EPISODE · Apr 25, 2025 · 56 MIN
S2#29 ストーカー彼氏の話
from 666666RADIO · host 666666RADIO
『おかえしに来ました』あの夜、高地くんは一人でラーメンを食べていた。大してうまくもないのに、食後にいつも胃が重たくなるのに、なぜかそのラーメン屋に通い詰めていた。「高地くん、だよね?」不意に、隣の席に男が座っていた。髪は濡れていて、Tシャツの袖が破けていた。なのに妙にニコニコしていた。「彼女から、いろいろ聞いたよ」高地は眉をひそめた。“彼女”とは、数ヶ月前に別れた元カノのことだ。その隣には、たしか今彼がいた。SNSのプロフィール画像で見た記憶がある。…この男だ。「君のこと、ほんとはまだ好きなんじゃないかって、言ってたよ」男の声はやさしかった。「だから僕ね、高地くんに“おかえし”しようと思ってさ」「……は?」高地は思わずラーメンを啜るのをやめた。男は首を傾げた。「ねえ、高地くん。君、まだ彼女の“爪”持ってるよね?」一瞬、店のBGMが止まったような錯覚がした。「ほら、引っかかれたところ。治ってないじゃん」男は笑った。「君に返すね。僕がもらった彼女の“歯”、ぜんぶ」男はポケットから、ガチャガチャと音を立てて、小さなジップロック袋を取り出した。そこには、小さな乳白色の、いくつもの歯が詰まっていた。「これで平等だよね」「…いや、何の話をして…」「“おかえし”だよ。きみも彼女に爪をもらって、 ぼくも歯をもらった。 だから、次は――君の番だよね?」男の目がにっこり笑った。瞳孔が開きすぎていた。店内がぐにゃりとゆがんで見えた。高地くんが気づいたのは、その男の腕だった。腕に、白い糸で縫われた跡がある。いや、それは糸ではなく――髪の毛だった。「高地くん、 “彼女”、どこに埋めたの?」ラーメンのスープが急に血の味に変わった気がした。誰かが、笑っている気がした。男は、笑顔のまま言った。「ぼくね、“彼女の声”がまだ耳に残ってるんだ。 君のことばっかり呼ぶ声がさ。 …返しに来たんだよ。君に、全部」男が差し出したもう一つの袋には、舌が、入っていた。終。
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S2#29 ストーカー彼氏の話
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