EPISODE · Apr 9, 2026 · 14 MIN
イタコだけじゃない!死者の声を聞く盲目の巫女「オナカマ」と聖地・岩谷十八夜観音の秘密
from Yamagata Walks 〜足跡に眠る、忘れられた山形の物語〜 · host Yamagata Walks
青森県の恐山にいる「イタコ」をご存知でしょうか?亡くなった方の声を伝える巫女として知られていますよね。実はここ山形県にも、かつて「オナカマ」と呼ばれる、イタコと同じように死者の言葉を伝える盲目の巫女たちが存在しました。加藤さんも「全く知らなかった!」と驚きを隠せない、全国的な知名度はイタコに劣るものの、村山地方や最上地方の人々にとっては、心の拠り所としてなくてはならない存在だったオナカマ。オナカマは「口寄せ巫女」とも呼ばれ、主に生まれつき、あるいは幼い頃に視力を失った女性たちが、それはそれは厳しい修行を経て、神仏や霊と交信し、特別な力を身につけたとされています。その最も重要な役割は「仏おろし」。亡くなった方の霊を自身の体に降ろし、その言葉を遺族に伝える口寄せを行いました。それだけでなく、神仏の意志を伝える「託宣(たくせん)」も行い、村人たちの病や探し物、人間関係の悩みなど、ありとあらゆる相談に乗っていたというから驚きです。まさに地域のカウンセラー、あるいはシャーマンのような存在だったのです。そんなオナカマたちの本山、つまり聖地とされた場所が、今日のテーマである、山形県中山町にある「岩谷十八夜観音」なんです。この観音堂は古くから眼病平癒の仏様として信仰を集めており、盲目であったオナカマたちがこの場所を聖地としたのは、ごく自然な流れだったのかもしれませんね。ここでは、オナカマになろうとする少女が一人前になるための最も重要な儀式である「神つけ」が行われました。これは、初めて神をその身に降ろす、いわば巫女としての誕生の儀式。さらに、オナカマたちが巫業に使うユニークな呪術用具の授与も、ここ岩谷十八夜観音で行われたと言われています。具体的には、「トドサマ」と呼ばれる、竹の棒に布を何重にも被せた神おろしや託宣に使う道具。そして、死霊を降ろして口寄せを行う際に用いられた「アズサユミ(梓弓)」。弓の弦を弾くその音色が、この世とあの世を繋ぐとされていました。しかし、最も呪術的なオーラを放つのは「イラタカの数珠」でしょう。祈祷や占いに使われたこの数珠は、そろばんの玉のように角張った木の珠に加え、クマやイノシシの牙や角、遠い海でしか採れない宝貝、さらには古い時代の古銭などが通されており、まさに自然界の様々なエネルギーを凝縮させた強力な呪術用具だったのです。オナカマが亡くなったり引退する際には、これらの大切な道具を、酒一升を添えて本山に返納するか、弟子に譲るというしきたりがあったと聞くと、その信仰の深さに心を打たれます。「オナカマ」という言葉は意外と新しく、江戸時代末期から登場したといいます。それ以前は、三味線を弾き語りする「瞽女(ごぜ)」と呼ばれていた可能性が高く、オナカマが芸能民としての側面も持っていたことが伺えます。また、オナカマたちは決して孤独な存在ではありませんでした。多くは同じく盲目の男性である「座頭(ざとう)」(この地方では「ボサマ」とも呼ばれる)と夫婦関係を結び、支え合って生活していました。夫婦で家々を回り、妻であるオナカマが口寄せを、夫である座頭が琵琶を弾いて語りものをするといった形で、協力して活動していた例も多かったようです。厳しい世界で生きる中で、固い絆で結ばれたパートナーがいたことに、加藤さんも「人間味を感じる」と感動しています。そして、オナカマがこの地域の人々の生と死にどれほど深く関わっていたかを示す、もう一つの象徴的な習俗が「ムカサリ絵馬」です。山形の方言で「結婚式」を意味する「ムカサリ」。病気や事故などで結婚することなく亡くなってしまった子供のために、せめてあの世で幸せな結婚ができますようにと、架空の婚礼の様子を描いてお寺などに奉納する絵馬です。親が子を想う、痛ましいほどの愛情の形。このムカサリ絵馬という習俗は、オナカマの「仏おろし」によって始められたという説が有力とされています。亡くなった我が子の声から「あの世で結婚したい」という願いを伝えられ、遺された家族の供養したい気持ちと、亡き子の結婚したかったという無念の想いをオナカマが繋いだことで、この独特で、悲しくも美しい文化が生まれたと考えられています。死者と生者を繋ぐオナカマの役割の大きさに、改めて深く考えさせられます。しかし、戦後の社会の大きな変化とともに、科学や医学が発達し、人々の拠り所も多様化する中で、オナカマの役割は徐々に失われ、廃業が相次ぎ、今ではその姿を見ることはできなくなってしまいました。ですが、ご安心ください。オナカマたちが生きた証は、今もしっかりとこの地に残されています。彼女たちが岩谷十八夜観音に奉納したトドサマやアズサユミ、イラタカの数珠といった道具や様々な奉納品など、合計951点もの資料が「岩谷十八夜観音庶民信仰資料」として、国の重要有形民俗文化財に指定されているのです!これらの貴重な資料は現在、中山町立歴史民俗資料館に大切に保存・展示されています。忘れ去られようとしている山形のディープな歴史と、そこに生きた人々の祈り、そして盲目の巫女「オナカマ」の物語。彼らが繋いだ生と死、愛と悲しみの世界を、ぜひこの番組を通して感じてください。そして、もし山形を訪れる機会があれば、中山町の岩谷十八夜観音や歴史民俗資料館で、彼らの生きた証に触れてみてはいかがでしょうか?
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イタコだけじゃない!死者の声を聞く盲目の巫女「オナカマ」と聖地・岩谷十八夜観音の秘密
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