EPISODE · Jun 1, 2026 · 10 MIN
花火と古傷と生物音響学
from ハナボウズの山ログ · host ハナボウズ
石のベンチに腰を下ろす。晴れた空の下、ハウスの中は蒸し暑く、セダムやジャーマンカモミール、センダイハギ、イガグリスゲを刈り取り、本数の足りない品目を組み合わせて一箱に収める算段を立てる。農の現場では、足し算と引き算が静かに繰り返されている。土曜日は岩崎さんの農場でバーベキュー。戸高くんと炭火を囲んだが、オーストラリアンキャットルドッグが吠えながら駆け寄るたびに左肩の古傷が疼いた——かつてチャウチャウに噛まれ、ERへ運ばれたあの夜の記憶が。距離を保ちながら肉を食い、酒を飲んだ。誰も怪我がなかったことが、何よりのごちそうだった。日曜夜は戸高くん家で座談会。その後、ポッドキャスト収録という名目のおじさん会——「しょうがない」を言い訳に作業部屋へ籠もれる、それがまた良い。そして最近新しい遊びを見つけた。ステレオマイクで収めた音声を生物音響学的に解析してみると、シュレーゲルアオガエルやガビチョウの声が、静かに音の中に隠れていた。姿は見えなくても、声は届いている。畑の奥の森に、まだ知らない世界がある。マイクはそれを、ただ静かに記録していた。
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