EPISODE · Nov 20, 2016 · 12 MIN
120.2 第百十七話 後半
from オーディオドラマ「五の線2」 · host 闇と鮒
118.2.mp3北高の校門を潜ると、そこには職員のものと思われる車が何台か並んでいた。その中の一台の車を見て鍋島は動きを止めた。ー佐竹の車…。車のエンジンは切られ、中には誰もいない。深呼吸をした彼は周囲を見回した。顔を上げた先に見える職員室には1時半という時間にもかかわらず、煌々と電気が付いている。ー職員にバレないように学校の中に侵入なんてできっこない。あいつ...どこにいる…。鍋島は物陰に身を潜めた。ー深夜の学校で人目につかず待機できる場所…。グラウンド側から回りこんだク..
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118.2.mp3 北高の校門を潜ると、そこには職員のものと思われる車が何台か並んでいた。その中の一台の車を見て鍋島は動きを止めた。 ー佐竹の車…。 車のエンジンは切られ、中には誰もいない。 深呼吸をした彼は周囲を見回した。顔を上げた先に見える職員室には1時半という時間にもかかわらず、煌々と電気が付いている。 ー職員にバレないように学校の中に侵入なんてできっこない。あいつ...どこにいる…。 鍋島は物陰に身を潜めた。 ー深夜の学校で人目につかず待機できる場所…。グラウンド側から回りこんだクラブハウス周辺か…。 彼は校舎の壁に沿って最も闇が深い場所を伝うようにグラウンドの方に移動した。 ーん? 鍋島の視線はグラウンドの中央を捉えた。 ー本? サングラス越しに目を細めた彼はそこに落ちている一冊の本を見つめた。 ーいやまて...これもあいつなりの罠かもしれない。 視線を逸らした鍋島は足を進めた。 「おやおや。」 ーなんだ…。 「なんじゃいやあれ。」 男がひとり言を言いながらポケットに手を突っ込んでグラウンドの中央に向かっていく。鍋島は動きを止めて闇と同化し、男の背中を見つめた。 ー職員か? 「誰ぃや。こんなグラウンドのど真ん中に本なんか放ったらかして。」 ーひとり言が激しい奴だな。 男は本を手にとった。 「なになに...MKウルトラ異聞…。」 ーな…。 「なんじゃいMKウルトラって…。」 男は鍋島に背を向けたまま本をめくりだした。ブツブツと何かをつぶやきながら時折頭をポリポリと掻く。 「アメリカ中央情報局科学技術本部がタビストック人間関係研究所と極秘裏に実施していた洗脳実験のコードネーム...なんか知らんけど胡散臭い話やな…。オカルト本かこいつは。」 ーやっぱり…あのウルトラだ…。 「なぁ教えてくれま。」 ーえ? 「教えてくれって言っとるやろいや。」 ーなんだこいつ…。まさか徘徊老人か…。 「おい。聞こえとるやろ。」 ー…だめだ。本当にこいつボケている。 「お前この本、ここにおる時がっぱになって呼んどったんやろ。」 ーな…。 男は振り返った。彼の姿を見た鍋島は思わず息を呑んだ。 「ふ…古田…。」 「出てこいま。鍋島。ワシはここにおるぞ。」 「ぐっ...くっ…。」 歯を噛み締めた鍋島の額から汗が流れだした。 ーここに古田…。そうか…俺がここに来るだろうことを佐竹から聞いて、熨子山にあんな細工をしたのか…。クソが…。 「おーい、出てこいま鍋島。ワシは逃げも隠れもせんぞ。こんな爺にビビって何隠れとれんて。」 ークソが…。ここでまた昔の記憶を呼び起こさせやがって…。 鍋島は頭を抱えだした。 ーしかもサングラスまでかけやがって...用意周到じゃねぇか…。 「あらあら...60過ぎのジジイとアラフォー男子。どう考えてもこっちのほうが不利なんに、オメェは隠れてこそこそしかできんがか?」 ー馬鹿野郎。その手にのるかボケジジイ。ぐっ…。 頭を手で抑えた鍋島は膝をついた。 ークソが…頭が割れそうだ…。 「赤松忠志。」 ーな…。 「穴山和也。井上昌夫。」 ーぐっ…。 「間宮孝和。桐本由香。」 ーがっ…かっ…。 「一色貴紀。」 ーぐかぁああああ…。」 「村上隆二。」 「ゔがああああああ!!」 暗闇の中、鍋島は咆哮した。 「そこか。」 「う…うるさい…。」 「うるさいやと?ふざけたことぬかすな鍋島。お前がその手でこの世から葬り去った人間はまだまだおるわ。」 「言うな。」 「言う。」 「やめろ!」 「やめんわい!」 鍋島の言葉に耳を貸す様子は全く無い。 「病院横領事件にまつわる関係者、長尾俊孝、小松欣也、金沢銀行の守衛、その他にも多数。お前が殺めた人間は数えきれんわ!」 「はぁ...はぁはぁ…。」 「そしてお前は生きながらにして殺すっちゅう、畜生にも劣る所業もやった。」 「な…に…。」 「生きとる限り何度も繰り返してその人間を殺す、ゴミ糞みたいなこともやりおったわ。」 「ふっ…なんとでも言え。」 「鍋島…。ワシはな...はじめてなんや…。人をここまで憎たらしく思うんは。」 「あん?はぁはぁ…。」 古田は鍋島の方に向かって歩き出した。 「ここまで人を憎み、怒りに震えるようになったんははじめてなんや。」 「はぁはぁ...ほう…。」 「人を殺すって気分はこういうもんかのう。鍋島。」 「はぁはぁはぁはぁ…。は・ははは…ははははは!!」 頭を抑えながら鍋島は立ち上がった。そしてゆっくりと古田の方に近づく。 「老いぼれが俺にタイマン張ろうっていうのか?え?」 「タイマンじゃねぇわい。」 「あん?」 「鍋島。」 直ぐ側で自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。鍋島は咄嗟に振り返った。 「さ…さたけ…。」 「隙だらけだな。」 鍋島の後方2メートルの場所に木刀を手にした佐竹の姿があった。
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120.2 第百十七話 後半
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