PODCAST · society
考える塾 in TAIPEI
by Takashi Jome
哲学や思想や歴史や心理や脳や倫理などについてのエッセーです。
Episodes
-
倫理記号の恣意性⑥「自由って何」-4<自由とは普遍的な立法>
前回は、カントが『純粋理性批判』で示した<アプリオリな総合判断>や、それを成立させる感性と悟性のアプリオリな形式とその必然性・再現性についてお話しました。感性には時間と空間を生み出す形式があり、悟性には感性を通過してきたものを4分野それぞれ3種類ずつ合計で12種類とされるカテゴリーによって仕分けるという形式があり、それはヒュームが言うような偶然的な単なる習慣ではなく、必然的で再現性のある仕組み、アプリオリな仕組みであるという、純粋理性に対する信頼を取り戻そうとする考えでした。...
-
倫理記号の恣意性⑥「自由って何?」-3<アプリオリな総合判断>
前回に引き続き「自由って何?」の感想の続きです。 前回はカントが『純粋理性批判』で示した「4つのアンチノミー」についてお話しましたが、そこで明るみになった理性の限界を踏まえて、今回は「アプリオリな総合判断」や、それを可能にするアプリオリな「感性」と「悟性」の形式、その形式によって人間の前に偶然ではなく必然的に表れる「現象」について話しています。デカルトやヒュームやルソーの話も交えながら、カントが考える理性、そして自由について見える化できればいいなと思います。
-
倫理記号の恣意性⑥「自由って何?」-2 <四つのアンチノミーについて>
前回のテーマ「自由って何?」についての感想です。ここでは、カントの自由論を理解する上で重要となる、四つのアンチノミーを巡る哲学的議論について、話しています。
-
倫理記号の恣意性⑥「自由って何?」-1
倫理記号の恣意性 第6回 「自由って何?」 現代の国際社会は、人権を守ることが最大の正義とされています。そして、人権の中でも第一に尊重されるのは自由権ですが、そもそも自由とは何なのでしょう。...
-
倫理記号の恣意性⑤の感想の続き
仏教の十二縁起と、キリスト教の楽園追放の類似性 イヴの原罪とアダムの原罪 ジョン・スチュアート・ミルの質的功利主義、ベンサムの功利主義からの逸脱 異なる3つの論理体系
-
倫理記号の恣意性⑤効率・自由 vs 道徳・公平、『歴史の終わり』と民主主義vsAI独裁主義、ヴィットゲンシュタインの『論理哲学論考』、ゲーデルの不完全性定理、ジョン・スチュアート・ミルの質的功利主義
ポンペオ米国務長官が七月二十三日に、中国の人権抑圧・領土拡張・経済的不公正と、その理念的基盤であるマルクス・レーニン主義に対し、宣戦布告とも解釈できる演説を行ったことで、新型コロナウィルスで混乱の中にある世界は新冷戦時代へ突入することになりました。現代の世界には、エリート階級が政策決定の権限を独占する体制と、自由と民主主義を標榜する体制の二種類の国家に分類することができますが、中国は前者、アメリカは後者の正義を代表する国家だと言えるでしょう。...
-
倫理記号の恣意性④リバタリアニズム
歴史の教科書には、国王や貴族に奴隷的拘束を強いられていた民衆が、自らの選択と決断によって生きる「自由」を求めて革命を起こす姿が記されています。イギリスの市民革命やアメリカ独立戦争やフランス革命は、近代社会の誕生を象徴する出来事ですが、これらの革命で人々が獲得を目指した最も重要な権利は「自由」でした。そして、権力によって奴隷的に拘束される牢獄のような状態は否定され、自らの意志で行動できることが、現代の人権思想の根本原理となったのでした。...
-
倫理記号の恣意性③最大多数の最大幸福
イギリスの道徳哲学者ジェレミー・ベンサムは、道徳の至高の原理とは苦痛に対する快楽の割合を最大化することだという、功利主義の原理を確立しました。人間がとるべき正しい行いとは、快楽や幸福を増やし、苦痛や苦難を減らす、「効用」の最大化であるというわけです。...
-
倫理記号の恣意性②正義の色分け
電磁波の中の十兆分の一に満たない可視光を、周波数の高い方から赤、橙、黄、緑、青、紫など更に色分けして、私たち動物は周辺環境を把握するのに活用しています。しかし、人間が「赤」と呼ぶ波長と、「橙」と呼ぶ波長の間には明確な境界線がありません。赤と黄、橙と緑など明らかに違う波長の光を反射する物体であれば誰もが同じように色分けできますが、どこまでが「青」でどこからが「紫」なのか決めるのは悩むところで、人によって判断は異なることでしょう。 倫理における正義と不正義の色分けにも、同じことが言えます。どこまでが正義で、どこからが不正義か、そこに境界線を引くのは難しいことです。...
-
倫理記号の恣意性①言葉と倫理の恣意性&雑談「宗教2世問題」
「言語記号の恣意性」という言葉があります。19世紀のスイスの言語学者ソシュールの考えで、言葉とは、それを表す音声・文字(シニフィアン)と、それによって表される意味・概念(シニフィエ)が、合理的な必然性を必要とせずに結び付いて出来ているという考えです。 例えば、「イス」という音声は、「人が座るための台」のことではなく、「食事や仕事や勉強をするための台」のことであってもよく、「ツクエ」という音声は「体を横たえて寝るための台」のことであってもよかったわけですが、たまたま何となく勝手気ままに(恣意的に)現在のような組み合わせになっている、ということです。...
-
意識と神経とアルゴリズム フリートーク雑談回2『意識とは苦しみ』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
今回のフリートークは、私の世界観として、存在の用具生と他者性、記号的実在と記号前の神々の実在、科学的実在と文学的実在などについて話し、その後、AIに意識を持たせることや、仏教の執着とキリスト教の罪の対応関係などについて話しています。同じようなことに関心のある方は聞いてください。 なお、雑音が多くなってしまった上、音声が小さくなりました。すみません…、
-
意識と神経とアルゴリズム 第十二回『意識の棲み家』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
遠い未来の技術で甦ることを期待する人々のため、アルコー延命財団では、顧客の死後その肉体を凍結保存しています。全身凍結ではなく、頭部だけ保存する人々もいます。...
-
意識と神経とアルゴリズム 第十一回『感覚の代行と拡張』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
2007年、ラムッスン脳炎による発作で苦しんでいたキャメロン・モットという少女が、12時間の神経外科手術のすえ、脳の半分を摘出されました。しかし、手術後も彼女は体の片側が弱いだけで、他の子どもたちと同じように言語、音楽、数学、物語を理解でき、スポーツにも参加することが出来ました。脳の残り半分が失われた機能を引き受け、神経の配線をし直し、ほぼ全ての働きが半分のスペースに押し込まれたのです。このように、新しい状況に順応して学ぶたびにみずからを変えるという脳の可塑性が、テクノロジーと生物学の融合を可能にします。...
-
意識と神経とアルゴリズム 第十回『外集団と内集団』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
私たちは隣人の微細な表情の変化を見てそれを自分の顔にコピーし、その表情に対応した痛み、悲しみ、怒り、喜びといった感情を自分の中に再現するミラーリングという能力を先天的に持っています。この共感こそが人間社会の道徳の根源で、無意識の集団的共感の連鎖が「見えざる手」となって人間を社会秩序に従わせるのだと、倫理学者で経済学の祖アダム・スミスも『道徳感情論』において説いています。 隣人に共感し、同時に隣人の共感を期待しながら人間は集団の中で生きていますが、そんな個体の集合が一つの生命体として部族や民族や国家の集団的思考と行動を生み出す事は、人間の強みである一方、怖さでもあります。…
more -
意識と神経とアルゴリズム 第九回『他者と共感』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
現在のスマートフォンは、小さくなったコンピューターと言える性能を持っています。しかし、これがインターネットに接続していなかったら、私たちが重宝しているその能力のほとんどは消えてしまうでしょう。一方、世界中のスマートフォンが接続していないSNSというのは想像できるでしょうか。個々の端末が接続していない時、そこにはインターネットも存在していません。...
-
意識と神経とアルゴリズム 第八回『選択と生理』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
目の前の幾つかの選択肢から一つを選ばなければならない時は、現在の生理的な状態が決断の決め手となります。純粋な情報の比較計算しかできないと、考えられる可能性は無限にあるため、いつまでも決められないのです。では、選択の結果が未来に関わる問題の場合どうでしょう。...
-
意識と神経とアルゴリズム 第七回『ジレンマと決断』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
脳外科医は手術中に患者の脳に電極を当て、ニューロン間の電気信号のやり取りをスピーカーに流し、電圧の微小な変化を音声に変換して、それを頼りに手術を行います。電極を当てる場所によって「ポンポンポンポン」になったり、「ポン…ポンポン…ポン」になったり、音のテンポが変化しますが、流れる情報の内容によっても神経ネットワークはそれぞれ異なる音を発します。...
-
意識と神経とアルゴリズム フリートーク雑談回『意識とは苦しみ』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
意識とは何かについての仮説(あくまでもこれって私の感想ですが)について話しています。普段は原稿の音読ですが、今回は初めての、原稿無しのフリートークになりました。内容は、「意識とは、苦しみのこと」という仮説の検証を、以下のような仏教の話を交えながら進めています。 仏陀の説いた「一切皆苦」の謎。 世界には、苦しいことも、楽しいこともともにあるではないか? → サンスクリット語、古代パーリ語で言う「一切皆苦」の「苦」と、一般的な「苦しみ」との違い(中村元の著書より)。...
-
意識と神経とアルゴリズム 第六回『統合情報と自由意志』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
1987年5月23日の夜、自宅でテレビを見ながら眠りに落ちたケン・パークスは、妻の実家で仲の良かった義父と義母を殺害した後、最寄りの警察署に出頭し「僕は誰かを殺した気がする」と告げました。遺伝的な睡眠障害のあった彼は、後に夢遊病であることが裁判で認められ、釈放されることになります。人は意識のない状態で車を運転し、殺人を犯すことも出来てしまうようです。...
-
意識と神経とアルゴリズム 第五回『意識と無意識』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
カップに入ったコーヒーをひと口すする、そんな単純な行動も何兆という電気インパルスが支えています。視覚系がコーヒーカップを捉えるためにその場を見渡すと、過去の同じ状況の記憶がよみがえり、前頭皮質から運動皮質へ信号が送られ、胴体・腕・前腕・手の筋肉収縮を正確に連係させてカップをつかみます。カップに触れると、神経はカップの重さ・位置・温度・取っ手のすべりやすさなどの情報を送り返し、その情報が脊髄を通って脳に流れ込むと、補完情報がまた送り返されます。基底核、小脳、体性感覚皮質、その他さまざまな脳の部位どうしのこうした情報の複雑なやり取りの結果、一瞬でカップを持ち上げる力や握力が調整され、長い弧を描くよ…
more -
意識と神経とアルゴリズム 第四回『内部モデルと共感覚』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
ハンナ・ボスレーという女性は、アルファベットの文字を見ると色を感じるそうです。Jには紫を感じますが、Tは赤く見えます。Hannahという名前なら夕日のように見えます。黄色で始まり、だんだん赤色になったあと、雲のような色になり、また赤と黄色へと戻るという具合です。一方で、Iainという名前などは嘔吐物のように見えてしまいます。これは共感覚と呼ばれる現象で、感覚や概念が混ざり合って経験される状態です。右の例以外にも、言葉に味がする人や、音に色が見える人などがいます。...
-
意識と神経とアルゴリズム 第三回『感覚神経と外界』デイビッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
事業家であり、パラリンピックのスキー滑降金メダリストでもあるマイク・メイは、3歳で角膜が傷つき失明しながら、視覚を使うことなくスポーツでも事業でも超一級の結果を出していました。その彼が角膜手術を受けて、約40年を経て再び光を取り戻した時に見たものは、目の前に広がるただの光の大洪水に過ぎませんでした。色も形も無い光のシャワーの中に、ぼんやりとした暗い部分が散在するだけで、彼には物体が何かが分からず、奥行きの概念も分からず、光が戻る前よりもスキーは難しくなりました。...
-
意識と神経とアルゴリズム 第ニ回『心身二元論』 デイヴィッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
近代合理主義の父である哲学者ルネ・デカルトは、魂が身体の一部である脳とは別に存在すると主張しました。脳の要素のほとんどは左右一対ずつあるのに対し、二つの大脳の間、脳の正中線上にある松果腺は肉体と精神をつなぐ特別な器官であり、感覚器官からの入力はこの魂の入り口に流れ込み、非物質的な魂の思考に作用する、というのが彼の説明です。松果腺は、概日リズムを調整するホルモン、メラトニンを分泌する内分泌器だと現代では解明されており、魂への入り口ではありませんでした。また、彼の言う魂・精神・心が、「意識」のことを指すのなら、その心身二元論は神経科学を無視した考えだと言わねばなりません。...
-
意識と神経とアルゴリズム 第一回『不規則な脳波』 デイヴィッド・イーグルマン「あなたの脳の話」より
もし人類が意識を持たなかったら、この世界は存在していると言えるのでしょうか。もしある人が生涯を無意識のまま終えるとしたら、それは人生と言えるのでしょうか。私たちを取り囲む空間も時間も、私たちの意識無しには有り得ないものかもしれません。...
-
サピエンスの揺り籠 第十二回「揺籠の幸福」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
人類の歴史は、その幸福にどんな意味を持っているのでしょうか。農業革命は大量の余剰食糧を生み、人口増加と文明化をもたらしました。しかし、人々は農耕可能な限られた土地に縛られ、穀物に依存して栄養状態は偏り、厳しい身分制や国家による戦争と殺戮を受け入れなければならず、狩猟採集時代の行動の自由や多彩な栄養を得る機会は失われました。...
-
サピエンスの揺り籠 第十一回「成長への信用」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
ある人が銀行を始める。そこに建設業者が一億円預金する。パン職人がその銀行から開店のため一億円を借りようとする。その将来性を信頼した銀行は一億円を融資して、パン職人の口座へ入れる。パン職人は前出の建設業者に店の建設を依頼し、建設業者の口座へ借りた一億円を振り込む。この時、建設業者の口座には二億円が入っている。しかし、この銀行に実際にある現金は一億円だけ。 資本主義社会では、このような架空のお金を「信用」と呼びます。銀行は実際に所有する現金以上の額を、利子をつけて返済できる様々な個人や企業に貸すことで、実際の何倍もの架空のお金「信用」という虚構を生み出しているのです。...
-
サピエンスの揺り籠 第十回「無知の知と未知の征服」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
西暦一〇〇〇年頃のスペインの農夫が、五〇〇年後の同じ土地にタイムスリップしたとしても、見知らぬ人々が営むその生活にカルチャーショックは受けなかったかもしれません。しかし、コロンブスに雇われた水夫がiphone 時代のニューヨークに到達したら、そこは天国か、地獄か、全くの異世界に見えることでしょう。 人類は認知革命や農業革命の前後で、全く異なって見える社会を形成し、人口と財と消費カロリーは飛躍的に拡大しました。しかし、五〇〇年前にユーラシアの西の辺境で始まった革命は、それ以前の革命を圧倒する急速な変化を人類社会に今も与え続けています。科学革命です。...
-
サピエンスの揺り籠 第九回「世界帝国と普遍宗教」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
サピエンスの世界を統一、グローバル化していった最強の秩序は「貨幣」でした。あと二つ、これに匹敵する秩序として挙げられるものがあります。「帝国」と「宗教」です。...
-
サピエンスの揺り籠 第八回「世界の統一と貨幣」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
農業革命以後、想像上の構造物はますます複雑になり、サピエンスの子供たちは生まれた時から既存の神話と虚構を刷り込まれ、特定の方法で考え、行動し、特定の欲望を持って、特定の秩序の中で生きるように習慣づけられました。そうした人工的な本能のネットワークを、人間は文化と呼びます。 二〇世紀前半まで学者たちは、どの文化にもそれを特徴づける普遍の本質があると考えていましたが、現代では、近隣の文化との接触や、自らのダイナミクスによって、文化は絶えず変化するものだと考えられるようになりました。...
-
サピエンスの揺り籠 第七回「書記とヒエラルキー」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
農業革命後、サピエンスは文明社会を築きますが、その文明には不可欠なものがありました。書記能力です。数万~数十万の人々の税や裁判の記録を全て脳の中に記憶しておくことはできません。脳の外部に記録するというデータ処理でこれを初めて可能にしたのは、古代メソポタミアのシュメール人でした。初めは、モノの名前と数量しか記すことのできない不完全なものでしたが、やがては神話や歴史、ハンムラビ法典のような法律を記録する完全な書記体系も人類は獲得したのです。...
-
サピエンスの揺り籠 第六回「人工島の時間と秩序」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
農業革命は、サピエンスに繁栄と進歩をもたらした大きな一歩だという考えがある一方で、地獄のような苦痛との戦いをもたらしたという考えもあります。 確かに、スマートフォン一つで様々なサービスを享受できる今の私達にとっては、現代文明を築くために不可欠な革命だったと言えます。しかし、近代以前の人類の歴史において人口の9割以上を占めていた農民の長く過酷な日々を思う時、広大なエリアを住み処としていた狩猟採集生活より、地球上極端に限定された猫の額のような農耕地に寄り集まって、人口の1割に満たない上層階級に身をすり減らして生産物を貢納し続ける日々が幸福だったとは、簡単には言えないでしょう。...
-
サピエンスの揺り籠 第五回「農業革命の罠」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
一万年ほど前、サピエンスの一部は幾つかの動植物の生命を操作する知恵を得て、それに時間と労力のほぼ全てを傾け出しました。土を耕し、種をまき、水をやり、雑草を抜き、羊を草地に連れていき、朝から晩までそうやって働いてより多くの食料を確保する、農業革命です。...
-
サピエンスの揺り籠 第四回「エデンの園の覇者」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
言語による物語、虚構の世界を手に入れる認知革命を経たサピエンスは、ネアンデルタールなど先輩の人類種が絶滅していく中で、その勢力範囲を次々と拡大していきました。7万年前にアフリカ大陸からユーラシア大陸に進出した後、4万年前にはオーストラリア大陸へ、1万6千年前にはアメリカ大陸に行き着きます。...
-
サピエンスの揺り籠 第三回「虚構の実在」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
私達は言葉を、どんなことに最も多く使用しているかというと、噂話の類でしょう。学校でも職場でもテレビでも、ゴシップほど盛り上がり、人間に快感を与えるものはないのかもしれません。一説に、この快感が私たちの祖先の脳に、クジラなどの高い知能を持つ動物や、ネアンデルタールのような他の人類種を圧倒する、認知革命を引き起こしたと考えられています。噂話が人間に語る力を与え、記号と情報の世界を発展させたのです。...
-
サピエンスの揺り籠 第ニ回「言語と認知革命」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
どんな動物も、何かしらの言語を持っています。ミツバチやアリのような昆虫でさえ、複雑な意思疎通の方法を持っています。サバンナモンキーは鳴き声で「気をつけろ!ライオンだ!」と群れの仲間に警告したり、逆にライオンがいない時に「ライオンだ!」と嘘をつき、怯える仲間を騙して獲物を奪ったりします。クジラやゾウもそれに引けを取らぬ 言語能力を持っていますが、ではサピエンスの言語は、他の動物の言語と何が違うのでしょう。...
-
サピエンスの揺り籠 第一回「取るに足らない種」 ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より
ライオンは全ての草食獣を捕まえ、他の肉食獣に邪魔させないために、鋭い牙と強靭な筋力を獲得しました。動物とは、生存環境で起こる生命維持に矛盾した事態を解消するため、「動く」ことを選択した生物であり、種々の動きに伴って身体に掛かる負荷を克服しながら自己を強化して、その状況に適応した個体のみが生き残ることで、様々な種へと進化していきます。では、我らサピエンスは?...
-
心と脳の帳尻 第十二回「代表性ヒューリスティック」デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
動物は自らの生命維持に矛盾する状況が立ち現れた時、その矛盾を解消しようと神経系統が働くことで「動く」生き物です。しかし、こうした感覚神経と運動神経による矛盾解消の作用が働く時、神経細胞には負荷がかかります。この負荷がかかっている状態がいわゆる意識だとすると、身体はできる限り早く負荷をなくして無意識に戻りたがるもののようです。...
-
心と脳の帳尻 第十一回「消去抵抗と学習性無力感」デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
等速直線運動をする物体の速度を大幅に速くしたり遅くしたり停止させたりするには、大きな力が必要になります。同じように、動物の習慣化した行動を大幅に変えるには、大きな荷重を神経系に加えなければなりません。人間だって、ダイエットや禁煙はそれまでの習慣を大きく変えることなので、ある一定以上の力が必要になります。それは、習慣を維持しようとする「消去抵抗」を上回る力です。...
-
心と脳の帳尻 第十回「誤情報交換と同調」デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
友人が集まって昔話をしている。その中の二人が、ゆで卵をいくつ食べられるか挑戦し、五つ食べたところで吐き出した話で盛り上がる。が、他の一人が「それをやったのはオレだし。てゆーかオレがお前らに聞かせた話で、お前らその場にさえいなかったし。」と言い出す。そんな馬鹿な、これは確かに自分の思い出だ、いや、どうだろう・・・?...
-
心と脳の帳尻 第九回「カタルシス」デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
心の中に怒りをためておくとストレスになるから、適度に放出するべきだ、とよく言われます。サンドバッグを怒りの対象に見立てて思い切り殴ってみたり、ゲームで敵を倒しまくったり、物を壊したり、時には直接大声で怒鳴ってみたり。そうやってガス抜きをしてスッキリしておかないと、怒りはどんどん膨らんで頭がおかしくなってしまう、と言われます。でも、実際は?...
-
心と脳の帳尻 第八回「自己奉仕バイアス」デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
世界の中心はどこかと言えば、間違いなくそれは「あなた」です。世界で一番優れた人間は誰かと言えば、それも間違いなく「あなた」です。もちろん、「あなた」なんかいなくても地球は周り、「あなた」より能力の高い人はあらゆる領域で星の数ほどいるでしょう。それでも「あなた」は自分を最も高く評価する「自尊心」という生物学的仕組みを脳の中に持っています。 人は、何かに成功した時は自分の力によるとし、失敗した時は他人や状況や世界や神のせいにします。生物として自己の生命を守るため、精神において自尊心を保とうとするこうした思考は「自己奉仕バイアス」と呼ばれます。...
-
心と脳の帳尻 第七回「感情ヒューリステック」デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
プラスとマイナス、○と×、「良いもの」と「悪いもの」、何かとっさに判断しなければならない時、人はこうした二項対立または、瞬間の好き嫌いで決断します。理性的で数学的で合理的で計画的な思考はコツコツ頭を使い、頭の容量を必要としますが、不合理で感情的で本能的な直観は電光石火に決断でき、時間も労力も不用です。私たちは、できるなら全て楽に済ませたいので、二項対立的な思考、二進法的な行動に傾くようです。...
-
心と脳の帳尻 第六回「集団思考」デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
霊長類である人間は、生きるために群れをなします。そして外部からの攻撃や危険からその集団を守ろうとして団結し、その結束に傷がつくことを恐れます。傷をつける言動をする者がいれば、「空気を読め」と同調を求めます。それは、群れの中で群れに結びつけられた個々の神経のごく自然な反応であり、学校も会社も隣近所も、そうした神経の同調作用で平穏が保たれています。...
-
「心と脳の帳尻」第五回<主観的評価> デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
あなたの性格を占います。あなたは他者から好かれたい、称賛されたいと思っていますが、自分自身に対しては批判的になりがちですね。性格的な弱点がありますが、たいていはそれをうまく補っているようです。また、充分に活用されていない大きな能力を眠らせていますね。ときに自分が正しい決断を下したか悩むことがあるようです。ある程度の変化や彩りは好ましいと考え、規則や制限に囲まれていると不安に感じることもあります。自分の頭で考え、充分な証拠が無ければ人の話を鵜吞みにしませんが、自分をさらけ出すのは賢明でないと気づいていますね。外交的で愛想よく社交的に振る舞うこともできる一方、内向的で心配性で引っ込み思案になる時も…
more -
「心と脳の帳尻」第四回<分離脳と作話>デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
人間の脳は右脳と左脳に分かれており、一般に右脳は左半身を、左脳は右半身を統率しています。また、それぞれの脳には得意分野があり、ふつう右脳は感覚情報を、左脳は言語情報を処理しています。そして、二つの脳は脳梁という神経線維の束でつながっています。...
-
「心と脳の帳尻」第三回<公正世界仮説>デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
因果応報という言葉があります。世の中のたいていの人は、悪いことをすれば当然罰せられるべきだと思います。また、誰かが失敗したり、敗北したリするのを見ると、そうなって当然のことをその人はしたのだと考えます。犯罪や事故には、必ず原因があると信じています。...
-
「心と脳の帳尻」第二回<藁人形論法>デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
あまり仲の良くないAさんとBさんが天気の話をしていました。Aさんは「私は雨の日が嫌いだ」と言います。それに対してBさんは「雨が降らなかったら干ばつで農作物は枯れるし、ダムは枯渇する。食べるものも飲むものもなくなって人間は餓死するが、君はそれでも雨が無くなった方が良いと言うのか」と答えました。...
-
「心と脳の帳尻」第一回〈ブランド忠誠心〉デイヴィッド・マクレイニー『思考のトラップ』より
アメリカのベイラー大学で、無印のコップにコカコーラとペプシを注いで被験者に飲ませ、脳をスキャナーで測定する実験を行いました。すると、スキャナーの表示からはペプシをおいしく感じたと判断されたのに、今飲んだのはペプシだと告げられると、脳から快感の信号が消え、どちらがおいしかったかという質問には、コカコーラの方がおいしいと答えた人たちがいたそうです。彼らコカコーラの愛好者たちは、初めの快感に対しては嘘をついていると言えますが、全ての後では本当にコカコーラの方がおいしいと感じています。つまり、コカコーラに対する忠誠心により、その感情に合わせて脳が記憶を書き換えたため、味覚ではペプシをおいしく感じたのに…
more -
物語を読む⑧「走れメロス」本文
太宰治 作
-
物語を読む⑧中2国語「走れメロス」
文章を書くには動機が必要です。それは、何かを伝えたい相手であり、誰かに伝えたい何らかの思いです。作文を書けない子が作文を書けない最大の理由は、大抵この動機が欠けていることにありますが、物語も、作家には書くべき動機、つまり、想定する読者や、その読者に伝えたい何かが必要です。...
We're indexing this podcast's transcripts for the first time — this can take a minute or two. We'll show results as soon as they're ready.
No matches for "" in this podcast's transcripts.
No topics indexed yet for this podcast.
Loading reviews...
ABOUT THIS SHOW
哲学や思想や歴史や心理や脳や倫理などについてのエッセーです。
HOSTED BY
Takashi Jome
CATEGORIES
Loading similar podcasts...