生産限定盤B】DMGD-048/049 [CD+DVD] […]

https://barks.jp/news/1064282 キズといえば、昨今のロックバンドの中でも、きわめて“我道”を貫いているバンドである。ファンの顔色を窺わず、その要望に応えようと心を砕くこともせず、ただ、ひたすらに己が欲するものを表現し、己が道を突き進む。自分たちの生み出すものはエンタメではなく芸術だと明言し、作り出す音楽やパフォーマンスの熱量はもちろん、その媚びない姿勢こそが、ジャンルを超えた支持を獲得してきた大きな要因だと言っても過言ではない。 しかし、1月より全国9都市を回ってきたツアー<鳳凰焔巡>の最終日となった4月19日、KT Zepp Yokohamaのステージに立った来夢(Vo)は、アンコールでこう告げたのである。 「今日はですね、自分は何のためにこのステージに立ったかというと……お前らのために来たんですよ。9年も走ってると、自分の意志だとか、金のためだとか、そんな理由じゃ立てないんですよ、ステージに。で、今日なんでここに来たんだろう?って考えたら……お前らのためでした。いや、それでしかないです。いつもはいろんなもの持ってくるんだけど、今日はもうお前らのためだけでいいなと思いました」 “1st LAST ALBUM”の名のもと、 8月5日にリリースされる『極楽より極上の雨』を控えての本ツアーでは、確かに従来の彼らのライブとは違うものが感じられた。ヒリヒリと突き刺さるような痛みだけでなく、言うなれば、もっと温かい包容力のようなものとでも言うべきか。2017年の結成から9年を経て、キズは明らかに新たなフェーズへと踏み出していることを、この夜、彼らは証明したのだ。 開演1分前を切ると、残り秒数が紗幕上でカウントダウン。0になった瞬間、地鳴りのようにヘヴィ極まるBGMの上で“極楽より極上の雨が”と繰り返す来夢の声が流れ、「さぁ行くぞ、お前ら!」という彼の号令から、新曲「鳳凰」でツアーファイナルの幕は開いた。だが、ステージを覆ったままの紗幕には“鳳凰”の2文字や輪廻を思わせる輪の表象が映し出され、凄まじい爆音を放ちながら蠢く4人の姿に重なり、その想いを視覚でも訴えていく。 ツアーに伴い、アルバムから先行販売された本作は、何度燃え尽きても灰の中から甦る伝説上の生き物の名を掲げたタイトルの通り、どれだけ奪われても生き続ける奇跡を歌う生命力にあふれたナンバー。お立ち台の上で“君といたい 生きていたい”と、鼓膜を突き破るような勢いで歌い上げる来夢の背から鳳凰の羽根が生え、今にも羽ばたかんとする圧倒的な映像効果にも、強く胸を揺さぶられる。 曲終わりに熾烈なシャウトを放ち、来夢が「鳳凰焔巡! 行くぞ、てめぇら! 命燃やせるか!?」と客席を煽り立てると、すかさずreiki(G)のギターリフが唸ってキズのライブ鉄板曲「地獄」を投下。ヘッドバンギングと拳の嵐が吹き荒れるフロアに「救われたいやつだけ……救われたいやつだけついてこい!」と放って狂乱のクラップを湧かせながら、来夢は「聞こえねぇ! もっと!」「俺の声に応えてくれ!」と、ひたすらにオーディエンスの“声”を、すなわち“生”の証を求めていく。 ステージに掲げられた色の褪せた日の丸を背に、続く「リトルガールは病んでいる。」でも容赦なく歌い叫んで声を枯らしていくのだから、「さぁ、俺と燃え尽きようぜ」という言葉のリアリティも満点。reikiとユエ(B)の弦楽器隊もフロアに噛みつくように前方へとせり出して、序盤から手加減なしのフルスロットルぶりには背筋が震えるばかりだ。 はたして、何が彼らをここまで駆り立てるのか? そんな想いを頭に巡らしていると、雷の音から「ストロベリー・ブルー」が始まり、レーザー光線が飛び交うなか、ステージには螺旋模様が投影される。そして叙情を香らせるクリアなギターが、ゴリゴリのベースプレイが、エモーショナルに打ち鳴らされるドラムが交ざり合い、光に照らされて“さぁ、行こうあの場所へ”と来夢が導くのは楽園。何度命を廻っても、そこに辿り着こうと再会の約束を交わし、歓喜の余韻をきょうのすけ(Dr)のドラムフィルが打ち破った「傷痕」では、オーディエンスと共に頭を振り、飛び跳ねて、身も心も一つになっていく。 さらに「もっと熱くなろうぜ!」(来夢)と続いて、満場のクラップを巻き起こした「豚」では、バキバキのスラップを鳴らして何度も脚を蹴り上げるユエといい、お立ち台に上がってバッハ由来のギターソロをブッ放すreikiといい、パッションの迸るパフォーマンスでアイロニーに満ちた曲世界を怒から楽へと転換。しかし、それはreikiのメロウなクリーンギターと来夢の朗々たるボーカルで始まった「0」で哀へと移り変わる。重苦しいアグレッションに満ちた演奏に乗る詞は生への否定とも捉えられかねないほど危ういが、それでも来夢は「さぁ、お前ら、今日は何をここに持ってきた? お前らのすべてに俺が答えてやる!」と宣言。さらに「さぁ、全力で生きろ!」と訴えて、虚無と孤独にまみれた命だからこそ自由なのだと教えてくれる。 続いて、お立ち台上でギターをかき鳴らす来夢にスポットライトが当たって始まった「平成」でも、彼が歌う“一緒に死のうよ”という壮大なる反語に客席から拳と声があがり、きょうのすけもスティックを振るいながら追随。キズ流の喜怒哀楽を廻り、絶望も垣間見せながら、最後は何よりも力強く“生”へと帰結する流れは見事と言うほかなく、曲終わりに「俺と一緒に……死んでくれるか?」と懇願する来夢の言葉には愛しか見当たらない。 また、スパークラーの火花が噴き出すステージを縦横無尽に動き回り、ロックを鳴らした「Mr. BiG MONSTER」から、全員ジッと音を刻むことに専念した「銃声」のコントラストも爽快。楽器陣が静かなぶん、一人「歌え! 俺の耳に届けてくれ!」と吐き出す来夢のエモーションが際立っていた。そしてライブも終盤に差しかかり、ここからはキズ特有の壮大な世界観が展開。荘厳なイントロから始まった「JP:PARASITE」では、ラテンの匂いのするリズムに客席からタオルが振られるが、いわゆる“タオル曲”と呼ばれるものにありがちな陽の要素は皆無だ。 此の世の不条理を宇宙規模に昇華して、癇性なギターがかき鳴らされると、今度はピアノと雷鳴の音から「鬼」へ。お立ち台の上でスポットライトを浴び、確信の籠もった声で歌い始めた来夢は“今更 許してくれ”と座り込み、“死にたくないな”とうずくまる。渾身の思いで書き上げた楽曲だけあって、一昨年のリリース以来「鬼」をパフォーマンスする来夢は常に圧倒的な存在感を放ち、悲愴な想いを叩きつけて聴く者の胸を切っ先鋭いナイフで抉り取っていくのが常だったが、この日の印象は少し異なっていた。叩きのめすのではなく、まるでオーディエンスの中に入り込んでいこうとするかのような、一種の優しさにも似たものを感じていると、彼は「これが今を生きるビジュアルロックだ、この野郎!」と咆哮。そして気づく。今の彼は「鬼」という楽曲を受け止め、潰されなかった不屈のファンの存在を知っているからこそ、強く、そして優しいのだと。 「届いてるか? 俺の声が!」と来夢が呼びかけ、本編を締めくくったのは昨年の日本武道館ワンマンで突如披露された「R/E/D/」。緑のレーザーと赤いライトが場内を染めるなか、先達へのリスペクトと同時に野心を込めたナンバーで、来夢は“この手じゃまた掴み切れない”と腕を伸ばし、「歌え!」と場内に合唱を巻き起こした。そして響きわたる歌声に、彼は「ありがとう! お前ら、全員、愛してるぞ!」と絶叫。そんな姿を目にして、掴み切れずにこぼれ落ちる“呪いよりの夢”を掬い上げるのは、ファンの手であり声なのかもしれないと感じざるを得なかった。 やまぬ声と手拍子に応えて「アンコールやるぞ、てめぇら!」と登場すると、「おしまい」に「ミルク」とアッパーソングでオーディエンスと共に躍動し、来夢は「もっと呼んでくれよ!」とメンバーコールをリクエスト。湧き上がる声に「みんなの声聞いてスタッフさんが“格闘技のイベントみたいですね”って言ってた」と笑わせてから、「9周年ですね。おめでとう!」と、自分たちのみならずキズを愛し続けてきたファンをも祝福する。 そして「今日はお前らのためだけにここに来た」と本稿冒頭のMCを述べてから、「楽しかった! ありがとう! 最後にね、お前らの為だけの歌を、歌って終わりたいと思います」とアカペラで歌い始めたのは「黒い雨」。来夢の「歌え!」という求めに応じ、“愛してる”とサビを合唱するオーディエンスに、さらに来夢は「愛してるぞ!」と繰り返す。本来は世界よりも“君”を選ぶ、ある意味残酷で究極の愛の歌だが、ただ、今は純粋に“愛してる”という言葉に温かさに浸っていいと、そう思える時間だった。 ひたすらに自身の思いを楽曲に乗せて叩きつけてきたキズだが、9年の活動の中でオーディエンスとのコミュニケーションは双方向のものとなり、曲に対するフィードバックを得て、ファンの存在は彼らの中でより大きなものとなった。結果、なんとこの日はダブルアンコールが実現。...

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This episode is 8 minutes long.

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This episode was published on April 30, 2026.

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https://barks.jp/news/1064282 キズといえば、昨今のロックバンドの中でも、きわめて“我道”を貫いているバンドである。ファンの顔色を窺わず、その要望に応えようと心を砕くこともせず、ただ、ひたすらに己が欲するものを表現し、己が道を突き進む。自分たちの生み出すものはエンタメではなく芸術だと明言し、作り出す音楽やパフォーマンスの熱量はもちろん、その媚びない姿勢こそが、ジャンルを超えた支持を獲得してきた大きな要因だと言っても過言ではない。...

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