EPISODE · May 21, 2026 · 5 MIN
残酷な話だ
from 余白の朗読室 · host tosusia
noteでも公開しています残酷な話だとても残酷な話だ。定年後、これほどの仕打ちを受けることになるとは思っていなかった。海外赴任中の娘が、半年後に帰国する。それだけなら喜ばしい話だ。しかし娘は帰国と同時に、「うちの子を返してもらう」と言っている。確かに預かったのだ。一年間という約束で。だから返すのが筋だということは、頭ではわかっている。しかし一年とは何だ。毎朝、リードを持つと玄関で待ち構えている。雨の日も風の日も、一緒に歩いた。夜は布団の端をちょんちょんとつついてくる。入れてやると、お尻をぺたんとつけて丸くなって眠る。その子を、返せというのだ。半年後のことを考えると、帰り道の足が重い。どうすれば回避できるか。いや、回避などできるのか。娘の説得か。妻の援軍か。いっそ居留守か。早く帰って、散歩に連れて行かなければ。あの子が待っている。
Embed this episode
NOW PLAYING
残酷な話だ
No transcript for this episode yet
Similar Episodes
No similar episodes found.
Similar Podcasts
No similar podcasts found.