EPISODE · Jun 13, 2026 · 25 MIN
圃場Kの環境音2026年6月13日
from ハナボウズの山ログ · host ハナボウズ
六月十三日、土曜日。K圃場で、中島はひとり花を切っていた。翌十四日の中之条花マルシェに向けた準備作業だった。マイクは軽トラの荷台の上に置かれ、その日の音を拾っていた。風の気配、鳥やセミの声、そして時折やってくる来客の声。録音はやがて、スマートフォンの発熱によって静かに途切れた。機械が音を上げたその瞬間まで、中島は花を切り続けていた。 マルシェの前日というのは、静かな緊張感がある。売り物になる一本を選び取る手つきには、値踏みとも愛着ともつかない感覚が混じる。Kの圃場は、そういう作業に向いている。広すぎず、狭すぎず、手が届く範囲に花がある。軽トラはその日の道具置き場であり、録音スタジオだった。 来客はいつも唐突にやってくる。会話がはじまれば、それも記録の一部になる。ログとは、計画された音だけでなく、その日にたまたま起きたことの総体なのかもしれない。マイクを置き去りにしても気にしない。いつの間にかマイクを指していたスマートフォンが熱を持ち録音は止まっていた。
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