EPISODE · Mar 26, 2026 · 8 MIN
雨の畑、生き残りの話
from ハナボウズの山ログ · host ハナボウズ
雨の朝、中島は畑へ出た。娘が胃腸炎で、体調が心配だったが、それでも長靴を履いた。路地のセダムが、親指ほどの芽を出していた。冬を越えたというより、冬をやり過ごした、という顔をしていた。株間の整理を続けている。2条の千鳥植えを、1条へ。隣の株とぶつかり、真ん中が蒸れる——その問題を、少しずつ解いていく。33メートルの畝に100株。防草シートで左右を挟んで、セダムだけがぎゅうぎゅうと列をなす畑を、まだ頭の中で育てている。ハウスの間に、水仙が顔を出していた。去年の秋、前職の友人・こまっちゃんが3日間泊まりにきて、その宿代と飯代のかわりに植えてくれたものだ。前の家主の母が残した球根。畑の端に、ラムズイヤーがいた。移植の際に捨てたはずの、ボロボロの株だった。土に埋まったまま、根を張っていた。捨てられたものが、生き残っていた。1人で喋り続けていると、心が揺れる。大きくなったり、定まらなくなったりする。その揺れを測るために、山ログはある——と、寒さで指が痛くなりながら、中島は思った。
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