EPISODE · Apr 3, 2026 · 9 MIN
チェーンソーの音
from ハナボウズの山ログ · host ハナボウズ
春の朝、Kのセダムハウスに入る。ハウス内の温度計は17度を指している。セダムにとってちょうどいい空気だ。気分は低い。それでも手は動く。昨日はおぎはら植物園へ行った。棚の前を歩いていると、フラワーファーム沓掛の沓掛さんと研修生の清水さんがいた。同じように苗を物色している。真剣な目をした人たちがほかにもたくさんいた。ガーデニング好きも、農家も、みんな同じ棚の前に立っていた。おぎはら植物園は、草花に関わる人間が自然と引き寄せられる場所なのかもしれない。持ち帰ったのは、梅もどきの小苗、レンゲショーマ、ヘリオプシスのサマーピンク、オルガノのヘレンハウゼン。梅もどきは前の地主さんの母が植えた木がすでに1本ある。そのそばに、もう1本添わせてやろうと思った。オルガノは、圃場にある既存の株と混ぜて切り花として提案できないか、という実験的な仕入れだ。新しい苗たちは施設育ちなので、外に出すのは5月ごろになりそうだ。いまはハウスの中で養生させている。どこかからチェーンソーの音がする。暮坂峠のあたりだろうか。赤岩へ下る道の木々にピンクのシールが貼られているのをずっと気にしていた。鍛冶屋敷の山を切り開いて、大型の太陽光発電が建設されるらしい。山が削られることへの複雑な気持ちはある。ただ、林道が整備されるなら、この地で農業を続けるための道にもなる。複雑さの中に、かすかな希望が混ざっている。ハウスとハウスの間で、アリウムのシュベルティとサマードラマが顔を出していた。妻が選んできた球根だ。7株のうち1株だけ元気がない。道路側から流れ込む水が当たる端の位置に植わっているものだ。平均的な土壌データには表れない、局所的な湿度の差がある。数字ではなく、目と手が教えてくれる情報だ。ハウスの二重構造の間に、草が侵入し始めている。保温のための空隙は、草にとっても居心地がいいらしい。片付けておかなければならない。
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