EPISODE · Mar 16, 2026 · 7 MIN
いつか行こうと思うとなかなかいけないもんだ
from ハナボウズの山ログ · host ハナボウズ
午前中の灌水を終え、アルケミラの畝で草を抜きながら、昨日と明日のことを考えていた。昨日は婚活会の挨拶に立った。用意してきた言葉は緊張の中でほとんど抜け落ち、残ったのはひとつの文だけだった——山の環境で育った花を切り取って、都会に送っている、と。それで十分だったかもしれない。会は盛り上がり、自分が何かをする必要はなかった。明日は日光へ行く。結婚式のとき神社から授かった石を、ずっと返しに行けずにいた。子は生まれ、元気に育っている。いつか行こう、と言い続けているうちに何年も経ってしまうのが人の常で、だから昨日のテンションのまま決めてしまった。明日の自分が長距離運転を億劫に思っても、もう決めた。ハウスの外に出ると、ヤドリギが三つ見えた。20メートルはあるだろう高さに、枝もない一本立ちの幹。命がけで登るか、クレーン車を借りてくるか。冬場の換金作物として、いつか本気で考えてもいいかもしれない。風もなく、暖かい日だった。
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