EPISODE · May 1, 2026 · 16 MIN
短い問いに長々と答えるノベーション(1832回)
from 残間光太郎の"闘うものの歌が聞こえるか" · host kotaro zamma
野田秀樹さんの舞台「華氏360度」に衝撃と感動を頂きました。そしてプログラムでの野田秀樹さんの言葉に、深く考えさせられました曰く「「短い問いに長々と答える」それが生きるということだ。この有名なシェイクスピアの蓄ある台詞も近頃は、的外れな時代になってしまった。「答えは短い方がいい」そんな時代だ。SNSでは「長々と答える」のは、オジサンの所業としてみ嫌われる。そしてAIに言わせれば「長々と一生という時間を費やして答える問題」など、問題そのものの方に問題があるということになりそうだ。簡潔で力強く聞とえる答えばかりが、世間を闊歩する。「悪者は速やかに殺せ」」中略「さて、このもっともらしい私の文章の問題点は、冒頭にある「シェイクスピアの含蓄ある台詞」が、私の手によって作られたフェイクであるということだ。私お得意の「フェイクスピア」のセリフだ。だから、今時の科学文明についての答えも、そう簡単には出ない。それでも「短い問いに長々と答えた」のが、この芝居であり、しかも答えになっていない。長々と答えても答えられようのない「短い問い」がこの芝居だ。相変わらず歯切れの悪い、始末の悪い文章だが、まずはご覧あれ。」ここから、私は思いました1、長々と答えを紡ぐ勇気2、フェイクを通して真実に近づく3、答えられなさを抱えたまま進む1、長々と答えを紡ぐ勇気「答えは短い方がいい」そんな空気が強くなっている今だからこそ、あえて長く考え答え続けるという勇気が問われている気がします。シェイクスピアの『ハムレット』の「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」という問いは、短くは答えられない問いの象徴だなあと思いました野田さんは、その“答えられなさ”を引き受けようとしているのかも知れない。すぐに結論を出さず、思考と語りの時間を削らない。今回のお芝居も、怒涛の言葉の渦と、3つの時代を行き来する悠久の時間を、ふんだんに駆使して、目眩く問いの数々を投げかけていただいた気がしました。2、フェイクを通して真実に近づく冒頭の言葉がフェイクだったと明かされる。この仕掛けがまさに野田さんの舞台における、言葉のフェイク合戦で、一体何を言ってるのか、次々に考えをめぐらさなければついていけない、そしていつの間にか感動してる、そんな仕掛けを思わせてもらいました。哲学者のルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは「語りえぬものについては沈黙しなければならない」と語りましたが野田さんは、語り得ぬものを、“フェイク”で語る。そんな気がします。本物ではない言葉だからこそ、人の心を動かすことにつながる。真実は、必ずしも“正しさ”だけでできているわけではなくて、むしろ、遊び、仮説、揺らぎの中にこそ、新しい意味が立ち上がることがあるのかも知れないなあと思いました3、答えられなさを抱えたまま進む野田さんの舞台は、言葉がどんどん違う意味を持ち始めて、真実と思っていたことがどんどんフェイクに入れ替わっていくそれは、簡単に答えられると思っていたことが、実はそんな簡単ではないことを、どんどん突きつけられていく思想家のハンナ・アーレントは人間を「自分自身と対話する存在」と捉えたと言われていますつまり、問いに答えることよりも問い続けること自体が、人間の営みなのかもしれないなあと思いました答えきれない問いを抱えながら、それでも語り、作り、進んでいく。その“未完のままの前進”こそが、創造の正体なのかもしれないなあとということで一言でいうと短い問いに長々と答えるノベーション野田さんのフェイクの中に真実があるのかも知れないそんなことを思わせて頂きました参考:舞台:華氏マイナス320度 作・演出 野田秀樹 出演 阿部サダヲ、広瀬すず、深津絵里他 https://www.nodamap.com/kashi/
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短い問いに長々と答えるノベーション(1832回)
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