EPISODE · Jul 13, 2026 · 8 MIN
スクリプト
from 余白の朗読室 · host tosusia
noteでも公開しています スクリプト PDFを栞ごとに分割するスクリプトを最初に書いたのは、二十年以上前だ。 当時、そんなことができるアプリは存在しなかった。AppleScriptで書いた。OS 9の頃だ。動いた瞬間のことを今でも覚えている。 AppleScriptがあることが、Macを使い続けていた理由だった。 業務で使うプログラムとスクリプトは、全て自分で作った。会計処理も、ホームページの自動更新も。サーバを立てて、XOOPS——CMSだったか——を動かしていた時期もある。 分割したファイルの名前を整えるAppleScriptを書いた。日本語が文字化けするバグを潰すための名称変更スクリプトを書いた。フォルダに振り分けるAutomatorのワークフローを組んだ。 問題管理のデータベースをFileMakerで作ったのは三十年前で、印刷レイアウトを自在に組み替えられるよう、フィールドの配置に一週間かけた。それは今も動いている。 iPhoneアプリも作った。日本でiPhoneが発売される前、iPod touch向けに作ったものだ。そのデータ入力だけのためのプログラムを別に書いた。そのためだけの、それしかできないプログラムを。誰かに説明するのが面倒なので、説明したことはなかった。 気づけば、そういうものがいくつもある。自分にしか使えない道具が、デスクの引き出しの奥みたいなところに、いくつも。 最初にAIを使ったのは、miのマクロだった。 テキストデータを元にplistファイルを作ろうとしていた。正規表現で一括置換して、マクロで整形して——これまでのやり方にAIをはめ込もうとしていた。 今ならそんなことはしない。 「このテキストデータを元に、plistファイルにまとめ直して。重要箇所にはサンプルのようにタグをつけ、タイトルは次のリストから選ぶこと」 それだけ書けば終わる。 Excelのデータを処理しようとした時も同じだった。選択したセルをAIに投げて、処理結果を別のセルに貼り付ける——そのためのAppleScriptを書こうとしていた。AIをツールの部品として組み込もうとしていた。 今ならそんなことはしない。Excelのデータごと渡して、やりたいことを書く。それだけだ。 アプリのデータを作るとき、昔は専用のプログラムを書いた。 今は、このデータを参考にして同じようにまとめて、と言うだけで処理される。専用のプログラムを書くという発想が、しばらく頭に浮かばなかった。浮かばなかったことに、後から気づいた。 得意だったことが、考え方の癖になっている。スクリプトで解決できる、という回路が先に動く。その回路を迂回するのが、思いのほか難しい。最初から知らなければ、もっと素直に使えたのかもしれない、と思うことがある。 三十年かけて身につけたものが、三十年かけて染み付いた癖でもある。 それでも、AIを使った処理がうまく噛み合った瞬間がある。 データの構造を説明して、変換のロジックを伝えて、出てきたものが想定を少し超えているとき。 あの感じは、スクリプトが初めて動いた時と、同じだと思う。
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