0069.ドアを押して開ける
from 3字で学ぶ中国語《汉语动词三字经》アーカイブ1-100 Hosted by 清原文代
第69回です。 今回は推tuī(押す)です。 推开门 tuīkāi mén (ドアを押して開ける) 开kāiは開の簡体字で、開くという意味です。 ménは門の簡体字で、ドア・出入り口のことです。 第67回の拉开门lākāi mén(ドアを引いて開ける)とペアで憶えておくといいですね。 推tuīには(責任などを)押しつけるという意味もあります。世間によくあることですが、お互いに押しつけ合っている状態を中国語では、 你推我我推你 nǐ tuī wǒ wǒ tuī nǐ と言います。直訳すれば「あなたは私を押す、私はあなたを押す」で、言い得て妙な表現です。 閑話休題。推开门tuīkāi ménというフレーズを聞くと、私は推敲tuīqiāo(詩や文章の字句を何度も練り直す)の故事を思い出します。「推敲」の「推」は「おす」、「敲」はたたく(ノックする)という意味です。「おす」と「ノックする」でなぜそのような意味を持つようになったのか?皆さんも学生時代に漢文の授業で習ったことがおありでしょうが、念のためもう一度紹介しましょう。 中国の唐の時代に賈島(779-843)という詩人がおりました。この人は苦労人で、科挙と呼ばれる国の高級官僚を選抜する試験を受け続けたものの、二十年にわたって落第しつづけ、出世しないまま人生を終えました。ただ、賈島の名誉のために付け加えておくと、この科挙という試験、その当時の政治状況や、有力者の引きがあるかどうか、あるとしても誰の引きなのかなど、様々な要素が合否に強い影響を与えますので、実力がある人が必ず合格するというものでもないのです。 賈島がある日ロバに乗っている時に(賈島は馬に乗るような身分ではないのです)、 「鳥宿池中樹 僧敲月下門」 (鳥は宿る池中の樹 僧は敲く月下の門) という句を思いつきました。初めは「僧推月下門」(僧は推す月下の門)にしようかと思ったのですが、「僧敲月下門」(僧は敲く月下の門)もよいなと迷い始め、ロバに乗ったまま、門を推すジェスチャーと敲くジェスチャーをしながらそのまま進んでいきました。周りの人は変な目で見ましたが、賈島は気づくようすはありません。そしてとうとう都付近の行政長官であった韓愈の一行にぶつかってしまい、ロバから引きずり下ろされ韓愈の前に引きすえられて、賈島はやっとはっと我に返りました。長官の行列にぶつかった理由を尋ねられ、賈島はありのままに答えます。韓愈は馬を止めてしばらく考え込むと「敲の字にすればよい」と答えました。この韓愈は高官であると同時に著名な詩人で、当時の文壇のボスとも言える存在でした。以後二人身分の差を越えて詩について語り合う仲になりました。 二人の伝記を調べてみると、どうやらこの話は事実ではないらしいですが、「苦吟」がその詩作の特徴だと言われる賈島、その一字一句に拘る苦吟ぶりをよく表したエピソードです。 このお話を元にして「推敲」(詩や文章の字句を何度も練り直す)という言葉ができました。
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