埋め立て2.0 【海外シンクタンク記事分析】 episode artwork

EPISODE · Jul 20, 2026 · 1H 4M

埋め立て2.0 【海外シンクタンク記事分析】

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かつて都市拡張のために用いられた埋め立ては、目的や条件を設計し直せば、現在でも現実的な政策手段になり得るのでしょうか。今回のエピソード「埋め立て2.0」では、米国で1970年代以降に止まった都市埋め立て、土地開発による価値の上昇分を生物多様性や気候適応に還元する土地開発利益還元、南シナ海で常態化しつつある人工島造成という3本の記事を取り上げます。一本目では、環境法が埋め立てを止めたという仮説を検討し、住宅供給や都市の生産性、防災上の便益を、生態系への影響や長期的な維持費、ほかの土地供給策とどう比較するかを考えます。二本目では、開発によって生じた価値を自然環境の保全や防災に還元する仕組みと、その効果の測定、費用負担、利益の配分を扱います。三本目では、法的には領土を増やさない人工島が、港湾や滑走路を整備し、監視・補給などの能力を高めることで、さらなる造成を促す構造を考えます。埋め立てを一律に解禁するか禁止するかという二者択一ではなく、土地、海、自然、人に生じる便益と負担を測り、どの事業を、どのような条件で認めるのかが問われます。■キーワード埋め立て/都市用地供給/環境影響評価/土地開発利益還元(LVC)/生物多様性ネットゲイン(BNG)/人工島造成/安全保障のジレンマ■今回のトピック[01:43] 米国で消えた都市埋め立て — 環境規制は何を止めたのかWorks in Progress の記事をもとに、米国の主要沿岸都市で、1970年代以降に大規模な都市埋め立てがほぼ行われなくなった背景を取り上げます。記事は、埋め立てに適した浅い水域や技術が失われたのではなく、NEPAをはじめとする環境法や、長期にわたる審査、訴訟対応、保全措置に伴う費用が主因だと主張します。本エピソードでは、都心近くの土地が住宅供給、雇用、生産性、交通、防災にもたらす便益を確認します。その一方で、記事が示す因果関係には十分な裏付けがあるのか、近年の制度変更後に事業が実際に増えるのか、生態系、水の流れ、液状化、海面上昇、長期的な維持費をどう評価するのかを議論しました。また、埋め立てを既成市街地の高密度化、工場跡地の再開発、公共交通への投資などと比較し、一律の解禁ではなく、候補地の厳格な選定、期限を定めた審査、土地価値の公共還元を組み合わせる必要性を考えました。出典:Works in Progress, "Why San Francisco isn’t bigger"https://www.worksinprogress.news/p/terraforming-earth[23:20] 土地開発利益還元 — 自然と防災に価値を戻せるかLincoln Institute of Land Policyの記事をもとに、公共投資や用途変更などによって生じた土地価値の上昇分を、生物多様性、災害復興、気候適応に活用する政策手法を取り上げます。イングランドの生物多様性ネットゲイン制度では、新たな開発に対して、生物多様性の指標を開発前より10%以上高めることが求められています。本エピソードでは、この義務が手頃な価格の住宅などへの投資を圧迫するのか、それとも、緑地や生物多様性が開発価値を高め、新たな公共貢献を可能にするのかを議論しました。また、制度上の数値が実際の自然の回復を表しているのか、最終的な費用を土地所有者、開発事業者、住宅購入者の誰が負担するのか、地価が上昇しない地域の防災や生物多様性をどう支えるのかを考えました。土地価値を生み、守り、回収する仕組みや、開発権を危険な地域から安全な地域へ移す制度という視点から、自然と防災への資金循環を検討します。出典:Lincoln Institute of Land Policy, "How Land Value Capture Can Support Biodiversity, Disaster Recovery, and Climate Adaptation"https://www.lincolninst.edu/publications/land-lines-magazine/articles/how-land-value-capture-can-support-biodiversity-disaster-recovery-and-climate-adaptation/台本内で取り上げた研究:Marshall, C. A. M., Wade, K., Kendall, I. S., Porcher, H., Poffley, J., Bladon, A. J., Dicks, L. V., & Treweek, J. (2024). England's statutory biodiversity metric enhances plant, but not bird nor butterfly, biodiversity. Journal of Applied Ecology, 61, 1918–1931. https://doi.org/10.1111/1365-2664.14697Duffus, Natalie; Atkins, Thomas; zu Ermgassen, Sophus et al. (2025). A globally influential area-condition metric is a poor proxy for invertebrate biodiversity [Dataset]. Dryad. https://doi.org/10.5061/dryad.p5hqbzm1bButler, A., Groom, B., & Milner-Gulland, E. J. (2025). Local people’s preferences for housing development-associated Biodiversity Net Gain in England. Land Use Policy, 158, 107758. https://doi.org/10.1016/j.landusepol.2025.107758[45:21] 南シナ海の人工島競争 — 法と実力の距離Lowy Instituteの記事をもとに、中国だけでなく、ベトナム、マレーシア、台湾も進める南シナ海での埋め立てと拠点整備を取り上げます。人工島を造成しても、国連海洋法条約上、新たな領土や領海は生じません。しかし、港湾や滑走路を整備すれば、監視、補給、法執行などの能力を高め、現地の軍事・政治状況を変えることができます。本エピソードでは、2016年の比中仲裁判断が法的な重みを持ちながら、現地の既成事実を十分に変えられなかったことを取り上げます。さらに、南シナ海行動規範をめぐる交渉が造成を急ぐ誘因になり得ることや、防御目的の施設が相手には脅威と映る安全保障のジレンマについて議論しました。造成面積だけでなく、施設の運用能力、部隊や装備の配備、危険な接近、環境損失まで確認する必要があること、そして、ルールを守る方が有利になる仕組みをどうつくるかを考えます。出典:Lowy Institute, "South China Sea: If you can’t beat them, build islands"https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/south-china-sea-if-you-can-t-beat-them-build-islands■PEP ThinkとはPEP Thinkは、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。■YouTubeでも配信中PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg■登壇者馬田 隆明(PEPディレクター)■主催政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

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