PODCAST · fiction
美杉リゾートボイスドラマ「みすぎ日和」
by Ks
”いなかツーリズム”をコンセプトにした三重県の美杉リゾートを舞台にしたオリジナルボイスドラマです。さまざまなジャンルのストーリーを繰り広げる珠玉の一品!
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ボイスドラマ「C'est la vie〜セラヴィ」
卒業という節目に、それぞれの人生に迷う3人の女子大生。三重県・美杉の「三多気の桜」を舞台に、彼女たちは“自分の人生”を選び取る・・・【ペルソナ】※ベースのモノローグは茉白▪️茉白(ましろ)= 埼玉県 熊谷市周辺「北関東在住の人気インフルエンサー=埼玉県公式アンバサダー=インスタグラマー」。本名は「真璃(まり)」。名古屋に住むVtuberのオルカ(本名は双葉)と恋愛中(ジェンダーレス)。ツアーにも観光バスをチャーターして2.5次元でオルカを参加させるはずだった都会(東京)への憧れとコンプレックスが入り混じる絶妙な距離感。「彩北のカフェ巡り」でバズったけど、卒業後は東京のインフルエンサー事務所に入るか、地元に残るか、あるいは彼女の住む名古屋へ行くか、で悩んでいる▪️愛真(えま)= 石川県 輪島市(災害地近辺)歴史ある神社が数多くあり、「神道を学ぶ正統派の巫女」金沢に住む10歳年上の彼・ハルトと付き合っている。ハルトからは卒業したら一緒に暮らそうと言われて悩んでいる。地震のあと、自分の中で何かが変わりつつあった▪️彩羽(いろは)= 兵庫県 西宮市・芦屋市周辺(阪神間)証券会社への内定が決まっている「お嬢様感」や「上昇志向」のある芦屋出身就職が決まった昨年秋、子どもの頃からの夢だった声優になることを諦めるため、とある声優オーディションを受けたところ、なんとグランプリに選ばれる。以来夢をとるか現実をとるかで悩んでいる。それが理由で1歳年下、大学3年生の彼・碧とは喧嘩が絶えない【プロローグ:パリ/セーヌ川】◾️SE:セーヌ川のせせらぎ失恋した女性がセーヌ川を見ながら涙を浮かべていると・・・彼女の寂しそうな背中に素敵な紳士が一言・・・ 「セラヴィ (C’est La Vie)」「それもまた人生」生きていればいろいろな事があるよね 大丈夫だよ。それが人を生きる、「人生」ってことだから・・・。【シーン1:インフルエンサー・茉白の巻】◾️SE:アパートの外を通る車の音(自宅)「うっそぉ〜!?参加者3人だけ?私の価値って・・・こんなんなの〜」深夜0時。スマホのライトが真っ青になった私の顔を照らす。画面に表示された『インフルエンサー茉白と行く卒旅”セラヴィ”』。なんとなんと最終応募者数3人。目標の「30名」には遠く及ばず。残酷な数字が私の心に突き刺さった。私の名前は『茉白』。埼玉に住む、フォロワー数5万弱のインフルエンサーだ。「10万フォロワーいた頃なら、こんなツアー、1分で埋まってたのに・・・」フォロワー数復活を願って企画した、起死回生のツアー企画。・・・のはずだったのに・・・行き先のホテル、美杉リゾートには、「50人とか超えちゃっても大丈夫ですかぁ?」なんて、小っ恥ずかしいこと聞いちゃってるし。なのに、最小催行人数になっちゃったこと伝えたら、「ありがとうございます!」と、真摯にお礼を言われちゃった。かえって恥ずかしい・・・スクロールするタイムラインには、かつての私のような、“映え映え””キラキラ”の女子たちが、次々と流れていった。【シーン2:茉白とオルカ/深夜のチャット】◾️SE:スマホの操作音『双葉、ごめんね!』『ホントは会って謝りたかったけど』『チャット、無理して返さなくてもいいから』双葉というのは名古屋に住む私のパートナー。本職はVtuberでキャラ名は『オルカ』。ちなみに『茉白』というのも、実はハンドルネーム。本名は『真璃』。最初の予定では、オルカが2.5次元でツアーに参加するはずだった。オルカの参戦をサプライズにしたのが失敗だったかなあ・・・結局、チャーターしようとしていたバスはキャンセル。急遽、レンタカーを手配した。人気爆上がり中のオルカは、最近私と会うどころかチャットで話す時間さえない。去年の終わりには、卒業後の進路について何度も話し合ったのに。『名古屋で一緒に暮らさない?』って言われたとき、私、ちゃんと返事できなかった。ずうっとうやむやにして、ごまかしたままだ。ツアー募集の締切。午前0時をまわったとき、オルカはライブ配信中。で、最終的なツアー参加人数は、私を入れて3人。あ〜あ・・配信画面の右隅。猛烈な勢いで流れていくチャットの奔流。『オルカ最高!』『今日もかわいい!』止まることのない賞賛の嵐。同接数(どうせつすう)は私のフォロワーを軽々と追い抜いていく。私は冷静にDMの続きを書く。『ツアーは、中止』『2.5次元の参加も、なしでオッケー』『配信、頑張って』画面を見ながら5分間、悩んで悩んで、ようやく送信した。【シーン3:輪島の巫女・愛真の巻】◾️SE:名古屋駅/金時計下の環境音「着いたぁ〜、名古屋だ」『しらさぎ』で3時間かあ。やっぱ北陸って遠いんだな。私の名前は愛真。輪島で、代々続く神社の娘。巫女〜舞姫をしながら金沢の大学へ通っている。能登半島・輪島。2024年1月1日 16時10分。あの日から、私の世界は大きく変わった。傾いた鳥居、亀裂の入った参道。私は『巫女』として、避難所を回り、炊き出しをして被災者を励ましてきた。そんな私を支えてくれたのが、10歳年上の彼・ハルト。金沢市内で設計コンサルタント会社を経営している。実は1週間前、ハルトから『卒業したら金沢で一緒に暮らそう』と言われた。プロポーズの言葉。『君を幸せにしたい』『君は僕の、心の拠り所なんだ』『僕も、君がいれば幸せになれる』嬉しいけど、悩ましい。復興はまだ道半ば。結論を出せないまま、私はツアーに申し込んだ。気分転換、かな。名古屋駅の駅舎。空気が乾燥して、ちょっぴり喉が痛い。輪島の、少し湿った潮の香りはどこにもない。東口にある金時計・・・ってここよね?参加者、いるのかなあ・・『インフルエンサー茉白と行く卒旅”セラヴィ”』。ちょうど卒旅探してたし、茉白にも会いたかったからつい参加しちゃったけど・・集合場所は、名古屋駅の金時計、だよね・・ってほら、DMにも書いてあるし。何人くらい参加するんだろ。茉白のフォロワーだからきっと100人くらいはいるだろうなあ。きっと、全国いろんなところから集まってくるでしょ。「愛真・・・さん?」「あ・・・」「こんにちは、茉白です」「茉白さん!」「ツアー参加、ありがとうございます」「こちらこそ!お会いできて嬉しいです」「全員揃うまでちょっとだけ待ってくれる?」「はい。ほかの参加者は?」「あとひとりよ」「え・・」「愛真さんと私と、もうひとり、彩羽さん・・・西宮からって言ってたから、すぐに到着するでしょ」あとひとり・・・って・・茉白さん入れて、3人ってこと?なにかトラブルでもあったのかなあ・・【シーン4:芦屋の声優希望・彩羽の巻】◾️SE:新幹線の車内音「もう、ほんまにしつこいっ! 切るよ!」あ〜、言っちゃった・・・だって、碧(アオ)ったら、卒旅直前まで電話してくるんだもん。私の名前は彩羽。芦屋から神戸の大学へ通っている。碧は去年から付き合っている彼氏。同じ大学の3年生。そ、一個下。私は卒業後、パパの紹介で外資系M&Aコンサルへ内定。のはずなんやけど・・・実は・・子どもの頃から”声優”になりたかったんだ。パパやママに話したら、一蹴されちゃって・・それ以来一度もその話はしていない。ところが・・・去年偶然見つけたアニメの声優発掘オーディション。応募したら一次審査通過。イベント会場でおこなわれたニ次審査では、グランプリとっちゃったんだ。確かに、小さい頃から朗読が大好きで、ボランティアで読み聞かせをしたりしてたけど・・・養成所に通ったり、レッスン受けてたりしてないからもうびっくり。だ・け・ど・・・碧は大反対。”声優なんてアイドルと一緒やで””チャラチャラしててイヤやな”なんちゅう先入観。今回のツアー行くって言ったときも”茉白って誰や””聞いたことないで””美杉ってどこ””携帯の電波入るんか”ってもう、こんな感じ。言わんときゃよかった。碧はとにかく甘えん坊で、私のことが大好きすぎて・・・でもうざい。ただでさえ、この先どうしたらいいか頭痛いのに。まともに相談さえできへん。◾️SE:新幹線の車内アナウンス『まもなく名古屋、名古屋です』(録音済)◾️SE:名古屋駅構内の雑踏金時計、金時計・・・と・・どこやろ?あ、あれか?あの趣味悪・・・ゴージャスでイケテるモニュメント。あ、もう、茉白さん来てはる。「こんにちは、茉白です」「彩羽です!お待たせしました」「よろしくね。あ、こちら、輪島の愛真さん」「こんにちは」「はじめまして。あれ?ほかの人は?」「ツアーの参加者は私たち3人よ」え・・・うそ。ひょっとして・・・選抜ってこと?私、選ばれた人なん?「さ、行きましょ。駐車場へ。ここからは車よ。運転は、私がするから!」※続きは音声でお楽しみください。
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ボイスドラマ「恋のディスタンス」
みすぎ日和第2弾「恋のディスタンス」。遠距離恋愛に揺れる紗愛、未来へ踏み出せない遥楓、東京で夢を追う結葵。美杉の自然の中で交わされる、“10年後の約束”。距離とは何か。友情とは何か。未来とは何か。心があたたまる物語をお届けします。【ペルソナ】※モノローグは遥楓▪️遥楓(はるか)=大阪に住む女子大生。主人公(モノローグ)。紗愛とは家も近い幼馴染で親友。紗愛の相談役。隠しているが旭川の家具職人・城(じょう)と遠距離恋愛中▪️紗愛(さら)=大阪生まれ大阪育ちの女子大生。同級生の結葵と遠距離恋愛中。結葵から卒業後に東京で暮らそうと誘われているが悩んでいる▪️結葵(ゆうき)=高校時代オーストラリアから大阪の高校へ転校した帰国子女。紗愛と付き合っていたが、東京の国立大学で経済を学び、国家官僚を目指す【シーン1:大学のキャンパス】「遥楓、一生のお願い!私たちを救ってぇ〜!!」紗愛が必死の形相で泣きついてくる。「結葵と私の恋を成就させてぇ〜!!」私は遥楓。大阪に住む、どこにでもいる女子大生 。私の腕をとり、すがりついているのは、幼馴染で親友の紗愛。昔からなにをするにも一緒。言い換えればソウルメイトかな。紗愛は、高校のときつきあい始めた結葵と、遠距離恋愛中。紗愛の彼氏=結葵は上昇志向が強く、東京の大学で経済を学んでいる。将来は国家官僚になってこの国を動かしたいんだって。「遥楓〜、最近結葵に連絡とれないんやわ〜」ディスタンスに悩むとき、紗愛の慰め役は私だった。ディスタンス?はぁん?たかだか2時間半の距離じゃない。で、冒頭のセリフに戻るんだけど。今回紗愛が推しているのは、卒旅。ネットを調べまくって見つけた、コスパ最強のプランらしい。「遥楓〜、みて、これ〜。里山のコテージ泊まって、温泉入って、ライブキッチンの夕食バイキングついて1泊夕食でこの値段やで!え?〆パフェまでついとるやないか」「無双やな。うちら貧乏大学生の強い味方ってか。結葵と行ってきたらええやん」と言うと、紗愛はニヤっと笑って・・「そうやろ〜。た・だ・な・・」「ん?」「3名以上のプランなんや」「え?」「だ〜か〜ら〜」「なっ、なに?」「遥楓、お願い!一緒に行って!」「なんやてええええええ!?」「一生のお願いやから〜!」「無理無理無理無理!ぜったいに無理〜!!!」「そんなん言わんと〜!お・ね・が・い〜!」【シーン2:近鉄榊原温泉口駅/待ち合わせ】※10:19発:伊勢中川行急行(近鉄上本町駅8:31発〜榊原温泉口10:18着)https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/02/announce_nakagawa.mp3■アナウンス「榊原温泉口、榊原温泉口です。1番乗り場から伊勢中川行き急行が発車します」■急行列車の発車する音〜小鳥のさえずりで、結局イマココ。紗愛と私は、近鉄榊原温泉口のホームに降り立った。「遥楓、とりあえず改札でよか」「でもすぐに結葵、くるんやろ?」「せや。けど、うちらが先に待ってへんとカッコ悪いやんか」「ふうん。そんなもん?」※10:20発:大阪難波行特急https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/02/announce_nanba.mp3(東京駅のぞみ7:12発〜JR名古屋8:48着〜近鉄名古屋9:10発〜伊勢中川10:09着〜乗換10:10発〜榊原温泉口10:19着)■アナウンス「まもなく2番乗り場に大阪難波行き特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください」■特急列車の到着する音「はやっ。もうきよったか」紗愛が私の手をひっぱる。榊原温泉口の改札を出ると、「看板でとるで。”ようこそ白山町へ”“火の谷温泉、南西20km”」「20km?まあまああるな」「なにゆうてんねん。20kmなんて、目と鼻やで」あ・・そっか・・・紗愛に距離の話は禁句だった。駅前のロータリーには1台のワゴン(※合ってますか?SUVとかだとさらにかっこいいですが)・・「み・す・ぎ・リゾート・・・あれやな、ホテルの送迎」紗愛は大きく背伸びをしながら、おぢさんみたいに笑う。ホームには特急列車到着を告げるアナウンスがこだましていた。https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/02/announce_nanba.mp3■アナウンス「榊原温泉口、榊原温泉口です。2番乗り場から大阪難波行き特急が発車します」■特急列車の到着・発車する音■スニーカーの足音〜スーツケースを引く音「お待たせ〜」7時台ののぞみで東京からやってきた結葵が手を振る。名古屋から近鉄特急を乗り継いで、榊原温泉口へ。「東京から榊原温泉口まで2時間40分か。大阪まで行くのと、そんなに変わんないな」「うわっ、東京弁きもいって。まだ4年しかおらんのやろ、東京には」「はは・・お、遥楓、久しぶり!いつも紗愛が迷惑かけっぱなしで悪いね」「ホントに」「ちょ、遥楓。根に持ってんのぉ?」私は笑ってごまかす。ホテルの人が、ワゴンの荷室に私たちのスーツケースを乗せてくれる。私のスーツケースを持ったとき、一瞬、あれ?という顔をしたけど、すぐに笑顔で積み込んだ。【シーン3:ガイドツアー/いなかツーリズム】■SE/小鳥のさえずり私たちは、チェックインの前に、”いなかツーリズム”へ。田舎の里山が残る、美杉町ならではの体験イベントだ。紗愛と結葵は、ノルディックウォーキング。ノルディックウォーキングというのは、北欧発祥のフィットネス。スキーのストックのようなポールを持って森林セラピーのコースを歩く。「最近運動不足やからな。ダイエットや」「オレもや」「結葵、おかえり!やっと戻ってきたな」「なんやて?」「関西にきたら関西弁が標準語やろ」「ここ関西やなくて、三重県やで」「遥楓、おまえもノルディックウォーキングくるやろ?」「うちはやめとくわ。二人で楽しんできぃ」「遥楓、気ぃつかうのはやめてや」「ちゃうちゃう。うち、やりたいこと、あるんよ」「なによ?」「木工教室や」「木工教室?」「木工教室?」(※同時に)「ちょうど他にも予約が入ってたらしくて・・一人でも参加できるって」「なんか、シブいなあ」「ホントは木地師体験がしたかってんけど、電話で聞いたら、2名以上からやねんて」「キジシ?」「木材を削って、木の器を作る人のこと」「いや、シブくね?」「最近、木とか森にすっごく興味あるねん」「そうか、そういや遥楓・・就職先、家具屋さんやったな。ま、楽しんでき。終わったらコテージにチェックインして夕食やで」「うん。わかった」「やっぱ、シブいわ・・・」2人にはまだ言ってないけど、木が好きなのにはちゃんと理由があるんだ。あれは大学の研修で関西万博へいったときのこと。林野庁の「スマート林業」体験に参加して、ひとりの男の人と知り合った。名前は”城(じょう)”北海道の旭川で家具職人を目指しているんだって。直接会ったのはそのときだけだったけど、今でもずうっとLINEでやりとりしている。私も、もともと木の香りが好きで、お部屋も木の家具やアクセサリーに囲まれているから。城とはすごく話が弾んだ。”いつか旭川で一緒に木工の仕事をしないか?”それがどういう意味なのか、よく考えずに”いいね”と答えた。私、就職先は大阪の家具メーカーだけど、いつか旭川へ行きたい。それまでに、いっぱい木に触れておきたい。これって、不純な動機?まいっか。とにかくいまは、木工体験楽しもう。ペアのマグカップ作って、旭川に持っていこうかな。城に見せたら、なんて言うだろう。つい口元が緩む。美杉の稜線に低い雲が流れていた。【シーン4:チェックイン/コテージ〜夕食バイキング/ライブキッチン】■SE/森の夜イメージチェックインしたコテージは想像以上に広かった。木の香りが心地良い。泊まってみたかったログハウス。ほんとに泊まりたかったな・・・紗愛と結葵は、スーツケースの中身を部屋中に広げた。ふふ・・宝探しでもするつもり?「遥楓は荷物ださへんの?」「うん。うちは荷物少ないから」そう言ってスーツケースを片手でひょいと上げる。ホントに軽いな。「そっか・・あ、そろそろ夕食バイキングやで。お腹すかせといたから、ガッツリいてまお!」■SE/夕食バイキング会場ライブキッチンってなんだろう?と、思ってたけど、こういうことなんだ・・職人が目の前で焼いてくれるステーキ肉。目の前で握ってくれるお寿司。美杉のジビエ料理。地元野菜のサラダバー。まるで森の中にいるような、木の温もりあふれる空間。だめだ。城に会いたくなってきちゃった・・・私、こんなに木の香りが好きだったんだ・・・「なぁなぁ。たまには贅沢して、クラフトビール頼まへん?」「賛成」私はバッグからさっき作ったコースターを取り出してクラフトビールを置いた。コースターの真ん中には小さく「H」のイニシャルが刻まれている。「お、それ完成品?」「うん。ちょっと歪だけど・・」「ぜ〜んぜん歪やないやん。そのまま売れるで」私はにっこり微笑んで、バッグの中に手を入れた。そこにはもうひとつ。小さく「J」と刻印したコースターが入っている・・・
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ボイスドラマ「ユニコーン」
卒業旅行の行き先は、ちょっと静かで、何もしなくていい場所。名松線の終点から始まる里山ボイスドラマ「ユニコーン」。夜空に隠れたユニコーンが、未来へ踏み出す背中をそっと押してくれます。【ペルソナ】※CV:山﨑るい▪️杉月(るな)=内向的でコミュ症気味の女子大生。浅草の実家住まいで両親は江戸っ子。同級生の美夏・和音とはなぜか気が合う。普段はヴィーガン▪️美夏(みか)=積極的で陽キャな女子大生。横浜生まれ横浜育ち。杉月の意見は常に尊重しながら文句を言う。自分勝手なところが多いがとっても友達思い▪️和音(おと)=歴史好きの”レキジョ”女子大生。実家は秋田。埼玉県の浦和に一人暮らし中。喋ると東北(秋田)訛りになるのでほとんど口を開かない【シーン1:名松線伊勢奥津駅/降り立った2人】■アナウンス「まもなく終点、伊勢奥津、伊勢奥津です。伊勢奥津でお降りのお客様は前寄車両の一番前のドアをご利用ください」■SE/伊勢奥津駅にてディーゼル気動車の音「ちょっとぉ!終点じゃんここ!」「あ」「ごめん・・」「もう〜、美杉ってのは杉月のプランなんだからねー。しっかりしてよぉ」「ごめんね、美夏・・」「そんなぁ・・責めてるんじゃないから謝らないでよぉ・・とにかく終点の・・なんだっけ?」「伊勢奥津駅」「そ。伊勢奥津駅で降りて、ポジティブに、次、考えよ。次!」ってか、文句言ってたの、美夏の方じゃん。私の名前は杉月(るな)。東京の女子大に通う4年生。どちらかと言うと、人と話すのが苦手。夜空が大好きな星座ヲタク。でもって、隣りの陽キャが、同級生の美夏(みか)。横浜生まれの横浜育ち。バリバリのハマっ子。その隣りのメガネ女子は、同じく同級生の和音(おと)。秋田出身。訛りを気にしてか、あまり喋らない。口下手なのは私といい勝負。見ての通り、私たち3人は女子卒旅真っ最中。見ての通り、私たち3人はみんなバラッバラのキャラ。見た目も性格も、まるで、シリウスと月と道端の小石。って、小石はもちろん私だけど。とはいえ、美夏は不思議なくらい私の意見を尊重してくれる。和音は、ぼそっと呟く言葉に重みがある。卒旅の行き先も、3人で話し合った。渋谷のカフェで3時間も居座って、旅行サイト見ながらあーでもない、こーでもないって。美夏が出したのは大人気のメジャーなリゾート施設。最初、海外とか言ってたっけ?和音はレキジョらしく、歴史的遺産や文化財のあるところ。奈良とか京都とか主張してた。でも、決まったのは結局、私が出した三重県の”美杉リゾート”ってとこ。なんで?どこそれ?”いなかツーリズム”。このワードが、私たち3人のハートに刺さった。と言っても、美夏は「パンやピザの手作り体験」。あと、「ビールと温泉」に惹かれたらしい。おじさんかっての。和音は「伊勢本街道歴史巡り」一択。北畠氏がどうとか言ってったっけ。私のお目当ては、「森林セラピー」と「星空ナイトツアー」。浅草の実家暮らしだから「里山」って言葉に憧れがあるのかなあ。それに、もうひとつ見つけたいものがあるんだ。「まんず、降り(お)れが⤴」和音が足取りも軽く改札を抜けていく。私たちは折り返しの列車には乗らず、和音のあとを追った。「あ、空気が美味しい」思わず声が出ちゃった。和音は目を瞑って深呼吸してる。美夏は駅舎の前で電話中。「え、ホントですか!ありがとうございます!では、お言葉に甘えて・・」「なしたっけ?」「ホテルに聞いたら、迎えに来てくれるって。だけど、チェックインまで時間があるからよかったら駅周辺を散策してきませんか、って・・」「んだな、それええな」和音は、いつになく饒舌だ。これでも。「ガイドツアーってのもあるらしいよ」「今日はせっがぐだがら、自分だぢだけで探検(たんげん)してみねが?ガイドツアーは明日にして、答え合わせするのもいいんでねが」「えー、明日も歴史探訪なのー?」美夏が、眉間に皺を寄せながら、楽しそうに笑う。私は小さな声で「賛成」と呟いた。「あれ見でけれ」目をキラキラさせて、和音が口を開く。駅舎の横にそびえる、タンクのような建物。蔦がからまって(←※状況によりトル)レトロ感満載。「給水塔だな。SLさ入れる水、溜めでおいだんだど」「SL?そんなん走ってたんだ」「国の文化財だし」美夏は少しだけ感心したあと、「あー、でもなんかお腹減っちゃったぁ」と、話題はそっちへ。さっきから、誰にも出会わないけど、食べるとこなんてあるのかなあ・・・【シーン2:伊勢本街道「奥津宿」/歴史散策】■SE/ジョウビタキやカワセミの鳴き声結局私たちは、チェックインまで伊勢奥津駅周辺を散策することになった。まずは観光案内所でパンフレットをゲット。和音のリードで伊勢本街道「奥津宿」をのんびり歩き、古民家カフェへ。「うわ、杉月、やったじゃん。ヴィーガンのランチだよ、ヴィーガン」え?ヴィーガン料理?卒旅では、ヴィーガンは封印するつもりだったのに。まさかこんなところでヴィーガン料理が食べられるなんて。ちょっとだけ感動。お腹が満たされたあとは、古い家並みが続く奥津宿を散策。家の前にかけられたお揃いの暖簾の前で美夏の自撮り棒が登場。■SE/スマホのシャッター音「パシャッ」美夏はそのままSNSにアップする。「すごっ。これめっちゃ映えない?ほら、見て」「んだな」確かに。美しい暖簾が並ぶ古民家の前でポーズをとるギャル。カラフルな服装がスマホの縦画面に輝いている。センターはもちろん美夏。冬のまぶしい日差しが澄んだ空気に輝く。こうして私たちの卒旅が始まった。【シーン3:美杉リゾート/コテージ】■SE/キビタキの鳴き声「すごおおおおおおおい!こんないなかに、こんなオシャレなコテージがぁ!しかもアタシたち3人でひとりじめ!」「ひとりじめ、じゃなくて、3人だべ」キャビンタイプのコテージ。木の香りがきもちいい〜。そっか、美杉って、林業のまちだもん。本格的なログハウスが森の中によく似合う。なんか、そんな映画もあったっけ。S(エス)O(オー)M(エム)A(エー)、SOMAコテージ。漢字で書くと、「木」編に「山」。確か、木材を切り出すための山って意味でしょ。すてき。「ちょっとちょっとちょっとおお!デッキにジャグジーまでついてるよ!アタシ、夕食の前に入っちゃうから!」「わも」和音はもう、秋田弁を隠そうともしていない。ここは素のままの自分でいられる場所。私たちはみな、はしゃいで服を脱ぎ、デッキへ走っていった。【シーン4:夕食バイキング】■SE/バイキング会場の雑踏「きゃ〜!目移りして選べな〜い!」夕食のバイキング。美夏のテンションはMAXに。新鮮な海の幸や、ジューシーなお肉。なんと魚の解体ショーまで。和音はジビエ料理に興味が尽きないみたい。シェフをつかまえていろいろ尋ねている。私も、卒旅のときは、ヴィーガンを封印。みんなと一緒にお祭りのような食事を楽しんだ。【シーン5:露店風呂】■SE/露店風呂の音(湯が流れる音)「ローカル線の旅から始まって、里山の散策に、コテージにジャグジーにバイキング。で、シメに露店風呂って!なんか、ネットの情報より、めっちゃいいじゃん!」静かな森の中に美夏の声が響き渡った。私と和音は目を合わせてくすっと笑う。「美夏、和音。ありがとうね。卒旅を、私が選んだ美杉リゾートにしてくれて」「そだねー。のぞみ降りてから、ローカル線を乗り継いで。終点まで行っちゃったときは、どうなるかと思ったけど」「杉月の森林セラピーは明日の予約だべ」「うん。でもね、本当はもっと楽しみにしてることがあるの」「えー。なにー?」「私、ずっと見たかった星があるんだ」「星?」「うん」「なんて星?」「いっかくじゅうざ座」「いっかくじゅう?」「そ、ユニコーン」「聞いたごどねな」「冬の大三角の真ん中にいる、小さくて暗い星座。4等星以下の暗い星ばかりだから、東京じゃ見えない。空気が澄んでいて、人工の灯りが少ないところじゃないと。ほら、”幻のユニコーン”みたいでしょ」「そんなん、ここで見れるの?」私は黙って南の夜空を指差す。「え?・・・どこ?」「冬の大三角はわかる?左側の赤っぽいのが、オリオン座の肩にあるベテルギウス。右下に白く光ってるのが、おおいぬ座のお鼻、シリウス。あと左上で光ってるのが、こいぬ座のプロキオンだよ。この3つの星の真ん中に、ユニコーンが隠れてるんだ」「あ・・・見えだがも」「和音、すごい。ユニコーンを見つけると幸せになれるのよ」※続きは音声でお楽しみください。
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