PODCAST · business
エンタメビジネス実況中継
by 朝日けけ。
エンタメ業界で15年、漫画・アニメ・ゲーム・キャラクターIPの新規事業を立ち上げてきた朝日けけが、いまそこで起きているビジネスの動きを毎回1つピックアップ。ひとりで、ときにはゲストとともに30分語り続けます。分析でも解説でもない、「実況中継」です。 asahikeke.substack.com
Episodes
-
ミン・ヒジンは「自分が欲しいもの」しか作らない。
「表紙の依頼を断ってきた人が、なぜ今回は受けたのか?」 2026年9月発売の『Casa BRUTUS』に、ミン・ヒジンさんが登場しました。韓国の雑誌からの表紙依頼は断ってきたと話す彼女が、今回は自宅を公開し、26ページの特集にも参加しています。その理由を、編集長と出演したラジオ番組で語っていました。 わたしはNewJeansが大好きです。曲やダンスだけでなく、全体を貫くクリエイティブにも惹かれてきました。だから今回の話を聞いて、ミン・ヒジンさんが何を基準に仕事を選び、仲間へ意図を伝えているのか、改めて考えました。 表紙を引き受ける判断、ooak...
-
Netflix『ダウンタイム』完走レビュー 患者8人に見る「仕事」のための美容整形。感想・考察・ネタバレ
「患者8人の半分は、仕事のために顔を変えた。」 Netflixシリーズ『ダウンタイム』では、患者が1人ずつ美容外科を訪れ、手術を受け、去っていきます。美容整形の闇を暴く業界ドラマに見えましたが、1話の声優志望・田中善子のエピソードから、わたしの見方が変わりました。 声の仕事なのに、顔で落とされる。顔を変えるお金を作るため、彼女はパパ活をする。痛々しい手術よりも、その構造のほうが見ていられませんでした。そこで手術の内容ではなく、患者がなぜ整形するのかを数えてみました。...
-
2026年の新作アニメ、原作の半分以上はWeb発。アニメ原作マップを更新。
「新作アニメの原作、半分以上はWeb発でした。」 2026年に初めてアニメ化される作品は、もともとどこで生まれたのか。紙の漫画誌、漫画アプリ、小説投稿サイトなど、原作が最初に世に出た場所をたどる「アニメ原作マップ」を、秋の放送予定まで加えて更新しました。 前回の8月8日版では146作品を調べましたが、秋アニメはまだ出そろっていませんでした。そこで今回は、新たに25作品を追加。年間171作品に広げるとともに、秋開始58作品の中身も別の角度から整理しています。...
-
任天堂は11年前に「40年続くIP」の作り方を言っていた。ゼルダ40周年で見えたこと。
「40年前のゼルダが、なぜいま、ここまで大きなニュースになるのか。」 2026年9月8日と9日。任天堂が、初めて2日続けてNintendo Directを配信しました。『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のSwitch 2版、実写映画、ゼルダ柄の本体、40周年コンサート、ニンテンドーミュージアム、スマホアプリ。ゼルダに触れる場所が、一気に並びました。 ニュースとしては、ここまででお腹いっぱいです。でもわたしには、ひとつ引っかかった問いが残りました。40年前に生まれたゼルダが、なぜ2026年に、ここまで大きなニュースになるのか。なぜ新作が出るたびに、ファンの期待を越え続けられるのか。...
-
『オデュッセイア』が10倍面白くなる。「掟」で全部つながる10問10答 | 解説・考察
「なぜ、見ず知らずの旅人をあそこまでもてなすのか。」 クリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』を、9月10日のアイマックス先行で観てきました。上映時間は172分。観終わって2日たっても、頭のなかは映画のことでいっぱいのままです。引っかかった場面が、いくつも残っていました。 冒頭でポリュペモスが父に告げ口する、あの父は誰なのか。なぜ見ず知らずの旅人を、あんなに手厚くもてなすのか。なぜ死者を弔わないことが、あそこまで責められるのか。アテナが味方なのに、なぜほかの神には苦しめられるのか。...
-
『オデュッセイア』の吟遊詩人をトラヴィス・スコットにした理由。クリストファー・ノーランが2,700年前の話を現代につないだやり方とは | 感想
「勝った英雄が帰れない。その旅に、なぜ心が動くのか。」 9月10日、先行上映のIMAXで『オデュッセイア』を観てきました。すごくよかった。でも、観ているあいだは何度も絶望しました。まだ序盤なのに仲間が次々と倒れ、こんな相手にどうやって勝つのかと途方に暮れる。そんな苦しい旅の最後に、心からうれしくなったんです。 わたしも仕事で人を率いてきました。自分の判断についてきてくれた人に苦労をかけることもある。結果が出ても、その人が苦しんだ時間までなくなるわけではありません。その実感が、英雄オデュッセウスが死者と向き合う冥界の場面に重なりました。...
-
『スプラトゥーン』は、なぜイカにたどり着いたのか。その軌跡から見えた「コンセプトのつくり方」。
「豆腐で面白かったゲームに、なぜイカが必要だったのか?」 白い豆腐と黒いゴマ豆腐が、鼻からインクを出して陣地を奪い合う。『スプラトゥーン』の始まりは、そんな試作でした。そこからヒト型、ウサギを経て、ようやくイカにたどり着く。Xに投稿して反響があったこの開発秘話を、もう少し追いかけてみました。 わたしが面白いと思ったのは、イカというモチーフが見つかるまでの考え方です。試作の時点で、遊びには手応えがあった。それでも、キャラクターの姿を変えると、面白さを支えていた条件が崩れてしまう。この行き来に、コンセプトをつくる仕事の大事な部分が見えます。...
-
holo Indie、Roblox、Fortniteから見る「二次創作によって拡張されるIP」の躍進。
「ファンがつくったゲームは、どれだけ遊ばれたのか?」 好きなキャラの絵を描く。切り抜き動画をつくる。作品の設定を使って、自分でもゲームをつくってみる。ヒットしたエンタメの周りには、二次創作で遊ぶ人がいます。2026年6月時点で、holo Indieの作品は40タイトル超、累計300万ダウンロードを超えました。 ヒットの大きさを語るとき、わたしたちは興行収入や発行部数、再生数を見ます。でも、ファンが何をつくり、それがどれほど遊ばれたかは、見落としがちでした。今回は、公式作品の周りで育っている創作を、各社が公開する数字から考えてみました。...
-
マンガのアプリは消えるが、作る編集部は残る。
「金額は増えているのに、読む場所は減っています。」 2026年の夏、電子コミック市場が伸びたという発表のすぐ後に、まんが王国の業績予想下方修正と、13年続いたcomicoの終了が伝えられました。市場規模は大きくなっているのに、読者が集まるはずのアプリは減っていく。逆向きに見える出来事が、ほぼ同じ時期に起きています。 わたしも最初は、電子マンガが縮みはじめたのだろうと考えました。しかし、2026年上半期の電子コミック市場は2,593億円で前年同期比2.5%増。数字だけを見れば、その読みは外れています。そこで売上の中身と、各社が残そうとしている機能を分けて見直しました。...
-
HANAを追いかけたら「歌姫」が消えた理由に気づいた。
「歌姫は、どこへ行ってしまったのでしょうか。」 HANAを追いかけていると、どうしても気になってしまうことがあります。歌がうまくて、女性からの支持も厚くて、曲もファッションも話題になる。もしいまが2000年前後だったら、きっとすぐに「歌姫」と呼ばれていたはずなのに、いま、その言葉をかける人がいません。 そういえば「歌姫」という響き自体、ここ数年ほとんど耳にしていない。Billboard...
-
「SPEED」は青春そのもの。
「こんな子たち、見たことがない。なのに、学校にいた気がする。」 ラブ上等2を見ながらNewJeansの記事を書き終えたあと、頭の中に戻ってきたのはSPEEDの思い出でした。1996年、日本テレビの『THE夜もヒッパレ』で、まだSPEEDという名前すらなかった4人を見ていたときの記憶です。 エンタメ業界15年、複数事業を統括してきた立場から、人が売れていく過程はいくつも見てきました。それでも、あの4人がスターになっていく順番を目撃したときの驚きだけは、いまも説明しきれずにいます。...
-
13年待った。『まどか☆マギカ』新作公開までの順番が美しい。
「13年待った続編の始まり方が、美しい。」 昨日2026年8月28日、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』が公開されました。13年前の『新編 叛逆の物語』の正統な続編で、シリーズ初のIMAX同時公開です。 わたしは2011年のテレビ放送時、前情報をいっさい持たずに観始め、途中の展開にまともに殴られました。それ以来の特別な作品です。新作はまだ観ていませんが、公開までの順番だけで、すでに作品らしさを感じました。...
-
『オークストリートの異変』は、なぜ見慣れた物語なのに新しく見えるのか|感想・考察
「見慣れた恐竜映画が、なぜ新しく見えたのか。」 恐竜が脱走し、普通の家族が襲われる。予告だけを見れば、『オークストリートの異変』はジュラシック・シリーズ以降に何度も見てきた物語に思えました。それなのに映画を観終えると、まったく新しいものを見た感覚が残ったんです。 わたしが気になったのは、恐竜や時間移動という題材そのものではありません。『ブラッシュアップライフ』の転生にも感じたように、新しさは「どこから何を借りて、どこに混ぜるか」という距離から生まれるのではないか、ということでした。...
-
K-POPはもう、NewJeans以前に戻れない。
「本人はいないのに、世界のほうがNewJeansになった。」 2026年7月22日、NewJeansのデビュー4周年に、約1年4か月ぶりの公式コンテンツが公開されました。公園、ローラースケート、アイスクリーム。そこに映っていたのは5人ではなく4人で、新曲もアルバムも活動予定も発表されていません。それでも「再始動」という言葉が動き始めました。...
-
物語を持たないIPが、いま映画をつくる理由。
「みなさんご存知の通り、ハローキティに、口はありません。」 サンリオの公式プロフィールには、ハローキティの本名も、誕生日も、家族構成も、ボーイフレンドの名前まで書いてあります。将来の夢は、ピアニストか詩人。設定はここまで細かいのに、キティが挫折する話も、笑われる話も、どこにも存在しません。 エンタメ業界で15年、IPの仕事をしてきて、この「設定はあるのに物語がない」キャラクターたちのことが、ずっと気になっていました。バービーも、ヒーマンも、出自は同じです。物語を持たないまま、何十年も愛されてきました。...
-
IPは最初からIPじゃない。
ガンダム、キティ、アンパンマン、マリオ。これらの名前を聞くと、ほとんどの日本人は知らないことはないでしょう。一方で今や日本を代表する IP となったこの4つの作品も、実は最初から人気だったり、大きく利益を出していたり、順風満帆な道を通ってきたわけではないんですよね。 半世紀経った今となっては、莫大な売上と利益をもたらすこれらの「IP」と呼ばれる作品、およびその権利ですが、世の中に出た最初の時に、ここまで大きくなると見抜いた方も存在しないのではないでしょうか。 本記事ではそんなエンタメビジネス界隈でIP、アイピーと叫ばれる時代において。現在、日本を代表する IP たちも、生まれた時は IP...
-
ジャンプ100万部割れ。部数が映したのは読者数より漫画が置かれる場所。
▼話したこと ・印刷証明付部数は「刷った数」であって売れた数ではない。実売も返本率も非公表 ・73期を並べて見えた崩れ方。最高296万部から66.8%減、ただし右下がりの一本道ではない ・2018年10-12月期以降、100万部超えはジャンプ1誌だけ。消えたのは枠そのもの ・紙は週98万5,000部、ジャンプ+は週480万人。ただしアプリは3年間ほぼ横ばい ・答えは日販の決算にあった。391億円の減収、その約6割はコンビニ取引の終了 ・取引が続いた書店の店頭売上は1.7%減。棚が減れば読者が減らなくても刷る数は減る...
-
TikTokのバズは、アーティストの器のサイズまでしか伸びない。
▼話したこと ・「バズってから売れた」は半分だけ正しい——M!LKは横浜アリーナ1万2,000人がバズの1年4ヶ月前にあった ・火から初ステージまで2ヶ月〜31ヶ月、速さと会場の大きさはきれいに対応しない5組の比較 ・tuki.は31ヶ月かけて階段を全部飛ばし、初公演の日本武道館で8,503枚のギネス記録 ・M!LKの10年3ヶ月とME:Iのデビュー前6万5,000人——大きい数字は火がつく前の日についていた ・SNS45億回の楽音、まだライブ未発表——火と場所の距離が今いちばん開いて見える存在 ・火をつける値段は3年で誰にでも開いたが、会場はKアリーナ横浜など3年で3つしか増えない...
-
エミー賞ノミネートの地下鉄インタビューYoutube『Subway Takes』から学ぶ、人を惹きつける映像の作り方。
「地下鉄で見知らぬ人の持論を聞くだけの番組が、40億再生の人気番組を退けてエミー賞に届いた」 ニューヨークの地下鉄のホームで、通りすがりの人にメトロカードそっくりのマイクを向ける。「あなたの持論を聞かせてください」とお願いして、司会がその場で賛成したり反対したりする。台本なし、演出なし、編集は最小限。それだけの番組『Subway Takes』が、累計7.5億再生、ブランドタイアップ1件あたり約3,000万円、そして2026年7月にエミー賞ノミネートまで届きました。 同じ舞台で落ちたのが、累計40億再生を超える『Hot...
-
K-フレグランス(韓国香水ブランド)から学ぶ「世界観の設計図」
いい香りだから、売れる。香水って、そういうものだと思うじゃないですか。わたしも、ずっとそう思っていました。 でも、いま世界で伸びている韓国の新興香水(K-Fragrance)ブランドは大手ではなく、少量生産で作家性の強い、小さな作り手たちなんです。 その顔ぶれを並べてみると、どうもいい匂いだから人気、という話じゃないんですよね。 BLACKPINKのJennie(ジェニー)が広告に立つTAMBURINS(タンバリンズ)。 "Dirty Rice(蒸したご飯)"という名前の香水を、平気で売るBORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)。...
-
アメリカ映画4割減なのに、日本映画は史上最高の理由
今回は、ワーナーの5年間の実験、劇場版の「格」、そして入場者特典・応援上映・長い劇場期間で日本の劇場が積み上げた「待てないもの」の設計を整理しました。TOHOシネマズの料金改定が示す「場所の値段」への転換までを、数字とともに読み解いていきます。 ▼話したこと ・2021年ワーナー「Project Popcorn」の代償——ノーランは『オッペンハイマー』をUniversalへ持ち込み去った ・本丸は赤字ではなく観客の学習——「6週間待てば家で観られる」は5年経っても消えない ・StatSignificantの分析:配信専用作品は公開週1位でも翌週には会話から消える...
-
ジャンプ作品10年分214作を数えてわかった、アニメ化のタイミングと閾値。
「ジャンプがもう漫画雑誌には見えないんです。」 単行本全2巻で完結した『タコピーの原罪』が、連載終了から3年近く経ってアニメになりました。一方で『とんかつDJアゲ太郎』は連載開始から約1年7ヶ月、『僕のヒーローアカデミア』や『ラーメン赤猫』は約1年9ヶ月でアニメ化。完結した小さな作品が何年も経って拾われ、走り出した作品はあっという間に空へ上がっていく。この落差は、いったい何なのか。...
-
TikTokでバズって売れた音楽アーティストは、全員当たるまでやめなかった人。
TikTokの話になると、だいたいこの筋書きで語られます。無名の子がスマホ1台で弾き語りを上げたら火がついて、事務所から連絡が来て、気づいたら紅白に出ていた、みたいなサクセスストーリー。 わたしもそう思っていました。でも前回の記事を書いていて気づいたんですが、どうもそう簡単じゃないらしいと。 だから、この3年で名前が広まった8組のアーティストは、火がつく前に何をしていたのか。それを1組ずつ調べたんです。デビュー日、最初の投稿日、それ以前の所属、過去に出した曲。 結果、素人は一人もいませんでした。...
-
2026年版 アニメ原作マップ | 146本調べてわかった、アニメ原作はどこから来るのか。
アニメの原作といえば、漫画か、ライトノベル。だいたいそのどちらかだと思っていませんか。わたしも、ずっとそう思っていました。 ところが、この6月に流れてきたアニメ化の発表を並べていて、新しい発見がありました。イラストレーターのnecoさんが描き続けてきた、武装する女子高生のイラストシリーズ『重兵装型女子高生』が、2027年にTVアニメ化。原作は、漫画でも小説でもありません。1枚のイラストから始まったシリーズです。監督は『プリンセス・プリンシパル』の橘正紀さん。 連載終了から13年がたった完結済みの少女漫画『電撃デイジー』が、世界累計発行部数500万部を引っさげて2027年にTVアニメ化。...
-
なぜスパイダーマンは死ななかったのか。失速するヒーロー映画と「感情の貯金」
今回は、ワーナーの5年間の実験、劇場版の「格」、そして入場者特典・応援上映・長い劇場期間で日本の劇場が積み上げた「待てないもの」の設計を整理しました。TOHOシネマズの料金改定が示す「場所の値段」への転換までを、数字とともに読み解いていきます。 ▼話したこと ・2021年ワーナー「Project Popcorn」の代償——ノーランは『オッペンハイマー』をUniversalへ持ち込み去った ・本丸は赤字ではなく観客の学習——「6週間待てば家で観られる」は5年経っても消えない ・StatSignificantの分析:配信専用作品は公開週1位でも翌週には会話から消える...
-
才能を殺す人と生かす人の差。
「それって数字で説明できる?」 これはエンタメ企業で事業統括やプロデューサーをやっていた頃、何度も言われた言葉なのですが、会社にいると、これをほんとうによく言われますよね。だけど今日は、その逆の思考について書きます。 クリエイティブを殺さないほうが、結果的に儲かるし、成功するよね。という話です。...
-
音楽が「TikTokでバズったら売れる」は、半分だけ本当。
今回は、TikTokでバズったアーティストが世界に出ていく現象を、3つのステップで分析しました。「使いたくなる曲」で点火する第1ステップ、火をストリーミングに定着させ本人のファンに変える第2ステップ、そしてコピーできない「体験」につなぐ第3ステップ。この階段をのぼれるかどうかが、すべてを分けています。 ▼話したこと ・Creepy Nuts、Tani Yuuki、tuki.らの通説「TikTokでバズったから」を一度疑ってみる ・第1ステップ「10万再生の壁」——聴かせる力より、二次創作を『させる』使いたくなる力で点火する...
-
フランスでは、映画館の券売機が次の映画に出資している
前回、クールジャパン機構の540億円の赤字を解剖しました。溶けた金の6割超は、下手な投資ではなく、案件を選ぶ人間を雇い続けた「会議室の維持費」でした。わたしはそれを「会議室のお金」と呼びました。 そこで当然、こういう疑問が出てきます。じゃあ、うまくいっている国は、いったい何をしているのか。会議室で選ばないなら、どうやってお金を配っているのか。 本記事では、「なぜ稼いでいる国は、国が作品を選ばないのか」という問いを、4つの国の仕組みを並べて解いていきます。そしてもう一つ、日本にとって耳の痛い問いも一緒に置きます。この「会議室でしか配れない病」は、本当にお役所だけの病なのか、という問いです。...
-
クールジャパンの540億円、本当の死因は「投資の失敗」ではない。
「溶けたのは、作品を選ぼうとした会議室だった。」 2026年6月、クールジャパン機構の累積損失が540億円に達し、政府が廃止を含めた検討に入ったと報じられました。SNSは「だから言ったじゃないか」の大合唱。目利きの失敗、税金の無駄、お役所仕事——わたしも最初はそう思って読んでいました。 ところが決算書と国会答弁の数字を並べ直すと、「目利きに失敗して溶かした」という物語が半分しか合っていないと気づきます。かれこれ15年エンタメ業界にいて、国のお金が絡む案件も見てきたわたしには、残りの半分にこそ日本のエンタメがこれから稼ぐ急所が埋まっているように読めました。...
-
アニメ『ワールド イズ ダンシング』が10倍おもしろくなる、10個の話。
「時の将軍が、12歳の少年の舞に夢中になった。」 約650年前の京都、時の三代将軍・足利義満が、観阿弥の息子・鬼夜叉のちの世阿弥、当時数え12歳ほどの舞に魅了されました。この鬼夜叉こそが、2026年7月2日に放送開始したTVアニメ『ワールド イズ ダンシング』の主人公です。原作は三原和人さんが「モーニング」で連載した同名漫画(全6巻)。第1話直後から「まるでアート作品」「作画が美麗」という声が並びました。...
-
AIが音楽を量産する時代に、Twitchが15,000人のDJに金を払う理由。
「レーベルとお金を分け合う。タダではないんだ」 AIに『夏の終わりみたいな曲を』と頼めば、数秒で一曲できあがる時代です。Spotifyの1再生はざっくり0.4円〜0.7円。年に約1,450万円以上を稼いだアーティストは、何百万人が曲を出す世界でたった12,500組。録音された音楽の希少さは、AIによってさらに溶けていきます。...
-
ゲームの「宣伝アニメ」で終わるものと、世界観を拡張してしまう作品の差。
「なぜこのアニメは『ゲームの宣伝』で終わらなかったのか。」 ゲームを原作にしたアニメには、当然プロモーションとしての役割があります。ゲームの世界を映像で見せて、新しいプレイヤーに届ける。IPの拡張としてまっとうな設計です。『サイバーパンク エッジランナーズ』は、その宣伝としての役割を果たしたうえで、独立したアニメ作品としても成立しました。両方を同時にやれた稀有な事例です。 Season...
-
アニメ『天幕のジャードゥーガル』が10倍おもしろくなる、10個の制作裏話。
「現役の大相撲力士が、チンギス・カンの声をやっている?」 2026年7月に放送が始まったアニメ『天幕のジャードゥーガル』。モンゴル出身の現役力士・玉鷲がチンギス・カン役を、玉正鳳が「屈強なモンゴル兵士」役を演じています。プロの声優ではなく、片男波部屋所属の現役関取が声優デビューを飾りました。 正直、最初にこの話を聞いたときは「話題づくりの策だろう」と思いました。ところが、この作品の作られ方を掘れば掘るほど、これが策でも何でもなく、ずっと繰り返されてきた一貫した姿勢のひとつに過ぎないことがわかってきたんです。...
-
Substackは「個人発信」を「事業」に変えようとしている。
「これ、Patreonキラーじゃない?」 Substackが先日、たった1回のアップデートで20近い新機能を同時に発表しました。文字装飾、再生プレイヤーの刷新、投票、AI連携まで、文字どおりの『全部盛り』。そのなかからわたしが色めき立ったのは、Perks(特典)、Notes保存、Chat予約投稿、投票、ポッドキャスト取り込み配信、そしてMCP対応という6つでした。...
-
Netflixアニメ『Arcane(アーケイン)』が世界を獲ったのは、最新技術じゃない。
Netflixのアニメ『アーケイン(Arcane)』を、はじめて観たとき。3DのCGで作られているはずなのに、画面がどう見ても、手で描いた一枚の絵画にしか見えませんでした。ずっと不思議だったんです。なんで、こんな見え方になるんだろう、と。 答えを知って、もっと驚きました。この作品は、いまのアニメ制作で「効率化」と呼ばれる工程を、ほとんど全部、逆にやっていました。...
-
AwichとONE OK ROCKのコラボを実現させた「レッドブルマイク」の設計に嫉妬する。
「この"場の設計"に、嫉妬しました。」 Awich、CHICO CARLITO、ONE OK ROCK、Paledusk。日本のヒップホップとロックのトップランナー4組が、同じマイクの前に立ちました。プロジェクト名は「YAO」。7月7日にデビュー曲「777」が配信され、MVも公開されています。 この座組を実現させたのは、レコード会社でもテレビ局でもありません。エナジードリンクの会社、Red Bullです。エンタメ事業を統括し、プロデュースを続けてきた人間として、わたしはこの企画を見た瞬間、素直に嫉妬しました。 Red Bullが2021年に開設した「レッドブルマイク」は、RASEN・64...
-
MAJに降臨しなかったBABYMETALの偉業を改めてまとめたら、世界がとっくに夢中だった件。
「サム、そこに行けなくてごめんね。僕らはイギリスにいたんだ」 2026年6月、MUSIC AWARDS JAPANの壇上で、サム・スミスが「気になる日本のアーティスト」としてBABYMETALの名前を挙げました。しかしその瞬間、本人たちはイギリスのDownload Festivalのメインステージで数万人を沸かせていた。そしてその授賞式の主要部門に、BABYMETALの名前はありませんでした。 プロデューサー視点でエンタメの座組を見てきた朝日けけは、この「微妙な空気」に強烈に引っかかったと言います。Billboard 200で全米9位、O2アリーナ2万人完売、Intuit...
-
Netflix「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」の凄さをまとめてみたら、世界の「勝ち方」が変わっていた。
「世界でいちばん観られた映画の名前を、あなたは言えますか。」 答えは『KPop Demon Hunters』、日本では『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』。Netflix史上もっとも観られた映画で、累計視聴は約9.6億回。主題歌『Golden』はビルボードHot 100で8週連続1位、アカデミー賞2部門・グラミーも受賞しました。劇中の悪役グループ「サジャボーイズ」は、アメリカのSpotifyで本物のBTSを抜いて1位に。実在しないアイドルが、実在するスーパースターを追い抜いたんです。...
-
ソニーは、すでに静かなる"アニメ版ディズニー"だった。
「同じ独占なのに、なぜディズニーは叩かれ、ソニーは叩かれないのか。」 鬼滅の刃、ソードアートオンライン、Fate、推しの子、葬送のフリーレン、ぼっち・ざ・ろっく!。いま世界で当たっている日本アニメの主要IPには、ぜんぶ同じ一社の名前が「幹事」として刻まれています。アニプレックス——ソニー・ミュージックの100%子会社です。 さらに海外配信最大手のCrunchyrollも、2021年にソニーが約1,700億円で買収済み。元IPプロデューサーとして製作委員会の中にいた立場から見ると、「作る・集める・世界に届ける」の全層を一社で押さえる構造が、もう静かに完成しつつあるんですよね。...
-
「音楽サブスクで食えない」のに、音楽市場が史上最高な理由。
なにを隠そう、わたしはサカナクションの大ファンだ。今年もライブチケットの抽選当たれ!と祈っている。そんな憧れのサカナクションの山口一郎さんが、YouTubeの配信で語った言葉が話題になっていました。 「サブスクリプションで三億再生されたって何の意味もないから。サブスクでの収益なんてほぼ無いようなもん」 CDの時代は「3,000円のCDで90円」の印税だった、とも。Xのタイムラインには「夢がない」「音楽で食えない時代」という声が並びました。...
-
A24が20歳に長編を任せた。決め手は、才能でも経歴でもなく「スクロールを止める力」
「製作費75万ドルが、世界で1億4800万ドル稼ぐ。」 YouTubeでコント動画を上げていた26歳のCurry Barkerが、製作費75万ドル・撮影日数20日で撮った『Obsession』が、世界で約1億4800万ドルを稼ぎました。16歳でBackrooms短編を投稿した20歳のKane Parsonsは、A24に呼ばれて長編『Backrooms』を監督。製作費の14倍を回収し、全米週末興行1位を獲った史上最年少監督になりました。...
-
日本映画が再び世界で勝ちはじめたのは、半世紀ぶりに窓が開いたから。
「日本のエンタメ、ついに世界で大人気だね」 2026年のカンヌで岡本多緒さんが日本人初の女優賞、ウディネで『FUJIKO』が最高賞、SXSWで『Never After Dark』が観客賞、そして是枝・濱口・深田の三監督がカンヌ・コンペに揃い踏み。ここ数年、世界の映画祭の受賞者リストに、また日本人の名前が並びはじめました。 長年エンタメ業界でIPの座組を組む側にいた人間として、わたしはこの受賞ラッシュに、もう一段だけ別の景色を見ています。日本映画の才能は、急に上手くなったわけではありません。黒澤明の『羅生門』が金獅子賞を獲った1951年から、ずっと世界一級でした。...
-
天才は、飼いならせない。
KADOKAWAが面白いことをやろうとしています。若いアニメーターを社員として採用して、自前で育てる。バラバラだったグループのアニメ制作会社5社を、この秋、一つのオフィスに集める。およそ400人を、一拠点に。外注に頼らず、創る力を会社の中に抱え込もうという構想です。 一方で、筆頭株主になった香港系のアクティビストファンド、Oasis Management、いわゆる物言う株主は別のことを迫っています。フロム・ソフトウェアという世界最強のゲームスタジオを抱えているなら、その作品を自分で世界に売って、利益を取り込め、と。※前記事で話してます。...
-
IPをつくる方法は、世界に三つしかない
結論から書きます。 IPをつくる方法は、世界にたった三つしかありません。 * 個人の狂気から生まれる * 新しいメディアの波でトップを取る * 武器を持つ企業が、強いIPを獲得して展開する FateもちいかわもガンダムもホロライブもStardew Valleyも、すべてこの三つのどれかから生まれています。わたしが知る限り、例外はほぼ存在しません。...
-
大企業がIPを作れない本当の理由
すこし前の話題先日、西野亮廣さんと田中聰さん(GOKKO CEO)のIPに関する投稿がXで話題になっていました。 「経営者とIPは相性が悪い」「IPは正しい経営判断からは生まれない」 という主張なんですよね。元IPプロデューサーとして、これを読んで思ったことがあります。彼らの言っていることは正しいんです。 ただ、現場にいた人間として、もう一歩踏み込んだ話をしたいなと。 結論から言うと、大企業でIPが生まれない本当の理由。それは、経営者/創業者本人が本気でやらないから。これに尽きると思っています。 本記事ではこの理由と構造について、深掘りながらまとめていきます。...
-
「超かぐや姫!」にNetflixが出したのは、お金じゃない。
「これは本当に『外資に救われた』話なのか?」 「超かぐや姫!ネットフリックスがなければ生まれなかった。日本の苦しいアニメ制作現場の問題が、外資のマネーで解決されてしまうのは、なんとも悲しい限り」。お侍さん、ザンエンジニアさんのこのポストが2.5万回見られ、大きな話題になりました。気持ちは、わかります。 わたしはこの作品について、すでに2本の記事を書いています。1本目は竹取物語を書き換える物語構造の話、2本目はNetflix配信から劇場公開で10億円を超えた逆流モデルの話。今回が3本目です。あのポストの「悲しい」という感情の奥にある構造を、ちゃんと分解したかったからです。...
-
AIアニメの現在地。日本と世界が選んだ別々の道。
「集英社が踏みにじられたと書いた月に、Disneyは10億ドルを賭けた。」 中国では、AIで作られた縦型ドラマが月4万本投下されている──そう言われたら信じますか。ヒット率0.117%、1万本作って12本ヒット。これが2026年5月、隣の国で起きている戦場の温度です。タイムラインに流れてくる「AIで作ったショートアニメ」を、わたしたちは「すごそう/怖そう」とスクロールして忘れてきました。...
-
ポジショニングよりレペゼンの時代
「その仕事、あなたじゃなくてもいいよね」 ヒップホップのライブで、ラッパーはマイクを握るとまず叫びます。「レペゼン東京」「レペゼン川崎」。たった一言で「自分は替えがきかない」を証明してしまう、あの宣誓。ビジネス書がずっと教えてきた「ポジショニング」より、いまはこの「レペゼン」のほうが効く時代に、わたしたちは入っています。...
-
35年待った。『攻殻機動隊』が原作のまま帰ってくる。
「攻殻機動隊が帰ってきてほしかったんじゃない、わたしたちが追いついたんです」 2026年7月7日、『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』の放送が始まります。サイエンスSARU制作、Amazon Prime Videoで全世界配信、6月にはアヌシー国際アニメーション映画祭で先行上映。35年待たされた原作ファンにとって、これはただのリメイクではありません。...
-
日本アニメを世界の誰が観ているのか
今回は「日本のアニメを世界の誰が見ているのか」という問いを、人種・スクールカースト・地域という3つの軸で掘り下げ、K-POPとの構造的類似、そして日本のIP戦略が見落としているものまで、まとめて言語化しました。 ▼話したこと ・2025年に米国で450億分再生——黒人41%・ヒスパニック37%・白人21%という自認率の濃淡 ・ハリウッドが描かなかった『非一軍』——スクールカースト下層が肯定される唯一の物語装置としてのアニメ ・ラテンアメリカという「もうひとつの本拠地」——80年代のDragon Ball・聖闘士星矢から続く文化的下地...
We're indexing this podcast's transcripts for the first time — this can take a minute or two. We'll show results as soon as they're ready.
No matches for "" in this podcast's transcripts.
No topics indexed yet for this podcast.
Loading reviews...
ABOUT THIS SHOW
エンタメ業界で15年、漫画・アニメ・ゲーム・キャラクターIPの新規事業を立ち上げてきた朝日けけが、いまそこで起きているビジネスの動きを毎回1つピックアップ。ひとりで、ときにはゲストとともに30分語り続けます。分析でも解説でもない、「実況中継」です。
asahikeke.substack.com
HOSTED BY
朝日けけ。
CATEGORIES
Loading similar podcasts...