EPISODE · Jun 8, 2026 · 28 MIN
ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』#2
from Cobe.fm 本好きコンサル2人の読後感想戦 · host Miki Watanuki/Nozomi Tanaka
part2では、『薔薇の名前』の中心にある「アリストテレス『詩学』の第二部」をめぐって、みきがかつて作った『詩学』のサマリーを手がかりに話が進みます。現存する『詩学』は悲劇を論じた書物であり、そこでは「哀れみ」と「恐れ」を呼び起こし、カタルシスを与えるものとして悲劇が重視されている。では、もしその続きに「喜劇」や「笑い」について書かれた第二部があったとしたら——。二人は、「キリストは笑ったのか」という問いがなぜ人の命を賭けるほど重大だったのかを考えながら、この小説の読みにくさと、その奥にある豊かさについて語ります。のぞみは、記号論、キリスト教の宗派対立、迷宮の謎解きに自分がうまく乗り切れなかったことを率直に話し、みきはむしろ、現代の論理的思考とはまったく異なる中世の人間の頭の中を、わかる形で立ち上げてくれる小説として読んだと語ります。自由に本を読めない文書館、知識欲を制限される修道士たち、異端という概念、聖典の解釈が人を裁き、死に至らせる世界。そこには、記号が記号を呼び、解釈がさらに解釈を生んでいくエーコの思想が見えてきます。薔薇そのものは消え、名前だけが残る。笑いをめぐる禁忌、失われた書物、燃え尽きる文書館を通して、二人は「中世」と「現代」がどこかで重なり合う感覚にも触れていきます。読みにくい。けれど、ただ難しいだけではない。人間の考え方そのものが別の時代にあったことを、ミステリーの形を借りて体験させる小説として、『薔薇の名前』をもう少し奥へと歩いていく回です。
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