EPISODE · Sep 9, 2026 · 21 MIN
280抗がん剤の手足症候群を放置しない方法
from おうちで診る医療|名古屋発!ごうホームクリニックの在宅医療ポッドキャスト · host Go Ito
在宅で抗がん薬治療を続ける患者さんが増えています。外来で点滴を受けて自宅で過ごす「外来化学療法+在宅療養」、そしてカペシタビン・S-1・レゴラフェニブなどの経口抗がん薬は、投与も副作用管理も生活の場が主戦場です。つまり、副作用の「最初の変化」に最も近い位置にいるのは、主治医ではなく週1〜2回訪問する私たち在宅医療スタッフだということになります。なかでも見落とされやすいのが「手足の違和感」です。手足の症状には大きく2つの経路があります。ひとつはCIPN(Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy=がん薬物療法による末梢(まっしょう)神経障害)。オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ボルテゾミブなどで起こり、手袋と靴下で覆われる部分にジンジン・ピリピリ・「砂の上を歩く感じ」が出ます。もうひとつはHFS(Hand-Foot Syndrome=手足症候群)で、カペシタビンやS-1では手足のヒリヒリ・色素沈着・角化、レゴラフェニブやソラフェニブでは荷重部位の痛みや水疱として現れます。前者は神経の問題、後者は皮膚の問題で、対処法がまったく違います。CIPNの厄介さは、「痛みで死ぬことはないが、生活が壊れる」点にあります。国際的なメタアナリシス(Seretny M, et al. Pain 2014)では、化学療法終了後1か月で約68%、3か月で約60%、6か月以降でも約30%に症状が残ると報告されています。しかも、いったん重症化すると回復に数か月〜数年かかり、投与終了後にむしろ悪化する「coasting(コースティング)現象」も知られています。有効な治療薬が限られる(米国臨床腫瘍学会ASCOの2020年ガイドラインでは、予防に推奨できる薬剤はなく、治療でも中等度の推奨はデュロキセチンのみ)以上、最も確実な介入は「軽いうちに気づいて減量・休薬につなげること」です。慢性期管理では、この“気づきの仕組み”を患者さんの生活習慣として埋め込むことが、私たちの仕事になります。
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