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EPISODE · Sep 13, 2026 · 12 MIN

290睡眠薬だけ減る時に考えること

from おうちで診る医療|名古屋発!ごうホームクリニックの在宅医療ポッドキャスト · host Go Ito

在宅の現場で、こんな場面に出会うことはないでしょうか。降圧薬も、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の薬も、胃薬も、お薬カレンダーに残ったまま。ところが睡眠薬(すいみんやく)の袋だけはきれいに空になっている。訪問看護師が残薬(ざんやく)を数え、ケアマネジャーがモニタリングで気づき、薬剤師が「飲めていませんね」と確認する。この「睡眠薬だけは飲む」という現象は、決してその人がだらしないから起きているのではありません。服薬という行為の裏側にある、患者さんなりの合理的な判断と、切実な不安が透けて見える現象です。高齢者の不眠は非常にありふれた症状です。加齢に伴って深い睡眠である徐波睡眠(じょはすいみん)が減り、中途覚醒が増え、睡眠の位相が前にずれて早寝早起きになります。国内の疫学調査では、60歳以上の約3割が入眠困難や中途覚醒などの不眠症状を訴えるとされ、睡眠薬の使用率も高齢層で明らかに高いことが知られています。一方で、日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」では、ベンゾジアゼピン受容体作動薬(いわゆるベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬)が「特に慎重な投与を要する薬物」に挙げられています。転倒・骨折、日中の傾眠(けいみん)、認知機能低下、せん妄(せんもう)の誘発といったリスクがあるためです。つまり私たちは、「効果を最も実感でき、最も確実に飲まれる薬が、最もリスクの高い薬でもある」という、ねじれた構造の中で服薬管理をしています。このねじれを解く鍵は、叱ることでも取り上げることでもなく、なぜその薬だけが選ばれているのかという本音に耳を傾け、多職種で服薬全体を設計し直すことにあります。今回は服薬管理という視点から、服薬中断の理由と患者心理、アドヒアランス向上の工夫、多職種でできる服薬支援の三点を整理します。

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